40話 アルド・バラガン
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シズク、ナエside
私とナエちゃんは、転移トラップの一つに引っ掛かり、何処かへと飛ばされた。
このダンジョンは出来たばかりで、どのような構造をしているのか、転移トラップが何処に通じているのか等の情報がない。
その為、ひとつひとつ手探りで探索しなければなりません。
特級魔物の気配もすると、タクトさんも言われていたので、そちらも注意しなくてはいけないですね。
先ずは、ナエちゃんと力を合わせて、タクトさん達と合流するのが優先でしょうか。
「ナエちゃん大丈夫ですか?」
「うん大丈夫だよ。シズクお姉ちゃん守ってくれてありがとう」
「いえ、ナエちゃんが無事で良かったです。タクトさん達と引き離されてしまいましたから、合流しないといけませんね」
ここに、転移させられた魔法陣を使用して、元の場所に戻ろうと飛ばされた場所を見たが。
「……消えてる。これでは戻れないですね。どうしましょうか……」
トラップは消えてしまっていた。
他に手は……。
《シズク。シズク聞こえるか? 大丈夫か?》
ギルドカードからタクトさんの念話が聞こえてきた。
カードに魔力を籠めて、こちらも念話を返す。
《はい。聞こえていますナエちゃんも無事ですよ》
《あたしは大丈夫だよ。ごめんなさい転んじゃったの》
《無事だったか良かった。合流したいが、このトラップは簡単にはいかなそうだ。本物とダミーがあるみたいで、一度使用したら消える魔法陣もあるみたいだ。
正しいルートがあると思うから、俺達もトラップを調べていく。やり取りしながら殿下達を探していこう》
《分かりました。こちらは魔法陣が消えてしまったので、このまま進んでみますね。何かあればご連絡します》
《ああ。魔物に気をつけて》
《ありがとうございます。それではまた》
タクトさんとの、念話を終えてナエちゃんを見る。
「それでは、ナエちゃん。私達も探索を続けましょう」
「うん。今度は気をつけるね」
足元のトラップに注意しながら、洞窟内を進んでいく。
基本通路には、転移トラップは無いようで、あれ以来見かけていない。
もしかしたら、さっきみたいな大きな空間にしか転移トラップはないのかも。……いえ、まだ何も分からないから決めつけない方がいいですね。
途中、途中で魔物が現れるが。
ナエちゃんと協力して、倒していく。
「ハァァ!」
一気に接近して、カイザーラフレシアの触手ごと両断した。
魔物が粒子になって消えていくのを見た後、ナエちゃんの方を向く。
ナエちゃんは、カイザーアリゲーターと戦っていた。
この魔物は、動きこそ鈍足だけど巨大な顎からの噛みつきが危険。
「えーい! 風猫!!」
ナエちゃんは基本、可愛い動物が好きだからなのか、扱う魔法も動物系で可愛いらしい。しかし、使用した風属性魔法は、見た目とは裏腹に、威力は高く、魔物を細切れにする。
……ナエちゃん、意外と魔物には容赦がないのですね……。
「今の魔法は上手くいったの! お兄ちゃんにも見せたかったの」
満足げに「うんうん」と頷いてる。
……流石、タクトさんに鍛えられてるだけあって、色々と……あれですね。
日々目覚ましい速度で成長するナエちゃんの逞しさに感服と、戦闘面では、タクトさんみたいに魔物には容赦ないのが似てきていて、心配な思いを抱きながら、通路を進んでいった。
通路の先にあった転移魔法陣で、また別の場所に飛ばされた所で人の気配を感じた。
「これは……この近くから、人の気配がします」
「誰かいるのかな?」
「恐らくですが。アルド殿下達かもしれません」
気配がするのは、もうちょっと先の方から感じる。
「私の気配察知が正しければ、魔物も近くにいるみたいですね」
「シズクお姉ちゃん。魔物はまだいっぱいいるの?」
「そうですね……人の気配がする近くにも、魔物の気配がします」
私はタクトさん程に、広範囲まで気配は探れないけど魔物がどの辺りにいるかぐらいは、分かる。
「魔物がいるんだったら、早く助けてあげよう。その人危ないかもしれないの」
「一応何が起きても対処出来るようにしておきましょう」
早歩きで気配の先に移動した。
通路を抜けた広い空間には、二体の魔物がいた。
「……この魔物は、まだ戦った事がない種類ですね。魔力圧力から上級魔物だとは分かりますが……しかし、これは……」
「……足がいっぱいあるよ。体も長くて……気持ち悪いの」
ナエちゃんの言うとおり、見た目では今まで戦ってきた魔物では一番気味が悪い。
思わずゾワゾワとしてしまう。鳥肌もこんなに……。
ナエちゃんも、心底嫌そうな顔で両腕を擦っている。
出来れば接近したくないものですね……。
魔物の出方を伺っていると。
口から、緑色の液体を吐き出してきた。
それはスピードはそこまで速くなく、刀で弾く事も出来そうだけど……嫌な予感がする。
ここは、避けましょう。
それを避けると、地面がジュワジュワと音をたてながら溶ける。
「怖いの! この魔物!」
予感にしたがって良かった……。
確かに、見た目も不愉快ですし、長く相対したくないですね。
「これは早く討伐しちゃいましょう」
「うん! 全力でいくの!」
ナエちゃんは余程、嫌なのか、高密度の魔力を溜めて今日一番の魔法を放つ。
「いやー! 消えてー! 水兎!!」
水で出来た、巨大な兎がピョンピョンと跳ねながら、魔物の一体を体に閉じ込めた。
この魔法は、初めて見ますが、どういう――
バアァァァンッ!!
「…………」
魔物が水圧で、押し潰され姿形を残さず消えた……。
ナエちゃん……そんなに嫌だったのですね。
「気持ち悪かったの。もう現れないでね! もう嫌!」
「……私も倒さないと……。桜月華」
近づきたくないので、離れた位置から斬撃を飛ばして魔物を倒した。
これで近くには魔物の気配はしない。
あとは人の気配もこの辺で感じましたが……いた。
岩陰に、隠れるようにして一人の男の子が身を潜めていた。側には、道具類を入れるカバンの様な物も、置かれている。
髪の色はヨーク公と同じで、纏っている衣服からも高位な方だと分かる。
「あなたが、アルド殿下ですね?」
声をかけると、ビクッとしてこちらを向いた。
「貴方達は……誰ですか?」
「ナエだよ。助けにきたんだよ」
「助けに?」
「私達は、ギルド魔王と愉快な仲間のメンバーです。シズクといいます。ヨーク公から、アルド殿下の救助を依頼されました」
「父上から?」
「はい。お戻りが遅いとご心配されて」
「……父上が」
「何で一人でいるの?」
そういえば、アルド殿下だけしかいませんね。
赤い星群の人達は近くに……いないみたいですね。
「バルデルさん達はどうしたんですか?」
「…………」
「どうしたの?」
「バルデル達とは、はぐれた。僕が勝手に動いたから……」
「それではバルデルさん達は他の場所にいるんですね」
アルド殿下はうつむき下を見ながら話し始めた。
「バルデルには、勝手に動くなと言われたけど、僕は言うこと聞かずに……それで僕だけトラップに引っ掛かって飛ばされたんだ。
僕は今年で15になる。成人だ。
一人前になって、早く父上の力になりたかった。
この大戦を終わらせる為にも。この世の中が大変な時に、少しでも皆の為に力になりたかったんだ。
だから、父上にはここへ来ることを反対されたんだけど、どうしても行きたいと我儘を……」
ナエちゃんがアルド殿下の近くに寄った。
「焦っちゃダメなんだよ。あたしも焦ってたの。あたしも悪い人に村をめちゃくちゃにされて、村長様や、皆を殺されたの。だからあたしも強くなって、同じように苦しめられた人達を守りたくて。でも焦っちゃダメなんだよ。
タクトお兄ちゃんに、それじゃダメだと言われてから、あたしに出来ることを頑張ろうと思ったんだ。
一個ずつ頑張ればいいの」
ナエちゃん……。
村を出たばかりの時は、あの惨状を思い出しては泣いていたけど、今ではキチンと前を向く力にしている。魔法だけではなかったんですね。成長しているのは。
「……」
「殿下には、殿下にしか、出来ない事もきっとあるはずです。
このダンジョンを無事に脱出して、バラガン公国に帰りましょう」
「一緒に頑張るの」
「……ありがとう。僕も、もう一度父上の為に、国の皆の為に、出来ることを考えます。ですから、どうか父上の所までお願いします」
先程の悩んでいた顔が少し、前向きに変わりましたね。
これで、大丈夫でしょう。
「それでは更に先に進んでみましょうか」
シズク、ナエside
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