Another最終話「消える夢物語の記憶」
今日はお昼ご飯を食べて、散歩がてら近くの公園に来ていた。最近ずっと出かけていたから、たまにはいいかと互いに意見が一致した。
「いやぁー、たまにはいいなぁ。のんびり出来るぜ。」
そんなことを言うと、僕たちの目の前を、一組のカップルが通った。僕は少し気まずくなってしまった。魔理沙も気まずくなったのか、目をそらしている。だがそんな中にも、両親と遊ぶ小さい子供たちなどの、見ててほっこりする景色が多く目に入った。
「そ、そうだ。私が見たいのはこういう景色だ!」
やっぱり気まずくなっていたようだ。
「魔理沙この前家出してるって言ってたよな?ああいう風景見てるとさ、なんていうかその……寂しくなったしないの?」
「んー、そうだなー。少しはそういうのもあるかなー。でもそれより、幻想郷に帰れてないのが少し悲しく思うな。所謂ホームシックってやつだ。」
「そうだよな。やっぱりあるよな。」
「でもな、翔兎がいるから今は楽しいぜ!」
「魔理沙……!……決めた!」
「お?何をだ?」
「この前魔理沙が、俺が両親のことについて安心して眠れるように一緒に寝てくれたように、今日は僕が魔理沙と一緒に寝てあげる!ホームシックを忘れて安心して眠れるように!」
「ははっ、ありがとうな、翔兎。でも今度は、ちゃんと恋人同士になって寝て欲しいんだぜ……。」
「え……?どういうこと?」
「私、実はな、翔兎のこと……好きなんだ……。」
「……え……?」
理解が追い付かない。今、魔理沙は僕に何と言ったんだ?魔理沙は僕のことが好き?いやだが、この前彼女役をやってくれたのは僕にお礼をするためであって、僕のことが好きだということではないはず……。
「この前お前が私に告白してきたばっかりなのに悪いな、でももう……我慢できなかったんだ……!お前が私のことを楽しませようとしてくれていることに気が付いて、お前の優しさを知ってからどんどん惹かれていった。そこから恋に落ちるのなんて、一瞬の出来事だった……。実は、お前が告白してくれた時にはもうすでにお前のことが好きだった。だから、お前の告白の答えに”彼女役”とか言って半分断るようなことをしてしまったときは、すごく心が苦しくなった……。だが今回は、私から改めて告白させてくれ!例えすぐお前と離れ離れになってしまうとしても、その短い間だけでもお前と、ちゃんとしたカップルになりたいんだ!だから私と、付き合ってくれ!」
まさか魔理沙が僕のことを好きでいてくれてただ何て……。この前魔理沙が”彼女役”担ってくれた時は、これで十分だと思っていたけど、でも心のどこかで、魔理沙とちゃんとしたカップルになりたいと思っていた自分がいた。僕の魔理沙に対する気持ちは今も変わらない、だから、僕が選ぶ選択肢は……!
「魔理沙、僕も、例え短い間だとしても、魔理沙とちゃんとしたカップルになりたい……!だから僕も魔理沙と、付き合いたい……!」
「ほ、本当か?えへへっ、勇気だして告白してよかったぜ……。これからもよろしくな……!」
そして僕たちは抱き合った。この幸せをかみしめながら。……だがその時感じたのは、あの揺れ……。この前起きた地震のようなもの。だが今回のは前回のものと比べ物にならないぐらい大きい……!おびえる魔理沙を強く抱きしめて、その場にしゃがみ込む。
「しょ、翔兎、怖いんだぜ……。」
「だ、大丈夫。魔理沙は、僕が、俺が守るから……!」
強い揺れはまだ続いている。そして、光り輝く粒子が、僕の目の前を覆いつくす。それがまぶしくて、思わず間を瞑ってしまう。そして、その光が最大限に達して、しばらくして、揺れは治まった。目の前に魔理沙はいない。……?魔理沙って誰だ?なんで僕はこんなところにいるんだ?まぁいいや、とりあえず家に帰ろう。
もうすぐ、夏休みが終わる。
完
霊夢が翔兎の家に来ず、魔理沙が幻想郷に帰れなかったので、幻想郷は崩壊してしまいました。それと同時に、魔理沙に関する記憶、記録、事象などのすべてが翔兎の心の中から、世界から消えてしまいました。
もう翔兎の中には、魔理沙に関する記憶は残っていません。
It`s a Bad end