58話 哀しみ
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「出てきたの。居留守はダメなの」
「うぅ~。すいません……今は誰とも話したくなかったので……」
涙声で俺達と視線を合わせない様にしている。
視線がキョロキョロとして落ち着きがない。
来たのは失敗だったかなぁ。
アリサ女王からもお爺さんが一月前に亡くなったと聞いていたし、気持ちの整理もついていないのかも。
ちょっと申し訳ないと思いながら、用件を伝えた。
「えっと、突然すいません。
俺はギルド魔王と愉快な仲間達のタクトといいます。
今日お伺いしたのは、俺達の装備品を見てもらいたくて、アリサ女王からこちらの場所を聞いて来ました」
「アリサ女王からですか……」
明らかに元気ないな。
顔とゆうか、眼に力が無い。
「…………寒いので、中にどうぞ入ってください。
わざわざ来てくださったので、お茶ぐらいは淹れますので」
そう言って家の中に入れてくれた。
お、暖かい。外はだいぶ冷え込んでいたからな。
この世界には、エアコン等はない。
各家庭では薪を使った、暖炉で部屋を温かくしている様だ。
建物も年数が経っているようでだいぶ古い。
部屋数は5個はあり、ヴォルガさんと二人暮らしをしていたにしては、広すぎる感じかな。
表札には二人分の名前しか無かったから、他に人はいないと思うけど、その辺も気になる。
クララさんが、俺達を椅子に案内してくれて温かいお茶を出してくれた。
「温かいの。生き返るの」
ナエが何気なく発した言葉に、ピクッと反応した。
「生き返る……」
マズイ、今は一番聞きたくないワードだよな。
「こ、コホン。改めてすいません。突然来てしまいましたが」
「……わたしに専用装備を見てほしいとの事でしたが。
せっかく来て頂きましたけど……すいません。お力になれそうにないです」
「それはやっぱり、ヴォルガさんの件ですか?」
「……そうです。あなたは先程、ギルド魔王と愉快な……何でしたっけ」
「仲間達ですわ」
アルフィンが補足する。
「……すいません。魔王と言うのは、どういう意味ですか? それにアリサ女王から聞いて来たと言われましたけど、何でわざわざ家に? この街には他にも腕の良い鍛冶屋はいますけど」
クララさんからしたら当たり前の質問だな。
俺達の素性も話してなかったから、それは失礼だ。
「すいません。まず最初に俺達の素性を話すべきでした。
俺はタクトといいます。魔王の称号を持っていると言えばわかりますか?」
「あなたが魔王の称号を……」
このやり取りも自慢しているみたいで、段々と面倒になってきた。
「はい。それで俺達の専用装備を見てもらいんです。これから最前線に行くまでに、出来ることをしておきたいんです」
「……専用装備は初代オーキンスが造りました。
製造するには、オーキンス家の専用スキルと、秘伝がないと造れません。……なので他の所では……」
専用装備が誰にでも造れる物ではないことは、さっき街の鍛冶屋達も言っていた。
「それでは、尚更クララさんにお願いしたいのですが。駄目でしょうか?」
頭を下げてお願いした。
「…………」
「クララさん?」
「す、すいません。わたしには無理です……」
「どうしてですか? 気持ちの問題ですか?」
「……おじいちゃんが病気で亡くなってから、やる気が起きなくて……。
このままでは駄目だと思うんですが。どうしても駄目なんです……装備を打とうとすると、手が震えて……おじいちゃんの事が思い出してしまって……ごめんなさい……」
思っていた以上に、深刻だったか。
大切な人を亡くした時は、無気力になるのは仕方ない。
誰だってそうだ。
まだ亡くなって、一ヶ月だ。
「重ね重ね失礼ですが。ここにはヴォルガさんとお二人で住んでいたんですか? ご両親は?」
「……両親は魔物に殺されました……。
それでおじいちゃんがわたしを引き取ってくれて、それから鍛冶のスキルを教えてくれたんです。わたしには才能があると言って」
「そうでしたか。すいません答えにくい事を聞いてしまいました」
「……いえ、もうだいぶ前の事なので」
「可哀想なの。クララお姉ちゃん元気出してね」
「……ありがとう。あなたは」
「あたしはナエだよ。よろしくね。クララお姉ちゃん」
「……か、可愛い」
ナエはど直球だな。
でもそれもナエの良いところだ。
でも今回は無理そうだな。
この問題は時間が必要だ。
「辛いのに、お話し聞かせてくれてありがとうございました」
「……いえ。力になれなくてすいません。世の中が大変な時にわたしは何も出来なくて……あなた達は邪神軍から世界を護ろうとしているのに……」
クララさんが自分のズボンを思いきり掴む。
その手が震えている。
悔しいんだろう。思うところもあるんだろう。
「今はしっかりと、心を休めてください。
これから戦いは激しくなりますが、必ず後からクララさんの力が必要になる時が来ます。
その時に力を貸してもらえればと思っています」
「……でも、わたしは自信がないです……」
「あなたなら必ずできます。自分に自信を持ってほしい。
本当に自分が駄目だと思う人は、そんなに涙を流す程、悔しがらないです」
「え?……あっ」
クララさんが頬に手をやり、自分が涙を流している事に気付いた。
「……わたし……」
クララさんが下を向いて、涙を流し始めた。
ナエが側に寄り、クララさんの頭を撫でる。
「よしよし良い子なの。悲しい時は泣くの。あたしもおじいちゃんの時泣いたから分かるの」
「……ヒック……ウッ……ウッ……」
泣き止むまでナエは頭を撫で続けた。
アルフィンもシズクも側に寄り、涙を拭いたり、背中を擦っていた。
「す、すいません。みっともない所を見せてしまいました。
キチンと考えます。自分と向き合います。ありがとうございます」
思いきり泣いて幾分か、すっきりしたんだろう。
さっきよりも眼に力が戻っている。
「いえ、気にしないでください。それでは俺達はこれで失礼します」
「はい。今日はありがとうございました。次にお会いする時までしっかりとします」
「またね。クララお姉ちゃん」
クララさん宅を離れた。
「クララさん元気を取り戻して欲しいですね」
「あの方は、きっと大丈夫だと思います。ご自身で答えを見つけると思いますわ」
「そうだね。最後にはしっかりと眼を見て話してくれたし、大丈夫だ」
「クララお姉ちゃん優しかったの。約束もしてくれたし大丈夫なの」
クララさんなら、必ず気持ちの整理がつけられると思う。
その時には俺達の装備を見てもらおう。
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