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71話 隊長VS四天王③

いつも応援してくださる方、本当にありがとうございます!

新たに読んでくださる方、よろしくお願いします!

 



 連合軍side




「……なんだ? その魔力色は? それに……傷が治ってやがる」



 ゲラルドは、今まで見たことがない敵の変化を、訝しげな表情で見つめた。

 つい数十秒前までは、確かに自身の渾身の攻撃で、深く傷付き倒れていた相手が、今では戦い始めた時の万全な状態の様に見える。

 いや、それどころか、今まで幾度となく殺しあってきた相手のはずが、初めて戦う相手の様にも感じていた。


 それだけ、クラウドの纏う魔力の質、圧力、雰囲気が大きく変わっていたのだ。

 そして、ゲラルドが言うように深い傷も完全に治っている。



「おい。どういう事か教えろよ。さっきまで苦しんでたろうが」



「敵に情報をやる程、俺はお人好しじゃない。

 本当は、ドレアム戦に取っておきたかった力だが……仕方ない。

 ここでやられれば、先はないのだから」



 クラウドが、気合いの雄叫びをあげた後に、金色に魔力が光輝いたのは、クラウドの専用スキルで『生命解放』という。

 限界突破とはまた違う力で、自身の、身体能力を最大限にまで高め、使用者のポテンシャルを全て100%まで引き出し、傷を自動で治していく。

 それが作用することで、クラウドの傷を治す事ができていた。



「何だか、よく分からねぇが……まだ遊べるならいいか。

 歯ごたえが上がったみてぇだしよ。

 今度はちゃんとした殺し合いに、なるんだろうな?」



「今度は遅れは取らない。俺の全てで相手をさせてもらう」



 そこから二人の戦いは、一進一退の攻防が続いた。

 互角の、いや、互角だったのは最初だけで、途中からはクラウドが圧倒的に押していた。

 ゲラルドは段々と、クラウドの動きに着いていけなくなっていった。



「グハァッ! ……ゴァッ!……ウゴァッ!……クソッ! ……クソッ! 強ぇ!」



 今では、クラウドの動きすら見えなくなり、防御も何もする暇もなく、魔法剣を受ける。

 そしてその攻撃は、止むことがない。

 ゲラルドが、辛うじて見ることができるのは、金色の光が自由自在に動き回ることだけ。


 防御も、回避も、何も出来ない。

 当然、反撃なんて出来るはずもなく、ひたすら一方的になぶられ続けた。

 クラウドの隙のない連撃に、ボロボロになっていく。

 このまま、ゲラルドに何もさせずに、クラウドの勝利で終わるかと思われたその時。



「……があぁぁっ! ……体が……こんなに早くに……ゴフゥッ」



 口からは大量の吐血をし、ガソリンが切れた自動車の様に、クラウドの動きが止まり、その場から一歩も動かなくなった。



「……グゥッ……ハァ……なんだ? ハァ……動きがとまったぞ……」



「……ゴフゥッ……俺の命を使っても、仕留められなかった……万全な状態だったなら……」



 クラウドは、悔しそうに血がたれる唇を噛み締めた。

 あと、一歩で人類の脅威を一人、倒せたのにと。


 クラウドの、専用スキル『生命解放』は、ドーピングの様に、一時的に全ての身体の機能を高次元に高めるが、反動も凄まじく大きい。

 使用者の寿命を使い、このスキルは発動している為に、使用時間が、長ければ長い程に寿命を短くしていく。

 そして、時間が長くなる程に、体は激しい痛みを催し、脳と体は、ストッパーの様に、強制的に解除させようとする。



 だが、クラウドは、その強靭な精神でそれを無理矢理に抑えて、使用していた。

 必ず、目の前の男を倒すために、この大戦を勝利させる為に。


 実際に、あと一歩で、ゲラルドに勝てる所までいっていた。

 だが、この無理な力の解放と、やはり、この一年間の疲労の蓄積で、遂に、クラウドの体は限界を向かえ悲鳴をあげてしまった。




「……惜しかったな……あとほんの少しで、俺様を殺せたのにな。

 これで、お前とも本当におさらばか。いや、()()()()()()()()()()()()()()



 そして、最悪な事に。

 限界を向かえたのは、クラウドだけではなかった。



「グウァァッーー!!」



 バハムートが、空から叩きつけられる様に、地面に落ちてきた。

 身体中、傷だらけで、背中の羽は千切れかけている。

 相当な攻撃を受けたのだろう、体は、穴が開き、裂傷と傷だらけで、絶対的な防御力を持っていた鱗も、剥がれ落ちている。




 そして。



 ドオォォォォン! と爆発音が鳴ったかと思うと。

 ここから少し離れた所で戦っていた、アーロンが膝をついているのが見えた。



「はぁ! はぁ! ……これは年寄りには、きつい。体の限界だ……」



 アーロンもまた、身体中に火傷のあと、切り傷と、満身創痍になっている。



「クラウド! バハムート! アーロン! やべぇ!

 アイツら……もう限界なんだ……。アイツらを助けに行かねぇと――」



 ジェクトは、部下達に、結界を任せてクラウド達を助けに行こうとした。



 その時。



「貴様ら、こんな雑魚どもを始末するのに、どれだけ時間をかけるつもりだ?」



 このタイミングで、連合軍に於いて、もっとも聞きたくない声の持ち主が現れた。

 この男が現れると、この広い戦場の全てを、圧倒的な魔力圧力と、殺気が満たし、その姿を見た者全員に、絶望の二文字が刻まれた。


 連合軍の全員は、もうこのどうしようもない状況を、しっかりと把握していた。

 頼みの綱である隊長達ですら、四天王を倒せず、今まさにその命が散らされ様としていることを。

 それだけではなく、その四天王で最強の男が、現れてしまった意味を。


 そして、彼等に更に絶望を与えるように。

 突然空間が大きく割れると、中から大量の魔物が次々と現れる。

 せっかく五万もの魔物の数を倒すことに成功した矢先に、その数よりも大量の魔物が現れたのだ。



「……召還魔法で……また……喚びやがった」



 ジェクトがクラウド達の元へと走りながら、魔物の出現を見て、焦りの声を漏らした。



「貴様ら、とどめを刺せ。もう充分に絶望を与えた。神も慈悲を下さるだろう」



 四天王達は、ドレアムの命令を聞くと、それぞれがさっきまで戦っていた相手に、とどめを刺そうと動き出した。



「駄目だ! この距離じゃ間に合わねぇ!」



 ジェクトは、後方から必死に足を動かし、クラウド達の元へと向かっている。

 が、距離が離れている為に、とても間にあいそうにはない。

 それに、もし万が一ジェクトが間に合い、得意の結界で、皆を助けられたとしても、それは、ほんの数分の時間を稼ぐだけ。

 隊長達が、四天王に敗北し、ドレアムが現れてしまった時点で、連合軍の敗北が、人類の敗北が決まってしまった様なもの。


 でも、それでも、今まで共に、死線を乗り越えて来た、親友達(ともたち)の元へと、その足を止めることは出来なかった。




「誉れ高き竜王国の戦士として、最期の瞬間まで、ワレは戦おう」



 バハムートは自身が殺される寸前まで、敵の喉元を噛みきってやろうと構える。



「わたしには、最期までこの世界を護る義務があるのだ。一国の皇帝としてな」



 アーロンは、自身が死ぬ最期まで、皇帝として生きようと構える。



「すまないカレン。お前の元には帰れそうにないみたいだ」



 クラウドは、バラガン公国に避難させている恋人の顔を思い浮かべた。

 必ずこの大戦を勝利して、生き残り、帰った暁には結婚の約束をしている相手の顔を。



「それに。例え帰れなくとも、お前に誇れる俺になるために、最期まで足掻いてやる! カレンが生きていく未来を護る為に!」



 クラウドも、例え殺される事になろうとも、自分の恋人の為に死ぬ瞬間まで戦う決意をして、構えた。



「まぁ。今まで、楽しかったぜ。あばよ」



「あ~あ。これで、僕の実験台も無くなっちゃうのか」



「ここまで何度も殺し合ってきた仲ですからね。

 せめて、楽に殺してあげますよ。ドレアムに後で怒られるかもですが」



 四天王達は、自身がとどめを刺す相手の前に立った。



「クソーーッ! やめろー! やるなら俺をやれーー!!」



 遠くで、ジェクトが叫び声をあげる。

 四天王達は相手に敬意を示して、最大限の技で殺そうと魔力を溜めた。


 そして、それを振るわんとした瞬間。




「ジェネレイト・デインオーバー!!」



 誰も聞いたことがない声が戦場の隅々にまで響き渡り、魔法が放たれた。


 ――――――ガカァァァァァァァン!!


 轟音が戦場に響き渡たる。


 そして、その魔法は極太の黒い雷となって、大量の魔物の群れと、隊長達に、とどめを刺そうしていたゲラルド、ジャギ、デスタ、ドレアムの頭上に落とされた。

 咄嗟に凄まじい魔法をくらい、ゲラルド、ジャギ、デスタは吹き飛ばされる。

 ドレアムは、それでも恐ろしい程に冷静に魔法を弾いた。



「「「…………」」」



 戦場を一瞬の静寂が満たした後。


 空から、ゆっくりとこの魔法を放った本人が、数人と一緒に飛翔魔法で降りてきた。

 その集団のリーダーだろうか、黒色に青いラインが入ったローブを着込み、銀色の紋章が刻まれている腕輪と、両腕、両足に、黒色の手甲と足甲を装着した、若い青年がいる。

 その青年からは、この戦場で最強の存在である、ドレアムに負けず劣らずの魔力圧力を感じられた。


 この突然の事態に、戦場にいる連合軍の全員は、理解が追い付かないでいた。


 その中で、ただ一人、真っ先に理解に至った者がいる。



「……魔王か」



 黒と金色の甲冑を着た、人類にとって絶望の対象が、青年を見た。



「……お前が、ドレアムか」



 青年もまた、自身にとって避けられない存在の甲冑を着た男を見た。



 ここに、人類の最強と邪神軍の最強が、初めての邂逅を果たした。



 連合軍side

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