122話 集結
暗黒大陸にワープの石盤を設置した。
これでマギア・フロンティアの全ての大陸が繋がったことになる。
突撃をかける前にやれる事は全てやったから、後はその時を待つのみとなった。
集合時間が近づき、再びルーデウス帝国に向かうと、上空には巨大な体躯の竜王国の戦士達が飛び交い、地上にはかなりの数の戦士達が集まっているのが見えた。
いくつもの宿舎も建てられ、そこに各国の紋章が刻まれた旗が打ち立てられている。
「まだ約束の時間まで少しありますが、もうほとんどの方達が集まっていらっしゃるようですね」
「防衛戦の時よりもその数は多く見えますね」
街の警護に当てる分も集めると、アーロンさんも言ってたからな。
ここにいるのは、文字通りの総力なんだろう。
「もし……これでもあの悪い人を倒せなかったら、どうなるの?」
ナエが不安そうな顔で聞いてきた。
「ここに集まってるのは、マギア・フロンティアに残された最後の力。これで勝てなかったら、世界は終わる」
リューガが事実として、ナエの質問に答えた。
「俺達は負けないよ。皆の力が合わされば絶対に勝つことが出来るんだ。さっきも言ったけど自分の強さに自信を持ってくれ」
ナエはまだ10歳の女の子だ。
どうしても不安な気持ちになってしまう。
それに、皆だって言葉には出さないけど同じ気持ちだ。
もし、駄目ならどうなるんだろうという気持ちはどこまで付きまとう。
それだけこれから向かえる戦いは意味が大きいものだから。
少しでも安心させたくてナエの頭を軽く撫で付け、知り合いの魔力を探した。
この先の人がより多く集まる場所から、一際強い魔力反応が幾つも感じられた。
ルーデウスの前に使った大会議かな。皆が居るのは。
「この先にアーロンさん達がいるからそこに降りてくれ」
「了解した」
ゆっくりとルーデウス城の前に降り立つと、建物の外側で一服していたジェクトさんがいた。
「お。おお! タクト達じゃねぇか! 暫くだなぁおい! アーロンから聞いたけどよ、心配かけんじゃねぇーよ!!」
笑顔で近づき俺の背中をバシンッバシンッと叩くと、ド派手な音がここら一帯に響いた。
「お久しぶりですジェクトさん。ご心配おかけしました」
「本当だぜ! せっかくのダチがいなくなったらよ、寂しいしな。それに、まだ飲む約束も果たしてねぇんだからよ!」
話している最中も、依然として背中を叩く手を止めない。
「……タクトさんの背中で爆発音が鳴ってますけど、大丈夫なんでしょうか? 背中……」
「普通であれば背骨が折れるでしょうね。ですが痛がっているご様子でもないですし、もはやタクトさんの体は普通ではありませんので大丈夫なのでしょう」
アルフィンが言うとおり、痛くも痒くもない。
ジェクトさんは、無意識だと思うけど身体能力強化を使って腕に魔力まで纏っている。
この状態で叩かれるとダメージになりかねないけど、何ともない。
これも、身体能力が強化された恩恵か。
「ジェクトやめないか。タクトが痛がっ…………てはいないが、いつまでも叩いていては、迷惑だろう」
アーロンさんが爆発音を聞いて、城の中から出てきた。
心配して出て来てくれたとは思うけど、俺達の様子を見てリアクションに困っている
「アーロンの言うとおりだ。決戦前に主力を潰してどうする。ダメージは受けて……いないみたいだが……あの体どうなってるんだ」
「見たところ、ワレら竜王国の戦士よりも強靭な肉体となった様だ。竜王から経緯は聞いたが、もはや人間の域を超えているな」
クラウドさんとバハムートも音を聞きつけ遅れて出てくる。
「お。そうだな。悪りぃなつい顔を見て嬉しくなっちまってよ」
「大丈夫ですよ。多分そうだと思ってましたから」
どこか憎めない人懐こい笑顔で謝られたら、何も言えなくなる。俺の無事を本当に喜んでくれていたのが伝わって来てたから。
「とにかくこれで主役は揃ったな。既に中心メンバーには集まってもらっているから中に入ってくれ」
アーロンさんに案内されて、城内に入り大会議の中に入った。
そこには。
「あ! タクト来たわね。待ってたわよ」
「タクト君。この間は街の復興作業ありがとう。先に来させてもらっていたよ」
アリサ女王やヨーク公と。
「魔王殿遅かったな」
「タクト殿、アルフィン達も来たか」
シーゲル陛下とユルゲン陛下も既に集まり席に座っていた。
「あれ? リューちゃん達の王様がいないよ?」
確かに周りを見渡しても、竜王の姿がない。
「竜王は、突撃をかけるときに来られると言われていた。だからこの場にはいない。ここで決まった話しは後でワレが伝えるから問題もない」
バハムートが説明してくれた。
竜王は後で合流か。
でもこれで、この大会議室にマギア・フロンティアの王達とトップが集まった訳だ。
「皆さんもう揃ってたんですね。ちょっと事前準備をしていたので最後になってしまいました」
「事前準備? それも気になるが、先ずは座ってくれ」
全員がそれぞれの陣営に分かれて座る。
俺達は四人固まって正面左側に座った。
リューガは竜王国の陣営側に移動している。
「よし。これで主要メンバーは揃ったな。それでは、これより突撃前の最後の打ち合わせを行う」




