43話 シズクの成長とナエの成長
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シズク、ナエside
天井に張り付いていた巨大で、気味が悪い魔物にナエちゃんが魔法を連続で撃ち込み、そこから戦いは始まった。
「はぁぁぁ!」
一足で、魔物に接近し突きを放つ。
魔物はその巨体に相応しくない速度で横にずれて、その何本ものある足を振るい、攻撃を仕掛けてきた。
「くぅっ! はっ!」
鋭く振るわれた足を刀で弾き返し、その反動を利用して後ろに距離を取った。
「桜月華!」
遠距離から斬撃を飛ばすことができる桜月華を放ちますが、魔物は体を丸め、斬撃を弾く。
「今のは破邪も込めた、最大限の斬撃だったのですが……」
やはり特級魔物はかなり、強いですね。
この程度の攻撃では、まともにダメージを与えられない。
中央大陸の試練の遺跡で戦った、ヘル・タイガーも同じく、体の外皮は硬くて刃を弾かれたが。
この魔物もまた、いとも容易く攻撃を弾いてしまう。
上級魔物とは、何もかも違う。
「特級魔物を倒すには、やはり破魔の力が必要ですね」
戦いが、始まってから破魔の力を溜めていますが、発動するまでは時間がかかる。
タクトさんとの鍛練で、発動までの時間は短くなってきていますが。それでも時間はかかってしまう。
「シズクお姉ちゃん! 魔法いくよ! 魔物から離れて!」
ナエちゃんの声を聞いて、魔物から離れた。
それとすれ違うように。
「火熊!」
ナエちゃんの魔法が魔物に向かっていく。
魔物は口から粘着性の高い、糸を何重にも吐き出してそれを重ねて魔法も防いでみせた。
糸は燃やせましたが、苦手属性であるにも関わらず、火属性魔法も防ぐとは。
それならば。
「今度は、もっと鋭い太刀を浴びなさい」
魔物が口から緑色の液体を吐き出してくる。
あれは、地面を溶かした。
これは受け止めてはいけません。避けないと。
ギリギリの、最短距離で避けながら、魔物に近づいていく。
この魔物の攻撃速度は確かに、速い。
だけど。
「タクトさん程じゃない」
タクトさんとは模擬戦闘をよく行っている。
その攻撃はとても速く、鋭い。
それに比べればこんなものは、遅く感じる。
日々のあの鍛練が自分の体に、馴染んでいるのが分かった。
魔物に辿り着き、破邪を高めて、上段に刀を構える。
「桜天斬!」
振り下ろした刀は、桜色した極太の魔力を纏っている。
刃は魔物の半分程で止まったが、衝撃は浸透し、魔物の足を三本切断した。
「キィシャォォ!!」
流石にこの攻撃は効いてくれた。
だけど魔物はそれがどうしたとばかりに、動き出そうとする。
早くここから離れないと、またあの糸か、液体が飛んできますね。
糸は粘着性が高いので、一度捕まると中々抜け出せないかもしれません。
液体も、非常に危険。
ここから離れようと、そう思った時には左右から魔法が降り注ぐのが見えた。
「今のうちに一旦離れて、シズクお姉ちゃん!」
「ありがとうございます」
私が今切りつけた箇所に正確に、魔法が撃ち込まれた。
魔法コントロールも、凄い上達していますね。
ナエちゃんの援護魔法が放たれているうちに、魔物から離れる。
「ナエちゃん。今のはいいタイミングでした」
「何回も練習したの」
このダンジョンに入ってから、かなりの戦闘回数がありましたが、その都度ナエちゃんとの連携を繰り返してきた。
そのお陰で、お互いの呼吸や、何を望んでいるのかも分かる様になってきました。
「私の破魔の力もあと、少しで溜まります。それまではこのままいきましょう」
「うん。早く倒してお兄ちゃん達と合流するの」
魔物の様子を見ようと、視線を戻すと。
「……魔物が光ってますね」
「……光ってるの」
魔物が光るということは……進化するということ。
「この魔物は進化する個体でしたか……」
光が治まり、魔物の姿が確認出来た。
「……これはまた」
「……悪夢なの」
ナエちゃんの言葉通り、もう言葉で表せない程に魔物は進化した。
変わったのは外見だけではなく。
能力もまた強化されていました。
口からはあの粘着性の高い糸と、緑色の液体を連続で、数えきれないほど吐き出し、治った足を駆使して、凄い速度で接近してくる。
「キィィィゥゥォォォシャァァァァァァァ!!!」
身が縮こまるような雄叫びもまた、進化していました。
もし、実力が伯仲していなければ、足がすくみ、何も出来ずに食い殺されていたかもしれません。
ナエちゃんを抱えながら、とにかく今は全速力で魔物から逃げています。
「きゃあああ!! 怖いの! 怖いの! 怖いのーー!!」
「それは私もです。あと少しで破魔は使えます。あそこで結界を張りながら、それまで耐えましょう」
「お兄ちゃんに貰ったこのお札があれば、安心だよね」
岩がたくさん転がり、隆起している所で構えることにした。
道具袋から、結界のお札を取り出して使用する。
私達を囲んだ結界は、確か15分程は使えたはずですから、これで一息ついて、ここで破魔の発動まで待ちましょう。
私の実力ではまだ、素の状態では、特級魔物は倒せない。
「帰ったらもっと、鍛練を頑張らないといけ――」
結界を張ったことで、気が緩んでいたのか考え事をしていると。
魔物が、結界にあの地面を溶かした緑色の液体を吐き出してきた。
ジュウゥゥ……ジュウゥゥと音をたてながら、結界が徐々に溶けていく。
「「…………」」
結界を破壊される前に、お札を使い結界を張り直す。
「ナエちゃん。結界が壊された瞬間に同時に攻撃をしかけましょう。あの魔物を遠ざけます」
「うん。やるの!」
緑色の液体により、結界が溶かされた。
「今です! 桜月華!!」
「いけー! 火熊!!」
二人同時攻撃により、魔物は結構な距離を吹き飛んでいく。
これで、時間が稼げそうです。
「この隙に、まだまだ撃ち込むの」
ナエちゃんが追撃の魔法をどんどんと、撃ち込んでいく。
魔物に少しずつダメージが蓄積されていきますが、それでも魔物の動きは鈍くならない。
ナエちゃんが頑張ってくれている間に、集中して一気に破魔を練り上げた。
やっと発動です。
「ナエちゃん。お待たせしました。あとは任せてください」
自分の体から、強大な力が溢れだすのを感じる。
「うん。早く魔物倒して。もう限界なの」
この戦闘で、かなりの魔法を使用した為、ナエちゃんも額に汗を浮かべて苦しそうにしていた。
魔力が枯渇してきている様です。
「ナエちゃんは、少し休んでいてください。決着をつけてきます」
身体能力強化を最大限に高めて。
魔物に接近する。
破魔の効果で、銀色に輝く刃を煌めかせた。
一の動作で、三撃を放つ。
魔物の足、胴体を切断する。
あれだけ刃を通さなかった硬い体は、まるで豆腐を切る様に容易に斬れた。
「キィィィシャァァァ!」
魔物も苦しみから、雄叫びを挙げて、必死に攻撃を仕掛けてくる。
それらを、見極め、その隙にまた刃を煌めかせ切断した。
魔物は、身の危険を感じ、何本もある足を動かし逃げるように離れていく。
「逃がしません。聖なる雨!」
銀色の刃を真っ直ぐに、掲げる。
その刃から、無数の斬撃が降り注いだ。
何十、何百もの光の斬撃は全て魔物に吸い込まれていく。
攻撃の余波で激しい土煙が上がり、やがてそれが収まる頃には。
魔物は跡形もなく消えていました。
「フゥー。よし!」
「シズクお姉ちゃん。お疲れ様なの」
「ナエちゃんも、お疲れ様でした。頑張りましたね」
ポケットから布を取り出して、ナエちゃんの額の汗を拭き頭を撫でる。
「えへへ。ありがとうシズクお姉ちゃん」
ナエちゃんの笑顔もまた可愛いです。
「殿下を迎えにいきましょう」
アルド殿下には、大きな岩が立ち並ぶ場所で避難してもらっていた。
その場所に、殿下は私の指示通りに待っていてくれました。
「殿下お待たせしてすいません。魔物は倒しましたのでもう大丈夫です」
「頑張ったの」
「良かった……大きな音がずっと鳴り響いていて、大丈夫かと心配でした」
「心配して頂いてありがとうございます。これで魔物の心配はしなくても大丈夫だと思います。赤い星群の方々を見つけて奥に進みましょう」
魔物と戦った所から、少し移動した場所に糸にくるまれた状態の人が二人いた。
「あ、この人達です。バルデルのギルドの人達です」
この人達で間違いないようですね。
ナエちゃんの火属性魔法で、火傷させないように糸を溶かして、二人を救出した。
「あとは、このまま奥に見える魔法陣を起動させましょう。この先で、タクトさん達と合流出来るかもしれません」
「お兄ちゃんと、アルフィンお姉ちゃんに早く会いたいの」
「そうですね。お二人であれば魔物も大丈夫だと思いますが、何か力になれるかもしれません。向かいましょう」
私達は魔法陣で、転移した。
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