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23話 ナエ・オサナギ

いつも読んでくださる方、新たに読んでくださる方、ブクマしてくださる方。

本当に本当にありがとうございます!(^人^)

よろしくお願いしますm(_ _)m

 




 樹海の入口付近で幼い女の子が魔物に囲まれていた。

 女の子は上級魔物二体に、にじり寄られ、手に持つ杖をぎゅっと握り締めながら後退りをしていた。


 この状況はマズイな。



「先に行く」



 俺は最速の縮地で女の子の前に一気に移動した。

 そのままの勢いで二体の魔物に、高密度の魔力を込めた拳を叩き込み吹き飛ばす。

 魔物の消滅を確認した後、後ろの女の子を見た。


 女の子は10才ぐらいだろうか。

 栗色の髪を大きな赤色のリボンで結びツインテールにしている。

 涙を流して目が真っ赤になっているが、大きな目がクリクリとしていて、顔立ちはとても可愛い。



「大丈夫か?怪我はないか?」



 片膝をつき女の子に目線を合わせる。



「……」



 女の子は突然の事態に、心の処理が追い付いていないのか目をパチクリとしていた。



「ううっ……。グスッ」



 次第に落ち着いて先程の恐怖を思い出したのか。



「うわぁぁぁぁぁん!!」



 俺に突撃タックルをかまし、俺の胸で大声で泣き出した。

 よほど怖かったのだろう必死にしがみつき泣いている。

 当たり前だ。まだ幼い女の子がこれだけ怖い思いをしたんだ。



「タクトさん! 女の子は無事ですか? 怪我があれば治します」



「すいません。わたしの縮地ではタクトさんの速度に追い付けませんでした」



 アルフィン達が駆けつけてきた。



「大丈夫だ怪我もないようだし。魔物に襲われた恐怖を思い出したんだろう。よしよし良く頑張ったな」



 胸で泣いている女の子の背中を擦りながらアルフィン達に説明する。



「そうですか。無事で良かったです」



「こんなに小さな子が何でこの樹海に」



 確かにな。

 こんな小さな子が樹海にいた理由は気になる。

 大陸東部に人々が暮らす村があるみたいだけど、ここはまだ大陸中部だ、ここからまだ距離がある。

 子供の足ではそれなりに時間もかかるし、ちょっと遊びに来たというには遠いな。


 事情を聞くにしても泣き止んでもらわないといけないが、これは簡単には泣き止まないかもな。


 三人で必死に慰めた後、やっと女の子は落ち着いてくれた。



「グスッ……」



「大丈夫か?もう怖い魔物はいないから安心してくれ」



「……お兄ちゃん……誰?」



 お、やっと落ち着いたかな?



「俺はタクト。こちらのお姉ちゃんがアルフィンで、こちらのお姉ちゃんがシズクだ」



「タクトお兄ちゃん。アルフィンお姉ちゃん。シズクお姉ちゃん」



 女の子が俺達をそれぞれ指をさしながら名前を言っていく。

 何か可愛いな。この子には悪いけど犬とか猫とかを可愛いと思う保護欲と同じ物を感じる。


 そう思ったのは俺だけではなかったみたいだ。



「キャアア!! 可愛いです!!」



 アルフィンが。



「これは! 何とも言えないものを感じますね! 妹がいればこんな感じなのでしょうか」



 シズクが。


 二人とも完全にお姉ちゃんモードになっていた。



「う?」



 女の子が首を傾げる。

 するとまた後ろのお姉ちゃん達が「キャアア!!」と騒ぎだす。



 いつまでも話が進まないので強制的に先に進もう。



「名前教えてもらっていいか?」



「ナエ。ナエ・オサナギ」



「そうか、ナエというのか。何でこんな所に一人でいたんだ?」



「……あたしのお父さんとお母さん、村長様達が突然病気になって……薬草を採りに来たんだよ」



 病気か。疫病かなんかだろうか。



「それでここの樹海にしか生えてない、この薬草を採っていたんだけど……魔物に襲われたの」



 ナエは薬草を見せてくれた。

 鑑定スキルを使うと。

 この薬草は〈霊草〉という。様々な毒や病気を緩和する作用があり、進行を遅らせる効果があると表示された。



「でも何で一人で?」



「村の霊草が無くなっちゃって、誰かが採りにこないと村の皆が死んじゃう。だけど、症状が軽い人は村を守んないとダメだから。だからあたしが、一人で村から抜け出して来たんだよ」



「ナエはその病気には罹らなかったのか?」



「うん。あたしだけ何でか罹らなかったの」



 ナエ()()()罹らなかった……。



 気になったのでナエのステータスを確認する。



 ナエ・オサナギ

 ガルカリ村の村民

 レベル13

 スキル 魔力操作(小)、魔力耐性(特)、遠距離魔法(小)、潜在魔力(高)



 ……この子の魔力耐性が異常に高いのも関係しているんだろうか。それに潜在魔力が高い。

 今はまだ魔力操作が未熟だが、鍛えればかなりの魔法を扱える様になるだろう。

 しかし。

 ガルカリ村に突然の病……そしてナエだけが罹らなかった……何か引っ掛かるな。




「ナエちゃん。無事で良かったです。村の皆さんはわたくしの治癒魔法で治せるかもしれません」



「ホント? アルフィンお姉ちゃん!」



「そうと決まったら早くガルカリ村に向かいましょう。村の皆さんを治してあげましょう」



「そうだな進行を遅らせているだけなら心配だ。早く行ってあげよう」



「うん! おねがいします!」



 ナエが元気一杯に頭を下げた。

 ナエと一緒にガルカリ村に急ぎで向かった。



 ナエの歩行速度に合わせると遅くなるので、俺の背中に背負いながら走って移動している。



「うわぁっ高ぁい! それに速ぁい!」



 俺の背中にしがみつき、ご機嫌に足をパタパタとしておんぶを満喫しているナエ。

 俺には妹がいなかったが、いたらこんな感じだったのかな。


 そういえば石碑は後回しだな。

 今はナエのご両親達が優先だ。


 移動しながらナエは村の話と、病気の特徴を教えてくれた。


 ナエの村には村人が戦士隊を作って村を外敵から守っている。

 たまにだが樹海から魔物が村まで来るらしい。それを討伐するのが戦士隊みたいだ。上級魔物を大人数でだが倒せるのなら戦士達はそこそこに強いのだろう。


 それと病気だが、今までにこのような突然に疫病が流行ることはあったかとナエに確認したが、なかったみたいだ。

 俺はこの病気の裏には何かあると確信しつつあった。


 ガルカリ村にはワープの石盤があり、これを悪用する者から守るのも担っているらしい。

 ワープの石盤か。生かせればまた旅が楽になる。



「タクトさんばかり、ズルいです。わたくしもナエちゃんをおんぶしたいです。でも急いでいますしわたくしの背中では狭いですよね」



 先程からナエの話し相手をかって出ていたアルフィンだったが、アルフィンもナエを構いたいのだろう。



「あはは」



 シズクはそんなアルフィンをみて笑っていた。




 途中で休憩を挟みながら3時間程移動してガルカリ村に着いた。


 村はそこそこの大きさで、外からは村人が住む家と畑と牧場の中には家畜の姿も見える。

 魔物の襲撃に備えてか、外壁は頑丈な造りで、簡易的な魔法兵器が取り付けられている。


 村の入口に近づくと先程話していた戦士隊がいた。

 俺達は村まで走っていったナエの後をついていく。



「ん? ナエ!!」



「え? あ、本当だ! ナエどこに行ってたんだ!」



 ナエの姿を見た戦士隊は驚きつつも、村を勝手に抜け出したことを怒っていた。

 だが体が怠そうで、それに顔色が悪い。無理しながら警備をしているんだろう。



「ごめんなさい。この霊草を採りに樹海に行ってたの」



「霊草を……。でも危ないからもう絶対に勝手に抜け出しては駄目だ。ナエに何かあったらお父さん達が悲しむから。な?」



「うん。わかったの」



「よし。ナエ、後ろの人達は誰なんだ?」



 戦士達がこちらを向いた。



「タクトお兄ちゃんはあたしを魔物から助けてくれたんだよ」



「冒険者の方とお見受けするが、ナエを助けてくれたこと感謝する」



「いえ。お礼を言われることではありません。ここに来るまでにナエから村の状況をお聞きしました。もしかしたら俺達で力になれるかもしれません」



「なんと! それがまことなら助かる。ただ、先に村長様に会ってもらいたい。この村のしきたりですまないが」



 ん? 村長……そういえばギルドからの依頼で村長さんに渡す物があったんだちょうどいい。この病気が流行った状況も詳しく聞きたかったから。



「はい。それで構いません」



「それではついてきてくれ」



 案内に従い村に入ると、中は病気の影響だろう、活気が感じられずどんよりとしている。

 村人達は調子が悪いのだろうか家で休んでいるのか、外に出ている人も少なく、その人達からも生気が感じられない。


 これは思っていたよりも重い状況みたいだ。

 こんな状況ならナエが村を抜け出したのも分かるな。


 村の奥には一際大きめな家があった。



「ここが村長様の家になる。報告してくるので少し待っていてくれ。ナエも一緒にこい」



「うん」



 ナエと二人で家に入っていった。

 待っている間にこのガルカリ村の状況で、気になる所を二人に話しておこう。



「アルフィン、シズク。これから村長さんに話を聞くんだが、俺はこの村の状況は、意図的に引き起こされたと思っている」



「それは……どういうことでしょうか?」



「この病気を村に流行らせた者がいる……と?」



「まだ確証はないが、おそらくな。この病気は聞く所によると、突然に発症した。

 それに直ぐに発症した者は死ぬのではなく、じわじわと苦しませてから死亡させる病だという。

 こんなものが自然発生で突然罹ったりするのか?今までこんなことなかったのにか?

 そして、これを引き起こしたのはハーディーンの四天王ドレアムだと思っている。ドレアムは非常に残忍な性格をしていると聞いた。その辺のことを村長さんに聞けば何か分かるかもしれない」



 二人は俺の見解に驚いている。



「タクトさん。その情報はどこから聞いたのですか? ドレアムは四天王で唯一名前しか判明しておらず、どんな者かも分からないはずですが」



「私もです。他の四天王の情報は各国で知れ渡っていますが」



「それは後で、石碑を見に行った時に話すよ」



 二人はユーリの魂が俺の魂の中にあることを知らない。

 ユーリは石碑を確認した後に起こすことになっている。

 今はまだ眠っているようで反応がない。

 その時に二人にはユーリの存在を話そう。


 ちょうど話が終わったタイミングで戦士の人が村長宅から出てくる。



「すまない待たせたな。村長様に伝えてきた中に入ってくれ」



「分かりました。二人とも中に入ろうか」



 村長さんへ報告は終わったみたいだ。

 それじゃあこの事態の真相を確認しよう。




お読みいただきありがとうございます(’-’*)♪


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