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123話 最後の打ち合わせ

 




 ルーデウス帝国の大会議室にマギア・フロンティアの王達が集まっていた。

 暗黒大陸に突撃をかける前に最後の打ち合わせをするために。


 会議は連合軍総司令であるアーロン皇帝の仕切りで、進んでいく。



「まずは、この一週間。ハーディーンが復活をしたとの連絡を受けて、急ぎで今日の為に準備をして頂いたと思う。特に襲撃を受けた、トランスヴァールとバラガンにおいてはその苦労は計り知れない所だろう」



 アーロンさんがユルゲン陛下と、ヨーク公の顔を見て苦労を労った。



「トランスヴァールは、シーゲル陛下とクリスタのお力添えで何とか準備をおえられた。正直間に合わない事も視野にいれていたが、何とかなったな」



「バラガンは、タクト君達に街の修繕もほとんど直してもらったからね。お陰で予想していたよりも、かなり早くに準備が出来たよ。本当に助かった」



「流石タクトだわ。魔法でちょちょいと直したんでしょ? あなたの腕なら一瞬でしょうね」



 当たっている。

 流石勘が鋭い。



「アリサ女王そうなんだよ。僕は直接見ていないが報告によると、広範囲を魔力で覆うと自動的に崩壊した施設とか、街路も直してしまったみたいなんだ。いや~僕も見てみたかったよ。礼儀正しいし人助けを率先してやってくれる。タクト君は本当に素晴らしい青年だ」



「そうでしょう? ()()()()タクトの良さを知ってるなんて、ヨーク公も分かっているわね」



「「む。わたしの?」」



 アルフィンとシズクから殺気が漏れはじめる。

 何か会議室内がガヤガヤし始めたな。



「聞いてよ。この間もね――」



「ゴホンッ!」



 咳払いが一つ会議室に響き渡った。

 発生源は、この国の皇帝であるアーロンさん。

 その咳払いで、室内に再び静寂が戻った。



「騒ぎたい気持ちは分かるが、ここは自制して欲しい。今は先に大事な話をするべきだろう? この一年以上の鬱憤はハーディーンを見事打ち倒した後で、大々的にやることにしようではないか。その為にも、今は話を煮詰めよう」



「そうね。ごめんなさいつい話に夢中になってしまったわね」



「すまない。アーロン皇帝も、ユルゲン陛下とシーゲル陛下も。平和になった後に楽しめるように、ここはしっかりと決めないとね」



「気持ちは分かるから気にしなくていい。俺もその席で魔王殿達を弄りたくて仕方がないからな。それを楽しみに今はもう一踏ん張りせねば」



「うむ。世界が平和になった暁には、それは盛大にやろう。その場で、わが娘達の式を執り行ってもいいかもしれん。まぁその為にも今はきちんとなすべき事をせんとな」



 シーゲル陛下とユルゲン陛下も賛同しつつも王としての責務をしようと勧める。

 一部気になる事が聞こえたけど。

 この場はスルーしよう。



 仕切り直しで、真面目に暗黒大陸に突撃する内容の話を一つ一つ決めていった。


 

「では。19時00時にタクトが設置してくれたワープの石盤から順次に転移を開始し、大量にいる魔物を蹴散らし、石盤周辺を制圧した後、その場に拠点を建てる。それが完了したら少しずつ制圧範囲を拡げハーディーンがいる所へとタクト達と隊長達、精鋭で突入する。ここまでは良いかな?」



 一回そこで認識のズレがないか確認をした。

 皆は頷き、問題ないことを示す。



「多分その段階で、かなりの負傷者も出ていることから拠点を守る防衛隊も必要だろう。そこはジェクトに残ってもらい回復魔法隊で診てもらう。新しい魔物がどれだけ早くに生み出されるのか、それによっては厳しい状況になるかもしれん」



 アーロンさん達には石盤を設置しに行った時の、暗黒大陸の状況も報告してある。



「その分、突入する俺達が魔物とハーディーンをなるべく早くに倒せれば防衛する人達の危険は減らせますよね」



「そうだが。突入するのも、残って防衛するのもどちらも危険なのは、変わらない。いやハーディーンと直接対決するタクト達が言わずもがな一番危険だろう。もし…………いや。考えるのはやめよう。今は全力であたるだけだ」



 一瞬アーロンさんの顔色が悪くなった。

 おそらく俺達が負けた場合の事を考えたのかもしれない。

 ここまで来ても不安になるのは、仕方ない事だと思う。


 会議室にいるほとんどの人達も、アーロンさんの考えた事が分かったのだろう雰囲気が、少し暗くなった。



「俺達は、必ず勝ってみせます。たとえハーディーンが更なる強さを隠していたとしても絶対に負けません。だから、安心して作戦を進めてください」



「タクト……そうだな。すまない柄にもなく、少し弱気になっていたみたいだ。一番頑張ろうとしてくれている君達がそう言ってくれるのだ。我々が負けていてはいけないな」



 この暗くなった空気を変えたくて、自分の気持ちと自信の程を話した。

 そのお陰もあってか、再び大会議室の空気は明るさを取り戻す。


 そこから更に細部まで話しは決まっていった。



「話しはこれで、決まりかな。内容も煮詰めたし、取り決めもこれで大丈夫だろう。他に何かあるだろうか?」



 手を上げてその場で立ち上がる。



「最後に皆さんに聞いてもらいたい事があります。とても大事な話です。それは――」



 ここには、マギア・フロンティアの王達が集まっているから、この人達にどうしても知っておいて欲しかった事を話した。

 女神から聞いたハーディーンの真相と、ユーリの事、俺達を見守ってくれている女神をがっかりさせない様にすることも。



「女神とハーディーン……なるほどなユグドラシルはそこに絡むのだな。そして、人間の本質か」



「でも、それでも他者を傷つけてもいいことにはならないわ。同情もするけど今までやってきた非道の数々。その責任はしっかり取らせないとね。その上で、わたし達は平和になった世で傲らずにやっていきましょう」



「俺とユルゲン陛下は先に聞かせてもらっていたが、改めて聞かせてもらって、決意をしたよ。素晴らしい世界にしていく決意が」



「うむ。ユーリ陛下が400年もの間、守られてきたマギア・フロンティアをより平和に繁栄させていかねばならないな。人間として増長せずに、身の程を弁えてな」



 アリサ女王、シーゲル陛下、ユルゲン陛下がそれぞれにこれからの世界をより良くしていこうと、決意を述べた。



「皆が示した決意を是非実現していこう。それが第二のハーディーンを生み出す事を防ぐこと事に繋がるとわたしも思う。さぁ! それでは、その世界を実現しゆく為に何としてもこの戦。勝とうではないか!」



 全員で決意をして、最後の打ち合わせを終えた。


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