134話 邪神のフルパワー
「お前の境遇に立って考えれば同情もするし、信じられなくなる気持ちも分かるけど。だけど、お前に俺の大切なものを壊させる権利はない。アルフィン達は何も悪いことはしていない」
例え俺も含め、今までの人間の業が原因で世界に影響を及ぼしたとしても、アルフィン達を傷つけさせたりしない。
「だからこんな話をした所で無意味だと言っとろうが。余が人間を世界を滅ぼす事は今更止まることはない。
己が護りたいものがあるのなら、余を殺し護ってみせよ!」
暗黒の魔力を爆発的に高め放出しながら突進してくる。
「クソッ。俺の話し程度じゃ止まらないか。絶対考えを改めさせてやるからな!」
俺も限界突破の魔力を最大限に高めて迎え撃った。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
「おぉぉぉぉぉぉ!!」
ドガンッガゴンッと、互いの拳と足蹴りがぶつかり合う事で激しい音が鳴り響く。
衝突したエネルギーが逃げ場を求めてより大きな竜巻になり、周りを破壊する。
「ここだ! はぁっ!」
女神から貰った能力を全開に高め、最善の動きでハーディーンの攻撃の嵐を潜り抜け懐に入り込み、胴体に拳を打ち込む。
その時に同時に魔力を内部にセットした。
「ぐうっ……また、あの攻撃か!」
俺の考えに気付いたのか、殴られた箇所を手で押さえながら『ブオン』と腕を振るい無理やり距離を取る。
ハーディーンの外皮は、圧倒的なあの暗黒の魔力によって防御力が桁違いにまで高い。
まともに外からしかけても、効率が良くない。
だったら中から破壊する。
これを何回か繰り返せば、俺の有利になる筈だ。
「小癪な真似を! だが、もう同じ手は使わせん!」
そのチャンスがあればだけど。
ハーディーンも流石にこれ以降は、全力で防いでくるだろう。
素直にさせてくれないから、何とかチャンスを作らないといけない。
そこから何度か仕掛けようとするが、中々その隙をみせない。
仕方なく外から、打撃技を叩き込むけどあまり効果がない。
どうするか……もっと踏み込んでみるか。
この場合の最善の動きは……ここだ!
神に対抗する力を洗練し、最善で攻撃する方法をイメージする。
「うらぁっ!」
そのイメージ通りに、ハーディーンの斜め後ろに一瞬で移動する。
「なにっ! 何だその速度は!」
この動き出しに、邪神といえども反応出来なかったようだ。
そのまま俺の右拳が背中にめり込む。
「ぐふうあああぁ!」
この時に背中から内部に魔力を流し込み。
「まだまだぁ!」
連続して右、左と拳を打ち込む。
「ぐあああっ! ええいしつこい! 離れよ!」
邪神は体を横にずらし腕をたたみ防御の構えを取ると、右足を振り抜き衝撃波を飛ばしてきた。
「くっ! おあっ」
この近距離で強烈な衝撃波を浴びて吹き飛ばされた。
ハーディーンから距離を離されながら空中で姿勢を整え瞬時に魔力を溜めた。
「ファイナルアルティメット・マジック!!」
右手をハーディーンに照準を定めて、最強の魔法を放った。
「バカなっ! この距離で神級魔法を! そなたも無傷とはいかぬぞ!」
とてつもない魔力で構成された神級魔法。
本来なら放てばその時点で勝負が決する最高の魔法。
自身に被害が出ないように距離を取り撃つのが基本だが、それを構っていたら俺はハーディーンに勝てない。
「そんなのは、覚悟のうえだ! ダメージなんか怖くない!」
「バカめ! ぐああああああ!!」
咄嗟に腕を交差し、急ごしらえの薄い結界を張り耐えようとするハーディーン。
だけど。
「そんなもので防げない程に魔力を込めた。くらえ!」
更に魔力を込める。
神級魔法は、ハーディーンに着弾すると大爆発を巻き起こした。
「うああぁ! つうっ」
膨大な魔力が爆発し、俺は吹き飛ばされながらも何とか結界を張りその衝撃を耐える。
やがて魔力の暴風が止まり、倒れているハーディーンの姿が見えた。
地面に拳を突き立て、片膝をつき体を支えている。
「……よもや……はぁ……ここまでやるとはな……」
黒い装束はボロボロに破け、体中が傷だらけになっていた。
額からは血を垂れ流し、それが地面に染みを作っていく。
「人の身で……ここまでの力を。余はそなたを侮っていたようだ。よかろう」
立ち上がり、俺の顔を見てきた。
「そなたを殺すには、余は全力を出さなくてはならない事を理解した。ようやく取り戻した戦神としての力でもって、そなたを殺そう」
両手を強く握り込みググッと力を溜めるのが分かった。
恐ろしく強大な魔力の渦が、ハーディーンの体の中心に集まるのが見える。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッと魔力が溜まれば溜まるほど、周囲の音が強く鳴り始める。
「この魔力の高まりは……まずい……俺よりも」
俺のフルパワー以上の力が引き出されていくのを、肌を突き刺す痛みとなって伝えてくる。
この場から離れろと、逃げ出せと俺の本能が知らせてくる。
「はあぁぁ……懐かしい感覚だ。ユグドラシルを出てからどれぐらいの時間が経過したか……。やっと本来の力を取り戻したぞ。これが余の正真正銘の全力だ。この力でそなたを葬ってあげよう」
体から暗黒の魔力が煙となって、昇っていく。
完全に力を解放し終えたその力は、俺の力の範疇を超えていた。
「どれだけ劣勢になっても、俺は諦めない。絶対に生きてここから出てやる!」
例え俺以上の力だろうと負けない。
アルフィン達は俺が必ず護ってみせる!




