32話 移住前日
いつも読んでくださる方、新たに読んでくださる方、ブクマしてくださる方。
本当に本当にありがとうございます(^^)
楽しんでもらえると嬉しいです!
アルフィン達に、俺の中にはユーリの魂が存在することを告げた。
「……とても信じられませんが、タクトさんはこのような事で嘘をつかれる方ではないことを、わたくしは知っています。ですから本当の事なのですね」
「アルフィンありがとう。俺を信じてくれて」
「わたくしは、タクトさんを信頼しておりますから」
ニコッとアルフィンが微笑んで言う。
「本当……なんですね。ビックリしました」
「お兄ちゃん、どういうこと? 何で二つもタマシイがあるの?」
どうやって説明しようか。
【タクト、身体を貸せ。俺が説明する】
ユーリから声をかけられる。
(分かった)
ユーリと意識を交代した。自分の身体の後ろから、皆を見る視点に変わる。
「お前が、アルフィンだな」
「……タクト……さん……ではないですね……」
「……雰囲気が変わったといいますか、気配がタクトさんと違います」
「本当だ! お兄ちゃんとは違う魔力を感じるよ」
口調が変わったのもあるが、気配や魔力の質は人それぞれに違うから、別人だと気づいたみたいだ。
【タクトの身体を借りて、お前達と話している。どうだ?信じられないか?】
「……いいえ。貴方がタクトさんと違う方なのは理解致しました」
「そうかそれなら本題に入ろう。俺が、ユーリ・ライゼ・トランスヴァールの魂だ。
タクトから定期的に状況を聞いてるから大体は知っている。
そこの美人なのがシズクだな。そしてそこのちっこいのがナエか」
「美人……」
「ナエだよ。よろしくね」
「それで、何で俺がタクトの中にいるのかだが」
そこでユーリからは、前大戦が始まった経緯から、ハーディーンを封印した事、今の状態に至るまでが説明された。
「……タクトさんがこれだけの情報を知られていたのは、そういうことだったのですね。ご挨拶が遅れ申し訳ありません。
改めて、ユーリ陛下にご挨拶させて頂きます。わたくしは、アルフィン・ライゼ・トランスヴァールです。お会い出来まして、光栄です。陛下」
「私は、シズク・ナナクサです。よろしくお願いしますユーリ陛下」
「ナエ・オサナギだよ。よろしくね、ユーリおじいちゃん」
「おじい……ハァ。そうだよな生きてたら400歳以上だ。ナエに比べたら……そうだよな……ハァ」
何か……ユーリがダメージうけてる……。
「……ユーリ陛下? 大丈夫ですか?」
「……ああ、軽くショックだっただけだ。それよりもこれだけ綺麗所が揃うとは、タクトも幸せな男だな。ヘタレだが」
【おい! 確かにヘタレだけど、俺の身体で俺の悪口言うなよ!】
「うるせぇな。事実を言ってるだけだろうが」
「……陛下、本当に大丈夫ですか?」
「ん? ああ。タクトが文句言ってるだけだ。普段は今と逆で俺が、タクトの深層にいる。
魂だけだと、存在しているだけで莫大な魔力を使っちまうから普段は寝てるんだが」
「ハーディーンの魂を御身に封印されたと、言われておりましたが」
「そうだ。奴の力を五つに分けて、石碑に封印し、奴の本体は俺の魂に封印した。そのうちの一つが、ここにあるはずだが……破壊された様だな。
こうなったら新しく石碑を造るしかない。それをタクトに教えた所だ」
「そうだったのですか」
「それでは、これから石碑を作成するんですね」
「セキヒ? どうやってつくるの?」
「いや、まだ材料が足りないから造れないぞ。その辺はタクトに教えたから、アイツに聞け。
説明はこんなもんか、そろそろタクトと交代……アルフィン」
「はい。何でしょうか?」
「ラクスは……長生きしたか?」
「はい! ラクス様は、80歳まで、御元気に過ごされたと聞いおります。御子息も立派に育てられましたよ」
ユーリの質問に、アルフィンが優しい眼差しで返答した。
質問したユーリも、どこか暖かい声色だ。
自分が愛した女性と、若くして別れたんだユーリも気になっていたんだろう。状況が状況なだけに、仕方ないが死ぬまで添い遂げたかったと思う。
もし、俺がユーリと同じ立場だったら、同じく気になると思うから。
「そうか……それならいい……。タクトと交代する」
(交代だ。材料が全て揃ったら、また呼んでくれ)
【ああ。分かったよ】
ユーリはまた深層で眠りに着いた。
「それじゃあ、材料の一つのストーンシールを採りに行こうか」
「あ、お兄ちゃんなの」
「この気配はタクトさんですね」
「ユーリ陛下は……もう?」
「寝たみたいだ。嬉しそうな感じだったよ」
「そうですか。それは良かったです」
アルフィンも、にこやかにしていた。
ユーリが思いやりのある人だと、分かり嬉しかったのだろう。
アルフィンにとっては、祖先にあたるわけだし。
樹海へは、このまま向かうことにする。
ここから更に30分程移動して、樹海に到着した。
白い樹木の内側に、一際色が濃い部分が光っている。
鑑定スキルを使うとこの心材がストーンシールみたいだ。
「これだな。ユーリが言っていた物は。必要な個数が分からないから、適当に何個か採っておくか」
「これがストーンシールなんですね。白く輝く部分に、魔力が豊富に含まれていますね」
「凄い! 眩しいの」
「幻想的な、淡い光ですね」
収納魔法で、異空間に入れておいた。あと、船を作成するのに必要になりそうだから、大量の木材も収納しておいた。
これで、準備するものは大丈夫かな。
「村に戻る前に、少しナエの鍛練をしていこうか」
ついでに、この辺りにはお手頃なレベルの上級魔物がいるので、ナエの鍛練をしていく。時間があまりないから今日は少しだけだ。
「う、うん。頑張るの!」
「大丈夫だ。危ないときは護るから、安心してくれ。
ナエは遠距離型特化に育てようと思っている。
だからまず鍛えないといけないのは、魔力操作だ。魔物と戦う前に、練習しとこうか」
「わかったの。よろしくお願いします!」
「じゃあまず、魔力を出来るだけ最大限に高めてくれ」
「うん! んーー!!」
現状ナエの魔力操作は初級程度。
村の戦士達に教えたもらっていたから基礎は出来ている。
これから旅を続けながらナエには魔法を教えていく。
最終目標は特級魔法を扱える様にまで育てたい。
「大体分かった。いいか魔法は――」
それから、俺が魔法を行使する際の、イメージや、アドバイスをして反復練習をする。
「練習はこんなもんでいいだろう。中級に近いところまで上達したから後は実践だ。魔物を捕まえてくるからちょっと待っててくれ」
近くの魔物の気配を探り、近くにいたカイザーメンティスを捕まえて戻る。いきなり、「さあ、やってこい」と言ってもナエが殺されるので、メンティスの鎌の部分を落としておいた。
「これで、危険もなく実践経験が積める。ナエさっき教えた通りやってみてくれ」
「は、はいなの! えっと……んー!! えい!!」
ナエが練習で上達した魔力操作で、初級魔法を放つ。
だが初級魔法では、上級魔物にはダメージは入らない。
「もう一度だ。次はもっとイメージを強くして形を意識して撃ってみて」
「うん! んー!! えーい!!
中級魔法になって今度はちゃんとダメージが入った。
やっぱり才能ある。それから中級魔法を二発撃ち込み魔物を倒した。
しっかりとナエに経験値が入り、レベルが上がった。
上級魔物だから経験値は大きい。
ステータスオープン。
ナエ・オサナギ
ガルカリ村の村民、魔王軍魔術師
レベル25
スキル 魔力操作(中)、魔力耐性(特)、遠距離魔法(中)、潜在魔力(高)
「ナエもレベルが上がったし、今日はここまでにしようか」
「お兄ちゃん! ありがとうなの!」
「ナエちゃん良く頑張りましたね」
「今日だけで、大分上達しましたね。これからも頑張りましょう」
「そろそろいい時間だ、村へ戻ろうか」
樹海でやりたいことも済んだので村に戻ることにする。
戻ったら、ちょうど夕飯時ぐらいかな。
「ナエ付き合ってもらってありがとうな。
それから鍛練も頑張ったな。後は大丈夫だから、お父さん達に思い切り甘えてやれ」
「うん!わかったの。それじゃあまた明日ね。お兄ちゃん、お姉ちゃん達!」
「ええ。おやすみなさいナエちゃん」
「また明日ですね」
そのままナエは元気良く、家まで走っていった。
俺達も村長さんの所で、休ませてもらうか。
「俺達も、村長さん宅で休ませてもらおうか」
「タクトさん。食料はまだありますか?」
「そうだな……あと2、3日分はあるかな」
「それでしたら、今日は腕によりをかけて、作らせてもらいますね」
「シズク、わたくしもお手伝い致しますわ」
「シズクの料理は、美味しいから楽しみだよ」
「ふふ。ありがとうございます頑張りますね」
なんやかんやと、今日も色々な事が起きた。
ゲラルドの襲撃に、村の皆の移住の準備と石碑と石盤の作成の事も聞けた。
そして、ナエが俺達の四人目のパーティーメンバーになった。失うものもあったけど、収穫もあった。全てを高望みしても、うまくいかないからこれで良しとしておこう。
今日の夕飯は、いつもよりも豪勢で、味も最高だった。
本当にシズクと、アルフィンには感謝している。
こんな俺に、尽くそうとしてくれるし、ましてや……想いを寄せてくれるなんて。
シーゲル陛下と、ユーリにも言われたがヘタレ部分を直していかないとなぁ。それが難しいよ。
お読みいただきありがとうございますm(__)m
楽しい作品を作っていけるように頑張ります!




