55話 覚悟
いつも応援してくださる方ありがとうございます
m(*-ω-)m
新たに読んでくださる方よろしくお願いします!
楽しんでもらえると嬉しいです!
「大方予想がつくけど、話を聞かせてもらいましょうか」
応接室の様な場所に案内してもらった俺達は、美味しいお茶を飲みながら、話を聞いてもらえることになった。
「先ずこちらをご覧ください。御父様からの書状になります」
アルフィンから、いつものユルゲン陛下の書状が手渡された。
「ユルゲン陛下からね。どれどれ」
アリサ女王が空間に写し出されたホログラムを確認する。
「なるほどね。予言通りだったわけか。
タクトあなたに力を貸すのは勿論構わないわ。
あなたの事は好きだし、わたしも邪神軍は何とかしたいしね」
「ありがとうございます。
協力していただけるのは、本当に助かります。
やるべき事を済ましたら、最前線に乗り込もうと思っています。
その後戦況がどう変わるか分からないですけど、決戦になった時には、是非力を貸して欲しいんです」
「とりあえず分かったわよ。やるべき事を済ましたら最前線に行くと言ったわよね? 何をするのかしら?」
「始まりの洞窟に行って、石碑の材料を採りに行き、いつでも作製出来る様にしたいと思っています」
「石碑か……」
アリサ女王がカップにゆっくりと手を伸ばしお茶を一口飲む。
「もう一度石碑を造り出したとして、タクトあなた……どうするつもり?」
アリサ女王が真面目な表情を作り、俺の眼を真っ直ぐに見つめてくる。
「……どうするとは?」
「惚けないで。察しの言いあなたなら質問の意味はわかるわよね? ユーリ陛下の様に犠牲になる道を辿るつもりかと聞いてるのよ」
この質問にどう答えるか、アリサ女王は見ている。
恐らくは俺の覚悟を聞きたいんだろう。
今まで答えを出さないまま、ここまで来たけど、その答えを出さないといけない。
そして、これは俺だけの問題ではない。
だから皆の顔を見た。
隣に座るアルフィンとシズクは、そこを聞きたくても聞けなかったという表情をしている。
ナエはまだ、その事を話していないから首を傾げている。
アルフィン達は俺と距離が近すぎる故に、聞きたくても、聞けなかったんだろう。
俺も、どこか答えを出すのを先送りにしていたと思う。
俺の命の問題にも関わるし、どうしても、うやむやにしたままここまで来た。
石碑にハーディーンを封印するという事は、ユーリと同じ方法を取るということになる。
つまり、俺の命を使いハーディーンをまた分割させて封印するということ。
敵はあまりに強大。
俺にもまだ封印以外で、ハーディーンを何とか出来る方法も知らない。状況だって劣勢だ。
だけど、俺はもう答えを決めていた。
その思いをアリサ女王に伝える。
「俺は……皆となら、ハーディーンを封印するのではなく、倒せると信じています。
ただ、最悪を想定して、最終手段を用意しておきたいんです。だから、準備だけはしておきます」
俺だって、自分の命を使うのは嫌だ。
当然死の恐怖だってあるし、それに、俺には本当に大切な存在ができた。
彼女達と別れる事なんて、したくない。
でも……だからこそ。
最悪な状況に、もしなれば……俺は自分の命を使ってでも、彼女達を護りたい。
その決意も出来ていた。
「そっか……」
アリサ女王が天井の一角を見つめ、軽く息を吐いた。
「そこまで覚悟を決めたのなら、わたしはもう何も言わない。
ただ、わたしはタクトを死なせたくないわ。
だからわたしもその可能性に賭ける。
封印以外で何とか出来る方法があるのなら、いくらでも力を尽くしましょう。
その為に、エリスで出来ることは全てやると、約束しましょう」
「ありがとうございます。そのお気持ちが凄く嬉しいです」
「アリサ女王。そのお心に心からの感謝を申し上げます。
そして、そのお心に何としてもお応えさせて頂きたいと思います。これからどうぞよろしくお願いいたします」
「私達もタクトさんを、死なせたくありません」
「お兄ちゃんを死なせないの。あたしも頑張る」
アルフィンとシズクも覚悟を決めた様だ。
その思いが表情に出ている。
ナエも頑張ると言ってくれている。
アリサ女王も本当の意味で、協力者になってくれた。
ありがたい。
「この書状は、他にも見せたの?」
「シーゲル陛下と、ヨーク公には見せています」
「そっか。バラガンに寄ってからここに来たのね。エリスで他にやることはあるのかしら?」
「聖なる洞窟に行こうと思っています。
石碑と石盤を作りたいので、ホーリークリスタルを採りに」
「聖なる洞窟は、街から北に一時間程の距離にあるわ。
許可証も必要ないし、好きにしてもらっても構わないわ」
「ありがとうございます。それと、この街には凄腕の鍛冶屋がいると聞きました。
是非ともその人にも会って、俺達の専用装備を鍛えてほしいと思っているのですが、家は分かりますか?」
「ああ。ヴォルガね。
ただ……彼は先月亡くなったわ。
孫にクララという子がいるんだけど、今は……ヴォルガが亡くなった事がショックで、塞ぎ混んでいるのよ。
ヴォルガに鍛冶の教えを受けていたから、腕は確かなんだけど、気持ちがね」
凄腕の鍛冶屋の人は亡くなったのか。
そして、そのお孫さんさんがクララさん。
「家を教えるから、行ってみてちょうだい。
多分まだ厳しいかもしれないけど」
クララさん家の場所を教えてもらった。
「聖なる洞窟に行った後に、早速寄ってみます」
「ええ。戻って来たらいい時間になりそうだし、部屋を用意しておくから、一泊していきなさい。
あなたの事詳しく知りたいから、お酒でも飲みながらじっくりと教えてもらおうかしら」
アリサ女王からウィンクが飛んで来た。
あ、またアルフィンと、シズクから冷たい波動というか、視線が……。
「は、はい。分かりました。お言葉に甘えさせて頂きます。ありがとうございます」
これ以上は何かマズイことになりそうだ。
アリサ女王から許可も取ったし、聖なる洞窟に行ってみよう。
お読み頂きありがとうございました!




