132話 小さな少女の頑張り
ナエside
「うう……困ったの……ジャギがいっぱい……」
皆を困らせる悪い人をやっつけようと、この暗くて怖い場所を進んでいたら死んだ筈のジャギが現れた。
無口で変なジャギとお話ししたくて、お兄ちゃん達に先に行ってもらってあたしはここに残った。
アルフィンお姉ちゃんの国で、ジャギと戦ってその時に、もしまた出会えたらお友達になろうねって約束したの。
こんなに早く出会えるとは思ってなかったから、ビックリしたけど。
でも、あたしは嬉しかった。
約束を果たせると思ったから。
だけど。
ジャギは一言も話してくれなくて、魔法を撃つばかり。
あたしは何度も何度もやめてと、お話ししようと言ったけど。
聞いてもらえなかった。
ジャギが変になったのは、あの悪い人が黒い魔力で操っていると分かってあたしは腹が立った。
こんなまるで、お人形の様に戦わされているジャギを見て悔しくなった。
だから。
本当は嫌だったけど、こんな変なのから助けてあげたいと、もう戦わなくてもいいように、ジャギを倒したの。
攻撃するときに、凄くお胸が痛かったけど、我慢したの。
「……でも。ジャギが増えちゃった。変なのも治らない」
せっかく我慢して倒したのに、黒い魔力が傷を治してジャギが二人になって、また倒したら、ジャギが三人になったの。
三人のジャギからの魔法は、とっても危ない。
かわして、魔法をぶつけて何とかなってきたけど。
「ううう。困ったのどうすればいいの?」
あたしもお胸が痛いけど、ジャギだって辛い筈なの。
何とかして助けてあげたい。
「あっ」
どうすればいいのか、一生懸命考えながら前を向くと。
「ジャギが……泣いてる」
眼から涙を流していたの。
「……僕……を…………殺し……て……」
涙を流しながら、初めて喋ってきた。
前の時には偉そうで、自信満々だったジャギが泣きながらお願いしてきた。
やっぱりジャギも嫌だったんだね。
こんな状態で戦わされて。
ごめんね。
でも、もう悪い人に操らせないから。
もうこんな事はやらせないから!
「ジャギ。あたしが助けてあげるの! すぅ~はぁ~。いくの!」
体中の全部の魔力を高める。
更に収束で周りから魔力をたくさんたくさん造っていく。
そんなあたしの様子を見ながら、ジャギも魔法を撃たないで待っていてくれているようだった。
せっかくのチャンスなの。
だけど、強い魔法を撃つにはまだ魔力が足りない。
これじゃあジャギを三人倒せない。
「まだなの。まだまだたくさん造るの。あたしに出せる思いきりの力を。お兄ちゃんみたいに魔力を練るの!」
お兄ちゃんみたいにイメージを強くしながら、魔力を高めていく。
もうちょっとなの。
もうちょっとで、完成するの。
あたしが魔法を造っていると、魔物がたくさん現れた。
気持ち悪い魔物がいっぱい……。
「ううう。どうしよう……ジャギを倒すために魔力を溜めているから魔物と戦えないの……。でも何もしないわけにはいかないの。どうしよう」
その時。
魔物が攻撃されて何体か消えた。
これは。
「良くここまで頑張った。これからはワレらも共に戦う」
「リューちゃん」
「そうだ。ワレらが来たからもう大丈夫だ」
「バーちゃんも」
リューちゃんとバーちゃんが来てくれた。
二人とも羽や体の鱗がボロボロになっていた。
魔物につけられたのか噛み傷やひっかき傷もある。
「ワレらが魔物を引き受ける。ナエはあの四天王を倒せ。苦しいだろうが、頑張るのだ」
リューちゃんが元気付けてくれた。
「うん! 分かったの。ありがとうリューちゃん!」
「バハムートよ。いくぞ!」
「おう! 最大威力のブレスで蹴散らすぞ!」
リューちゃんとバーちゃんが口にたくさんの魔力を溜めて、発射した。
黄色と青色の二本の魔力が混ざってたくさんの魔物を消し飛ばした。
「ナエ。今だ放つのだ!」
「うん! いくのー!! ユーちゃん!」
あたしは前に絵本で読んだ時にお気に入りになった、神獣ユニコーンの姿をした凄く大きくて可愛い魔法撃った。
今までで一番上手に出来た動物さん魔法は、地面を走ってジャギにぶつかった。
ユーちゃんは、ジャギの体を光の粒子に変えていく。
そして全部が光に変わる時。
「……ありが……とう……また」
最後に笑顔を見せてジャギは完全に消えていった。
それを見届けると体に力が入らなくなった、あたしの体をリューちゃんが受け止めてくれた。
何だか安心したら眠たくなってきたの。
「こんな小さな体で、頑張ったな。こんなに傷だらけになって」
「うむ。ワレらよりも遥かに小さな体でな。大した子供だ」
魔法を撃って疲れて眠ってしまう時にリューちゃんと、バーちゃんの声が聞こえた。
ジャギ。
今度は本当にお友達になろうね。
その為にもお兄ちゃん達と、世界を平和にするから。
あたしは頑張る。
ナエside
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