68話 防衛戦②
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連合軍side
魔法隊の矢の様な魔法を潜り抜けてきた、魔物を迎え撃つのは、クラウドとジェクト。
この二人は、遠距離魔法はあまり得意とはしていない。
だが、その代わりに近距離戦、中距離戦に関しては連合軍最強の戦力として、この一年間最前線を戦ってきた。
二人は本部へと近付きつつある、たくさんの魔物の元へ駆け出す。
先に、スピードが優れたクラウドが魔物の元へと辿り着いた。
クラウドは、自身の身の丈よりも長い、鋭利な騎士剣に似た形の魔法剣を扱う。
その超高密度の魔力で精製された魔法剣を、魔物の群れに振り下ろした。
その一振りは、直接切りつけた魔物を空気を切るが如く両断する。
それだけにとどまらずに、魔法剣の魔力はその直線上、周辺にいた魔物すらも、切り捨てた。
通常の場合、剣、刀の部類は切りつけた対象に対して殺傷するものだが、このクラウドが扱う近接魔法剣術は、それだけでは済まない。
クラウドの魔力をたっぷりと纏った魔法剣は、対象範囲が広すぎるために、一対多を有利にしていた。
「いいねぇ~魔物はまとめて倒すに限るってな! おらぁ!」
クラウドよりもスピードが劣るジェクトは、建物の解体に使用する際の鉄球に、殺傷能力を高める刃が付いている物を武器としている。
それを「ブオン」、「ブオン」と振り回し、大きく円を描いた後、まとめてなぎはらった。
この鉄球は、ジェクトと魔力で造り出した鎖で繋がれている為、思いのままに振り回すことが出来る。
ジェクトは上段に振り上げたそれを、力一杯に地面に叩きつけた。
「ドオオオオン!」と爆音を出し、地割れを起こして魔物の足場を崩した。
その地割れに魔物が落ちていく。
「ジェクト、やりすぎるなよ。地形が変わってしまう」
「がはは! いいじゃねぇかちょっとぐらい。
後でゆっくりと直せばいいのさ。クラウドお前も、もっと派手にいこうぜ! いつものお前の戦い方は、派手じゃねぇか」
「必要になれば使うさ。今は使う意味がない」
端から見ると、呑気に話している様だが、その間も魔物を恐ろしいスピードで光の粒子に変えていく。
その二人の隊長に負けてられないと、二人の部下達も着々と魔物を消していった。
本部の近くへと抜け出した魔物は全て消し去った。
その間も、バハムートが率いる竜王国の戦士隊は、上空から地上の魔物に向けて、ブレスを放ち魔物を消滅させていく。
アーロン隊も強力な魔法を連射し、あれだけ膨大にいた魔物が、気付けば数千にまで減らされていた。
遠距離魔法とブレスで魔物の数を減らし、運悪くその魔法の雨から逃れ、連合軍本部へと近づけば、これまた強力なクラウド、ジェクトの餌になる。
一年間共に、数多もの死線を乗りこえ、構築してきたこの完璧な連携の前には、ただ数だけが多い魔物では、驚異にはならなかった。
魔物も、ここまで簡単に同胞達を葬っていく、自分達よりも圧倒的な格上の人間達に恐れ、足が止まるのが増えてきた。
これ以上近づくと、やられるとのデッドラインの外から様子を伺っている。
「なんだぁ? お前ら来ないのか? こっちからいくぞ」
ジェクトの声に反応して、魔物が後退りすると。
「おいおい。何、逃げ出そうとしてんだ?」
魔物達にとっては、何よりも恐ろしい声の主に魔物は身を縮めた。
「……出てきたか」
「……本番は、ここからってか」
その気配を察知した、クラウドとジェクトは、先程までの浮かれた雰囲気を引き締める。
「だけどよデスタ。あんな魔法を連発されたら、まずいんじゃねぇーのか? ジャギお前よりも、あのオッサンの方が有能だな?」
「うるさいなゲラルドは。僕が本気を出したらあんな魔法なんか、目じゃないさ」
「そうですね。ジャギの魔法は凄いですから。
まあ、あの魔法は、魔力も膨大に使うはずです。
何発も撃てば、魔力切れをおこすはずですし、そうそうに使えないでしょう
まあ、厄介ですけどね」
「僕達で、アイツらを抑えればいいだけじゃん」
「だな。俺様は、クラウドでいいや。やっぱり肉弾戦がおもしれぇ」
「僕は、あのじいさんかな? 僕の方が格上だって思い知らせてやらないとね」
「では、ワタシはあの少々うるさい竜の相手でもしますか」
誰が誰を殺るとか、そんな話しをしながら四天王達が現れた。
「アイツらの相手をしながら、魔物の相手までは出来ない。後はお前達に魔物は任せたぞ」
クラウドは自分の隊の戦士達に、この後の作戦を伝えた。
「隊長。どうかお気をつけてください」
「ああ、ありがとう。ジェクト、お前は結界に戻れ。四天王が前に出てきた以上、万全の態勢にする」
「……チッ。分かったよ、頼むぜ」
ジェクトは後ろに下がり、結界を三重に張って、本部の護りに集中することにした。
クラウドはゆっくりと、アーロンとバハムートの所まで歩いて移動する。
「クラウド。本当の戦いはこれからだ。奴等が来た以上、何か狙ってくるかもしれん」
「うむ。ドレアムの姿が見えぬからな。いつ仕掛けてくるか分からない。警戒を怠るな」
「ドレアムが前線に出てこない内に、奴等を何とかしたいな」
隊長達もまた、それぞれに相手をするべく者を見据える。
この一年間幾度となく、戦ってきた相手に今日こそ引導を渡すために。
防衛戦第二ラウンドの幕が開けた。
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