64話 救えない命、救えた命
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北大陸に到着した後、大陸中央へと移動していた。
大戦の影響から至るところの地面が抉られ、陥没している。
草木は吹き飛び、建物が倒壊し崩れ落ちていた。
そして。
目の前には思わず目を逸らしたくなる光景が広がっていた。
「これは……あまりに酷いですわね……」
「これだけの人達が……」
「可哀想なの……」
移動する先々には至るところに死体が転がっており、中には日にちが経ち、白骨化したものもある。
この一人一人に人生があり、家族や大切な人が居て、その大切な人達が、この人達の無事を祈り帰りを待っていると思うと、やるせない気持ちになる。
長引けば長引く程に、犠牲者が増えていく。
こんな戦争は早く終わらせないといけない。
「……この様な光景は、この大陸では当たり前に転がっている。
弔ってやりたいが、この大戦が終わるまでは無理だろう」
「亡くなられた人達が安らかに眠りについてもらえるように、一日でも早くこの戦いを終わらせよう。今はこの程度しか出来ないけど……」
せめてもの手向けとして、土魔法で簡易的な墓標を作製し、そこに遺体を納めた。
そのままにしておくのはあまりに可哀想だったから。
死者を弔わせてもらった後、その場を離れた。
船の中でラカンさんから聞いた話によると。
北大陸には、二つの国があった。
一つは大陸西側にあり、元々の戦いの主戦場があったエデン王国。
もう一つは大陸東側にあり、エデン王国が壊滅した為、最前線が移ったルーデウス帝国がある。
先に主戦場があるルーデウスへと行こうと思い進んでいると、エデン王国の方から、魔力反応を感知した。
反応があるということは、生存者がいるということ。
急いで主戦場へ向かわないといけないのは、分かっているけど、放っておけない。
助けられる命があるのならと、先にエデン王国へと向かうことにした。
この大陸には、数えきれない程の、魔物が解き放たれている。
向かう道中にも、幾度なく魔物が現れ襲われたけど退治しながら進む。
「エデン王国があった所はこの先だ。
燃やされてもうほとんど残されていないかもしれないが、寄ってみよう」
煙が立ち上るのが見えたその場所へと向かう。
城跡には、広大な土地にあった街の外壁が粉々に粉砕され、城門や見張り台、側塔が微かに原型が残されている。
「あれは連合軍の本部として使用していた場所だ」
ラカンさんが指で、指し示した場所は連合軍の紋章だろうか、見たことない形の物が刻まれた旗や、建物の壁、無数の魔法兵器が破壊され散乱している。
建物には、血がベッタリとつけられ、その元だった人達の死体が山のようになっていた。
何人の人がこの場で殺されたのだろう。
五百いや、千人以上か……もっと多くの人が。
「…………」
この惨劇に言葉が出ない。
「何故……この様な事が出来るのでしょうか?
……この方達は大切な人達を護りたかっただけだというのに」
「……こう言うことを平気でする存在が、私達の戦う相手なのですね」
「ガルカリ村でも、それは認識させられたけど……人が死んでいるのを見るのは、何度見ても辛い」
「……もう好きにやらせないの。その為にあたしは、旅に出たの」
やりきれない気持ちを抱えながら、まだ生き残りがいないか、気配を探り街を探す。
病院や、街の重要施設と、それに関係する建物は全て破壊しつくされていた。
ここにも、大量の死体が転がり魔物が貪っている。
その魔物を蹴散らしながら、ラカンさんが口を開いた。
「エデンが壊滅した時、戦線を整えるのに手一杯で負傷者を連れていく事は出来なかった。
魔物と四天王の追撃を何とか、防ぎながら後退することしか出来なかった。まだ生きている者もいたのに、見捨てることしか出来なかったのだ」
ラカンさんはその時の事を思い出しているのか、その時に助けられなかった自分を責めているのか、強く唇を噛んでいた。
あまりに数が多過ぎて、全員を弔うことは出来なかったけど、それでもできる限りさせてもらった。
城跡からルーデウスへの方向へ少し離れた所に、数十人の人の気配と、魔物の魔力反応を感知した。
急ぎでその反応元へと向かう。
そこには、傷付き倒れた人々を庇う様に、竜王国の戦士が魔物の群れから攻撃を受けていた。
大きな翼を拡げ、その下に戦えない連合軍の戦士達を入れて、体を張って守っていた。
「フッ!」
一足で魔物の群れへと、突進し蹴散らす。
シズクとナエも追従し、魔物の群れを片付けていく。
アルフィンは、竜王族と倒れている人達の側に寄り治癒魔法をかける。
「酷い怪我ですが……良かった助けられますわ」
アルフィンも命を救える事にホッとしている。
ここまで来る道中で、手遅れだった人達をたくさん見てきた。
アルフィンの規格外の治癒魔法でも、死んだ人を生き返らせることは出来ない。
助けたくても、助けられなかった命にアルフィンも辛かったんだろう。
ステータスオープン
リューガ
竜王国戦士隊
レベル72
スキル ドラゴンブレス、防御力アップ、高速飛行、自然治癒能力
竜王族は、体に頑丈な鱗がありその硬さからくる防御力は、対魔物では、有利なはずだけど。
それでもこれだけ傷ついたということは、それだけの攻撃を受けたということ。
HPも残り少なく、あと少し助けるのが遅れていたら死んでいた。
良かった。救えた命もあった。
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