59話 心配
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クララさんと会った後、城に戻ってきた。
アリサ女王から食事に誘われて、今日は一泊させてもらえる事になっている。
城の使用人に用事を済ませ戻った旨を伝えると、用意してくれていたそれぞれの自室に案内された。
食事会まで、そこで一息ついた後、会場まで移動する。
会場には、既にアリサ女王が待っていた。
女王は赤色を基調とした、胸元が大きく開けた大胆なドレスを着ている。
うん、眼のやり場に困るやつだ。
幻想的な金髪と少し派手な赤いドレスはとても映えて見える。
俺はファッションは素人だから、詳しくは分からないけど、アリサ女王の女性としての魅力をこれでもか、と表していると思う。
これでもし、俺にアルフィンとシズクが居なかったら撃墜されていたかもしれない。
とは言っても俺も男な訳で、つい、本当に本当に一瞬だけ胸元を見てしまったが、その一瞬をアルフィンと、シズクが感知する。
寒い外から戻り、せっかく城の自室で暖まった体が、一瞬にして冷え込んだ。
寒さの発生源は、俺の右側と左側にあるようで。
「タクトさん?」
右側のアルフィンから恐ろしいものが……凍てつく波動が!
「タクトさんも殿方ですから、見てしまうのは仕方ないですが、ですが……」
左側のシズクから、輝く息を思い出させる様な冷気が!
体の左側と右側が寒い! てゆうか痛い! 痛寒い!
「お兄ちゃんモテモテなの。だけどお姉ちゃん達がまた機嫌が悪くなるから、なぐさめないとダメなの。あたしは頑張るの」
後ろのナエからは、暖かい癒しのオーラが……背中だけが暖かい。
「タクト。そんな所に立っていないで、わたしの隣に座りなさい?」
ポンッポンッと自分の隣の席を叩き、ここに座れと薦められた。
その瞬間また、この部屋の室温が下がった。
「うふふ」
アリサ女王も絶対分かってやってるよな。
しかし、これは断れないよな。
断ったら失礼だ。仕方ないよ。うん。
二人が怖いけど、アリサ女王の隣に座った。
その俺の隣に、二人で相談した結果アルフィンが座り、シズクと、ナエも着席した。
全員が揃った事で、食事会が始まった。
非公式なので使用人が数人と、俺達以外にはいない。
使用人がそれぞれのグラスに飲みたいものを入れてくれる。
俺はこの間怒られたばかりだから、度数の低いアルコールにした。
また酔っ払ったら大変だ。あの時のアルフィンは怖かった。
そのグラスに、アリサ女王と「カチンッ」とグラスを当てて乾杯をした。
「うふふ。タクトあなたはどうやってこのマギア・フロンティアに来たの? 前の世界で死んだと言っていたけど」
「あの世との狭間にある空間に死んだ後行ったんですけど、そこにいた女神にもう一度命を貰って、この世界に来たんです」
「あの世との狭間か。女神はどんな存在だったのかしら」
「神々しい雰囲気を持つ美しい女性でしたね」
「美しいか。わたしとどっちが綺麗かしら? タクトの本心を聞かせて? うふふ」
女神は絶世の美女だった。
そしてアリサ女王も種類が違うけど絶世の美女だ。
どっちも同じぐらいに美しい。
「正直同じぐらいです」
「あら。……嘘は言ってないわね。本心か。ありがとう」
アリサ女王が素直に褒められて嬉しいとの顔をする。
少し照れているのか、アルコールでなのか分からないけど、頬を赤くしている。
「コホンッ。わたくし達もアリサ女王とお話しさせて頂きたいですわ」
「そうですね。タクトさんとばかりお話しされていないで私達とも、是非お話しさせて下さい」
俺とアリサ女王の間に、アルフィンとシズクが割って入ってくる。
それからアルフィン達も参入しての女三人での話になった。
時折俺の名前がするから、きっと俺の話をしているんだと思う。
何かバチバチとした音が聴こえるけど、空耳だな。うん。
三人での話になり手持ち無沙汰になってしまった。
そういえばナエの姿が見えないけど何処に……いた。
一人でお利口に食事をしていた。
「ナエ。ごめんな一人にして」
「ううん。大丈夫だよ。お姉ちゃん達で大事なお話しをしてるんだよね? お兄ちゃん争奪戦の」
だから何でナエが、そんな難しい事を知ってるんだろう。
女の子は、精神年齢が男よりも早く成長すると、聞いた事があるけど、それにしたってまだ10歳なんだが。
聞きたいけど、また何かナエのご両親の事を暴露されても嫌だな。
聞かないでおこう。
「そ、そうか。もうちょっと一人で待っててくれるか?」
「大丈夫なの。お料理美味しいから、いっぱい食べるの。
お兄ちゃんも大事なお話しをしてくるといいの」
この中でナエが一番落ち着いている様な気が……。
ナエの助言に従い、元の席に戻ろうとすると。
声が聞こえてきた。
「あなた達やるじゃない……」
「わたくし達にも絶対に、負けられない戦いがあるのです」
「負けてられません!」
「……まぁいいわ。あなた達の方が、タクトとの時間が長いから、今回は引いてあげる」
「わたくし達は、いつでも受けてたちますわ」
バチバチと、火花が見えるのは、酔っ払ってきたからかな?
「さぁて。良い時間になってきたし、そろそろ御開きにしましょうか? タクトだけ少し話があるから、残ってちょうだい」
俺にだけ話か、なんだろう?
会場と繋がっている広めのバルコニーに誘われ、外に出た。
空には、無数の星空が耀いて見える。
夜だから、流石に風が冷たいけど、アルコールのお蔭でそこまで寒さは感じない。
「改まって話しなんてどうしたんですか?」
「そうねぇ。まず何から話そうかしら」
アリサ女王が何から言うか考える素振りを見せる。
「あなたの心の陣地はアルフィン王女と、シズクが占領しているみたいだから。今回は引くわ。
だけど、今回は戦略的徹底はするけど、諦めないわよ?
あの子達があなたから離れたら、わたしがあなたを貰うわ」
占領。陣地。戦略的徹底。戦争の事ではないよな?
と、言うことは。
「いやいや。本気で俺の事を想ってくれているんですか? 冗談ではなく?」
「わたしは本気よ? こんなことで冗談は言わないわ」
マジで、想ってくれていたのか。
「だけど、ここからは真面目な話をするわね。
タクト……あなた死なないでね?
わたしは占いとか、予知能力は無いけど、勘だけは鋭いの。
そのわたしの勘が、あなたを見ていると、警鐘を鳴らしている。あなたは確かに強い。
だけど、敵も強いわ」
アリサ女王は一旦言葉を切って、二度三度と呼吸をしたあと続けた。
「だから心配なのよ。
これから先、窮地に立たされる時もあるかもしれない。
自分を犠牲にして誰かを護る場面が訪れるかもしれない。
でもその時は、自分の命を優先しなさい」
「……それは、約束できません。俺には大切な存在が出来ました。彼女達を護れるなら、俺は……自分の命も惜しくありません」
「……本当に良い男ね。あの子達に譲るのが本当に惜しいわ。
それならば、あなたが死なないようにわたしも護らせてもらう」
「……アリサ女王」
「きっと、そこにいる彼女達もわたしと同じ気持ちだと思うから」
バルコニーにアルフィンと、シズクが入ってきた。
そうか、二人とも聞いていたのか。
場の雰囲気に動揺していたから気づかなかった。
口ぶりからするとアリサ女王は最初から気づいていたみたいだな。
「アリサ女王、大丈夫ですわ。わたくし達でタクトさんを」
「はい。必ず護ります」
俺が彼女達を護りたいのと同じで、彼女達も俺の事を。
「ありがとう皆」
皆に大切に思われている事に感謝だ。
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