74話 魔王VS四天王最強②
目の前の男に今までやられてきたことを思うと、怒りが沸き起こる。
絶対にコイツは、倒さなくてはいけない。
コイツのせいで、今までたくさんの人達が傷付けられ、苦しめられてきた。
だからもう、コイツの好きな様にさせない。
このクソヤローに、キレてから段々と変化してきた事がある。
コイツに対して、怒りが爆発して、俺の魔力総量が限界値を超えたからなのか。
この戦闘中に魔力操作が上達したからなのかは、分からないけど。
さっきまで、どれだけ攻撃をしても、ドレアムをその場から動かす事も出来ずにいたのが、通用するようになってきた。
そして、この戦場に到着した時に感じた違和感も、強くなっていた。
「お前のせいで、どれだけの人達が死んだと思ってんだ!」
拳での連打に、ドレアムは、腕でガードをして耐える。
勢いを止めないまま、右で左で、殴って、殴って、殴り続ける。
ひたすら殴り続けることで、ドレアムが身に付けている甲冑が、段々とヘコんでいく。
さっきまでは、俺の攻撃を余裕で、その場から一歩も動かずにいなしてきたコイツが、大きく動き回り、ときには回避し、防御していた。
「貴様……感情の機敏で、戦闘力が上がるのか。単純だな」
「うるせぇ! コノヤロー! 人の命を何だと思ってんだ!」
感情の赴くままに、感覚を研ぎ澄まして、攻撃していく。
ドレアムの防御は、とんでもなく強固だったけど、そのガードの上から、左足でハイキックを叩き込み吹き飛ばした。
「……威力も、攻撃速度も、合格だ。
では、反応速度はどうだ?」
今まで、自分から仕掛けずに、俺の攻撃を防いでいたのが、初めて攻撃に転じてきた。
「ぐっ!」
抜き手が見えない速度で、拳が飛んでくる。
それを、感覚で気配を掴み、ガードする。
体を衝撃が突き抜ける一撃。
硬い拳に、膨大な魔力が込められていた。
「いつつっ! 一発でこれかよ」
通常の近接戦闘でも、魔法を放つ時もそうだが、常に魔力を纏って戦っている。
魔力を扱う、魔力操作が高いほどに、戦闘面では、有利になる。
例えば、殴るときには魔力をその箇所に集めれば威力と、速度が増し、防御するときにも、魔力を集めて防御力を高めて防いでいる。
ドレアムの打撃力は、その俺の魔力操作の上をいっていた。
たった一発、攻撃を受けただけで、ガードした腕が、赤く腫れていた。
コイツの相手をするには、俺はまだレベルアップしないといけないらしい。
魔力コントロールの質もこの戦闘中に上げていかないと、厳しい。
「反応速度も、なかなか。
次は、しっかり避けないと。貴様死ぬぞ?」
ドレアムの殺気と魔力量が跳ね上がり、攻撃してくる気配が、伝わる。
思わずその殺気に、背中に寒気が走る。
だけど、俺に感じられたのは、それだけだった。
「っ!」
攻撃の予備動作がなかった。
動いた瞬間が見えなかった。
瞬きした瞬間にはもう、ドレアムは俺の目の前に立ち、右拳を俺の顔面に、撃ち込もうしているのが、かろうじて見えた。
それを、咄嗟に両腕に不完全ながらも魔力を集め、ガードをするが。
「ぐぅあぁぁぁぁっ!!」
ガード等、お構いなしに吹き飛ばされた。
何度、地面に叩きつけられ、バウンドしただろう。
痛む体で起き上がり確認すると、ドレアムは、かなり遠くに立っていた。
「速すぎだろ……なんだその魔力操作は」
単純な、格闘の技術で云えば、決して負けていない。
実際に、この世界に来てからゲラルドにも勝ってたし、ドレアムにも、通用していた。
だけど、やっぱり魔力操作は、まだ俺の方が下だ。
その差が、こうして結果として現れていた。
「反応は、出来たか。反応速度もなかなか」
ドレアムは、戦いながら俺の評価をしている。
「戦いながら、俺の評価しやがって。なめてんな」
「次は……どう攻めてくるのだ? 魔法か?」
どこまでも、自分が有利だと思ってやがる。
とことん、俺を脅威に感じてねぇーな。
コノヤロー。
「いいさ。今のうちに、俺を見下しとけばいいさ。
絶対、その表情変えてやるからな。
ハァァァっ!!」
魔力を大量に練り直した。
そして、特級魔法を一気に、作っていく。
「ヘルエクスプロージョン!!」
「フン。ダークエクスプロージョン」
俺の特級魔法と、ドレアムの特級魔法が、ぶつかり合う。
共に、周囲を爆発させる事に特化した魔法は、衝突することで、突風へと変わり、俺達の周囲を吹き飛ばした。
魔法を放った俺にも、被害が出るので、結界を張る。
同じ特級魔法クラスを放ったのに、魔法が相殺された場所を見ると、地面に出来たクレーター部分は、ドレアムの方が大きかった。
「……やっぱり。魔法行使も俺より上か。戦闘経験の差からなのか、現段階でアイツは俺よりも全てが上……」
どうしようか……。
一つだけ、手はあるけど、それを使って通用しなかったら。
……いや。そんな事考えてる場合じゃない。
ドレアムに勝てないと、未来はないんだ。
「魔法力も、たいしたものだな。ジャギ以上だ。更にその上も、あるんだろう?」
そうか、ステータス見れるんだもんな。
ズルいな。
俺は細かくまでは見れないのに。
「……やるしかない」
集中力を高め、イメージを高める。
俺が使用できる全ての魔力を体に循環する。
そして、ドレアムに勝てる自分自身の姿を思い描きながら、力を解放した。
「限界突破!!」
体の中から、いままで扱った事がない程の、最大量の魔力を一気に解き放った。
その魔力は、波紋となって、この広い戦場に広がっていく。
「……これが貴様の、限界の力」
「ここからは、俺のターンだ。一気にいかせてもらう!」
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