24話 黒い雨
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ガルカリ村の疫病が流行った理由を聞きに村長さん宅に入る。部屋の中間の椅子に初老の男性が座っていた。その隣にナエも座っている。
この人が村長さんだな。
「タクト様。そしてお連れの方々、お話は聞かせてもらいました。まずはナエを助けていただきありがとうございます」
立ち上がりお礼を言ってくれた。
「いえ。先程も戦士の方にも言いましたが、気にしないでください。当然の事をしたまでです」
「ありがとうございます。お話をお聞きする前に、どうぞこちらにお座りください。今お茶を用意しますので」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」
村長さんに勧められて、それぞれイスに座る。
お茶を淹れてもらい喉をうるわした後、話しの続きが始まった。
「改めてありがとうございます。そして、この村の病気を治していただけるとお聞きしましたが」
「はい。ナエちゃんからこの病気の症状をお訊きしまして、わたくしの治癒魔法ならば治せるかもしれません」
「おお!それは本当にありがたい話です。霊草で何とか症状を遅らせることは出来たのですが、それも時間稼ぎにしかならず……。状態が悪い者達は亡くなっていく一方で。
その霊草も無くなりその結果この子に無茶をさせてしまいました」
村長さんがナエの頭を撫でる。
「クリスタのギルドに救援を要請していたのです。村に備蓄していた霊草が残り少なくなってきていたので分けてほしいと。今は戦士達もこの状況で、樹海には凶暴な魔物がいるので近付けません」
ギルドの依頼はこの箱を村長さんに渡すこと。中身は霊草だったのか。
「この箱はその為の物だったんですね。これを」
村長さんに箱を渡した。箱を開けて中身を確認している。手紙も一緒に入っていた。
「ありがとうございます。ですが、タクト様方が治していただけるならばこれも必要無くなりますな」
「はい。苦しんでいる人達がいると思うので早速取り掛かりましょう。その前にすいません。一つだけ確認させてください。この病気が流行る前に不思議なことはなかったですか?」
ドレアムの仕業なら何かあったはずだ。
「不思議なことですか……あ!そういえばこの病気が流行る時期に、黒い雨が降りました。
その日は晴天で雲一つなかったのですが、突然に激しい雨となってこの村全員が雨に濡れました。
雨が降ることはあっても、黒い雨というのは……今までなかったです。その次の日からです次々と発症していったのは。ずっとドタバタしておりましたので雨のこと忘れておりました」
やっぱりか。その黒い雨で疫病を流行らせたのだろう。
こんな手を使って苦しめようとするのか……ドレアム。
「村長様……お父さん達に会いに行っちゃダメ?」
ナエが早く両親達に会いたそうにソワソワしていた。
「そうだな。ナエがいなくなって心配しているから早く顔を見せてあげなさい。そうだついでに皆が広場に集まる様に言っておくれ」
「うん! わかったの! タクトお兄ちゃん達一緒にいこう!」
「そうだな。それでは村長さんまた後で」
ナエに手を引かれて村長さん宅を出た。
ナエが家まで行く間に村人達に広場に集まる様に言っていく。
村人達もナエが心配だったのだろうナエに無事で良かったと声をかけていた。
粗方伝え終わりナエの家まで案内してもらう。
ナエが勢いよく家の扉を開けた。
「お父さん! お母さん! ただいま!!」
「ナエ! 何処にいっていたの? 突然いなくなって心配したんだよ!」
「そうだぞ!! ナエ無事か? 怪我は!?」
抱き締めあって無事を喜んでいた。
良かったな無事に両親の所に帰れて。
「ごめんね霊草を採りにいっていたの。村の霊草が無くなったって言ってたから」
「ホントに危ないからもう勝手に出ては駄目よ?」
「うん。ごめんなさいお母さん」
「心配したんだからな? でも無事で良かったよ」
「うん。このタクトお兄ちゃん達が魔物から助けてくれたんだよ」
ナエのご両親が立ち上がり俺達に頭を下げてお礼をしてくれた。
「タクトさんというのですね。ナエを助けていただき本当にありがとうございます!」
「この子に何かあったらと思うと……。本当にありがとうございます!」
さっきからお礼言われてばっかりだな。ここの人達は一人一人を本当に大切に思っているのが分かる。村全体が家族という感じがする。良い村だな。
その後、村の広場に全員が集められ、村長さんからナエが無事だった事、アルフィンの治癒魔法で治せるかも知れないことを説明された。
村人は約50人程集められ、アルフィンがまず病気の特性を探った
「これは……病気というよりも、毒に近いですね。徐々に身体に滲ませ痛覚を最大限に高めて細胞を一つ一つ破壊していき、最後は死に至らしめる……恐ろしいものです。樹海にも毒を扱う魔物もいましたが、それよりもずっと強力ですね」
樹海と遺跡でのレベリングにより、アルフィンはこういった病気、毒の解析も出来るようになった。
正直アルフィンがいなければこの村は遅かれ全滅していただろう。
解析が終わり、アルフィンが一人一人に治癒魔法をかけていき治していく。やっぱりアルフィンの治癒魔法は凄いな。未知の病気も治してしまった。
「凄い……体が軽い。それに症状が消えました」
「本当だ……痛みも体の怠さもない……」
「何て凄い魔法だ!ありがとうございます!」
村人達からは感謝の言葉が尽きない。よほどの苦しみと、明日死ぬかも知れないという恐怖があったのだろう。
こんな事をする、ドレアムに怒りが沸き起こる。
そして、同時にドレアムの厄介さを知った。
「タクト様、アルフィン様、シズク様。本当に本当にありがとうございます。あなた様方のお陰でガルカリ村が救われました。村を代表して、改めてお礼をさせて頂きたい。望む事があれば何でもさせていただきます。仰ってください」
お礼か。俺達は当たり前のことをしただけだし、何か欲しくて助けた訳ではない。それに一番頑張ったのはアルフィンだ。お礼をもらうなら彼女だろう。
アルフィンに決めてもらうか。二人を見ると視線が合った。そして頭を振り欲しいものはないと言っていた。
二人とも同じだったか。
「お礼は必要ありませ……」
クイッ
ん?お礼は必要ないと言うところでローブを引っ張られた。
下を見てみると。
「タクトお兄ちゃん達。家に泊まって! あたしと遊ぼう!」
ナエから上目遣いで首を傾げながらお願いされました。
やばい可愛い。何だこの生き物は。
「「キャアア!!」」
アルフィン達がまたお姉ちゃんモードに入った。
「あらあら。ナエったら」
「すっかりタクトさん達に懐いてしまって」
ナエの両親が。
「はは。それでは今日一泊させてください。あとこの村にある石盤を見させてもらっていいですか?」
「そんな事でいいのですか? 石盤は勿論どうぞみてください」
「ありがとうございます。ナエからお誘いをもらいましたし、俺もガルカリ村の雰囲気が気に入ったので」
「そうでしたかそれは嬉しいですね。それでは、夜は村全体でおもてなしをさせて頂きます。後でまた広場に来て下さい」
「分かりました。それじゃあナエの家で休ませてもらおうかな?」
「うん! 行こう! 行こう!」
再びナエに手を引かれ、ナエの家まで行った。
手を引かれながら両親にお礼を。
「すいません。成り行きでこうなってしまいましたが」
「いえいえ。私たちこそ、こんなにしてもらいながらまだ何もお礼をしていなかったので」
「そうです。今日は自分の家だと思ってゆっくりしていってください。狭い家ですが」
「ありがとうございます。お世話になります」
「タクトお兄ちゃん。早く! 早く行こう!」
「あらあら。ナエったら」
ナエと遊びながら、夜まで待つことにした。
ナエには兄妹がいないからか、とても喜んでくれた。俺もナエが妹みたいで可愛い。
やがて時間が経ち広場で村を上げての歓迎を受けた。
料理はこの村独特の名物料理を出してくれ、ガルカリ村の躍りと、催しを観ながら村長さんやナエの父親ともお酒を飲み多いに盛り上がった。
夜はナエ宅でまったりとしつつ、ナエと遊んだ。
アルフィン達がナエをお風呂に入れている間に、俺は石盤に魔力を溜めて、使える様にしておいた。
石盤を生かした事で、南大陸の〈始まりの洞窟〉と繋がった。これでここと、南大陸を行き来出来る様になった。この調子で石盤を使える様にしていけば世界中を移動できる。
そろそろナエが眠たそうにしたのを合図に、今日はお開きにすることになった。男性陣、女性陣と別れて寝ると思ってたんだが。
「タクトお兄ちゃん! 一緒に寝よう!」
ナエが俺と同じ布団で寝たいと、言い出した。
「……いいのか?これは」
俺は別にいいのだが、ナエの教育上大丈夫かと少し心配だったがナエのごり押しと、俺の隣は誰にするとのアルフィン、シズクの会議でどうでも良くなった。
しばらくぶりに布団で寝れたので皆も熟睡だった。
翌朝。
村で一泊のおもてなしをうけた俺達はガルカリ村を出て、大陸中央の石碑に向かうことにした。
「本当に数えきれないぐらいお世話になりまして、誠にありがとうございます。旅立たれるのは寂しいですが、またこの村に来てください」
「いえ。俺達こそありがとうございました。この村の石盤を利用することもあると思いますのでその時はまた、お世話になります」
「お兄ちゃん達……行っちゃうの?……」
ナエが俺の元まで来て、ローブを引っ張りながらどこぞの消費者金融のCMみたいに、涙をためた眼で見つめてくる。
うっ……この目線は反則だ。ナエがここまで俺達に懐いてくれて嬉しいし、俺達もナエが可愛い。だからここでお別れするのも寂しいのだ。
「ナエ。直ぐには難しいけど、また会えるから。その時また遊ぼうな?」
しゃがんでナエと目線を合わせた。
「……本当?また遊んでくれるの?」
「ああ。約束だ。お父さんの言うことをちゃんと聞くんだぞ?もう危ないことをしては駄目だ」
「わかったの。もう勝手に抜け出したりしないよ」
「よし。良い子だ」
ナエの頭を撫で、村を出た。
ナエは俺達の姿が見えなくなるまで手を振っていた。
「ナエちゃん。ホントに素直で可愛いかったですね」
「はい。本当に妹が出来たみたいで、村の皆さんもとても良い人達でした」
「また来ることもあるから、その時が楽しみだな」
村を出て、二時間程の距離を歩いていると。
ドオオオン!
ドガァァァンッ!
爆発音の様な音が鳴り響いた。
音の方角は……。
この方角は……。
「タ、タクトさん……この音は……」
「……この方角は……」
「……ああ。ガルカリ村の方からだ……」
この爆発音……。
嫌な予感がする……。
お読みいただきありがとうございます(*´▽`*)




