31話 ユーリの魔法講座
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クリスタに移住する前の日の夕方。
俺達は石碑を確認しに行くことにした。
「タクトお兄ちゃん。その石碑はここから遠いの?」
「村からは、1時間ぐらいかな。ごめんな、お父さん達と一緒に居たかっただろうけど」
「ううん。お父さん達とは帰ってから、一緒にいられるから大丈夫なの。それにあたしも、仲間なんだからいいの」
「そうですわね。ナエちゃんも、わたくし達の仲間ですから。ね?」
「ナエちゃんも立派な仲間です。それにこんなに可愛らしくて」
シズクが、ナエを可愛らしいとの表情でニコニコと見つめている。アルフィンも同様みたいだ。
ナエは、右手をアルフィンと。左手をシズクと手を繋ぎながら歩いている。出発時は俺と繋いでいたが、俺ばかりズルいとアルフィンが言ったことで、現在俺はハンドフリーになった。
別に寂しい訳ではない。手が寒いだけだ。
親子水入らずの時間を取るのは忍びなかったが、これから一緒に旅をしていく仲間だから、ナエにも一緒に来てもらっていた。
ユルゲン陛下に教えてもらった、石碑が設置された場所に着いた。
だが、石碑は壊されて時間が経ったからか、見つからず魔力残留だけが残されていた。
「ここだな。石碑があった場所は」
「ここには何もないよ? どうしてわかったの?」
「ここには、微かにだが、二つの魔力残留が残されている。一つはハーディーンの物。もう一つはユーリの物だ」
「タクトさん……。ガルカリ村でも言われておりましたが、どこからそういった情報を得られたのですか?」
「私も気になってました。タクトさんの情報は、まるで当事者が知っているような事ばかりです」
マギア・フロンティアに来たばかりの俺が、ユーリやドレアムの情報を知っていることを、二人とも不思議がるのは当たり前だろう。
アルフィン達が、前世の世界のスマホや、タピオカを知っていたら俺もビックリするのと同じだ。
「タクトさんは異世界から、マギア・フロンティアに来られました。この世界の事で知られていることは、限られているはずです」
「お兄ちゃん。他の世界から来たの? 凄いね!」
ナエにはまだ、この世界に来たことを話してなかったな。
「これからその事を皆に説明するよ。ナエにも追々、俺がこの世界に来たこと話すからもう少し待っててな。まずは最初にある人物を呼ぶ」
「ある人物ですか?」
「ああ。多分長くなるから皆も座って待っててくれ」
俺は適当な場所に座り、ユーリに呼び掛ける。
(ユーリ。ユーリ聞こえるか?)
何度か呼び掛けると応答があった。
【ああ……。石碑に着いたか?】
(さっき着いたよ。予想通り、破壊されていた)
【やっぱりな。それじゃあ新しく造るしかない。お前もかなり、レベルが上がったんだろうし、クリエイト魔法も上達したんだろう?】
(ああ、色々造れる様にはなってきた。けどワープの石盤はまだかな)
【そうか。造り方教える前に、今はどんな状況だ?】
以前ユーリとは、クリスタに行く前に話したのが最後だから、それからの事を伝えた。
【今、クリスタを統治してるのはシーゲルと言うのか】
(ユーリに雰囲気が似てるよ)
【まぁ……血が繋がってるからな。……ヘタレか。ブフッ……ああすまん。……試練の遺跡は行ったか?】
(笑うな! まぁ……行ったけど、奥の魔物は危険だから引き返した。今の俺達じゃまだ勝てないと分かったから)
【あの遺跡はお前のレベル上げの為の物だが、元々は俺達の鍛練用だった場所だからな。レベル90はないとあの魔物は勝てないぞ】
ユーリのパーティーは、皆強かったんだろうな。ユーリ自身が、レベル99だった。あれでカンストなのか分からないが。
(どのみち今は無理だな)
【今すぐ制覇しないといけない訳じゃない、いずれやればいい。それよりも……ドレアムとゲラルドが仕掛けてきたか】
(ゲラルドは次は倒せる。ただ、ドレアムは厄介だ。かなり強そうだし送還魔法も)
【アイツだけは、別格だろう】
(アイツが使っていた、黒い渦は凄い強度だった。俺の上級魔法を弾いたから)
あの時溜めが必要だから、上級魔法を使ったが失敗だったか。
【アイツの魔力操作は、かなりのものだったからな。もしかしたらハーディーンに力を分けられているかもしれないが。相変わらず姑息な手を使うのは変わらないな】
(やり方が許せない。ゲラルドもだが、アイツらマジで腹立つ)
【俺の時代も同じだ。だが油断するなよ。お前は確かに強くなったが、恐らくまだドレアムには勝てない。当然ハーディーンにもな】
(分かったよ。俺も慢心して、足元をすくわれたくない)
【用心することに越したことはない】
(そうだな。それで、造り方だけど)
【ああ。石盤も、石碑も難しい物じゃない。造り方や、材料もほとんど同じだ。違うのは、イメージと魔力行使の概念ぐらいだ】
(イメージは分かるけど、概念?)
【大体の物は、こういう風に作ろうとイメージしながら、魔力行使すると、物は造れるだろう? そのイメージが明確なら、より精巧に造れる。
ただし、石碑や石盤の様な、強力な効果をもたらす物や、長年使えるようにするにはイメージだけだと弱くて形を構成できない】
(それじゃあ、どうやって造るんだ?)
【イメージよりも強力な、概念が必要になる。概念とは簡単にいえば、イメージを形作ったものだ。石碑や石盤にその形作った物を押し留める事で完成する。イメージしながら、その概念を物体に押し留めろ】
(よく、分かんないけど。やればいけるのか?)
【今のお前なら造れるだろう。イメージを極限まで高めろ。お前は魔力も高いが、イメージ力も高いからいけるだろう】
(イメージ力か……そういえば、前世から色々想像したり、妄想したり、深く想像する事が得意だったな。ゲームをクリアすると、考察とか良くしてたっけ。そのお陰もあって、魔法も習得早いんだろうか)
(そうだ。魔法もイメージ力が物言う。お前は前世の経験が、この世界で生かせている。それがお前の力の源になっている。だから、マギア・フロンティアで見たことない属性の魔法も使えるんだ。
普通のやつらは、何度も同じ魔法を見て構成を理解し、何度もイメージをして魔法に近づけて、巧みな魔力操作で、ぶっぱなせるんだ。
お前は、その力のお陰で工程を幾つかすっ飛ばしているから、僅か1ヶ月程でここまで強くなった】
……何かめっちゃ誉められているのか?。
【……話が少し逸れたが、おまえはそのままやっていけば、俺を越えられるだろう。
それで、石碑と石盤だが「ストーンシール」と「ホーリークリスタル」が必要だ。ストーンシールは樹海の白い樹木から取れるから、後で回収しておけ。ホーリークリスタルはエリスの近くにある、聖なる洞窟にある。その二つを集めろ】
(ストーンシールはすぐに回収出来るな。鑑定スキルもあるから見たら分かるだろうし。ホーリークリスタルはエリス王国に行かないとダメか)
【次はどう動くつもりなんだ?】
(ガルカリ村の皆をクリスタに連れていって、船を造って他大陸とは思っていたんだけど正直迷っている。先に最前線に行った方がいいのか。ハーディーンは倒せないにしても、俺達が戦線に加わることで有利になると思うから)
【いや、さっきも言ったが今お前達が最前線に加わっても、ドレアムは倒せない。それなら、今は力を着けることに専念した方がいい。石碑を造るなど、まだやれることもある。
その一つとしてバラガンに行け。あそこにはシズクの嬢ちゃんの専用装備があるはずだ。破魔が目覚めたなら扱えるだろう。バラガンも破魔のスキル持ちだったからな】
急がば回れか。ドレアムが強大なら確実性を増した方がいいのか。
(分かったよ先にバラガンに行く事にする。確かユーリのパーティーは四人だから、あと一人いたんだよな? どんな人だったんだ?)
【ルーデウスだ。アイツは、砲台タイプの魔法使いだった。全属性と、混合属性の特級魔法を使えた。
収束の専用スキルも使えた。多分ルーデウスに行けば専用装備はあると思うが】
もう一人は、ルーデウス。名前は聞いていたが、砲台タイプか。そして、収束の専用スキル。かなりの魔法を使えたんだろう。
そういえば、ユーリに聞きたいことあったの忘れてた。
(収束スキルはまだ誰も持ってないし、最前線には時期をみて行くよ。
魔法の事で聞きたいんだけど特級以上はあるのか? まだ上の段階があると思うんだが)
【ある。神級魔法だ。生きてた時に俺も使えたが、まだ俺は力が戻っていないから使えない】
(やっぱり)
【お前が使えるようになるには、まだ先だな。まぁ頑張れ】
(傲らず、慢心せず。だな)
【そろそろ、姫さん達待ちくたびれちまうんじゃねぇか?】
確かに、大分話したから時間経ってるな。
(そうだな。その前に、ユーリちょっといいか?)
【なんだ?】
(アルフィン達に、ユーリの存在を話そうと思う。これから先、皆にも知っておいてもらった方がいい)
【俺はどうでもいいが。どうするんだ?】
(ちょっと待っててくれ三人に説明するから。要所でユーリにも話してもらうかもしれない。俺を通して、アルフィン達の会話も聴こえるだろう?)
【それは大丈夫だ。前も聴こえていたからな】
(分かった。それじゃ一旦戻る)
ユーリとの会話を終えて、皆を見てみると。少し離れた場所で三人で遊んでいた。ナエの相手をしてくれていたのかな。
俺が皆を見ていたのに気づいたのか、ナエが声をあげた。
「あ、お兄ちゃん終わったみたいなの」
「ごめん。待たせたね」
「いえ。わたくし達はナエちゃんと遊んでいたので、大丈夫です」
「タクトさんは精神統一されていたんですか?集中していたのは分かったのですが」
「いや、さっきも言ったけどある人物を呼んでたんだ。実は、俺の魂の中には、もう一つの魂がある」
「……タクトさんの中に、もう一つの魂ですか?」
「ああ。アルフィンが一番詳しいと思うけど。初代トランスヴァール皇国、国王ユーリ・ライゼ・トランスヴァールの魂だ」
お読みいただきありがとうございますm(__)m
楽しい作品にしていけるように頑張っていきます。




