101話 邪神への挑戦
よろしくお願いします!
全員で仕掛けた連携攻撃は、的確に防がれた。
一つ一つの基本の動作が、速くて効率的で力も強い。
魔力操作も、やはり俺やドレアムよりも洗練されている。
流石はドレアムの親玉で、邪神といった所か。
ユーリも生前はハーディーンと、互角だと言っていたけど。
このレベルが、最高クラスなのか。
「さて。次はどう攻めてくる? まだ力を秘めているのは分かっているぞ。もっと楽しませておくれ」
俺達の力を測ろうとしているのか、自分から動くつもりは無いらしくその場でじっと見詰めてくる。
多分コイツも、ステータス表示スキルを持っていて俺達の力を見ているんだろう。
俺もコイツのステータスを見たけど、案の定細かい箇所は非表示になった。
向こうは見れて俺は見れないんだから本当ズルいよな。
「お望み通り、これから見せてやるさ。皆、もっと力を上げていくぞ。コイツは全力を出してやっと届く相手だ。いくぞ!」
さっきよりも、全員が力を高めて総攻撃をかける。
アルフィンは、完全に使えるようになった、三つの同時魔法行使でハーディーンのステータスを下げまくり、シズクは破魔を全開に引き出し、ナエは収束スキルを限界までコントロールして四つの動物魔法を造り出す。
俺は、体内の魔力核をフル稼働させ魔力を膨大に造り出し、鎧のように纏った。ついでに大量の魔法を周りに浮かべて突撃をかける。
各自がさっきよりも速く、効率的に仕掛けていった。
それぞれが全力を出した事であっさりと防がれた攻撃は。
今度は通用した。
「また、同じ攻めか? 無駄なことを――なに!」
同じ様に俺とシズクの攻撃を防ごうとするが、さっきとは違う結果になる。
アルフィンのデバフ魔法で、ハーディーンの防御力はガタ落ちしている所に、俺の拳打(魔法装填済み)が左腕を吹き飛ばした。
「やあぁぁ!!」
そこに、シズクの鋭い踏み込みからの斬撃で半身を切り落とし。
「これもくらいなさい! 聖なる雨!!」
聖属性スキルで吹き飛ばす。
「ガアアアッ!」
流石に邪神もこれだけの攻撃を受けたまらず苦痛の声を出した。
「ナエ! 今だ撃て!」
「わかったの! 皆いくのー!!」
ナエの動物魔法四発と、俺も一緒にハーディーンに魔法を全弾撃ちこんだ。
「ぬううう! 生意気なー!」
何発かは、弾かれたが魔法はハーディーンの体に吸い込まれ直撃した。
凄まじい轟音を響かせ、そのまま地面に激突する。
「流石にこれだけ受ければ」
「いかに邪神といえども、無傷とはいかない筈です」
地面に衝突した際にできた砂煙がはれると、ハーディーンは傷ついた体で座り込んでいた。
「やりおる……。伊達に余が造り出した四天王を倒すだけはあるな」
体は半分に切り落とされ、四肢もまともな状態なものはなく、穴だらけになっても、声色はまったく焦っている感じを受けない。
HPも少し減っているぐらいで、まだまだ余裕だということか。
「これなら、もう少し力を解放しても良さそうだ。思っていたよりも楽しめそうで何より。ハアッ!」
ハーディーンが魔力を高めていくと、傷ついた体は復活していく。
「傷が治っていくの。ズルいの」
「これが、不死身の力か……」
何度、ダメージを負わせようと直ぐ復活してしまう。
普通であれば死んでもおかしくない程のダメージでも、復活する。
この力のせいでユーリは、コイツを封印するしかなかった。
傷が全快して、立ち上がると何かを探るような目線で俺に問いかけてきた。
「そなた。シールドの件といい余の情報を知っている様だな。
他から来たのに、何処から聞いた? トランスヴァールの女からか、文献を読んだか、女神から聞いたか、もしくは……」
コイツ。
気づいたな。
「まぁよい。そなたらを殺して、ゆっくりと答え探しをしよう。余には時間がたっぷりとある」
そこからの攻防は、少し苦戦しながらも、ハーディーンにダメージを与え、ボロボロにして、直ぐに復活してと繰り返した。
たしかにダメージを与えても、与えても復活されるのは嫌になるな。
だけど。
ここまでの攻防で確認出来たこともある。
俺の『イメージした結果になる能力』。
ハーディーンにも使えることが分かった。
女神から貰ったこの最後のスキルは、ハーディーンとドレアムに対抗する為の能力だと思って良さそうだ。
ただ。
俺には、ハーディーンより圧倒的に戦闘経験が足りていない。
完全にハーディーンを凌駕して消し去る為には、この能力をもっと洗練させないといけない。
俺がこの能力を高めていくと比例するように、ハーディーンは強さを少しずつ上げていった。
まるで俺達との戦いを楽しんでいるかのように。
やがて。
何回かハーディーンを殺した頃。
戦いの足を止めて話しかけてきた。
「もう、充分だな。そなたらのお陰で鈍っていた体も解れた」
ゆっくりと全員を見渡しながら続きを話しはじめる。
「それに、ここまで神を相手に頑張ったのだ。最後に神からの褒美を授けよう。そなたらに安らかな眠りを与える」
ハーディーンが「ビリビリ」と肌を突き刺すような痛みを感じる程に、魔力を高めていくのが分かる。
今だかつて感じた事がない、魔力圧力が場を支配していく。
この戦いはこれからが、本番だというように。
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