62話 暗躍する者達
四章最前線編スタートです!
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ここは、辺り一面が真っ暗闇で、月の光だけが降り注ぐ部屋。
ここに三人の、人間達と敵対している者達がいた。
「あ~あ。案外呆気なかったなぁ。もう少し遊べると思ったのに、死ぬの早すぎだよ」
自分の思う通りにいかない事に対して、文句を言うのは見た目はまだ幼い少年。
いつも使用している、装飾が施された豪華な椅子にドカッと座り、いかにも不機嫌そうだ。
「まぁな。気持ちは俺様も分かるぜ。こうなっちまったら、人間共は弱ぇからな。
今までは、殺って、殺り返されてが良かったのによぉ、これじゃあ歯応えが無さすぎてつまらねぇ。
まだアイツらがいるが、ボロボロになってきたし、このままじゃあ強ぇのが居なくなるな。……いや、一人いたな」
そう少年に対し、自分もつまらなくなると言うのは、三メートル以上は余裕で越える巨大な体躯と、黒色の肌に、額に鬼のような角を生やした筋肉隆々の大男だった。
「それは、この前にゲラルドをボコボコにした、人間でしたっけ? その人はそんなに強いんですか?」
軽い口調で敬語を使うのは、体つきは長身で細身だが、しっかりと鍛え上げられている肉体から、相当な強さを持つ者だと伺う事が出来る。
「俺様は、ボコボコにされてねぇ! 手加減してやっただけだ! 新しいオモチャを直ぐ壊したくなかったからな! まぁ……俺様が本気を出す程ではあったけどよ」
「本当にぃ~? ドレアムが助けてくれなかったら、殺されてたんじゃないの? ボロボロだったじゃん?」
「そうですね。あれは酷い怪我でした。
まさか人間にあの様な、我々を追い詰める事が出来るほどの、戦闘力を持つ者がいるとは。驚きましたよ」
「俺様が殺される訳がねぇだろうが! あの時ドレアムが邪魔しなかったら、今頃はミンチにして魔物に喰わしていた。村の連中も皆殺しにしてな」
「そういえば、あの村にドレアムの毒を弾いたチビがいたんだっけ? 僕はその魔法耐性に興味があるんだよね。
人間達も今頃慌ててるだろうし、ちょっと抜け出して遊んでくるかな~」
「でも、もうあそこにはいないかもしれませんよ。
そのゲラルドをボコボコにした人が連れていったかもしれませんし。自分ならそうしますしね」
「だからよ! 俺様はボコボコになんてされてねぇつってんだろうが!!」
大男は右腕を振り下ろし、地面を殴り付ける。
その衝撃で、大きな穴ができ、地面が抉れた。
「こんな所で、暴れないでよ。迷惑だからさ」
「そうですよ。図星を言ったからと、当たらないでください」
「……お前等!! 俺様をバカにすると殺すぞ!!」
大男が自分を嘲笑う二人に対し、濃密な殺気を放つ。
「誰が……誰を殺すって? ふざけたこと言わないでよ……殺すよ?」
これまた殺気を向けられた少年も大男に対し、殺気を返す。
「ほらほら。二人とも、もうやめないと、あの人が来ま――」
細身で長身な男が、二人の殺し合いを止めようとすると、凍りつかす程の殺気が、場を支配した。
「……間に合いませんでしたか……」
細身で長身の男が、額に手を当て、やってしまったとばかりに、天を仰いだ。
「貴様等。いつまで浮かれているつもりだ?」
ブウウンッと音が鳴った後、突然空間が割れ、そこから男が現れる。
その男は、黒色と金色の甲冑を着て、体の大きさは成人男性とほぼ同じ身長で、至って普通の体格だが。
「ど、ドレアム。申し訳ありません。
少々浮かれ過ぎていたかもしれませんね。
謝りますから。その魔力圧力を抑えてください。
……息が出来ないです」
「そ、そうだよ。それに僕と、デスタは別に浮かれてないよ。
ゲラルドが一人で暴れていたんだ。だからそう怒らないでよ」
「て、テメェら! 俺様はこれからの戦いに向けて殺る気をだしていただけだぜ」
そう。
体格、背格好は普通で、見た目は人間と変わらないが、その纏う邪な魔力圧力と、雰囲気はとても普通ではない。
この空間から現れた、男一人に、この場にいる三人は間違いなく怯え震えていた。
この男が力を行使すれば、自分達など、簡単に殺されてしまうことが分かっているかの様に。
「……フン……まぁよかろう。これから先も貴様等には役に立ってもらわねばならぬからな。今回は生かしといてやる」
男はそう言って殺気と魔力圧力を抑えた。
自分達よりも別次元の殺気を向けられた三人は、この場で殺されずにすんだと安堵の息をこぼした。
甲冑の男は三人の態度を見た後、続きを話し始めた。
「それからゲラルド。貴様が退屈だと、つまらないとほざいていたが。
それも、解消されるだろう。
お前が惨めに返り討ちにあった、魔王の称号を持つ男だが、明日にはここにやってくる」
「あの野郎がここにくるのか! いいねぇ! この前の借りを返させてもらうぜ! 前回は油断したが、最初から全力でいくぜ!」
大男は、前回コテンパンにやられた者へ復讐の機会が訪れた事に口元をにやけた。
「デスタの考え通りなら、そのチビも来るかもしれないんでしょう? それならそのチビは僕が殺るよ。
楽しみだなぁ。僕の魔法にどれだけ対抗してくれるんだろう」
まだ幼い少年も、新しい実験台が出来る事が楽しみで楽しみで仕方ないとばかりに笑顔を作る。
「ジャギも殺る気ですね。ワタシはどうしましょうか。
まぁ復讐とか、殺りたいこと事があるならそれはお二人に任せて、ワタシは連合軍の相手でもしてましょうかね」
細身の男は、いつも通り裏方に回り、皆をサポートしようと言う。
「殺る気になっているのなら、俺からは特に言うことはない。
精々俺の役にたて。
それから、ゲラルド。貴様では、もうあれの役不足だ。あれもだいぶ力を着けた様だからな。
嘗めてかかると、殺られかねん」
「ドレアムがそこまで言うなんて。そんなにソイツはヤバイ奴なの? ドレアムでも?」
「フン。俺に勝てる者は神を除いて存在しない。貴様等は俺の言うとおりに動いていればいい」
「ドレアム。もういっそう、パーッと殺っちゃえばいいんじゃないですか?
ハーディーン様も、それを望んでいるのでは? 何でそんな回りくどく、手を打つのです?」
「それは、人間共に生きる価値がないからだ。
だからせめて、苦しめ、絶望させ、殺してやるのが、慈悲と云うものだからだ。神もそれを望んでいる」
そう言葉を残し、甲冑を着た男は、現れた時と同様に空間に消えていった。
「ドレアムが結局、僕等四天王では、一番残虐だよね。
その魔王の称号持つ人。
ドレアムに目を付けられたから、絶望しながら死んでいくんだろうね。可哀想に」
まだ幼い少年も、ドレアムに狙われた男の事を思うと、同情に似た感情を持つのだった。
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