21話 試練の遺跡
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どうやら話は終わったみたいだな。二人が戻ってきた。
アルフィンは聞きたい事が聞けてスッキリしたような顔で。
シズクは照れを隠しているような顔で。
だけど、シズクは何か吹っ切れた良い顔をしている。
何を話していたのか気になるけど聞かないのが正解だよな?
「タクトさん。お待たせ致しました。シズクはもう大丈夫です」
アルフィンから首尾よく解決したと言われ、シズクの顔を見てみる。頬は少し赤くなっているが目線を外さずにしっかりと見てきた。
もう大丈夫そうだな。
「よし! それじゃあ先に進んでみようか」
「「はい!」」
遺跡内を探索していく。
今のところ魔物とも遭遇せず、トラップもない状況に拍子抜けするぐらいだった。
遺跡前の石碑には訪れた者を試す様な文字があったから、てっきり中は魔物だらけの、トラップだらけを想像していたんだが。
しばらく歩いているがその気配は感じられない。
「ここまで何もありませんね」
シズクが何も起こらない状況に警戒を解いたのか話し始めた。
「そうですわね。魔物も出てきませんし、トラップもありません」
「石碑に俺達を試す様な事が書かれていたから、何かあると思ってたんだが」
この遺跡の事について話ながら更に進んでいくと、道の先が広くなっているのが見えた。
「この先は広くなっているみたいだな。何かあるかもしれない気をつけて進もう」
俺の言葉に二人とも気を引き締め頷く。
ホールはクリスタルが辺り一帯を埋め尽くしていた。
それにここだけ魔素の濃度も濃く、奥には紋章が刻まれている扉がある。
……ゲームだと大抵こういう時ボスが現れるよな。しかも強いのが。そしてボスを倒すと更に先に進めるようになるんだ。
「二人とも多分ここで戦闘になると思う。気をつけ――」
二人に改めて気をつけるよう言おうとしたら。
中心で魔方陣が輝き、一体の魔物が現れた。
ほら。やっぱり出たよお決まりだよな。
これは不思議な魔物だった。
現れたのは15メートル程の巨大なトラ型の魔物。
魔力圧力は明らかに上級魔物よりも強力だ。
だがこの魔物からは邪な感じがしない。通常の魔物は例外無く禍々しい魔力を放っている。
この魔物はどちらかというと、清らかな感じがする。
この魔力はどこかで感じた事がある。
どこだったか……。
そうだ……トランスヴァールの石碑から出ていたユーリの魔力と同じなんだ。
目の前の魔物を見てみる。
ステータスオープン。
ヘル・タイガー
特級魔物(善)
レベル66
これが特級魔物か。
上級とは明らかにレベルが違う。
溢れだす魔力は魔物の中でもずば抜けている。
魔物は俺達の動きをみているのかこちらへ襲ってこない。
倒さないと先に進めないのならやるしかないか。
「二人ともあの魔物を倒して先に進むぞ。あれは特級魔物だ。今まで俺達が戦った奴等より格上だ。気をつけろ」
「はい。サポートは任せてください!」
「鍛えた力存分に奮わせてもらいます!」
こちらのやる気を感じ取ったのか。
「グオオオオオオオッ!!」
魔物が咆哮を上げた。
よしこれもレベリングの一貫だ戦うぞ。
特級魔物との戦いが始まった。
「タクトさん、シズク。お二人の防御力を上げます!」
アルフィンが俺達の防御力アップのバフを。
「わたしは接近して、魔物の速度と硬度をみます」
シズクが近接戦闘で魔物の強さを測り。
「分かった。俺は攻撃とシズクのサポートをしよう」
俺は遊撃だな。
全員で意識の共有を図る。
「剛壁!!」
バフ魔法で俺達の防御力が上がる。
「ハァッ!!」
シズクが縮地で一気に接近し魔物の死角から切りつけた。
ギンッ
シズクの刃は尻尾で受け止められる。
受け止めた尻尾は魔力で硬さを増しているのだろうシズクの刃を通さない。
「クゥッ硬い! それなら!」
シズクは数歩下がり居合い術の構えを取り。
「桜月花!!」
中距離より放たれたシズクの斬撃をヘルタイガーは体を捻り避けた。
スピードも速くて、その上硬さもあるのかやっかいだ。
魔物はそのまま俺達から距離を取る。
そこから俺達の方を観察でもしているのかジット目線を送ってきた後、ヘルタイガーの口から魔力反応がした。
周辺の魔素を吸い込み、それがどんどんと形成されていく。
「アルフィン結界を。魔法が来るぞおそらく風属性の上級魔法だ」
籠められている魔力量と質から上級の風属性魔法だと分かった。
「いきます! 領域断絶!!」
上級の結界魔法が全員を囲んだ。
アルフィンが結界を張った直後にヘルタイガーが魔法を放った。
ドオンッ
魔法が結界にあたる。
結界は少し削れたが魔法を防いだ。ここまでの鍛練でアルフィンの結界魔法は上級魔法を無効化させる程になった。
さて。どうするか。
確かに強いが正直俺一人でも倒せる。
特大魔力操作で身体能力強化して格闘戦で弱らせた後、特級魔法をぶっぱなせばいけるだろう。
だけど、ここは三人で勝ちたい。二人に経験を積ませるのもあるが、これから先四天王と戦うんだ。
これぐらいは簡単に倒せないとその先の四天王、ハーディーンには勝てないからだ。
だからここは俺はサポートに撤するか。
「次は魔物の防御力を低下させ、こちらには攻撃力上昇魔法を使います。精霊の息吹き!!」
アルフィンが俺達の攻撃力を上げ、ヘルタイガーの防御力を下げた。
「わたしは身体能力強化と破魔も全力でいきます」
シズクはまだ本気を出していない。
この樹海での鍛練により目覚めた破魔のスキルを使うのだろう。
俺は引き続きシズクのサポートと攻撃かな。
破魔の力は強力だが、溜めに時間がかかる。
その間は無防備になるから俺がシズクを護りつつ、ヘルタイガーの相手をしよう。
「 ハァァァ!!」
シズクが身体能力を引き上げつつ、刃に破魔の力を溜める。
俺は大魔力を体に纏い身体能力を高めた後。
「ライトニングライズ!!」
周辺に1メートル程の雷属性の球を五つ作り出した。それらを俺の体の周りに浮かべる。
「それじゃあいきますか」
縮地で魔物の右斜め前へ移動し、右足を顔面に叩き込んだ。
ヘルタイガーは俺の縮地に反応できず、その場から動けない。俺の蹴りをまともにくらい吹き飛んだ。吹っ飛びながら空中で姿勢を整えようとするが。
「させないよ。これでもくらえ」
周辺に浮かせていた雷の球を全部その巨体にぶつける。
この球は一つが上級魔法一発分の威力がある。
「グオオォォ! ガアァ!」
ヘルタイガーは三つくらい、二つを咆哮で消し飛ばした。
全部は当てられなかったか。
だがまぁまぁのダメージを与えられた様だな。HPが3割減っている。
ヘルタイガーは地面に着地し、唸り声を上げながら俺を睨んでいる。
そろそろシズクも準備終わったか?
後ろのシズクからはビリビリと魔を祓う力が伝わってきた。
「タクトさんお待たせしました。いけます!」
シズクを見ると手には金色に輝く刀を持っていた。
破魔の力は聖属性のスキル。
より魔物に特化した専用スキルだ。
「了解。それじゃあ俺は後ろで控えているよ後は頼む」
俺はシズクと交代で後ろに下がった。
まず大丈夫だと思うが、何かあれば助けられる様にしとくか。
「フゥ―――」
シズクが息を一つ整えた後、先程よりも高速な縮地で近付きヘルタイガーに切りつけた。
ヘルタイガーも先程と同様に、尻尾で刃を受け止めようとするが。
ザンッ
ヘルタイガーの尻尾は切り飛ばされた。
「グオオオッ!」
痛みからか咆哮を上げるヘルタイガーも、先程よりも俊敏にシズクへと右腕の鉤爪を振り下ろす。
シズクはそれを見極め、回避する。
シズクは振り下ろされた右腕に刃を走らせ、切り飛ばした。
アルフィンのデバフ魔法が効いてるのもあるが、やっぱり切れ味は段違いだな。レベル差をものともしない威力だ。
使えるまで溜める時間が必要だが、一度発動すると特級魔物でも相手にならなくなる。
本当に強くなった。
そしてアルフィンもだ。
何気無くバフとデバフ魔法を同時に扱えるのは物凄い魔力操作が必要。
通常は別々にかけるものだが、アルフィンもこの樹海で成長して扱える様になった。
サポート魔法だけではなく、治癒魔法もレベルアップしている。
死んだものは生き返らせられないが腕の欠損程度では一瞬で治してしまう。
アルフィンも本当に強くなった。
ヘルタイガーもあと三割程のHPしか残されていない。
あと一撃ぐらいかな。
シズクはとどめを指すため、構えを取った。刃はより一層に金色を増す。
「とどめです。聖破斬!!」
金色の刃を一気に振り下ろした。
斬撃は地面を削りながらヘルタイガーへと向かっていく。
ヘルタイガーに近付くほど光の斬撃は威力を増すように大きさと速度が上がっていく。
ヘルタイガーも即座に口から先程よりも強力な風属性の上級魔法を放つ。
だが。
シズクが放つ光の斬撃は魔法をもろともしない。
魔法を真っ二つに切り裂き、ヘルタイガーごと両断した。
「グゥルゥオォォォォ」
断末魔をあげ粒子になって消えていった。
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