114話 意志を継ぐこと
よろしくお願いします!
昨晩はクリスタで一泊させてもらい、シーゲル陛下と深酒をしながら男としての、アドバイスを頂いた。
勿論アルコールが入る前にこれからの戦いの話しや隊の編制の事も取り決めたのだが。
またしても飲みすぎてアルフィンに怒られるという失態を起こした俺は現在。
「タクトさん。キチンと反省しておりますか? もう何回も言わせて頂いておりますが――」
「はい。すいません気をつけます」
アルフィンに絶賛お叱りを受けながら、三人でナエを迎えに街の方を歩いていた。
「もっと御自身のお体をご自愛してくださいね。まだ若いとはいえアルコールを摂りすぎるのは良くないのですよ。シーゲル陛下に乗せられたのでしょうが……本当にあの人は」
「はい。すいません気をつけます…………たぶん」
「タクトさん?」
「あはは……」
シズクもアルフィンの怖さにドン引きしている。
怒られながら目的地に到着した。
ナエ達の両親や、ガルカリ村の皆は街の一区画を借りてそこに生活をしている。
村での生活から、ガラッと変わったから上手くやっていけてるか心配もあったけど、シーゲル陛下はだいぶ馴染んできたと言っていたから大丈夫だろう。
「あ。お兄ちゃん、お姉ちゃん達。来てくれたの」
俺達の顔を見て、タタタッと、駆け寄ってくる。
やっぱり可愛いな。
「アルフィン王女と、シズクさんには昨日ご挨拶させてもらいましたが、いつもナエの面倒を見て下さり本当にありがとうございます。おまけに昨日は、お心遣いまでして頂いたようで」
「昨日はナエと親子水入らずで過ごせて嬉しかったです。旅の話しも沢山話してくれましたし、皆さんがナエを大切にして頂いて、ナエも皆さんをとても大好きだと伝わりました」
両親が揃って頭を下げて、お礼を言ってくれる。
「お礼を言うなら俺達の方です。お恥ずかしながら、ナエには本当に助けられてばかりです。素直で、明るくて、真面目に泣き言も一切言わずに修行も頑張る。本当に良いお子さんですよ」
「いやいや。そんなそんな。こちらこそ――」
「こちらこそ。そんな――」
「お父さん達も、お兄ちゃんも頭を下げてばっかりなの」
「それだけ、ナエちゃんが大切だということですよ」
「そうです。勿論私達も、ナエちゃんが大好きで大切です」
シズクがナエを抱き締める。
「お姉ちゃん達もありがとう! えへへ」
ご両親に挨拶をして、ナエと一緒に移動した。
最初の旅立ちとは違いしんみりとしたものではなく、明るくお別れがすんだ。
「昨日は楽しかったか?」
「うん! お母さんの料理を食べながらいっぱいお話ししたの。また早く会えるように悪い人を倒せるように、頑張るの!」
ツインテールをピョコピョコ揺らしながらやる気を覗かせる。
元気いっぱいだな。
やっぱり昨日帰ったのは、ナエにとっても良かったのだろう。
永遠の別れなんて事にするつもりはないけど、いつ何があるかなんて分からない。会えるときに会っておいた方がいいとも思っていた。
次は。
ユルゲン陛下とレスターさんに、挨拶をしにきた。
「ここが、現在御父様が避難されているシーゲル陛下の別邸になります」
コンッ! コンッ!
「アルフィンです」
ノックをして、声をかけるとメイドの人が出てきた。
この人は、トランスヴァール城に居た人だな。
「アルフィン様。どうぞお入り下さい」
「ありがとうございます。それでは入りましょう」
扉から中に入る。
流石にトランスヴァール城程には大きくなく、装飾品等も少ないが、それでも十分過ぎるほど豪華だ。
元々ここは、シーゲル陛下がたまに休む時に利用していた建物みたいで、清掃も行き渡り、普通の身分の人では利用出来ないほど立派な建物だった。
メイドさんの案内で、一際大きな部屋へと移動した。
中にはユルゲン陛下とレスターさんがいて、丁度打ち合わせをしていたのか、執務用の机には資料が山積みになっている。
「タクト殿。暫くぶりですな」
「ユルゲン陛下。その後体調は大丈夫ですか?」
「アルフィンに治癒魔法をかけてもらいだいぶ良くはなったが、まだ本調子ではないな」
身体はもう大丈夫なんだろうけど、洗脳の影響で精神に少し後遺症が残ったのかもしれない。
「そうですか……無理はしないでくださいね」
「タクト殿こそ昨日アルフィンが来てくれて今までの事を聞いたが、大変だったな。また無事に顔を見る事が出来て嬉しく思う」
「ありがとうございます。レスターさんもお疲れ様です」
「貴公もな。あの時、姫様に治癒魔法をかけて頂きながら魔力反応を感じていたが、あのドレアムをよく。本当に素晴らしい男だ。尊敬する」
初めて会った時は警戒から敵意も向けられたけど、今は信頼を込めた眼差しで称賛してくれた。
「ありがとうございます。ハーディーンにはやられましたけどね」
「まさか、ユーリ陛下の魂がタクト殿の中にあったとは。アルフィンから聞いて驚いたぞ」
「すいませんあの時は黙っていて。いずれ言おうとは思ってはいたのですが……」
結局ユルゲン陛下に言う前にこうなってしまった。
申し訳なく感じる。
もしかしたらユーリに聞きたい事もあったのかも知れない。
「いや責めているわけではないのだ。タクト殿にも考えがあっての事だというのも分かっている。それで、ユーリ陛下は、何か言われていただろうか?」
「はい。ユーリは、俺がマギア・フロンティアに来たときからずっと知恵を授けてくれて、どう行動すればいいかも教えてくれていました。そして……最後には全ての力を与えて助けてくれました。それも、全てトランスヴァール、世界の平和の為です。
ユーリは常に、世界の平和を考えていたと思います。
消える間際には、『これから先の未来は、ハーディーンの物じゃない。お前達の物だ。しっかり世界と連携して、平和な世の中にしてくれ』と残して消えていきました」
最後のユーリの遺言ともとれる言葉を、真剣に聞いていたユルゲン陛下は、一つ息を吐いた。
「……頭が上がらぬな。最後まで……本当に最後まで、この国を、いや世界の事を考えておられたのだな。そのお志しの高さに敬服する思いだ」
「はい。だからこそ、俺はユーリの意志も継いで必ず決戦に勝ってみせます」
「本当に、立派になられたな。力も気持ちも何倍にもなって。
我々もそのユーリ陛下の思いに応えねばならない。
シーゲル陛下とも打ち合わせておるが、万全の準備で決戦に挑みたいと思う」
「お願いします。おそらく全世界の総力が揃わないと厳しい程に、激しい戦いになると思いますので」
「うむ、心得ておる。それと、ユーリ陛下が言われる通り、トランスヴァールと世界の安寧を考えてるならば」
俺とアルフィンの二人の顔を交互に見たあと。
爆弾を投下した。
「アルフィンをタクト殿に貰ってもらうのが一番良いだろう。二人の世継ぎはきっと最高に優秀な子が産まれると思うのでな」
「えっ……あ、あの」
突然の展開に、呂律が上手く回らない。
「お、御父様っ! な、何を急に言われるのですか!」
アルフィンも真っ赤な顔で、問いただした。
「急も何も。我ももう年だし身体も不自由になってきた。だから期待するのものだ。
それに。間違えておろんだろう? ん? いつでも、アルフィンを自分のものにしてくれてもいいのでな。アルフィンもそれを望んでいるだろう」
「お、御父様! もう!」
口ではユルゲン陛下を怒っているけど。
目線はチラチラッと、俺の事を見てくる。
目線が合うと恥ずかしそうに、それを逸らしまた上目遣いで見つめてくる。
言葉でまだ伝えられない俺のヘタレのせいで、不安にしているんだろうな。ごめん。もうちょっと待っててくれ。必ず勇気を出して伝えるから。
との思いを乗せて、今俺が出来る精一杯の行動。
アルフィンの目線に合わせ、一つ頷いた。
「あっ!」
どうやら伝わった様で、凄く嬉しそうな顔をしてくれた。
強さだけではなく、ヘタレ改善も頑張るぞ。
お読み頂きありがとうございました!




