第5話「魔理沙に告白する物語」
僕は魔理沙が好きだ。その感情を思い出してから2週間ちょっとが過ぎた。魔理沙にはそのことはまだ伝えていない。それどころか、緊張でまともに会話ができない日々が続いていた。
「なぁなぁ、プールってのに行ってみたいんだけど。」
「ど、どうしたまた急に。」
「今テレビでやってておもしろそうだなーと思ってな。幻想郷にはこんなのなかったし、最近暑いじゃん?」
「ん~、まぁ別にいっか。よしそれじゃ行こう。」
「よっしゃ!楽しみだぜ。」
……別に、気持ちを伝えるつもりはない。もし伝えて、ふられたらこれから生活しづらくなる。ましてや一つつ屋根の下で暮らしているんだ。ただの友達や恋人同士だったらその後会わなければいい話だが、ふられて空気が悪くなったからって、魔理沙に家から出て行ってもらうなんてことはできない。それに、この暮らしがいつまでも続くとは思わない。いづれ魔理沙はいなくなってしまう、そんな気がする。だからこれからは、魔理沙を楽しませることだけを考えよう。……自分の気持ちは押し殺して……。
「おーい翔兎!ちょっと休憩しようぜ。」
あれから僕たちはプールに来て、しばらく泳いだ。魔理沙に休憩しようと声をかけられたので、僕は魔理沙の方に向かった。
「いやー結構泳いだな。ちと疲れちゃったぜ。」
「僕も疲れちゃったな。なんか飲み物買ってくるよ。」
「あ、その前にちょっといいか?」
「ん?どうした?」
「なんというかその……ありがとうな。」
「ん?プールの話?いいよ別にそんな。」
「いや、今日だけじゃないんだ。最初私たちが初めて会ったとき、見ず知らずの、しかもこの世界の人間じゃない私を家に入れてくれて。他にも一緒に出掛けてくれたり、服を買ってくれたり、他にも色々……本当に、ありがとうな……。」
「……。」
「その、何だ。たまには感謝の言葉の一つや二つ言っておかなきゃなと思ってな。まぁ、私の自己満足だ。軽く受け止めてくれ。」
……そんなこと言われたら、もっと好きになってしまうじゃないか。僕だってたくさん感謝しているのに。
ごめん魔理沙さん、やっぱり我慢できそうにないや。たとえいづれ魔理沙が僕の前からいなくなってしまうのだとしても、僕なんかが魔理沙と付き合うことなんてできないとわかっていても、それでも、僕のこの気持ちを、知っててもらいたい。だから言うんだ、いままで押し殺していた僕の思いを!
「魔理沙さん。」
「ん?どうした?」
「僕……ずっと前から魔理沙さんのことが……好きでした。」