13話 出発当日②
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馬を飛ばし、急ぎでダンジョン前まで来た。
俺は乗馬は初めてだった為、最初は中々いうことを聞いてもらえず苦戦していたが、馬に魔力を見せ、お願いすると従順になってくれた。別に脅してはいない。お願いしただけだ。
俺の後ろにアルフィンが乗り、シズクは訓練を受けていたのだろう余裕で、冒険者二人組は普通に乗りこなしていた。
道中で聞いたこの場所の名は、始まりの洞窟という。
洞窟の入口横には、だいぶ古びた石盤が台座に嵌められている。
石盤には紋章が二重に重ねて刻まれていて、微かに魔力の残留が感じられた。
「……石盤から微量の魔力を感じるな」
「この石盤はユーリ陛下の時代からあるもので、昔はこの石盤を使って他大陸へと移動していたみたいです。当時の魔力が残っているのでしょう」
アルフィンが説明してくれた。
これが魔法で作られたワープ装置。
世界中にはこれと同じものがあると言っていた。
またこれを使えるようにすれば旅が楽になる筈。
ただ、どうすればまた使える様になるんだろう。
魔力を籠めなおす?
石碑が壊れてれば、修復しないと駄目だよな?
うーん……これは後回しだな。
先にアイシャさんの救出が先だ。
気持ちを切り替えて洞窟に入る。
内部は薄暗く先が見えないので、灯りの魔法で照らしながら進んでいく事にした。
冒険者の二人組を先頭に、俺、アルフィン、シズクの順番である程度まで進んだ所で、狼タイプの魔物二匹と遭遇する。
ステータスオープン
バトルウルフ
初級魔物
レベル11
「さて。出番だね」
「はい。片方は、お任せください」
俺とシズクが前に出る。
俺は突進してきたウルフに魔力を纏った右足を叩きつけた。
魔物は一撃で光の粒子に変わる。
シズクはウルフの攻撃を回避しつつ、刀で切りつけていく。
魔物の足が止まった所で首を切断。魔物は光の粒子に変わった。
「スゲー楽勝かよ……」
後ろから冒険者二人組の感嘆の声が聞こえてきた。
このレベルなら苦戦することはない。
「奥に進みましょうか」
コウモリタイプ、ネズミタイプ、サソリタイプ等の初級魔物を
返り討ちにしながら進んでいく。
ある程度まで進んだ地点で、冒険者二人組が声をあげた。
「ここだ。ここで魔物に襲われて、アイシャが転移させられたんだ」
ここだけ広い空間になっている。
「アイシャさんの魔力は……感じないなかな」
近くには魔物の気配しかしない。
「別の場所に行かれたのでしょうか?」
アルフィンが首を傾げる。
「私にも魔物のものしか感じませんね。そうなると」
「探る必要があるね。でもその前に魔物が邪魔か」
先ずは全て倒すことにする。
初級魔物が大量にいたが、苦戦せずに全て狩り終わり改めて周囲に何かないか調べてみた。
話によれば、アイシャさんは真ん中らへんに立っていたらしい。
そこを重点的に調べると、スイッチらしきものがあった。
多分これを踏めば、転移の魔法陣が発動するんだろう。
「多分だけど、このトラップの先にアイシャさんがいると思う。それで、トラップを発動させようと思うんだけど、どうかな」
「そうですわね。可能性は当たっていった方がよろしいかと思います」
「私も賛成です。アイシャさんが転移させられてから時間が経ってしまっていますから、可能性が一番高い方法を取りましょう」
ただ、心配な事がある。
これ系のトラップは、発動させると皆がバラバラにされたりするのが難点だ。
そうなると嫌だな。
よし。
試してみよう。
「とりあえず皆、トラップの中心に集まって」
俺の言うとおりに集まってくれた。
全員を魔力で纏うイメージをすると、薄い膜の様なヴェールが出来た。
薄緑のヴェール。
外の音の遮断がされているのか、中は静穏になっていて、暖かく感じる。
「タクトさん。結界も使えたのですね」
「こんな感じかなとやってみたんだけど、うまくいったみたいだね」
「これはリアンヌ様も使用していた、結界に似ていますね。外からの干渉を遮断しています。
リアンヌ様の結界は上級に位置する結界なのでそう簡単に使えるものではないのですが……」
「マジかよ……結界なんて普通こんな簡単に出来ねーぞ……なぁ?」
「あ、ああ。聞いたことない。才能ある奴だって修練が必要なはずだ」
そんな難しいものなのか? 結界って。
ユーリは魔法行使はイメージ力が大事だと言ってたけど。
案外魔法って思っているより難しいものではないのかもしれない。
いや、決めつけない方がいい。
油断や過信は駄目だ。俺は一度死にかけてるんだから。
結界を纏い、トラップを踏んでみた。
床に青色の魔法陣が発動する。
先頭にいた俺に魔法陣が触れ、その後全員が魔法陣に飲み込まれた。
転移させられた先は、円くて広い空間になっており、灯りの魔法で照らした奥に一人の女の人が倒れていた。
「「アイシャ!!」」
冒険者二人組が叫ぶ。
どうやら奥の人がアイシャさんみたいだ。
二人組がアイシャさんの方まで駆け寄ろうとする。
その時。
奥から一体の魔物が現れた。
「あ、あいつだ。あの魔物が俺達を襲ってきたんだ」
先程の恐怖を思い出したのか、足を震わせて動けなくなっている。
ステータスオープン
ミノタウロス・ゲザー
中級魔物
レベル21
ここに来て中級魔物が出て来たな。
このダンジョンのボスか?
「タクトさん、ここは私にやらせてください。タクトさんはアルフィン様とアイシャさんの手当てをお願いします」
シズクが前へと進み、抜刀する。
「分かった。アルフィン行こう」
「はい」
シズクが魔物に切りつけるのを見てから、その隙に奥まで駆け寄った。
アルフィンは怪我の状態を確認している。
俺もステータスを確認する。
アイシャ
初級冒険者
レベル12
スキル 遠距離魔法、サポート魔法
HPはまだ大丈夫そうだ。
掠り傷程度みたいで良かった。
転移してから時間が経っていたから、もうやられているかもと思っていたが。
間に合った。
「怪我もこのぐらいなら直ぐに治せます」
アルフィンが治癒魔法を使い、アイシャさんの傷を治していく。
俺はシズクの戦いを見ていた。
シズクと魔物のレベル自体はほぼ同じ。
でもシズクの剣術が凄いのか優勢だ。
ミノタウロスの斧が繰り出されると、二歩引いて回避し、直ぐ様接近して、刀を切りつける。
ミノタウロスはシズクのスピードについてこれていない。
シズクは先読みも得意らしく、相手の動作を見極め有効な返しをしている。
この調子なら大丈夫かな。
「……うっ……ここは。……わたしどうしたんだっけ……」
アルフィンの治癒魔法のお陰でアイシャさんが目を覚ました。
「良かった目を覚ましたんですね」
「えっと……あんた達は」
「俺達は、アイシャさんが転移魔法のトラップに引っ掛かったのを聞いて、ギルドから依頼を受けて助けに来ました」
「……そうだっ。あの魔物は? ヤバい奴がいるんだ!」
「いま、俺達の仲間が戦っています。まもなく決着がつくでしょう」
「えっ?……」
アイシャさんがシズクの方へ向いた。
ステータスを確認すると、ミノタウロスはボロボロになっており、HPゲージも残り少なくなっている。
対するシズクは少しダメージを受けている程度。
シズクが刀に魔力と桜色のオーラを集めているのが見えた。
あの桜色のが破邪のスキルなのだろうか。
シズクが一気に踏み込み、ミノタウロスを切りつける。
ミノタウロスの首が胴体と切り離され、光の粒子となって消えた。
「フゥ――――」
シズクが残心をしながら呼吸を整える。
お、シズクのレベルが1上がった。
「お疲れ様。流石だね」
「シズクお疲れ様でした。怪我治しますね」
アルフィンとシズクの方へ向かう。
「タクトさん、アルフィン様ありがとうございます。いえ。あれぐらいでは誉められるものではありません」
「あんた達何者? こんな魔物をあっさりと倒すなんて」
冒険者二人組とアイシャさんがこちらに歩いてきた。
話してもいいけど、後でクロウさんにも話さないといけないだろうし、二度手間だな。
「とりあえずダンジョンから出ましょう。クロウさんの所で話しますから」
若干不満そうだったが、彼らも疲れていたのか素直に歩きだした。
帰りは何事もなく、トランスヴァールまで戻ってギルドまで来た。
ギルドの受け付けには、クロウさんが待っていてくれて、俺達の姿を見てすぐにさっきと同じ部屋に案外してくれる。
そこで救出が無事に終了したことを報告する。
「あなた方のお陰で犠牲者が出ず済みました。ギルドを代表して感謝申し上げます」
「さっきはお礼もしなくて、すまなかったね。あんた達が来てくれなければあたしは殺されていたよ」
クロウさんとアイシャさんからお礼を言われた。
「さっきも聞いたけど、あんた達何者なんだい? これだけの力を持つ奴等はこんな状況じゃ、最前線にいっているはずだよ」
「その答えは多分ですが。アルフィン王女と魔王の称号を持つ方だからではないですか?」
クロウさんが推測を交えながら、正解した。
おめでとう。
じゃなくて何で知ってるんだ? 魔法の鏡も使ってないのに。
「アルフィン王女様……魔王……? ……」
アイシャさん達が目を丸く、口をあんぐりとしていた。
やっぱり皆驚くのか。
「何で知ってるんですか?」
まだ、俺の事を知っている人はそんなにいないはずだ。
「それは、昨日のあなたの歓迎会に僕達の上司、つまりギルドマスターも行っていたのです。
あなたの紹介が終わった後、仕事が溜まっていたので直ぐに帰ったそうなので、ご挨拶も出来なかったと言っていましたよ」
あ―。昨日あの場にギルドマスターがいたのか。
「僕はその時にあなたが魔王の称号を持っている事を聞いて、もしかしてと思っていたのですが、先程は急を要しましたので」
「なるほど。それは仕方ないですね」
「改めて、この度はありがとうございます感謝致します」
「いえいえ。俺も困っている人はほっとけない性分なので」
「はは、あなたはいい人ですね。それで約束通りあなた方のギルドカードを作成しました。
細かい部分は戻られてからと思ってましたので、大まかにですが。ギルド名はどうされますか?」
「そうですね。その前にギルドの仕組みを教えてもらってもいいですか?」
昨日この世界に来たばかりだから、知らない事たくさんあるんだよな。
「勿論です説明させてもらいますね」
クロウさんが説明してくれた事は。
ギルドはチームで運用していく。人数は1人から50人まで。
ギルドにはランクが存在する。
S、A、B、C、Dの五段階でSが最高ランクになる。
この辺はお馴染みだな。
クエストを受注して達成すると、難易度によりポイントが決まっていて、貯めて基準を満たすとランクアップする。
クエストを達成する毎に報酬もあり、ギルドランクが高いほど様々な恩恵が受けられる。
あと、DランクがいきなりSランクとかのクエストは受けられない。
例えばCランクならBとDのクエストを受注出来る。
ギルドメンバー同士はカードを使い念話が出来るらしい。
別行動した時とかに使えそうだな。
大体は想像通りだったかなギルドのシステムは。
「ありがとうございます。大体分かりました。ギルド名か……どうしようかな……」
「タクトさん。わたくしが決めてもいいですか?」
アルフィンが提案してくれた。何かいい名前あるのかな。
それならと頷く。
「魔王と愉快な仲間達はどうでしょうか」
アルフィンはドヤ顔だ。
このネーミングセンス……俺の魔王のローブと魔王の腕輪もそうだけど、もしかしてトランスヴァール家って……。
俺はギルド名はぶっちゃけ何でもいいけど。
これだ。と思い付かなかったし、……これでいいか。
シズクは少し微妙な顔してるけど何も言わない。
「では、それで」
「そ、そうですか。本来はDランクからスタートなんですが、今回の功績で、Bランクで登録しておきます。
報酬は中級魔物を討伐と、人命救助で色を付けて3500リラになります」
3500リラ。薬草一つ10リラ、宿代一泊100リラだから、中々だな。
まだ陛下からもらったのが299万リラぐらいあるけど。
ありがたく貰っておこう。お金は腐らない。
それじゃ、そろそろ行こうかな。
「それでは、俺達はこの辺で」
「そうですか。また何かありましたら頼らせてください」
「あんた達……アルフィン王女様も魔王さんも美人さんも本当にありがとうね」
それぞれに感謝の言葉を貰いギルドを出た。
さぁ、今度こそ旅立とう。
マギア・フロンティアの平和の為に。
お読みいただきありがとうございますd(>∇<;)




