77話 絶望を告げる力
よろしくお願いします!
アルフィンside
この大戦で傷ついた連合軍の戦士達の治癒の為に、わたくしは野外病院を始め、重要施設を観て回っていた。
軽傷の方、重症な方と、たくさんの傷ついた方達を治しサポート魔法も使いながら、次の場所へと移動していく。
危険な状態の方もいたが、幸い、死人は出ておらず治癒魔法で治せている。
「間に合って本当に良かったです。あと少し到着が遅れていたら……」
ルーデウス帝国まで陥落していたなら、ここは地獄絵図と化していたでしょう。
何万人もの尊い命が散っていくのは、とても辛く悲しいこと。
わたくしのこの力で、一人でも多くの人の命を救い、守れるように、頑張らねば。
タクトさんと共に、援軍に駆けつけたことで戦況は大きく変化しました。
上空から見えた大量の魔物は、リューガさんと竜王国の戦士隊が対処していた。
そこに、治癒魔法によりアーロン皇帝と、クラウド隊長とその部隊も戦列に復帰してからは、部隊を立て直し、強力な魔法と、その力でその数をどんどんと減らしていく。
連合軍本部も、ジェクト隊長が強力な結界を張っていらっしゃるので、もう大丈夫でしょう。
連合軍の立て直しが順調に進んでいく中、新たな戦いの開始を告げるように、戦場のそれぞれの場所からはシズクと、ナエちゃん、そして、タクトさんの魔力が高まっていくのを感じた。
「……戦闘が、始まったのですね」
ここに、辿り着く前に決めた作戦から、三人が四天王を相手に、戦っているのは知っている。
シズクと、ナエちゃんは初めての四天王との戦い。
タクトさんは、あのドレアムと戦っている。
エリス王国でも、アリサ女王が心配されておりましたが、わたくしも、タクトさんを思うと心配でなりません。
ドレアムは、先程見たときにも底知れない強さを感じた。
タクトさんの強さは信じています。ですが、やはり心配です。
「どうか……皆、御無事で」
わたくしには、皆の勝利を信じて祈ることだけ。
三人の安否を祈りながら、魔力が弱りかけている方を優先に、治していく。
「これだけの数の人達が……己の命と大切な存在の為に戦っている。どうか、どうか一人でも多くの命が生き残ることを」
自分に出来る事を全うしようと、次のポイントへ移動した。
アルフィンside
out
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タクトside
奥の手の、限界突破を使用してから何十分経ったのか。
随分長い時間を、やり合ってる気がする。
「シャイニングピラーブラスト!!」
天から巨大な光の柱を落とす。
「カオスディムファントム!」
対抗するように、ドレアムは闇の柱を落とした。
互いに、光と闇の大規模魔法で撃ち合う。
そのぶつかりあって生まれたエネルギーは、周囲の地形を変えていく。地面は亀裂が入り、陥没し、草木を吹き飛ばした。
限界突破を使用した事で、魔法でも遅れを取らなくなった。
全くの互角と言っていいほどに、拮抗している。
特級魔法の撃ち合いでは、勝負が着かず肉弾戦に移っていった。
ドレアムを殴って、殴られ、蹴り飛ばし、蹴り飛ばされて、やってはやり返されてと、ど突きあっていた。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
ドレアムのその、いけ好かない顔面にたっぷりと魔力を込めて、ぶん殴る。
「グアァッ!! ……中々重い……。次は貴様がくらえ」
ドレアムに、上半身を掴まれ、もの凄い力で地面に思い切り叩き付けられた。その衝撃で地面に大きなクレーターが出来上がる。
「ぐぼぁっ!」
俺の口からは、結構な量の血が出る。
この感じ……内臓やられたか……。
体の外側も、内側もダメージが酷くなってきたけど、そんなの関係ない。
やられたら、やり返す!
「ジェネレイト・ライトニングライズ!」
そのまま地面に横たわりなりながら、特級魔法の雷の球体を10個造り出して、ドレアムに全弾ぶちこんだ。
「ムッ! はあ!!」
全弾を、拳がぶれる速度で、弾き飛ばしているドレアムの腹に。
「隙ありだコノヤローー!!」
高密度魔力を体に這わせて、頭から突っ込んだ。
「っ! 小癪な! ぐおおおぉぉ!」
「バキッバキッ」とドレアムの甲冑を叩き壊してやった。
クソヤローは、物凄いスピードで飛んでいき、そのまま地面に激突し大きなクレーターを作る。
「ざまぁみろっ! 人をコケにしやがるからだ! 人を見下しやがって人間なめんなよ! コノヤローが!」
腹に大きな陥没の跡を残し、ドレアムはゆっくりと立ち上がった。体を覆う甲冑は、既にボロボロになっている。
「……貴様。どこからそんな力を……認識を改めねばならないか。
確かに、貴様は強い。短時間で、そこまでの戦闘力を手に入れたこともそうだが、まだ完全に隠している力を持つことも考慮すれば。驚異となりかねん」
今度は、表情に苦痛と悔しさを滲ませて褒めてきた。
「だから、言っただろう。その表情変えてやるって」
「……フン。有言実行できて、満足か?」
「ああ。満足だね。その無表情を変えてやっただけで、俺はスカッとしたね」
「クックック。そうか。では、今度こそ貴様に絶望を見せてやろう」
アイツの纏う雰囲気が、変わった。
「ん? なんだよ」
ドレアムが構えを取り、力を溜めようとするのが伝わってきた。
「貴様は、やはりここで始末せねばならない。冥土の土産に、二ついいものを見せてやろう」
「……いいもの?」
「まず一つ」
ドレアムが、急速に魔力を溜めていくのが分かった。
この……魔力操作は、俺のと同じ……。
「まさか……」
「そのまさかだ。限界突破!!」
やっぱりか!
ドレアムにも、俺と同じ限界突破が使えたのか。
今までアイツが、扱っていた魔力量とは、桁違いの量がドレアムの体内に溜まっていき、それが一気に解放された。
「ドウンッ」と音が鳴るほどに、圧倒的な魔力を放ち、その余波が、波打ち暴風となって駆けていく。
「クソッ。マジかよ。また差が開いた」
「これで、条件では同じになったが。さて、貴様は、ついてこれるか?」
ドレアムが、もはや目に見えない速度で接近してくる。
辛うじて、魔力を探り、ガードを固めるがその上からひたすらに、殴られ続ける。
クソッ強い……
せっかく互角まで持っていったのに、また、ドレアムの方が強くなりやがった。
「吹き飛ぶがいい」
ドレアムの掌が俺の腹に添えられる。
「っ! やばい!」
「ダーク・ライトニング」
漆黒の雷が、放射され、ぶっ飛ばされた。
「ぐうあぁぁぁーー!!」
体を押し潰さんとする、激痛が体をはしった。
物凄い衝撃と痛みで、気を失いそうになる。
それを何とか気力で押し込め、フラフラとしながら立ち上がると、ドレアムは空へと左腕を掲げていた。
「二つ目。貴様、神級魔法は見たことがあるか?」
ユーリから存在すると聞いただけで、実物は見たことがない。
俺も、まだ使ったことがない領域の魔法。
俺が黙っていることを肯定と取ったのか、ドレアムが更に話を続けた。
「その反応は、ないということか。せっかくだ最期に見せてやろう。これで貴様も終わりだが、神に祈る時間は必要か?」
「……お前がいう神ってのは、ハーディーンことだろう……冗談じゃない」
「そうか、残念だ。それでは……」
特級魔法の何倍もの、魔力を生成しそれを恐ろしい技量で魔力操作をしていく。
やがて、魔力は構成され魔法に変わった。
「さらばだ。イクリプス・プロヴィデンス」
ドレアムが魔法名を呟くと、辺りを闇が覆い尽くす。
まだ、昼過ぎだというのに夜が訪れたような闇の中に、黒色の炎が浮かび上がった。
その、世界を焼き尽くす程の荒れ狂う巨大な黒い炎は、絶望を告げる死神のように、放たれた。
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(*- -)(*_ _)ペコリ




