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111話 女の戦い再び

 



「着いたぞエリス王国だ」



 竜王国から空の旅を数十分。リューガが到着を知らせてくれた。



 ここは雪国で寒いので、途中で防寒服を着込んだ。


 今日もこの辺は天気が悪いらしく、大雪で冷たい粒が街を白く染めている。


 この寒空でも元気に飛び回るリューガに寒くないのかと聞いた所、その自慢の鱗のお陰で寒さと暑さ知らずだそうだ。


 羨ましい。



 クララさんの所へ行く前に、アリサ女王に挨拶する為、魔力反応がするエリス城前まで飛んでもらい、門番が立つ少し前に降りた。



 突然空から竜王国の戦士が飛んで来て、更に俺達が降りて来たもんだから、大変驚かせてしまった。

 謝りつつ謁見したい旨を伝えると、流石はアリサ女王で、既に俺達の魔力反応を感じ取り、来たら中に通すように伝えてくれていた。


 やっぱり聡明な人だよな。

 気が利くし、頭の回転も早いし、そして美女。

 マギア・フロンティアでは、立場があるから簡単にとはいかないんだろうけど、俺の前の世界なら引く手あまただろう。



 アリサ女王のお陰で、スムーズに城内に入れた俺達は、謁見の間へと向かう。


 リューガは、サイズの問題もあり外で待つことになった。

 暇なら街でも見たり、近場に居てもらってもいいと言ったんだが、「待っている」と返事が帰ってきた。

 本当。竜王国の民達は真面目で義理堅いよなぁ。

 顔は怖いけど、優しい心を持つ誇り高き民族。

 リューガに行ってくると声をかけ、中に入っていく。



 城内は何度も来ているので、勝手知ったるなんとかで迷わずに相変わらず美しい廊下を歩いて、目的地に到着した。



 扉の前に立つと。



「中におられますわ」



「はい。アリサ女王お一人で、他の人は居ないみたいです」



「それは、好都合ですわ。決戦の場に相応しいですね」



「ゴゴゴ」と効果音が鳴ってるんじゃないかという程に、二人の魔力が昂っていく。

 いや。正確には、()()()()()。扉の中のアリサ女王の魔力も二人の魔力に反応して、昂っていた。



「三人して、何やってんの……」



 思わず呆れの声が出る。



「お兄ちゃんがそれを言っちゃ駄目なの。お姉ちゃん達はお兄ちゃんの為にヤル気なんだから」



「はい。すいません」



 10歳の女の子に、注意されてしまった。



「それじゃあ」



 コンッ! コンッ!



「アリサ女王。タクトです」



 ノックをしてから声をかける。

 返事が帰ってこない。


 えーと? 中には間違いなくいるから……何だろう?

 もう一回ノックする。


 コンッ! コンッ!

 二回目も反応がなかった。



「……何だろう」



「返事がありませんわ」



「何か、狙いが?」



「開けてみればいいと思うの」



「そうだな。では失礼して」



 扉を開けようと近寄り、ドアノブを握ると普通に回った。

 そういえば、扉の紋章も解除されている。

 中に入れるな。



「アリサ女王。入りますよ?」



 一声かけて、俺が先頭で中に足を踏み入れると。



「タクトー!!」



 女性の声、とゆーかアリサ女王が俺の名前を呼びながら駆け寄ってくる。


 どうやら扉の陰に身を潜めていたようだ。

 そのまま抱きつこうと、ダイブしてきた。

 避けたら失礼にあたると、アリサ女王を見ると。



「ん?」



 アリサ女王と景色がスローモーションの様に、ゆっくりと動くようになった。

 周りを見渡してみると、アルフィン達も同様にゆっくりと動いている。



「何だろう?」



 何回か瞬きをすると、また普通に動き出した。

 もしかして。



 目に魔力を集めスローモーションになる様に意識すると、またゆっくりと動き出す。


 なるほど。

 意識して見るようにすると、物体がゆっくりになるのか。

 そして、これは任意に切り替えもできると。

 身体能力が規格外に上昇したからだろうか?

 これも、強化された効果の一つなのかな。



 実験を何回かした後、駆け寄るアリサ女王を抱き留めた。



「「あー!」」



 アルフィンとシズクの二人が声をあげる。



「ご無沙汰しております。アリサ女王――」



「タクト! 良かった……無事で本当に……。貴方が危ないとアーロンの爺さんに聞いて、気が気じゃなかった。だから言ったじゃない自分を優先しなさいって……」



 グリグリと胸に顔を押し付け、涙声で本当に心配したのだと言ってくれた。


 これには声をあげていたアルフィン達も、黙って見守る。

 心配かけてばかりだな。

 アリサ女王の背中をポンポンとあやすように撫でた。



「ご心配お掛けしました。でも、そのお陰で俺は、更に戦える力を得ることが出来ました。今度はこの力で、アリサ女王も世界も守ってみせます」



「タクト……」



 顔を胸からあげて今度は首の後ろに手を回そうとする。




「「それ以上は、ゆるしません。わ!」」



 アルフィン達が羽交い締めで俺と、アリサ女王とを引き離した。



「何よ。これぐらい良いじゃない。あなた達はいつもタクトと一緒にいられてこう言うことも出来るんでしょうけど。私は、久しぶりなのよ? ここは、黙って見ていてほしいわね」



 アルフィンに掴まれ、ジタバタとしながら尚も俺に近づこうとする。



「それと、これとは別ですわ! 大人しくしていて下さいな!」



「そうですよ!」



 そこでまた、三人で「バチバチ」と視線を飛ばしあっていた。



「やれやれ。なの」





 スキンシップとコミュニケーションとが終わり、挨拶も済んだ後。本題の決戦に向けての話をしていた。




「ええ。聞いてるわよ。五日後にルーデウスよね?」



「はい。アリサ女王にも、お力をお貸し頂ければと」



「任せなさい。私も先陣に立つから。タクトを傷付けた、ハーディーンはぶっ殺さないといけないしね」



 魔力も荒くなり、アリサ女王の目がヤバい感じになってる。



「あ、そういえば。クララがこの間ここに来て、もしタクト達が来たら立ち寄って欲しいと言ってたわよ」



「クララさんが?」



「ええ。前に来た時は追い返すような事をして、申し訳なかったと謝っていたわ」



「そうですか。この後行きますね」



 気持ちの整理はついたんだろうか。

 でも、ありがたいな。

 今こそ、クララさんの力を貸してもらいたい。


 

「今夜も泊まっていきなさい。やることがたくさんあるのは、分かるけど休息もきちんと取りなさいな。私も、タクトと一緒に要られるし、そうしましょう。はい決まり」



 アリサ女王が強引に決めてしまった。

 まぁ。どうせ他の街で一泊するんだし、お言葉に甘えさせてもらうか。



「では。お言葉に甘えて」



「最高の料理とお酒用意しとくから、早く帰ってきてね。一緒に熱い夜を過ごしましょうね」



「これは、油断出来ませんわね。しっかりと妨害しなくては」



「絶対に負けられません」



「やれやれ。なの」



 今夜の約束をした後、クララさんの所へ向かった。


お読み頂きありがとうございました!

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