61話 最前線へ
今話で、三章北東大陸編終了です!
「ヨーク公! 至急伝えねばならない事があります! 最前線が……最前線が……崩壊しました!!」
瀕死の重症を負い、バラガン公国へと戻ってきたラカンさんが、必死に伝えた内容は、衝撃だった。
最前線が……崩壊した?
世界中で精鋭部隊を結成し、ユーリが邪神軍に対抗するために、用意した戦力があるのに。
それが崩された……。
「……ラカン落ち着いてくれ。最初から説明をして欲しい」
「は、はい。……一年前ハーディーンが復活を果たし、四天王の脅威と、ここ半年前からの特級魔物の台頭にも、何とか今まで対抗してきました。
魔物が強くても、四天王が強力でも、クラウド隊長を始め、ジェクト隊長、バハムート隊長、アーロン皇帝と、その部隊で戦えていました。
ユーリ陛下が造られた、大量の魔法具もあり、時には有利にすら戦況を進められていた程です……ゴホッゴホッ」
興奮した状態で、一気に話し出した為に、喉をつかえて咳き込む。
治療魔法士が、水の入ったコップを渡した。
「す、すまない。……ゴクッゴクッ……フゥ」
一旦呼吸を整えて、続きを話し始めた。
「それが出来ていたのは、こちらの戦士隊の数と、魔法具の存在、精鋭部隊の連携、そして各隊長の獅子奮迅の戦いで何とかなっていたのです。
ですが、……ここ最近、今までとは比べ物にならない程に、魔物の数が爆発的に増え始め、更には魔物の平均レベルの上昇まで……。
今まで、我々が唯一にして勝っていた、戦力の数が逆転し、戦場は完全に邪神軍の有利となりました。
そして……そして、決定打となったのは。
こちらの勢力の一部隊を洗脳され、エデン王国のカーゼル王を人質に取られ、瞬く間にエデン王国は壊滅。
その事で戦況は一気に劣勢となり、最前線は、ルーデウス帝国にまで押し下げられたのです」
「「「…………」」」
この場にいる全員が、驚きのあまり、言葉を発する事ができなかった。
事実確認の為、ヨーク公が無理矢理に冷静になり、ラカンさんに聞いた。
「……エデン王国が壊滅したと言ったね? 人質に取られたカーゼル王は?」
「……殺されました。エデン王国の戦士隊の目の前で、見せしめの様に……」
「……惨いな……」
「最前線はエデン王国と、ルーデウス帝国が部隊の補給、戦士達のサポートを担って来ました。
その双翼の一つが機能しなくなると、一気に形勢は傾いたのです」
今までがギリギリの状態で、抑えていたんだ。
そのバランスが崩れる事で、どれだけ戦況が不利になるのかは、明白。
「それに、奴等は最初から……やろうと思えば、最前線を崩壊させることも出来たかもしれません。
こちらの戦力の限界を見極め、手を打つ周到さ、こちらの裏をつく行動。
そして、それらの動きの裏には、全てドレアムが暗躍していました。今回の洗脳も、奴がやったのです。
今も、クラウド隊長達が、ルーデウスに本部を構え、何とかこれ以上最前線を下げぬようにと、戦っています。
このままでは、ルーデウスまでもが、陥落します。
このままでは、隊長達までもが殺されてしまいます!
この様な無様な姿を晒してしまいましたが、援軍をどうか、お願いしたく!」
ラカンさんも、悔しくて仕方がないのだろう。
肩を大きく震わせて、握り締めた拳からは、血が滴り落ちていた。
「ラカンさん、もう大丈夫です。
後は任せてください。この時の為に、俺達は力を付け、やるべき事をやってきました。
今こそ、それを発揮させてもらいます」
「わたくしの治癒魔法で、一人でも多くの命を救います」
「私の鍛練の成果を存分に発揮させていただきます!」
「悪い人は成敗するの。ごめんなさいさせるの」
「貴公達は……」
「ラカン、確かに今我々は不利に立たされた。
だけどね。我々にもこの窮地を打開してくれる、存在がいるんだ」
「この状況を……何とか出来るのですか?」
「そうだ。彼は、ユーリ陛下以降、四百年間、誰も持ち得なかった魔王の称号を持つ者。このマギア・フロンティアの救世主として現れた、タクト君だ」
「……貴公が魔王の称号を。そうか……予言の通りならば、なんとかなるかもしれん」
「直ぐに向かいます。最前線へは船で行けますか?」
「最前線は、ここから北北西にある北大陸にある。船で半日程の距離だ」
俺の船なら、もっと早く着くはずだ。
一分でも一秒でも早く辿り着ければ、犠牲者の数が減らせる。
「分かりました。飛ばして行きますので、その半分ぐらいで到着させます」
「俺も、貴公の船に乗せて欲しい。道案内をさせてもらいたい。いいだろうか?」
ラカンさんが来てくれるなら助かる。
「分かりました、一緒に行きましょう」
「かたじけない」
「タクト君、こちらで各国に援軍を要請する。直ぐに隊を編成し、最前線へと向かってもらうようにしよう」
「お願いします。俺達でそれまでの間、戦況を立て直します」
「君達が最後の希望だ。どうかマギア・フロンティアの未来を頼む!!」
「任せてください。皆、 最前線へ行こう! 俺達でこの劣勢を覆すんだ!」
最前線が完全に崩壊した場合、トランスヴァールにまで、進攻される。
そうなれば、最後の石碑が破壊されて、ハーディーンが復活してしまう。
そんな事には絶対にさせない!
待ってろよ。
四天王、そしてドレアム!!
お前達は、俺達が必ず倒す!!
お読み頂きありがとうございます!
後書きは長く、書きたくない派なのですが、今回はここまでお読み頂いた、皆様にお礼をと書かせて頂きました。
まず、三章も最後まで読んでもらって凄い嬉しいですありがとうございますm(__)m
色々悩みながら、書き進めて参りましたが、自分の書きたい事は、ほぼ描けたので、良しとしたいと思います。
今章は、シズクとナエにスポットを当てて、二人の成長、活躍を描かせて頂きました。
二人ともかなりの強化が出来たと、思います。
四章からは、物語の終盤へと向かっていきます。
戦いも、過酷になっていきますので、二人の活躍の場もあります。
四章も変わらず、モチベーションを高めて、書いていきたいと、決意しています。
これからも、頑張って参りますので、よろしくお願いいたしますm(。-ω-。)m




