72話 戦況の立て直し
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戦場の上空を、巨大な魔力圧力が戦っている場所に向けて移動していた。
やがて、そこにたどり着くと、ゲラルドと同じぐらい邪悪で強大な魔力を持つ奴等が、連合軍の戦士達に、とどめを刺そうとしている所だった。
それを止めるために、即座に特級魔法を放ち、奴等と魔物もまとめて吹き飛した。
結構ギリギリのタイミングだったみたいだけど、間に合った。
あと少し到着が遅れていれば、何かが決定的に決まっていた予感がする。
リューガに、残りの魔物達の駆除と、少し離れた所にいる隊長達の補佐を頼んだ後、俺達は戦場に降りたった。
飛翔魔法でゆっくりと地面に降り立つと。
そこには、戦場を支配するように、別格の魔力圧力を放つ男がいた。
こいつがドレアム……。
ユーリの時代から存在した四天王。
今まで散々、俺達の妨害をし、この世界にも不幸の因子を撒き散らしてきた元凶。
その事を思うと、今すぐにでもその面をぶん殴りたい程の怒りを覚える。
そして、ドレアムを見たときから、体に違和感を感じるようになった。
これの正体が気になるけど今は、この戦況を立て直さないといけない。
もし、アイツがやる気なら、直ぐにでも戦える様にと、咄嗟に交戦できるように目を逸らさずに見る。
けど、向こうはまだ動くつもりはないらしく、腕を組み、黙って俺を見つめていた。
それなら、こちらのやりたい事を先にやらせてもらう。
怪我人も、多数出ているからアルフィンに治癒をかけてもらって、それから。
「……魔王と言ったか……? それに、そこにいるのは……ラカンか?」
ドレアムを見ながら、次の行動を考えていると、後ろの戦士が息も絶え絶えで声をあげた。
「隊長! ご無事ですか? ……こんなに酷い怪我を……。ですが、間に合って良かったです」
「直ぐに、治癒を始めます。
精霊の喜び!!」
アルフィンが魔法を行使すると、魔力で出来た、ヴェールが連合軍の戦士達を包み込んだ。
アルフィンが、状況を判断して、この辺り一帯に広範囲治癒魔法をかけてくれた。
「タクトさん。まだまだ治癒魔法を必要とされる方が、いらっしゃると思いますので、わたくしはそちらに行きます」
「うん、分かった。気をつけてアルフィン」
「ありがとうございます。タクトさんも、ドレアムにお気をつけ下さい。どうか……御無事で」
アルフィンが、一回ドレアムを見たあと、俺の顔を見て「心配だと」訴えかけてくる。
「大丈夫。俺は、皆に約束したとおり死なないよ。
君達を残してね」
「はい! それでこそタクトさんです。それでは、行って参ります」
アルフィンが他の部隊の所へ駆けていった。
治癒魔法で、立ち上がる力が戻ったのか、クラウドさんが立ち上がり、ラカンさんに状況を聞いた。
「……ラカン。彼等は一体……それに、この状況は……」
「隊長もう、大丈夫です。彼は、魔王の称号を持つ者。名は、タクト殿といいます」
「……そうか……彼が……魔王か。戻ってくるのが予想よりも早くて、驚いたが……最高の援軍を呼んでくれたようだな」
クラウドさんが俺の姿を見て、納得してくれた。
それに、アルフィンの治癒魔法の効果で、体の疲労と、傷が治ったようで、顔に活力が戻っている。
「ここは、俺達に任せてください。ドレアムの相手は俺がします。クラウドさんは、あの大量の魔物の殲滅をお願いします」
「分かった。ここは頼む。それと、駆けつけてくれてありがとう」
クラウドさんは俺に礼を言うと、魔物の群れに飛び込んで行った。
「お前は!! 来やがったか! 待ってたぜ! てゆーか奇襲は酷ぇぞ!
結構痛かったしよぉ。来ないだの借も含めて返してやるぜー!!」
やかましい声で、騒いでるのがいると思ったら、アイツか。
ゲラルドが俺の顔を見ると、何でか嬉しそうに、こちらに向けて走り出した。
そこへ。
「あなたの相手は、私がします。タクトさんは、忙しいんです邪魔しないで下さい」
俺とゲラルドの間に、シズクが聖剣を構えて立ちはだかる。
「……なんだぁ? 女。俺様の邪魔してんじゃねぇよ。殺すぞ」
「やれるものならやってみてください。私は負けません」
そういうと、シズクから、破魔特有の桜色と金色が混ざったような魔力が溢れだし、聖剣は金色に染まる。
「……ほぅ。言うだけあって、お前、強ぇじゃねぇか。強ぇ奴は好きだぜ?」
「やめて下さい。あなたに好かれたと思うと、鳥肌がたちます。
それに、私にはタクトさんがいるので、お断りします」
シズクが、少しズレた反論してる……。
ゲラルドは違う意味で言ったと思うぞ。
「そっちの好きじゃねぇ!! 変な女だが、強ぇのには違ぇねぇから。いいか」
ゲラルドも、シズクの強さに気付いたみたいだな。
今日まで、お前を倒すために、シズクは血の滲む努力をしてきたんだ。
「ここでは、色々と邪魔になりますね。では――」
シズクは、鍛え上げた縮地で、ゲラルドに斬りかかり、俺達から距離を取ろうとした。
「っ! いいねぇ! やるじゃねぇか、相手になってやるよ!」
ゲラルドはそれを体をずらして避けると。
好敵手と認めた、シズクと戦うのが楽しみだとばかりに、俺達から離れていった。
そこに、ゲラルドと入れ替わるように、ナエぐらいの少年と、細身の男が寄ってきた。
「痛たいな~もう。あんな魔法、奇襲で使わないでよ。危うく死ぬ所だったんだからさ」
「あなたが、ジャギなの?」
ナエが少年に話しかける。
えっと、この少年がジャギかな。
ステータスオープン。
ジャギ
邪神軍四天王
レベル76
間違いないみたいだな。
「ん? なんだよ。僕はジャギだけどさ、チビは誰なんだよ」
「あたしは、チビって名前じゃないよ。ナエっていうんだよ。
それに、あなたもチビなの」
ナエが、自分とあまり変わらない身長の、ジャギを指差して名乗った。
「あ~あ。ジャギにそんな事言ってはいけませんよ。ジャギは子供扱いされるのと、身長の事を言われるのが、嫌いですからね」
この細身の長身は、デスタだったかな。
ステータスオープン。
デスタ
邪神軍四天王
レベル77
「……僕に言ったの? チビって……」
「そうなの。あたしと大して変わらないの身長。あたしはまだ、10歳だから、伸び代あるの」
ナエが、ジャギを軽くディスってる。
「……ふぅ~ん。僕はまだこれから大きくなるんだけどね。
それなのに、そんなこと言うんだ。せっかく僕の新しい実験台にしてあげようと思ったけど……いいよ殺してあげるよ!」
急に、ジャギが怒りだし、殺気を放った。
「あたしも、悪い人はゆるさないの。おしおきなの」
ナエも、魔力を高めていく。
ジャギと、ナエは睨み合いになった。
「ここで、やりあうのは良くない。少し離れないか? ジャギもどうだ?」
そこへラカンさんが、二人の言い合いに介入した。
「……僕はそのチビが殺せるなら、どうだっていいよ」
「そういう訳で、タクト殿。俺はナエ殿と、ジャギと戦う」
クラウドさんに、説明が終わったのか、ラカンさんが前に出てきた。ジャギのステータスを見たところ、まだナエ一人では、四天王はキツいか。
でもラカンさんと、共闘できれば大丈夫だろう。
「ラカンさんすいませんが、頼みます。ナエ気を付けるんだぞ?」
「うん。お兄ちゃんに教えてもらったことを、あの子にお見舞いしてくるの!」
ナエはラカンさんと、ジャギの後を追いかけていった。
ナエも、気合い充分だな。
「ワタシは、どうしますかね。二人とも行っちゃっし、かといって、サボるとドレアムに殺されますしね」
「そなたとは、またワレと戦ってもらうぞ」
大きな翼を広げた、バハムートが空から降りてきた。
竜王国の戦士、バハムートか。
ボロボロだったみたいだけど、アルフィンの治癒魔法で、傷が治ったんだな。
「またですか。もうワタシの相手にならないんじゃないですか?」
「傷は治してもらった。それに、あの王女は、凄い魔法を使うものだな。
体力や、疲労までも回復した。お陰で、もう遅れは取らない」
アルフィンの治癒魔法も、レベルアップしている。
サポート魔法も、治癒魔法も、完璧な領域まできている。
「そうですか、そうですか。仕方ありませんね~。またお相手してあげますよ」
バハムートと、デスタは離れていった。
残りの四天王を相手してくれるのは、助かる。
怪我人はアルフィンがいれば大丈夫だし、魔物は、リューガがいるし、他の精鋭達もいるから大丈夫だろう。
とりあえず、これで戦況の立て直しは出来たかな。
あとは。
俺はドレアムの相手をしないといけない。
「……やるべき事は、済んだか?」
「ああ。待っていてくれたお陰でな。でも良かったのか? その余裕なのか、自信なのか知らないけど」
「フン。貴様の努力も、望みも、全て打ち砕いた方が絶望するだろう。だから、待ってやったのだ。貴様らがどれだけ足掻こうが、俺の筋書きに狂いはおきない」
「そうですか。それは、凄い自信で。それなら、やりますかね」
「貴様の存在意義を見極めてやる」
これから戦うのは、今までで、最強の相手。
俺の全てをぶつけても、勝てるか分からない。
だけど、勝てないと、皆を護れない
やることは一つだけ。
こいつから、皆を守ることだ。
お読み頂き、ありがとうございました!




