20話 シズクの気持ち
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その後俺達は更にレベリングに明け暮れ、中央大陸に来てから3週間が経過していた。
その間もひたすら上級魔物を相手に戦いまくる毎日。
この大陸に来たばかりの頃に作った要塞から、今ではだいぶ西側へと行動範囲を拡げている。
樹海に出てくる魔物は、ほぼ狩り尽くした。
魔物は時間と共にまた現れる様だが、これだけ狩っているなら復活するのはだいぶ先だと思う。
「この辺も把握出来たから、今日はもう少し西側に進んでみようか」
「ここでの魔物の気配もなくなりましたね。先の方ではまだまだいるみたいですが」
「今はどのぐらいまで制圧出来ているのでしょうか?」
地図を取り出して確認する。
「ここまで来ているから……大体8割ぐらいか。今日で9割いけるかどうかだな」
そう。俺達はあと二割ほどで樹海を探索し終わる所まで来ていた。
「あと少しまで来たんですね」
「私達もここでの生活にだいぶ慣れました。
最初は正直不安でした上級魔物ばかりで、群れで襲われた事もありましたし。タクトさんに……庇ってもらったことも……」
シズクが何か思い出した様に顔が赤くなっている。
俺をチラチラと見つめていた。
シズクの様子がおかしいのは続いていた。と言うよりも悪化してる気がするが。
シズクも言っていたが、俺達もここでの生活にもすっかり慣れた。
食事はシズクが主導で美味しい料理を作ってくれ、アルフィンもお手伝いで少しずつ料理を覚えている。
料理の腕が上達しているのが嬉しいのだろう生き生きとして頑張っている。
食材はクリスタで大量に買い込み、収納魔法で異空間に入れていたので問題ない。
収納魔法もいくつか効果を追加したので、食材が腐る等の心配もなくなった。
異空間内を何個ものエリアに分けて冷凍、冷蔵が出来る様にしている。
収納魔法の発動及び維持には大量の魔力消費が必要だけど元々俺は魔力量が規格外らしく、負担にはならなかった。
その為魔物を食べざるを得ない最悪な状況にはならない。
風呂も俺の魔法で作り出せる為不便していない。
風呂の制作や、テーブル、椅子等を作るクリエイト魔法も上達してきた。
細かい部分等を把握出来れば更に様々作れる様になると思う。
ちなみに中央大陸に来るまでに船の構造も把握したので必要になれば作成は出来る。
洗濯も湖を利用して出来るし、時折スコールが降るので雨水も利用できる。まぁ魔法で水を作り出せるから水に関しては問題ない。
睡眠も魔物感知のトラップを設置しているので咄嗟にも対応出来るから見張りも必要なく、ぐっすりと眠れている。
仮に奇襲されても上級魔物に遅れをとることはないほど俺達は強くなっていた。
樹海の探索も順調だ。
拠点スペースは移動しながらポイント毎に作っていった。
最初の大陸中央側、樹海の二割ほどの距離、半分の所に、そして今いる所に作り制圧しながら進んでいる。
今日はまだ探索していない西側へと更に歩みを進めている。
この樹海もあと少しの探索で完全に制圧出来るところまで来ていた。
ただ、少し変わったことがある。
先程の様に常にシズクから視線を向けられると言うか、シズクが時折俺を見つめてくるのだ。
料理をしながらボーッとしている時もある。
戦闘は集中出来ているみたいだけど、戦いが終わりふとした時に見つめてくる。
やっぱりこないだシズクを庇って抱きしめた時からだよな。
シズクからは何も言ってこないし、聞いても何も無いと言われ、こちらから近づくと慌てて距離を取られる。
……今はいいか。何かあればシズクから言ってくれるかもしれない。
さて、ここらで現段階の俺達のステータスを確認しておこう。
先にシズクから。
シズク・ナナクサ
聖樹教会騎士、魔王軍騎士
レベル56
スキル 剣術(特)、近接戦闘(大)、中距離戦闘(中)、身体能力強化(大)、縮地、気配察知、調整(破邪)、破魔
シズクは剣術、近接戦闘がパワーアップした。
調整のスキルも完全に身に付いた。
そして、シズクが一番パワーアップしたのは破魔のスキルを覚えたこと。
これは今まで使っていた破邪の力とは違う。破邪はあくまでユグドラシルを維持する為の調整のスキルの副産物。
魔を祓う力という意味では系統は同じだが、破魔はより強力だ。
破魔は聖属性のスキルが使える。対魔物には絶大な効果を発揮する。
続いてアルフィン。
アルフィン・ライゼ・トランスヴァール
トランスヴァール皇国王女、魔王軍治癒術士
レベル55
スキル 治癒魔法(大)、サポート魔法(大)、攻撃魔法(中)、身体能力強化(中)、気配察知、同時魔法行使
アルフィンは治癒とサポート魔法が成長した。
中級魔法も身に付いたので準火力としても期待できる。
そして、同時に二種類の魔法を使える様になった。
例えば味方の攻撃力を上げながら相手の防御力を下げるのを同時にだ。このスキルは凄い。
最後に俺。
タクト
成長した魔王
レベル65
スキル 特大魔力操作、近接戦闘(特)、ステータス表示、経験値ブースト、縮地、限界突破、クリエイト魔法、気配察知、結界、鑑定、???(現在使用不可)
俺は近接戦闘など戦闘面の強化と謎のスキルが表示される様になった。現段階では使用できないし概要も分からないけど。
魔力操作も特大まで扱える様になった事で、俺がこのマギア・フロンティアに転生された日にユーリが使った魔法を俺も使える。
ここまで強くなってから気付いたが魔法はまだ上のステージがあると思う。多分ユーリは使えるんだろうな。
鑑定スキルも使えるようになったのは便利でいい。これからの旅にも大いに役立つだろう。
漫画でよくある一時的にだが、自分の限界を突破する事も出来るようになった。
短時間しか身体が持たないから本当に困った時しか使えない。一度使ったが、しばらくの間疲労が半端なかった。
俺達は全体的にかなりの強化をすることが出来た。
目標通りこの辺の魔物の平均レベルを越え、上級魔物もそれぞれ苦もなく倒せるようになった。
これで一つ護り抜く力を得た。これから更に精進する必要もあるが。
ここでの探索も終わり、今日の予定した距離に到達した先に遺跡が現れた。
ここだけ他とは明らかに雰囲気が違う。
遺跡の周りには樹木も生えていない。
魔物の気配も感じられなかった。通常の樹海では魔物の鳴き声や物音が聞こえていたが、ここだけ静寂に包まれ、時間の流れに逆らっているような感じがする。
遺跡前には石碑が置かれていた。ワープ魔法の石碑とは別物のだ。
そこには文字が刻まれている。
「えっと文字が書いてるな。《ここは試練の遺跡。魔王の称号持つ者、その一行のみ中に入るのを認める》か」
「これはタクトさんの事ですよね。そしてわたくし達の事も」
アルフィンの言うとおり、ここで刻まれていることは俺達の事で間違いないと思う。ユーリ以降魔王の称号持ちは現れなかったから。
「あぁ。十中八九そうだな。シズクはどう思う?」
「…………」
シズクから視線を感じ、シズクにも意見を聞いてみたがまたボーッとしていた。
「シズク本当に大丈夫か?体調悪いなら言ってくれよ?ここまで順調に来ているんだ。少しくらい休憩に充てても大丈夫だから」
「ほ、本当に大丈夫です」
「タクトさん。シズクも大丈夫だと言っていますから。そっとしておきましょう。ね?」
アルフィンがウィンクしながらそっとしておくように言う。何か知ってるのかな。
「わかったそういうことなら。今はこの遺跡をどうするかだ」
遺跡には結界がはられている。
多分この結界を解除しないとダメなんだよなこういう場合。
触れば何か分かるかなと思い右手を結界に近づけると。
結界から文字の列が現れ俺の右手から体にまとわりついていく。
な、何だ?この文字は。何かされるのかと焦っていると石碑の文字が光だし、遺跡を覆う結界は消えた。
「これは……」
「おそらくですが。結界がタクトさんの魔王の称号を読み取ったのかと」
「結界が称号を確認したんですよね?……凄いこんな魔法があるなんて」
確かに。判別魔法と言うのか分からないけど多分ユーリが作成した物だろう。凄いなこんな使い方も出来るのか。
「とりあえず中に入れるようになったみたいだから確かめてみるか」
封印が解かれた遺跡の中に入る。
遺跡内は不思議な感じがした。
全体に魔力付与されているような。通常のダンジョンとは違い、禍々しい邪素みたいなものも感じられない。
それに何もしてなくても魔力が回復していく。
遺跡全体が魔素に満たされているような感じだ。
俺が遺跡を調べていると。
アルフィンから「少しシズクとお話がありますのでちょっと席を外しますね」と二人して俺から離れた所で話していた。
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シズクside
試練の遺跡に入った所でアルフィン様に話しがあると言われた。多分ここ最近のわたしの腑抜け様についてだろうか。
わたしは今人生で初めての感情に戸惑っていた。
聖樹教会にいた頃に読んだ恋愛書籍や先輩騎士達の恋愛話を聞いて恋とはどういうものなのかを知識として知ってはいたが、実際に自分がこういった感情を感じた事はなかった。
タクトさんに出会うまでは。
初めてお会いした時、タクトさんはアルフィン様と神殿へ来た。
その時は誠実でユーモアもある男性だと思った。
リアンヌ様に旅に同行するよう言われ、一緒に行かせてもらった。
クリスタ王国から客船に乗りこの大陸に来るまでの間、わたしの鍛練に毎日付き合ってくれた。
タクトさんはわたしよりもずっと強者で戦い方も教えてくれ、縮地も教えてもらった。
アルフィン様が船酔いで寝込んだときも献身的に看病をして、わたしにも親切に教えてくれ、そして……。この間わたしの不注意から危なかった所を抱き締めて護ってくれた。
それから……それからわたしはタクトさんを意識せずにはいられなくなった。
だけどタクトさんにはアルフィン様がいる。
アルフィン様のタクトさんへの想いもわたしは知っている。それなのに後から付いてきたわたしがタクトさんへ恋心を持つなんて。……気持ちを切り替えたくてもできなかった。
わたしはタクトさんを好きになってしまった。
「シズク」
「アルフィン様……」
「シズク一つ聞いてもいいですか?」
「はい……何ですか?」
「タクトさんが気になりますか?」
「えっ……あ、あの……」
「タクトさんを一人の殿方として意識しているのではないですか?」
「…………」
「シズク。誰かを好きになることは悪いことではありません。
その人を想うだけで、毎日に綺麗な色が着いていく。どんなことをしていても楽しい。その人に見つめられると嬉しい。
その人に何でもしてあげたい。この気持ちは大切なんです」
「…………」
「まして、タクトさんは素敵な殿方です。優しくて、包容力もあり、とてもお強いですし。わたくしもお慕いしております。シズクが意識してもおかしくありませんわ」
「ですが。アルフィン様が先にお慕いした方をわたしが……」
「いいではありませんか。同じ人を好きになっても。
タクトさんはわたくし達を同時に幸せにできない程、甲斐性が無い方ではありませんよ。
いっそ……第一王妃、第2王妃として……いやでもこの場合はタクトさんが婿として…………ブツブツ……」
「ア、アルフィン様?……」
暴走モードに入りかけているアルフィン様に少しひいてしまった。
「それにわたくし達は幼馴染みです。シズクが何に悩んでいるかも分かりますよ。
わたくしは幼い頃より共に育った大切なシズクだからこそ同じ人を好きになろうとも構いません。他の人では絶対に嫌ですが」
「アルフィン様……分かりました。自分の気持ちと向き合ってみたいと思います」
「ええ。頑張りましょう!」
アルフィン様ありがとうございます。お陰で自分の気持ちと向き合えそうです。
今はこの気持ちを大事に育てていこう。
タクトさんにみてもらえる様に。
シズクside out
お読みいただきありがとうございますヾ(○・ω・)ノ




