35話 北東大陸へ向けて~船での日常
いつも読んでくださる方、ブクマしてくださる方本当にありがとうございます(^^)
三章北東大陸編スタートになります。
楽しんでもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!
現在俺達は船に乗り、地図上で4日程の距離にある北東大陸へ向け移動中だ。
自作で造ったこの船は一般の物とは違い、俺の魔力を消費して動く。
魔力消費量を増やせば、それに比例してこの船の速度はあがっていくので、3日ぐらいでバラガン公国の近くまで行けると思う。
最近面白い事に気付いた。
結界を張った状態にすると、周囲の状況や、周りに何があるのかが、頭に情報として入ってくる。
その為、別の事をしながらでもオート操縦みたいに船を動かせる事が分かった。
マルチタスクの様に、並行していくつも考えられる能力を鍛える事も出来る。
操縦にずっと集中しなくていいのは楽だし、一度にいくつもの事が出来るのは便利でいい。
ちなみに船での日常は、この様になっている。
前回、船に乗ったアルフィンは船酔いが酷く、ほぼ寝込んでいた。
中央大陸での鍛練で、三半規管が強化されたのか、アルフィンの治癒魔法の技能が向上したからなのかは、分からないが船酔いを克服した。
シズクと料理をしたり、ナエと遊んだりと元気に過ごしている。
「アルフィン、体調の方は大丈夫なのかい?」
「はい。前回は具合が悪くて、ほとんど何も出来ませんでしたが体調も万全です。今回はその分、海の上というものを満喫しております」
「良かったね。前はほとんど寝込んでいて、青い顔もしていたし食欲もなかったみたいだから、美味しい料理も食べられなかったもんな」
「あの時はそうでしたわね。でも良いこともあったのですよ?」
「そうなの?」
「はい。強制的にですが、ダイエットにもなりましたし、それに……タクトさんに一杯側にいてもらえて、手も握ってもらえました」
アルフィンは頬を赤らめている。あのときは結構ノリノリだったが、恥ずかしかったんだろう。俺もだけど。
「はは。それじゃあ今回はアルフィンの看病は必要なさそうだね?」
「それは……そうですが……勿体ないです……あっ! わたくし何か体調が悪くなってきた気が致します。これは是非タクトさんにまたいっぱい甘えさせていただきませんと!」
「こらこら。嘘いっちゃいけません」
「そんな事言わずに、宜しいではありませんか……」
ちょっと拗ねてみせるアルフィン。
しょうがないなぁ。
「あー俺もアルフィンの看病したくなってきたなー」
「そ、そうですか! それではまたタクトさんに診ていただきましょう!」
要望を聞いちゃう俺。前ならここで断っていたかな。
まぁこんな風に俺に甘えてきたりとアルフィンは絶好調だ。
シズクは俺達の料理、家事を率先してやってくれてる。
お陰で船の上でも美味しい食事が出来るのは本当にありがたい。きちんと栄養価も考え、飽きが来ないようにメニューも考えてくれるし、レパートリーも豊富だ。皆が食べたい料理を作ってくれるなど、女子力も抜群だ。
前は鍛練の一環として、模擬戦闘をしていた。
今回も勘が鈍らないようにと、軽めではあるが毎日一緒におこなっている。
「ハァッ! ヤアァッ!」
シズクの縮地からの、切り付けを左後ろにずれてかわし。
「ッし!」
左拳で殴り付ける。
「っつ! そこです!」
それをシズクが前に踏み込んでかわして、体を捻り、右手一本での突きを放つ。
「よっと! ハアッ!」
右腕に魔力を集中してシズクの刃を受け止める。刃を弾き、右上段蹴りを放つ。
「フッッ!」
大きく距離を取ってシズクが回避した後、呼吸を整える。
「フーー」
「シズク縮地がかなり上達したね。攻撃後の硬直も短くなった」
「ありがとうございます自分でも体に馴染むのが感覚で分かります。まだタクトさんから一本取れていませんが」
「俺も負けてられないからね。あとは、体の動作を洗練させていけば更に速くなると思う。シズクはスピードタイプだから、そこを伸ばしていけば全体的に強化できる」
「勉強になります。毎日付き合ってもらって助かります」
「俺も模擬戦のお陰で経験値も積めるし、シズクと一緒に過ごしたかったからね。お礼なんていらないよ」
「あ、ありがとうございますっ。嬉しいです」
シズクは息を整えながら、頬が赤くなっている。
ちょっとストレート過ぎたかな。
でも俺は、もっと積極的になると決めた少しずつでも。
ナエは、ひたすら俺と鍛練だ。
魔力操作を鍛えるメニューを作ったので、毎日やってもらっている。
鍛練は厳しめに教えると決めて、ナエにもその事を伝えた。
それでもナエは泣き言も言わずに、一生懸命頑張ってくれている。
余程、村での出来事が、ナエの心を締め付けたのだろう。
自分と同じ様に、理不尽な暴力から大切な人達を失わせないようにと。
その為に戦う力を身に付け、強くなって護ると鍛練の姿勢に表れていた。
だからこそ、俺もナエの思いに応えたい。
「よーし。少し休憩しよう疲れただろう?」
「ううん、疲れてないよ。まだまだいけるの」
「だけど、もう二時間もぶっ続けだぞ?最初から無理をしたら効率も悪いし、体への不可も大きいからこまめに休憩をいれないと駄目だ」
「うん……でも……」
ナエからは、焦りが見られた。
早く強くなりたいと、早く力を着けたいと。
「いいか? ナエ。焦っちゃ駄目だ。強くなるには確かに鍛練は絶対に必要だ。覚えなくちゃいけない事もたくさんあるだろう。
だけど、1日で急に強くはなれない。日々成長していけばいいんだ」
「でも、早く強くならないとあたしみたいに、大切な人が殺されちゃうの。だから……あたしは早く強くならないとダメなの」
「ナエ……」
「じゃないと……村長様や皆みたいに……」
村での事を思い出したのか、涙を浮かべている。それでも泣かないように堪えていた。
「ナエには俺も、アルフィンも、シズクもついてる。大切な仲間のナエの力になりたいと思っている。
皆で、力を合わせれば、この戦いも終わらせられる。悲しい思いをしている人達を護れるんだ。
それに、まだナエが活躍する場面は先だ。
その時に思い切り活躍出来るように、今はナエの力を鍛える時なんだ。だから俺を信じてくれ必ず強くなれるから」
「お兄ちゃん……ありがとう。頑張るの! それにあたしはお兄ちゃんを信じているよ?」
「そうか……ナエは強いな。偉いぞ!」
ナエの頭を思い切り撫で回す。
「わわっ! 頭が回るの! グルングルンなの!」
良かった元気が出たかな。
その後、少しだけ鍛練をして今日はやめた。
ナエは、日々成長している。俺が教えたことをまさに、砂が水を吸収するかのように成長していっている。
北東大陸に着くまでに、成長するだろう。
食事はシズクとアルフィンの作る料理は本当に美味しく、俺もナエもたくさん食べさせてもらっている。
日々成長するアルフィンの料理の腕も素晴らしい。
食事が終わると、皆でお茶を飲みながらまったりするのがまたいい。
他愛ない雑談や、これからやってみたい事等を話したり、アルフィンのマギア・フロンティアの各国の話や、歴史の話しも楽しい。
俺達がこれから行く北東大陸の話しも聞けた。
北東大陸には、バラガン公国とエリス王国の二つの国がある。
バラガン公国は、貴族が統治する国。
君主はヨーク・バラガン公。
400年前の大戦の時にユーリのパーティーだった人が興した国になる。
巨大なコロシアムがあり、大きな大会も開かれたりもするそうだ。優勝者には、賞金も出るらしい。
それを目当てに腕自慢の屈強な冒険者も集まってくるのだとか。
ユーリ曰くこの国に、シズクの専用装備もあると言っていた。
それは手に入れないと。
エリス王国は、アリサ・エリス女王が統治している。
また気候的に寒い所らしく、年に何回か雪が降る。
腕の良い職人達も集まっているらしく、世界でも屈指の鍛冶職人がここで店を構えているみたいだ。
鍛冶職人は是非とも会って、装備を強化してほしい。
中央大陸で手に入れた大量の魔物の素材もあるし、どうせなら腕のいい職人にみてもらいたい。
北東大陸の情報はこんなもんかな。
あとナエにも、俺がマギア・フロンティアに来た経緯を話した。
以前から所々話していたので、特段驚かれることもなかったが。
「あたしもお兄ちゃんの世界に行ってみたいの」
「連れていってあげたいけど、厳しいかなぁ。俺は前の世界だと死んだことになってるからね」
「それは、残念なの」
「タクトさんの前の世界ですか。私も興味があります」
「わたくしは以前お聞きしましたが、やはり一度行ってみたいですわね」
やっぱり異世界は、気になるんだろう。
皆にも見せてあげたいけど、厳しいかなぁ。
連れて行ってあげるのは、難しいけど話をすることは出来る。俺が話す前世の話しは面白いらしく、好評だ。
話しが盛り上がった後は、各々眠る準備をする。
お風呂は時間制にしていて、女の子達が先で、俺は後だ。
大きめな浴槽を造ったので、5人ぐらいでも余裕なくらいの広さがある。だからといって混浴は出来ないけど。
就寝する時は、ナエが一緒に寝たいと言ってくるが、教育のためアルフィン達にお願いしている。ここはお姉ちゃんズにお願いするのが一番だろう。
寝ている間は流石に船を動かせないので、一応魔物に警戒して結界を張りっぱなしにしている。
この様な毎日を3日間、船で過ごした俺達は。
北東大陸に到着した。
お読み頂きありがとうございましたm(__)m
今後も楽しい作品にしていけるよう頑張って参ります!




