108話 優しさと温もりと
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俺がまたマギア・フロンティアで戦えるように、ユーリは自身の全ての力と意思を託して消えていった。
「ユーリ……ありがとう」
ユーリの力が納まった、心の芯に手を当て誓う。
託された思いと力は、必ずマギア・フロンティアの平和の為に使うよ。
だから、どうか見ていてくれ。
「行ってしまわれましたね……。本当に高貴な方でした。あれだけの傑物は、今後も現れる事はないでしょう」
ユーリを想い、女神が称賛の声をあげる。
「ユーリが託してくれたこの思い。そして力を俺は絶対に無駄にしない」
「貴方はこれで、命が繋がりました。後は地上に転送するだけとなりました。ですが、その前に――」
そういうと、女神は俺に掌を向け力を与えた。
「これは?」
「貴方に与えた力をいくつか強化しました。今の貴方なら、扱える筈です。ここでは、実感は出来ませんが目覚めた時に分かるでしょう。貴方は、私にとっても希望。最大限のサポートをさせて頂きます。どうか、お役立てください」
「ありがとうしっかりと活用させてもらう。だけど、何かを仕込んでるとか、黙ってるとか、秘密は今度はなしだぞ?」
からかうように言うと、女神も俺に合わせるようにおどけて言った。
「ええ。もう秘密にする必要がありませんので。大丈夫です。フフ」
「本当かなぁ。……さて。これで、ここでのやるべき事は済んだかな?」
「貴方にお伝えしたいことも話せましたし、ここに喚ばせて頂いた用件は、済みましたので大丈夫かと思います」
「だな。よし! それなら、地上へ送ってくれ」
「分かりました。貴方の体は、竜王国にありますのでそこまで転送しますね。
……私は、貴方達人間を信じています。時に過ちを犯し、他者を傷つけたとしても、分かり合い手を携えて共に困難を乗り越えられると。ですから、アレースローンの事をどうか、お願いいたします。私に人間の可能性を示し続けてください。ここで、見守らせて頂きます」
女神の体が輝く。
背中には、目映く美しい羽が生えている様だ。
やっぱり俺達人間と違うんだな。
本来ならこうして話を出来ない程の存在なんだろう。
おもいっきり頭下げさせてしまったけど。
「ハーディーンみたいに失望させない様に、頑張っていくよ。それじゃあ、色々とありがとう」
女神が力を行使すると、この場から離れていくのが分かった。
フワフワとした浮遊感を感じながら、地上に飛んで行く。
雲を抜け、心地よい風を受けながら鳥の群れと暫く飛んだ先で、竜王国の医務室で横たわる自分の体が見えた。
側には、心配そうな顔で俺の顔を見ている、アルフィンとシズクとナエがいた。
皆。ごめんと心で謝りながら、自分の体の中に入った。
中は、まるで水の中に飛び込んだ様な感覚がする。
息苦しいとかはないけど、辺り一面暗い。
これ、どうすれば起きれるんだろう。
意識を失なった時とは、感覚が違うんだよなぁ。
どうすればいいのかと、考えていると。
声が聴こえてきた。
「タクトさん。タクトさん。早く目覚めて元気な笑顔をお見せください」
アルフィンの声だ。
シズクと、ナエの声も聴こえる。
声の方向からは光が射し込む。
その方向へ必死に手で漕いで向かった。
「……う……ん……」
瞼を開けると、見覚えのある天井が見える。
重たい頭を横に向けると、驚きの表情の三人と目が合った。
「皆。ただいま。また心配させて、ごめ――うわぁっ!」
言い終わる前に、三人が飛び込んできた。
「タクトさん! タクトさん! タクトさん!」
抱きつき泣きじゃくるアルフィン。
「……良かった。本当に……」
抱きつきながら、安堵の声を上げるシズク。
「また、心配かけたの。後でおしおきなの!」
怒りながら、泣いているナエ。と三者三様のリアクションだったけど、かなり心配かけていたのが伝わった。
「皆、ごめん。もう何度も心配かけてる身としては、何も言えない俺なんだけど。とにかくごめん。色々な助けがあって、また帰ってこられたよ」
抱きつかれたまま、皆に謝罪と思いを話した。
「いいえ。もう許しませんわ」
「そうですね。これは、しっかり責任を取ってもらいます」
「お姉ちゃん達をたくさん泣かせた責任取るの」
三人から、身を縮み混ませる程のオーラが噴き出していた。
「……ゴクッ……。み、皆? 怖いよ?」
必死な謝罪をしまくり、心配かけたお詫びとして、皆が俺にやって欲しいことをすることで話はついた。
それぞれ、やって欲しいことが今すぐ思い浮かばないから、実行は後日以降になったけど。
これだけ怒られる程に心配してくれるのは、俺を想っていてくれてるからなんだよな。
大事にしないと、罰が当たる。
もう、泣かせてはいけない。
密かに、心の中で皆に誓いを立てた。
今日は誓いをしてばかりだ。
「タクトさんも、わたくし達がどれほど心配していたか、分かって頂いたみたいですので、これくらいで許しましょう」
アルフィンの一言で、シズクもナエも許してくれた。
三人とも俺から離れ、最上級の笑顔をくれる。
そして。
「「「お帰りなさい。タクトさん。お兄ちゃん」」」
「……あ……」
俺の大切な、大切な宝物の笑顔を見ると、無事に帰って来れたんだとようやく実感した。
皆の笑顔を見て、それで気が緩んだのか。
つーっと両目から涙が出てきた。
俺の事を想ってくれる感謝と、心配かけた申し訳なさと、俺を救う為に、自分を犠牲にしてくれたユーリの存在も。
俺を支えてくれている人達に対して、申し訳なさと、ありがたさで、胸がいっぱいになる。
もう、ごちゃごちゃに混ざりすぎて何の感情か、分からないけど、涙が止まらない。
「タクトさん?」
「お兄ちゃん?」
「どうしました?」
俺が突然泣き出して、戸惑ったのか直ぐに近寄ってきてくれる三人を思い切り抱き締めた。
「皆。ユーリも、本当にありがとう。こんなに想ってくれている人達がいて、俺は幸せだ」
涙を流しながら、抱き締める俺を皆も抱き締め返してくれた。
子供をあやすように、優しく背中も撫でてくれる。
そして、またそれが切っ掛けとなり涙が溢れる。
そんな四人での抱擁は、俺が泣き止むまで暫く続いた。
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