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131話 女の共闘

よろしくお願いします!

 



 シズクside




「はぁ……はぁ……これはキツイですね……」



 ハーディーンを倒すためにこの謎の空間に侵入した私達の前に、倒した筈のゲラルドが立ちはだかった。

 タクトさんにはハーディーンとの戦いに専念してもらいたくて、ここは引き受け先に進んでもらいましたが……。



「正直……厳しいですね」



 新たに現れたゲラルドは、様子こそおかしいものの、私でも十分勝てる実力だった。

 トランスヴァールで戦った時よりも、多少なりとも強化されていたが問題はなかった。

 それが、()()()()()()ですが。



「まさか……一人だけではなくなるとは、予想外でした……」



 今私の目の前には、()()()ゲラルドが、膝をつき呼吸を整える私を見下ろしている。

 試練の遺跡とタクトさんとの模擬戦闘で、私自身も強化されたとはいえ、この状況では話は変わってきます。



「「「……」」」



 相も変わらずに、一言も喋ることもありませんが。

 戦闘に関しては人形の様に、痛みも感じている様子でもなくひたすらに戦いを繰り返す。

 そして倒したと思ったらその数を増やした。

 最初現れたのを普通に切り伏せて、直ぐにタクトさんを追えると思えば、蘇生され二人に分裂した。

 それでも二人なら驚異にならずに破魔で同時に切り伏せると、また蘇生され三人に増えた。

 幸いな事にこれ以上は増えることはなかったが、一対三は私の実力では、キツイ。

 何とかやられずにここまで来られましたが。



「……これは、どうしたものでしょう」



 まだ手はある。

 最後の手段が。

 破魔を限界以上に引き出し、三人を同時に完璧に消し去ることが出来れば、あるいは。

 ですが、それを使ってしまうとタクトさんの元まで行き、加勢するのは不可能に近くなるだろう。

 おそらく力を使い果たしてしまうから。



「……いえ。ここは、無理をしてでも突破するべきですか。せっかくタクトさんに想いを寄せてもらえた。私の事を受け入れてくれたタクトさん、アルフィン様の為にも何としてでも生き延びなければ。すぅ」



 大きく息を吸い、疲れた体に酸素を送り込む。



「それでは……参りましょうか! はあぁぁー!!」



 自分が出せる最大限に破魔を放出し、エクソードアークに力を纏い、身体能力強化も施し。

 駆けた。



「やぁぁー!! はあぁー!」



 極太の残撃を飛ばし一人切り飛ばす。

 そのまま刀を捻り、横に一閃し二人目を。

 そのまま三人目をと構えようとすると、横から高密度の魔力を込めた豪腕が飛んで来るのが視界の隅に見えた。



「くっ」



 それを間一髪で避ける事に成功する。

 動悸が激しい心臓を押さえ、一旦バックステップで距離を取り仕切り直すことにした。



「これでは、やはり駄目なのですね。もっと強く深く」



 やはり、三人がかりで来られては私の力の範疇を越える。

 これを突破するには、更に強く強く破魔を引き出さなければ。



「くううっ! っう。はあぁぁーー!!」



 破魔を引き出そうとすると、体に耐え難い負荷がかかる。

 皮膚からは血が滲み、体の内部にも痛みが……。

 口からは血が垂れる。

 どこか内臓が傷ついたか。

 でも、この程度気にしていられない

 聖剣を上段に構え。



「極大・聖滅破斬(セイントブレイカー)ーー!!」



 今までの鍛練で鍛え、昇華した技も力も全てをこの一撃にこめて振りおろした。

 眩く光溢れる巨大な斬撃が、ゲラルド三人衆に向かって飛んで行く。



「「「……!」」」



 ゲラルド達は前に進み出て、私の渾身の一撃をその太腕で受け止めた。

 脚を地面に突き刺しその場で耐えきろうとする。



「ぐうううっ! 負け……られ……ません!」



 更に力を込めると、皮膚からも口元からも多くの血が出る。

 何とか押しきりたいけど、もう、これ以上は……。

 力が出ません……。


 タクトさんすいません。私はそちらに行けそうにありませ――。


 私は何を考えた?

 何を弱気になってる。

 こんな所で果てるわけにはいかないのに!



「私は。私はこんな所で死ぬわけにはいかないんです! 愛する人の元へ必ずたどり着くのですから! あと、少し。あと少しだけ力をー!」



 その時だった。

 右横からすっと腕が伸び、エクソードアークに添えられた。

 そして、同時に私の体に魔力が流されるのが分かった。

 ポワット淡い光が包み幾分か体が楽になる。



「ほら。しっかりとしなさい!

 タクトに愛された女が、こんな所でくたばるなんてわたしが許さないわよ」



「……アリサ女王」



 そう。

 私を今支えてくれているのは、アリサ女王でした。

 身につける美しいドレス式の戦闘着は、所々破れ、血が付着している。

 見る者の目を奪うその金髪も痛んでいる。

 きっとここまで来るのに、傷ついたんだろう。



「その傷は……」



「こんな傷たいした事ないわ。タクトに慰めてもらえば直ぐによくなるわ」



「あはは……」



 本当にこの人は相変わらずですね。



「それよりも。早くコイツら倒して、先に進むわよ」



「はい!」



「わたしがアイツらにキツイのを撃ち込むから、シズクは()()()強化して倒してしまいなさい」



 アリサ女王の視線がエクソードアークに向けられた。



「分かりました。お願いします」



 簡単に作戦を決め、実行に移した。



「それじゃあいくわよ! はあああ! ホーリーノヴァ!!」



 光と炎の力を集束させた巨大な光の火球が放たれた。

 ゲラルド達はその魔法に注意を引き付けられ、私の斬撃を受け止める者、アリサ女王の魔法を対処する者に分かれた。

 でも、そのお陰で。

 勝機が。



「今よシズク! やりなさい!」



「はい! やあぁぁぁぁぁぁぁー!!」



 一気に破魔を流し込んだ。

 これで!

 勝つ!



「「「……うっあ!」」」



 強化された聖剣の力を受け止めようとするが、その勢いを増した斬撃に三人はのまれた。

 三人同時に光の粒子に変わるのを確認する。



「勝て……はぁ……ました……はぁ……」



「そう……はぁ……ね……はぁ。しんどいわ!」



 二人して息も絶え絶えになり、地面にしゃがみこんだ。



「はぁ……。少し休憩したら先に進むわよ。良い女は愛する人を待たせないものだわ」



「はい。アリサ女王お力添えありがとうございます。そういえば他の方々は?」



「ええ感謝しなさい。こんな所でシズクが居なくなったらタクト争奪戦に張り合いがないもの。わたしだけ先行してきたわ。皆遅いんですもの」



「あはは。アリサ女王も大概ですね。ですが、恋の勝負は負けませんよ? 私」



「ええ。上等よ。ふふ」



 ひとしきり笑った後、休憩をしてタクトさんの元へと移動した。



 シズクside

 out

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