14話 石盤
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街を出発した俺達は、再度〈始まりの洞窟〉に来ていた。
先程の心残り、石盤が気になったからだ。
ちなみに馬は使わず徒歩でここまで来た。
では何故徒歩なのかというと。
身体能力強化(アルフィンにはやり方を教えたので初級程度の身体能力強化使える様になった)のと、旅は最初は徒歩でと思ったからだ。
入口横の石盤前に立つ。
石盤には紋章が刻まれていている。
おそらくだが、魔力を注ぎ込むことで石盤に刻まれた紋章を発動させ、ワープ魔法を使うんだろう。
元々はユーリが作り出した物らしいから、ユーリの高密度魔力操作によって魔力を石盤に貯めていたのではないかと考えている。
アルフィンから聞いた感じでは、今の時代には高密度の魔力操作ができて大量の魔力を持つ人が、珍しいのだとか。
それもあって、ユーリ以降石盤は効力を無くしていたのかもしれない。
それを確かめる為に再度ここまで来た。
「もし、またこれを使えるなら旅は格段に楽になる。これから世界各地を旅するなら、これと同じ物を使える様にしていければ移動に関しては効率良くなるな」
「そうですわね。ユーリ陛下の時代は当たり前に使用していたものも、その後扱えなくなった技術や魔法もたくさんありますから」
「私はそこまで詳しくないですが、また使える様になるのでしょうか?」
技術だけではなく、知識も失っている事で昔に当たり前に出来たことも少なくなっているんだろうな。
強化された部分とは逆に弱体化した部分もあるんだろう。
「タクトさん。何か考えがあるのですか?」
アルフィンが聞いてきた。
「ちょっと試したい事があるんだ。この石盤から微量だけど魔力を感じるから、もう一度魔力を込めてみたいと思って。
だから二人とも危険かもしれないから少し離れていて」
二人とも石盤から少し離れた所まで移動する。
「よし。それじゃ」
まず体全体に魔力を纏う。
魔力が行き渡った所で今度は両手に魔力を移動して石盤に集めた。
紋章は3割程輝いた。だが、直ぐに光が消える。
「今のだと、足りないのか」
今の魔力操作は中級魔法ぐらい。
これぐらいじゃ駄目らしい。
この程度で使える様になるなら、大人数で魔力を込めるとかすれば出来そうだもんな。
だけど……。
触った感じ、それだけじゃ発動しない気がする。
何か紋章に試されているような。
もしかしたら、悪用されないように魔力付与とかもしているのかもしれないな。
「なるほど。それじゃ次は全力でいく。アルフィン、シズク吹き飛ばされない様に気をつけて」
「はい、分かりました大丈夫です」
「私も大丈夫です」
二人とも近くの大木に掴まった。これで全力を出しても大丈夫だろう。
再度体に纏う魔力を徐々に高めていくと、魔力が吹き溢れ風が強まり暴風となる。
周りの木々が大きくしなっていき、大気もピリピリとしている。
纏う魔力は上級に達し、特大の手前まで高まった。
それを両手に移動し、石盤に集める。
紋章は半分を越え、8割まで輝いた。あと少しだ。
魔力をさらに込める。
「ハァァァァァァ!!」
ドオオオオオン!!
一気に魔力の奔流が周囲に拡散された。
「これだけの魔力を。流石タクトさんです」
「す、凄い。何て高濃度な魔力……。これだけの魔力を制御出来るなんて……」
魔力を高めきった所で紋章は全体を輝かせた。
眩しい光を放つ。
どうやら成功したみたいだ。
紋章は輝きを取り戻し、石盤からは魔力が溢れているのを感じる。
「よし、成功だ」
「お疲れ様でした。やはりタクトさんだと出来てしまうんですね」
「タクトさんの魔力操作は凄まじいですね。改めて予言の一説を思い出しました」
二人から誉められた。
この作業を世界を旅しながらやっていけばいいんだな。
石盤を作成出来れば更に効率良くなるんだけど。
もっとあちこちに設置するとかすれば、ここまでわざわざ来なくてすむわけだろう?
ただ、石盤は特殊な素材で作られているかもしれないし、石盤の作り方も分からないんだよな。
「これで、ここでやりたいことは終わったよ」
「それではこれからクリスタに向かうのですね」
「ここからなら、どれぐらいかかるのでしょうか」
アルフィンがクリスタまでの道程を答えてくれる。
「ここは、トランスヴァールとクリスタの丁度中間地点ぐらいになります。トランスヴァールからクリスタまで馬車で2日程だったと思いますので、1日程でしょうか」
地図を取り出し確認した。
えーと……トランスヴァールとクリスタの中間ぐらいだから、この辺か。地図に始まりの洞窟の場所を記しておく。
「ここから1日程度か。それなら今は昼過ぎだからもう少し歩いた所で夜営かな」
「そうですね。この辺りには何もありませんから」
「夜営の道具は買いましたから大丈夫ですね」
「それじゃクリスタへ移動するか」
始まりの洞窟を離れ移動した。
道中、初級魔物と中級魔物が出たが問題なく倒していく。
アルフィンにも経験値を稼がせたかったので、サポート魔法をかけてもらい倒していく。
俺もいくつか各属性の魔法を作り、試し撃ちして性能を確認しておいた。
あと、自分の身を守るためサポート魔法のシールドと初級攻撃魔法をアルフィンに教えた。
アルフィンは、治癒魔法の適正が高い分、攻撃魔法の適正は低い。それでも、攻撃魔法は中級ぐらいまでは習得出来る様になると思う。
アルフィンには後衛サポートとして戦ってもらった方がいいだろう。俺とシズクが前衛で、アルフィンが後衛の方がバランスが取れる。
ちなみに今のアルフィンのステータスは。
アルフィン・ライゼ・トランスヴァール
トランスヴァール皇国王女
レベル18
スキル 治癒魔法、サポート魔法、初級攻撃魔法、身体能力強化(初級)
うん。
しっかりと、スキルは身に付いているな。
そこから更に歩いて、クリスタまで半日程となった。
辺りは暗くなってきている。
「暗くなってきたし、今日はここで夜営にしようか」
「それでは準備をしましょう」
三人で夜営の準備をする。
寝床のテントは買っておいたので、組み立てる。
テーブルと椅子は魔法で倒木し、木材を使い作成。
俺は風呂が好きなので、余った木材を使い、魔法でイメージしながら風呂の浴槽も作る。
後は、風呂に入るときに水を作りお湯にすればいい。
実は風呂を作ろうとしたのは、前々から考えていた事だった。
魔法でどこまでの事が出来るかを、俺は考えていた。
この世界には、魔法は二種類存在する。
攻撃系魔法とサポート魔法だ。
ここらで軽く整理しとこう。
先ずは、攻撃系魔法。
魔法には様々な属性がある。
・火魔法
火や炎を使った魔法。レスターさんが使用していた炎狼等。
・水魔法
水や氷を使った魔法。
・風魔法
風を使った魔法。ユーリが使っていたヘルエクスプロージョン等。
・土魔法
土や岩石を使った魔法。
・雷魔法
雷を使用した魔法。俺が使ったデインオーバー等。
・治癒魔法
アルフィン専用魔法。
回復、清浄、消滅(ハーディーンにのみ有効)
アルフィンが使用するサポート魔法にも様々な効果がある。
俺達の防御力やステータスを上げるバフ系魔法。
相手の防御力やステータスを下げるデバフ系魔法。
その他にシールドや、結界魔法もこの枠に入る。
俺は魔法を使いはじめて間もないが、大気にある魔粒子を使い魔法が使えることに気づいた。
まぁ今更で、気づく前からバンバンと魔法ぶっ放してたんだけど。
だから大気から火を生み出すことも水を作ることも出来た。
テーブルと浴槽はクリエイト魔法というのか、前世の物をイメージしながらやると造れた。
何を言いたいかというと、魔法は便利だよね。色々出来るということだ。
イメージ力は大事だったな。そこが弱いと魔法は失敗する。
例えば、同じ魔法でもイメージを明確に、細かい所も想像が出来れば、精度が上がり、威力がかなり高くなる。
俺は前世ではゲームが好きだったので、そのイメージを利用して明確化し、高威力の魔法も使う事ができるみたいだ。
魔力操作を更に向上させられれば出来る事も増えていくと思う。
アルフィン達は、まさかここでお風呂に入れると思っていなかったらしく、驚いていた。
俺も入りたかったし、アルフィン達は女の子だからやっぱり入れないと嫌だろう。シズクもその事が嬉しかったらしく、笑顔だった。
そうして、夜営の準備が一通り終わり造った椅子に座り、それぞれの役割分担を確認していると。
「料理は私が作りますね。一通り学びましたので」
「タクトさん。シズクの作ってくれる料理はとても美味しいんですよ。聖樹教会に遊びに行っていた時も料理を作ってくれまして」
「アルフィン様ありがとうございます。専属の料理人は教会にいるのですが、リアンヌ様が私の料理を食べたいと仰る事もありましてそれで慣れてしまいました」
シズクがその時を思い出したのか嬉しそうな顔をしている。二人の関係は聖女と付き騎士だけど、それ以上の姉妹みたいな感じも受けたから仲良かったんだろうな。
「シズク。わたくしは今まで料理を作る機会がなくて、作れません。料理を覚えたいのでわたくしにも手伝わせてください」
「分かりました一緒に作りましょう」
女の子二人組で料理を担当してくれた。
俺も前世は自炊していたから、そこそこ出来るが、美少女達の手料理は大変にいいものだ。ありがたく頂こう。
二人で作ってくれた料理は凄く美味しかった。食べながら何気ない話も楽しく、食が進んだ。
食後はまったりとした後、お風呂に入ることにした。
魔法でお湯を沸かし、浴槽にお湯をはる。
ついでに見えないように土の壁を作った。
先にアルフィン達に入ってもらい、俺は後で入る。
もちろん覗きとかしていません。女の子二人組は若干恥ずかしそうにしていたが。
交代で見張りをして寝ることにした。
俺一人と、アルフィン、シズク組で。
先にアルフィン達に寝てもらい、俺が見張りをする。
周囲の魔物の気配に気をつけながら今日1日の事を考えていると。
ドクンっ!
頭が少し痛むのを感じる。この感覚は。
もしかして。
【よう。少しは強くなったか?】
暫く振りに頭の中でユーリの声が聞こえてきた。
お読みいただきありがとうございますo(*≧∀≦)ノ




