1話 異世界
よろしくお願いします!
楽しんでもらえると嬉しいです(^^)
転生を承諾した俺は、女神から幾つかのギフトを貰らった。
その後、この異世界で護るべき対象だというアルフィン王女の近くまで転送してもらうと、広い草原の道端に立っていた。
「ここが異世界か?」
周りを見渡して確認してみる。
空も青く、風も心地良いし木や草も生えている。
遠くを見ると森も確認出来た。
パッと見た感じは、地球と変わんない。
送られた先が、あまりにも地球とかけ離れた環境とかだったら大変だ。
酸素濃度が薄いとか、重力100倍とか。
そんな、漫画の世界みたいな所でなくて良かったよ。
さて。
状況確認はこれくらいにして、まずは、アルフィン王女と合流してこの世界の事や、邪神の事を聞かないとな。
この世界のこと何も知らないし。
それに、せっかくギフト貰ったけど、使い方とか戦い方を学ばないといけない。
「とりあえず、情報収集がてら周辺を探索するか。街道が続いてるからそちらに行ってみよう」
女神いわく、アルフィン王女の近くに送ると言ってたから、この辺にいるとは思うんだけど。
「ん?」
暫く歩いてみると、前方から何かが走ってくる音が聞こえた。
「何かの足音が聞こえるな。……人の足音って感じでもないし、それも一つだけじゃない」
足を止め、音のする方向を凝視する。
走っているらしく、土煙を上げながらこちらへと近づいてくるのが確認出来た。
やがて、目の前に三匹の魔物? が現れた。
「あれは……トカゲか? 二本足で立って、右手に剣を持ってる。 しかも俺よりデカイ2mぐらいあるぞ。もしかして、あれが女神が言ってた魔物ってやつか?」
ステータス表示を使ったら、その辺の事とか分かるのかな。
とはいえ、使い方が分からないぞ。
大体こういう時って、ゲームとかだと念じてみると出来たりするけど。
試しに頭の中で念じてみると、魔物のステータスが表示された。
バトルリザード
下級魔物
レベル3
出来た。
魔物は、レベル3か。
一般的なRPGと同じだと、雑魚魔物になるけど。
「俺のは、どうなんだ?」
今度は自分のステータスを確認してみた。
タクト
???
レベル1
???の部分は見れない。
後で分かるんだろうか?
しかし……レベル1。
俺弱っ。
頑張ってレベル上げしないと邪心はおろか、強い魔物にも勝てない。
「でもあれだな。ゲームとかアニメでは魔物は普通に出てきたけど、こうして目の前にすると本当に異世界に来たんだなぁ」
子供の時から何度もゲームの様な世界に行ってみたいと思った。
それが、ちょっと事情は違うけど本当に叶うとは。
「グルルルルッ! ガアアアっ!!」
呑気に考えていると、魔物の一匹が襲いかかってくる。
右手に持っていたサーベルを、勢い良く振り下ろしてきた。
「おっと! あぶね!」
魔物の攻撃を避ける。
それほど魔物の動きは速くはない。
「違う。……俺の動きが速くなったんだ。身体能力を強化してもらっているのを忘れてた。早速ギフトが役にたったな」
とりあえずは、魔物の動きに着いていけそうだ。
あとは、攻撃だけど。
武器は……ないから素手で戦うしかない。
争いは好きではないんだけど、前世ではカツアゲされてる人を助けたり、リンチされてる人助けたり、報復で集団突撃かましてくる奴等ボコってたらケンカ強くなってしまった。
人助けも力無いとできないよね。
「はぁっ!」
走りながら右の拳で殴りつける。
ガンッ。
魔物にボディに当たる。
続いて左のハイキックを顔面に叩き込んだ。
魔物は吹き飛んでいき、ステータスを確認するとHPが0になり魔物が光の粒子になって消えていった。
思いのほかそこまで強くないな。
これなら何とかなりそうだ。
「よしっ。先ずは一匹」
今度は、二匹同時に突っ込んできた。
後ろにバックステップして一旦距離を取る。
助走を取り、今度は本気で走って魔物に近付き、すれ違い様に攻撃を繰り出した。
身体能力が上がったことでただの打撃も有効みたいで、魔物にそれぞれ3発攻撃を当てると、魔物がまた光の粒子に変わる。
「ふぅ」
何とかなったな。たまたま弱い魔物だったのかは分からないけど、この異世界の魔物相手でも戦える事がわかった。
「ん? 何か聞いたことがある効果音が鳴ったぞ。それに体も戦った後なのに、疲れを全然感じないし体が軽くなった気がする。
もしかして、レベルが上がったのか?」
ステータスを見てみると。
タクト
???
レベル3
「レベルが3に上がった。なるほどゲームと同じ設定なら、魔物を倒して経験値稼いでレベルを上げていけば強くなれる。
どのみち邪神を倒さないといけないなら、強くなるに越した事はない。レベル上げながら王女を探してみるか」
考えをまとめながら、更に道を歩いていく。
道中何度か魔物に襲われながら、返り討ちにしてレベルが8まで上がった頃。
看板が見えてきた。
「トランスヴァール? 街の名前かな。この先って書いてある。そういえば……普通に文字を読める。異世界だけど、言語は同じなんだろうか?」
それならその方がいい。
一から違う言語を覚えたくない。
英語でさえ、勉強するのが苦痛で仕方なかったんだから。
まぁ。
でも、文字が読めお陰で、この異世界での生活も少しは楽になりそうだな。
看板に書かれた文字に従い、歩く。
暫くして、道の先の空に赤色の煙が立ち上るのが見えた。
「あの赤い煙はなんだろう?」
煙の方へ走り出す。
先の方から、戦闘音らしきものが聞こえてきた。
音の先に向かう。
「あれは……」
大きい熊のような生き物が、今まさに女の人を襲おうとしていた。
女性の周りでは、鎧を着た人が何人も倒れている。
おそらく、女性の護衛の人たちかもしれない。
見た所、戦える人もいなさそうだし、このままでは女性が危ない。
ステータスオープン
近づきながら、熊の様な魔物のステータスを確認した。
カイザーベア
上級魔物
魔物レベル36
「え? ……カイザーベア……レベル36!?」
何だこのレベルは……今まで相手にしてたの、レベル3とか6ぐらいのやつだぞ。
こんな強いのは、物語の終盤とかに出るもんだろう……。
「やばい……。いくらレベル上がったところで、こんなの倒せない。こちらが返り討ちにされて終わりだ。どうする」
「ウウッ」
倒れていた騎士の人が呻き声を上げた。
まだ息があるみたいだ。
「大丈夫ですか!」
その騎士の元へ向かう。
「グッ……あなたは……旅人の方ですか……お願いがございます。
どうか……どうかアルフィン王女を助けてください……我々の力ではアルフィン様を護ることができず」
騎士の人から助けを求められる。
そうかあの女の子がアルフィン王女か。
騎士の人から前方のアルフィン王女へと視線を向けた。
今にも熊が王女の方へ歩きだそうとしていた。
事態は一刻を争う。
早く何とかしなくてはアルフィン王女が。
「分かりました。出来るだけの事はします」
「……ありがとうございます……どうか姫様を……ウグッ」
騎士の人が動かなくなった。亡くなったのだろう。
「託されたからな。やってみせる!」
注意を引き付けて熊をアルフィン王女から引き剥がせればと、道端の大きめな石を魔物に投げつけた。
「グルっ」
上手く、熊の顔面に当たり注意をこちらに引き付けられた様だ。熊がこちらに歩きだす。
「さて、これからどうするか。さっきまで相手にしていた魔物とは別格だし……勝てる気がしない……だけど、何とかしないと」
何か武器になるものはと、騎士の人が使用していたと思われる
ロングソードを借りる。
「すいませんちょっと借ります。剣なんか使ったことないけど、丸腰よりマシだろう。どのみちピンチなのは変わらない。いよいよヤバかったら王女と逃げるしかない」
勝てないかもしれないが、何とか逃げ出すことは出来るかもしれない。
剣を構えて、熊に駆け出す。
「ハアアアアアアアッ!」
勢いをつけ熊に上段から切り下ろす。
ほぼ避けられたが、かすり傷を追わせられた。
「硬い。さっきまで戦ってたのはやっぱり雑魚だったんだな。だけど、少しダメージを与えられた様だ」
まるで鉄を叩いた様な衝撃が手に伝わる。
それでも、HPバーが少し削れた。
レベル差はあるけど、俺自身のステータスは意外と高いのか全く効かない訳ではないみたいだ。
「それなら、攻撃あるのみだ!」
そして、二度三度と熊に切りつける!
熊の腕と胴体にダメージが入る。
「よし!このまま続ければ!」
そう思い、次の攻撃に移ろうした時。
熊に異変が。熊が光だした。
「なんだ?熊が光だしたぞ」
「気をつけてください! その魔物は、カイザーベアは進化することが出来ます! 進化すると、傷も治りレベルも上がります」
進化?
傷も治っちゃうの?
「マジ?」
「マジです!!」
そのようなやり取りをしていると、熊を包んでいた光が消えた。
「……何か三倍ぐらいでかくなってんだけど。しかもめっちゃ激おこみたいだし」
ステータスを見て後悔した……。
「カイザーベア。魔物レベル40……HPも上がってるし。5もレベル上がったよ……今のでギリギリだったのに……」
「グルル、ガオオオオオオオ!」
熊が叫びだすと同時に、こちらに駆け出した。
巨体の割りにかなりの速度で迫ってくる。
「さっきよりも速い!!」
慌てて剣を構える。
魔物が右手を振り下ろした。
ザシュ!
俺の左腕を掠めた。
「クッ……さっきは、弾いたり出来たのに!」
魔物が連続で攻撃してくる。
「クッ……パワーもけた違いだ」
ガンっキンっガカンっ。
何とか剣で魔物の攻撃を弾くが、一撃一撃が重い。
長くは耐えられないかもしれない。
防ぎ切れなかったダメージも徐々に蓄積されていく。
「腕が痺れてきた! ヤバい!」
ガンガンっ
「しまった! 剣を弾き飛ばされた!」
手に持っていたロングソードを弾き飛ばされる。
このままだとやられると、バックステップで逃げようとするが間に合わなかった。
ブオンっ
魔物の攻撃をもろに喰らう。
ザシュ!
「ぐあぁぁぁっ!」
右胸を抉られそのまま吹き飛ばされる。
胸からは血が吹き出し、痛みの為起き上がることができない。
HPもかなり削られていた。
バー表示の色も赤色に変わっている。
「大丈夫ですか!!」
アルフィン王女が駆けてくる。
「傷は! 酷い!! ………けどまだ間に合う!」
アルフィン王女は両手を俺に向けた。
ポワァっと淡い光が俺を包みこんだ。
同時に、体中の傷が治っていきHPも回復していく。
「……傷が治っていく……これは……」
「これは癒しの魔法です。傷を治しています。ごめんなさい。巻き込んでしまい。貴方だけでも逃げてください私がカイザーベアを引き付けます」
アルフィン王女が謝る。俺にだけ逃げてくれと言う。
「自分だけ逃げるなんてそんな事は出来ない」
「ですが! このままでは二人ともやられてしまいます! 元々は私を狙っていた魔物です。貴方まで一緒に死ぬ必要はありません。助けてくださりありがとうございます」
確かに、普通に逃げてもカイザーベアからは逃げられそうにない。今の俺の強さでは、どうにもならない魔物だ。
だけど。
せっかく転生したのに、このままここで終わるのか?
人1人も助けられないまま。俺は何の為に転生した?
こんな所でくたばる為か?
いや、違う! 冗談じゃない! こんな所で終わってたまるか!
それに、ここでくたばったら……前の世界の家族や友人が!
だけど、どうすればいい? ……今の俺ではあいつは倒せない。
何か他に手立てはないのか!
想いだけでは救えないんだ!
「魔物を倒す力が、皆を護る力が力が欲しい!!」
強く想った時だった
ドクンっ!!!
【見てられないな。力を貸してやる。ここでくだばられても、困るからな】
なんだ?頭が、頭が痛い。それに頭の中から声が聞こえる。
その声が聞こえてから、意識が朦朧としてきた……。
お読みいただきありがとうございます(^^)
面白い作品書いていけるように頑張ります!