70話 隊長VS四天王②
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連合軍side
「オラッオラッオラーー!!」
「ハアーッ!!」
戦っているのは、両軍において、近接戦闘最強の二人。
交差するように、ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れを繰り返している。
クラウドは、その長い魔法剣で。
ゲラルドは、その己の肉体で。
それぞれの、一番得意とする戦い方で、相手を仕留めんとぶつかり合っていた。
力と力の戦い、技術と技術のぶつけ合い、今日この日まで、磨いて来た我が力を、目の前の敵を、葬り去らんとその力を振るっていた。
「こちらからいくぞ! ハアッ!!」
クラウドは、その魔法剣を、目にも見えぬ速さで、連続して斬りつけた。
そこから放たれる、飛ぶ斬撃と、魔法剣の効果による付与斬撃を、腕をクロスして弾き、歩いて接近してくるのはゲラルド。
「むんっ! こんな軽い斬撃じゃあ、俺様の肉体にダメージは入らねぇぞ。俺様は硬ぇからな!」
ゲラルドの言うとおり、絶え間なく斬りつけるクラウドの斬撃は、ダメージとなることなく、全て弾かれていく。
「……相変わらずの、バカげた体だな。特級魔物すら、細切れに出来る斬撃なんだが」
「おいおいおいおい。俺様を雑魚と一緒にするんじゃねぇよ。
俺様の方が強ぇのは、分かりきってることだろうがっ!」
そう言ってゲラルドは、限界までに高めた、身体能力強化で、クラウドの近くまで一足で、接近をする。
「っ!」
避けられないと、咄嗟に判断したクラウドは、魔法剣の魔力を増量して、刀身を拡大することで、ゲラルドの右ストレートを受ける事にした。
「しっかり魔力、纏わねぇと駄目だぜ。そんな剣じゃポッキリだぜ?」
クラウドは、魔法剣で受け止め、下半身に力をいれ、踏ん張りを効かせて耐えようとするが。
「グウウッ! 重い! 何て力だ!」
耐えることは叶わず、その場から、大きく吹き飛ばされた。
空中で、グルンッと姿勢を制御し、何とか地面に衝突することは避けられた。
体に、ダメージこそ入らなかったが、ゲラルドの忠告通りに、魔法剣にヒビが入る。
「まだ、数発しか、叩き込まれていないんだが。……ばか力め」
「だからよぉ、言ったじゃねぇか。
そんな剣じゃ駄目だってよ。
次は耐えられねぇぞ? いつもみたく、かかってこいよ」
「ドレアムが出てこない内に、疲弊したくはなかったが。
……出し惜しみして、勝てる相手ではなかったな」
クラウドは、魔法剣を一度解除して、魔素に戻した。
「ここからは、悪いが俺も本気だ。今日こそ決着を着けさせてもらうぞ」
「ドレアムとの戦いを心配しているみたいだが、なに、俺様に勝てる気になってんだ? そんなのは、俺様にまともにダメージをいれてから言えよ」
「いや。俺の勝ちで終わるさ。……コウッ!」
クラウドは、呼吸法で、体内の魔力を変異させた。
両手に超高密度の魔力を溜めると、先程の魔法剣とはまた違う形状の物を造る。
さっきまで使用していた、長剣とは違い、長さは短くなり、一般的な騎士剣と同じサイズになった。
ただ、刀身は重量感を感じさせる、太さとなり、破壊力重視の魔法剣を造り上げた。
そして、魔力圧力も爆発的に上昇していた。
「そうだ、これだこれ。この圧倒的なプレッシャーを与えてくるその変な魔力だ。それと殺り合いたかったんだ」
「そのご期待に、応えさせてもらう!」
やられた仕返しとばかりに、クラウドは一足で、ゲラルドに接近して、上段から魔法剣を振り下ろした。
「っ! 速ぇ!」
ゲラルドは反応して、回避を選択しようとした。
だが、予想よりも速いその斬撃は、それを許さない。
ゲラルドは回避することを諦め、腰を深く落として、両腕で魔法剣を受け止めると。
「ドオォォォォッン!」と、まるでこの辺り一帯を、爆発させた様な、爆音が、ビリビリと周囲の大気を振動させる。
その魔法剣の威力は凄まじく、ゲラルドの巨体を、地面にめり込ませる事になった。
「ぐうぅぁぁーーっ!!
……やるじゃねぇかっ……。
この重てぇ一撃効いたぜ……ここまでくると、特級魔法と変わらねぇなこれじゃあ……」
ゲラルドの両腕は、今の一撃で、骨を砕かれていた。
それでも、まだまだ自分は、余裕だと言いたいのか、表情は明るい。
「お褒めに預りだが、まだまだいかせてもらうぞ」
下半身が地面に、埋まっている為、動けないゲラルドを、サンドバッグのように、魔法剣を叩き付ける。
一撃振るう毎に、特級魔法と遜色がない、ダメージを受け続けるゲラルド。
その巨体と圧倒的な、肉体による防御力でも、このもはや、爆発と言っても良いほどの、斬撃は確実にゲラルドを仕留めんと追い詰めていく。
だが。
それで終わらないのが四天王たる由縁。
「…………クックッ……ハッーハッーハッー!!」
突然狂ったように、高笑いすると、ゲラルドの姿が光だした。
「これは、進化の光。……これだけ、切りつけても殺せなかったか……」
クラウドも、相手が光る意味は重々承知している。
そして、この後の事態も。
「……アイツを、倒すには……あれしか」
クラウドがこの後の事を考えている間に、ゲラルドは傷が全快し、更に禍々しい魔力圧力を高めた姿となる。
「待たせたな。俺様も、体が暖まってきたぜ。お返しだ」
フッとゲラルドの姿が、ぶれた。
「――――クゥッ!」
先程迄の動きとは、一段も、二段も違う速さに、クラウドは必死に、ゲラルドの魔力を感知して何とかしゃがみこんで攻撃を避けた。
「今のに反応するとは、中々やるじゃねぇか。
流石は隊長ってか。だけどよ、次はどうだろうな!」
ゲラルドは変身後の自身の体の感覚を確かめながら、段々と動きを速めていく。
クラウドは、それを何とか、必死で避けていたが。
「――――クッ! 速い!」
遂には、動きを感知出来なくなった。
ゲラルドの動きを目で追うが、途中で見失う。
背後から気配を感じ、振り返った時には、ゲラルドは両手を組み、ハンマーの様に自身を叩きつけようとしているのが、見えた。
まずい、とその場から離れようとするが、叶わず。
「くらえや! オラぁ!」
クラウドは思い切り、殴られ、ふっ飛ばされた。
地面を、五回、六回とバウンドした後、ようやくクラウドは止まった。
「……ぐぅあああああっ!……」
あまりの痛みに、苦悶の表情で身悶える。
「俺様の本気のハンマーは痛ぇだろう?」
その姿を見て嬉しそうに、ゲラルドは、ザッザッザッと土煙をあげながら、クラウドの元へと歩いていく。
「……ぐぁっ……はぁ……はぁ」
あまりの衝撃と、背中の痛みに中々起き上がれないクラウド。
「起き上がれないのか? なら、これで終わりだな。あばよクラウド!!」
ゲラルドは、未だ立ち上がれないクラウドに向けて、とどめを刺そうと左拳を振り下ろした。
その拳をくらう訳にはいかないクラウドは、気合いをいれて力を解放する。
「うおぉぉぉーー!! 解放ーーーー!!」
クラウドが叫んだ瞬間、魔力色が金色に変色し、飛んで来る拳を寸前でかわして、ゲラルドから距離を取った。
殴る対象が消えたことで、ゲラルドの拳は地面を激しく叩き付ける。
さっきまでクラウドが倒れていた場所には、大きな穴が出来、もうもうと、土煙が上がった。
「なんだぁ? 急に動きが良くなったな……」
とどめを刺すつもりで、振り抜いた拳が空を切った事に、ゲラルドは、訝しげな顔をする。
その突然の行動をした、クラウドを見ると、何かを決意した顔つきになっていた。
「俺は覚悟を決めた。今この一戦に俺の命をかける!!」
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