絞殺大好き妖怪って知ってる?
ついに完成したホラー大賞2018のこのさくのエントリー用作品ですよー
ガチャハズの更新はもう一週間待ってくださいですよー
「あー、なんか予定空いたわ。今日、おめーらヒマ?」
こいつは、僕たちのグループのイワノだ。
「僕もヒマだな。君らもヒマ?」
僕はみんなに聞いた。
グループの6人の中の、残りの4人も満場一致でうなずいた。
で何をしたものか話し合っていると、友達のサカタがこう提案した。
「なあ、肝試しに心霊スポット行かねえか?」
僕はサカタに聞いた。
「どこのだよ」
「シロ、××谷トンネル」
サカタはおもむろにスマホを取り出し言った。
「××谷トンネルでグーグロ検索しますか」
サカタのスマホから音声が流れた。
シロとはスマホの一部機種に搭載されているAIで音声入力で検索などが出来る、僕が選ぶはっきり言って考えた奴は天才だと思う発明品の一つだ。
グーグロは世界で一番有名な検索エンジンで、これを使って物を調べることをググると言うんだ。
「なあなあ、ここなんて良くね」
そう言いながらサカタは僕たちにスマホを見せた。
「おいおいアシは、やっぱり俺様だよりかよ」
僕たちのグループ唯一の免許持ちのカワイが楽しそうに言った。
「集合はいつにする?」
僕たちのグループ唯一の喫煙者のカナダが笑顔で聞いた。
「じゃあ、いつもの駅前にクジシューでどうかな?」
僕たちのグループの紅一点のワタナベが無難にまとめた。
「オーケー」
「問題なし」
「ノープロブレム」
「それでえーよ」
「了解」
と、言うわけで、今は××谷トンネルへ向かう車の中だ。
実はこの車カワイのこだわりの外車だ。
「なんかさぁ、怖い話して雰囲気、盛り上げてよ シバ」
はい、キター
ワタナベのムチャブリ
だが、こんな事もあろうと僕の脳には友人たちと盛り上がれる怖い話が一つインプットされている。
それは、僕がこれまでの19年間の人生の中で最も衝撃を受けたエピソードだ。
「はいはい、怖い話ね!あれは、僕が小学校一年生だったかな?二年生だったかな?まあそんな頃のお話なんだけど」
はい、ここから少しずつ声を小さくする。
そして、最後の見せ場でいきなり声を爆発させるんだ。
「まあね、夢の中なんだけどね。学校のグラウンドで徒競走かな?まあ体操着、着て走る夢を見てたのよ。そしたらさ、となりで走ってた友達がいきなり」
一旦、区切った。だが、まだ、大声は使わない。
「うんうん それでそれで」
ワタナベが興味津々と言った顔でこちらを見る。
「………こけたのよ。そしてさ、そいつがさ、泣き出すもんだからさ。手を引っ張って保健室へ連れていこうとしたのよさ。そしたらさ、そいつがさ、僕の手をさ、強く握るのさ。そうしたらいきなり尿意がでてきたのよ」
はい、また区切る。突然の下ネタに絶句する周囲。
「それで、トイレに行くのが先か、保健室へ連れてくのが先か。迷っていたら」
今だ。大声先生。
「なま暖かい感覚を股に感じたところで夢から覚めましたとさ。めでたしめでたし」
「ああ、そっちの」
ワタナベは不服そうだ。
「あははっ、おもしろかったよシバ」
カワイがハンドルを握りながら愉快そうに言った。
「怖いっちゃぁ、怖かったなぁ今の」
サカタは絶妙?な顔で言った。
「ははっ、最高」
イワノも口角を上げて言った。
「やべえ、酔った」
カナダが顔に手を当てて言った。
「じゃあ、次は私ね」
ワタナベがハッスルしつつ言った。
「やめとけ、ワタナベ。今の空気じゃ何やっても滑るだけだ」
サカタがワタナベを止めた。
「あっそういえばさ、その心霊スポットまで歩いていかない?途中から歩いくかんじで?ねえ、どう?」
ワタナベの提案はなかなか面白そうな物だった。
作者目線で便利な呪文
そうこうしている間に時は過ぎ。
「お前ら、着いたぞ」
カワイが言った。
「スマン、酔った。ちょっと車の中で休んでていいか」
カナダは肝試しをリタイアするようだ。
僕は帰りの車でどういじり倒したものかと思案した。
「なんだよ、カナダ ビビってんのかよ!」
イワノがカナダを挑発した。
「別に、そう取ってもらってもかまわない」
僕は、カナダは動じなかった事から地雷臭を嗅ぎ取った。なので、カナダをいじるのは怖いからやめることにした。
「どうでもいいけど車の中でたばこ吸うなよ」
カワイはお気に入りの外車にたばこの臭いが付くことを嫌っている。
まあ、たばこ臭い車で帰りたくないし賛成だ。
「もういいから行こうぜ」
サカタが言った。
僕たちは、カナダを除いた五人でライトをそれぞれ持って、トンネルに向かった。
「結局、このトンネルって何が出るの、サカタ?」
ワタナベの言葉でそう言えばトンネルのどこが曰く付きなのか知らないことに気が付いた。
「あー、このトンネルの近くのとあるスポットで事故に遭った白い服の少女が、10時10分に写真を撮ると写り込むんだってさ」
サカタがこのトンネルの怪奇現象を教えてくれた。
なんだか、ありきたりすぎる話だな。
「いやー、やっぱり怖いね。なんか怖くない話して、うーんと弱い妖怪の話とか、それして」
また、ワタナベのムチャブリだ。
「そういや、一反木綿ってどんな妖怪なのよ?」
カワイの疑問に僕は答えられなかった。
「便利な乗り物じゃね」
イワノが簡潔にまとめてくれた。
「一反木綿ってさ、弱すぎない。最弱妖怪じゃない?」
ワタナベは、小さな肩を振るわせながら言った。
「妖怪ディスるってフラグじゃね」
カワイが言った。
「あんだよ。マジでビビってんのかよ。カワイ」
イワノが感じ悪く言った。
「ままままま、落ち着いて」
僕は二人をたしなめた。
「そーいえば、私もちょっと怖くて魔除けのアイテムにこんな物持ってきちゃったな」
そう言いながらピンクと白の何かをワタナベは掲げた。
「なにそれ」
僕は聞いた。
「ひいおばあちゃんの歯で作った入れ歯」
ワタナベは真顔で言った。
僕は少しワタナベという人間が怖くなった。
「おい、ワタナベ 気色悪いモン持ってくんなよ」
イワノの言葉と僕の意見はおおむね一致していた。
そうこう話しながら歩いていると急にサカタが立ち止まった。
「よしと、ここで写真を撮ると出るらしいから、お前ら並べ」
サカタの言葉にならい横一列に四人で並んだ。
サカタがスマホをこちらに向ける。
「今10時9分だね、ギリギリよ。なんか適当にポーズ取って」
サカタの言葉に僕は目を閉じ思案した。
どのポーズが一番ウケるだろうか。
ピースは無難、シンプル故にダサい以上のデメリットはない。だが、逃げに走ったみたいで癪なので却下。
レレレ○レーは、ネタを拾ってもらえない危険から却下。
シ○ーのポーズは、動き合っての物だから写真には向かないので、却下。
じゃあ、手をぶら下げてゾンビの真似は?
「ねえ、なに、あれ?」
僕の思考をワタナベの小さな声が遮った。
ここで目を開けようとしながら少し負けた気分になった。
なぜなら、この話を掘り下げたところで、万に一つも、メッチャくだらないこと以外にはならないと。僕は悟ったからだ。
だが遅かった、僕の瞼は開かれた。
そこで僕が見た光景は不思議としか言いようがなかった。
スマホを横にしていじっているサカタの後ろに白いうごめくなにかが見えたのだ。
僕の視力でこの暗がりでは白いなにかが動いていることしか分からない。
「おいおい、俺をビビらせようってか、そう上手くはいかないぜ」
サカタが言った。
そしてその白いなにかは宙を滑りこちらへ飛んできた。
その白いなにかは、人の形はしておらず、色はどこか豆腐を思い出させるものだった。
僕は、そのなにかから目を離すことが出来なかった。
僕は、まだ恐怖はしておらず、どちらかというと、マジックの種を見破ろうというような好奇心が原因だった。
「なあ、仕掛け人は誰よ?これテレビだろ!」
カワイがうわずった声で、自分を納得させるように言った。
僕の体が金縛りにあったように動かなくなった。
おそらく、不思議な現象への恐怖と期待と興奮からくるものだろう。
僕はそう思いこもうとした。
ソレはカワイの顔に巻き付いた。
「イッ、イヤダー………
僕はカワイの悲鳴を初めて聞いた。
相変わらず体は動かなかった。
カワイは、白いなにかにふさがれた口に、手を当てるも力つき倒れてしまった。
ごくり、僕は唾を飲み、瞬いた。
「逃げるぞ」
サカタの言葉に、体は考えるよりも速く従っていた。
僕の心を恐怖が蝕もうとしていた。
僕は、恐怖に飲まれないように、車に向かって、余計なことはなに一つとして考えず、ただ、ひたすらに、走ろうとした。
僕の鼻がタバコの臭いを感じ取った。
いつもはイヤな気持ちにさせる臭いだが今回ばかりは心が安らいだ。
僕は膝に手を当てゼーハーゼーハーと呼吸を正した。
これで、一安心だ、車に乗ればあれから逃げられる。
あっ、免許持ちがいない!
でも、一晩やり過ごせば消えるかもしれないと自分に都合のいい弱点を考えて、自分の不安を黙らせた。
「おい、どした?血相変えて。マジで出たのか?」
酔って車に待機していたカナダは死んだカワイの言いつけを守り、車から降りていた。
「ど う し て 分かったの!?」
カナダは、ワタナベのせっぱ詰まった言動で、ただ事じゃないと悟ってくれたようだった。
「落ち着け、なにがあった?」
カナダは、はっきりとした声をかけながらワタナベの肩に手を当てた。
「なんか白いよく分かんないのが、ふわふわーって浮いてて、それで、カワイの首に巻き付いて、カワイ倒れたの」
ワタナベが混乱しつつも状況をカワイに教えた。
「えっと、一反木綿でも出たの?」
カワイは自信なさそうに言った。
というか、こういうのに詳しくない僕にだって『違う』と分かる。白くてふわふわしたーまでしか合ってないし。
「おい、それって、白いと浮くまでしか合ってないじゃないか、それとも一反木綿が人の口を塞いで殺す妖怪だとでも言いたいのか?」
僕の言いたいことを全部イワノが言ってくれて、僕は少しすかっとした。
「えっと、一反木綿ってそういう妖怪じゃないの?」
カワイは、イワノの言った言葉の意味が分かっていないようだった。
「というか、一反木綿ってあれかな?」
カワイが僕たちの方に人指し指を向けて言った。
僕はそれに釣られて振り向くまで一瞬もかかった。
僕が振り向いた視線の先に例の一反木綿(仮)が見えた。
まだ、距離はあるが、足が震えだして言うことを聞かなくなった。
「ひゃぁ」
僕の視線は自然と悲鳴の方向へ向いていた。
まだ先の話だが、それを僕は後悔することになる。
振り向いた先では、イワノが車の運転席に入った。
ガチャッ
何らかの機械音がした。
視線をイワノから一反木綿(仮)に戻そうとしたら一反木綿(仮)は消えていた。
「ねえ、どうして鍵を閉めたの」
ワタナベの声だ。どうして怒っているんだ?
ピロリン
ワタナベのスマホが鳴った。
ワタナベはスマホを起動させた。
『車の中に声が届くわけないだ』
ワタナベのスマホにかけたのはイワノだった。
「ちょっと、鍵を開けて!」
ワタナベはかなり怒っているようだった。
「手放すわけねえだろ。こんな安全地帯」
イワノは当然のように言った。
僕は上野のクズな言動に引いていた。
「待てよ、これベターな展開でいくと」
カワイは、吸っていたたばこを落とし、言った。
「ねえ、うしろうしろ」
ワタナベが車の中を指さしながら言った。
ワタナベの指さした先の車の中のイワノのうしろに一反木綿(仮)がいた。
「はあっ、ビビらせて開けさせようったって、そう上手くはいかないぜ」
そう言いつつウエノは、冷や汗をかいていた。
そして、ウエノは腹を決めたのか、振り返った。
だが、その直前、車の天井の方へ一反木綿(仮)が隠れた。
「なんだよビビらせやがって………
ウエノはその言葉を言い切ることが出来なかった。
なぜならウエノは一反木綿(仮)に首を絞められたからだ。
明るい車内で見ると明らかに布だった。
「おい、逃げるぞ」
僕は、カナダに首根っこを掴まれた。
僕は、カナダに何とか着いていった。
「なあ、油性ペン持ってるか?」
カナダが意味不明なことを聞いた。
「持ってるけど、逃げる必要あった?」
ワタナベはカナダに黒いマジックを渡しつつ疑問を口にした。
「ああ、一反木綿は鍵のかかった車の中を自在に行き来していたからな」
カナダの言葉で僕は一応の納得をした。
カナダは黒いマジックを口に突き立てた。
「ちょっと、なに、やってんの?」
ワタナベはご立腹のようだ。
僕の目の端が一反木綿(仮)を捉えた。
「おい、一反木綿だ」
僕は二人に伝えた。
「さ き に い け」
少しフガフガとしたしゃべり方でカナダが言った。
その歯は真っ黒だった。
「えっ、でも」
そう言うワタナベの手を引き僕は逃げようとした。
だがここで一つ気が付く、カナダは一反木綿の弱点を知っているのかも…と。
振り返ると、カナダは一反木綿に首を絞められている真っ最中だった。
「なあ、一反木綿の弱点を教えてくれ」
僕はカナダに聞いた。
どれくらい合ったのか分からない間を経て、カナダは叫んだ。
「ググれ」
そう言うとカナダは倒れ込んだ。
僕はワタナベの手を引き、逃げながら言った。
「教えてくれ、シロ、一反木綿の倒し方を」
僕はスマホに向かって聞いた。
「一反木綿の倒し方でグーグロ検索をしますか?」
スマホから帰ってきた電子音声に僕はこう答えた。
「YES」
そう言ったところで口が塞がれた。
体に力が入らず、スマホを手から落とした。
そのスマホをワタナベがキャッチしてスクロールしているのが見えた。
やばい、少し眠くなってきた。
おいワタナベ、なんで入れ歯なんか持ってるんだ?
まさかそんなもので倒せたりしないよな?
そこまで考えた辺りで、僕は意識を手放させられた。
目覚めたのは病院でした。
どうやら、ワタナベが119にテルしたそうだ。
それが後、数分遅れていたら全員死んでいたかもしれないとのことだ。
死人が出なくてよかった。
先生曰く、倒れた人間は全員神経性の毒を微量に接種していたらしいので心当たりはないかとのことだった。
~~エピローグ~~
後でググったが一反木綿は人の首を絞めて窒息死させる妖怪だったらしい、ただ、弱点としてお歯黒という化粧をしたことのある歯でなら噛みちぎれるらしい。
お歯黒とは大昔の既婚女性たちがしていた化粧だったらしい。
カナダが言うには『一反木綿の話は早く結婚しろって言いたくて出来たんだろうな』とのことだ。
あと、イワノとは縁を切った。
~~E N D~~