ちょっと長い世話なのじゃ
【帝国寮998号室】
「ただいまなのじゃ~!」
「おかえりなさい、ティオちゃん」
「お?今晩はもう鍛冶は終わりか?」
「そうですよぉ、ほら、晩御飯もできてますよ」
「ありがとうなのじゃ!城壁の夜景を見てきたのじゃ!」
「まぁ、素敵だったでしょう」
「うむ!凄く綺麗だったのじゃ!」
「私も最近行ってないから行きたいな~...エディル様と....」
「エディルと行きたいのか?」
「そうなんです、エディル様はね、私を助けてくれた人なんですよ」
「ほぉ~その話少し興味があるのぅ」
「あれはね...」
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【1年前:低所得市民街】
「確かお届け先はこの辺だったかしら...?」
「おお?その恰好は高級市民街のほうのぼんぼんじゃねぇか」
前からガラの悪そうなヒューマンが歩いてくる、少し後ずさる
「その持ってる物は大きさ的に武器か?その梱包はフィリア工房の高級品じゃねぇか、売ればかなりの金額になるぞ」
「何か用でしょうか?私をフィリア家の者と知ってゆく手を邪魔しているのですか?」
通路は一本道後ろへ引き返して別の道へ行こうとする
「ほほー、嬢ちゃんも上物中の上物じゃねぇか、俺年下好きなんだよね」
すると振り向いた方向からドワーフの男がやってくる
「ただのロリコンだろ」
「でも可愛いだろ?それにお前も比較的ロリコンだろ、ヒューマンのくせにドワーフ好きだなんてな」
「そうだなぁ...」
挟まれた...種族的に恐らくドワーフのほうが力がある、とすれば...
ヒューマン側へ振り向いて通り抜けようとする
「おおっとどこへいくんだい」
通り抜けようとした瞬間に届け物を盗られる
「あ、返してください!」
ローブのような恰好をしている為体格が分からなかったが少なくとも私より力のあるヒトだ
「まぁまぁ落ち着けって、返してほしかったら...分かるよなぁ?」
「あ...」
どんどん2人によって囲まれていく
「小さい子相手に二人でお楽しみとは男のやることじゃぁないよな」
「なんだぁ...お前...」
ドワーフの男が声のした方へ振り替える
「げ、帝国軍」
帝国軍支給のフード付きのコートを着た大柄の男性が立っている、フードはしたままだ
「こんな下町に一人で派遣されてるような奴だぞ、俺らの相手じゃねぇ」
「それもそうだな」
ドワーフの男が帝国軍人の方へ駆けていく
「ほう、力に自信があるのか」
ドワーフの男が右ストレートで殴りにかかる
ドスっという音と共に帝国軍人の腹部へ勢いのある拳が入り込む、と同時に風の魔法が爆発する。フードが取れるが薄暗い細道、顔がよく見えない
「俺も力には自信があるんだ」
腹部へ入り込んだと思っていた右手は大柄な帝国軍人の右手によりキャッチされていた
「力比べするか?」
そう言いながら帝国軍人はドワーフの男性の右手を握り込んだまま持ち上げた
「くっ」
ドワーフの男がぶら下がった姿勢から蹴りを繰り出そうとした瞬間、
帝国軍人は体を回転させ掴んだドワーフを振り回し勢い良くこちらに向かって投げつけてきた
「キャッ!」
とっさのことに反応できず身を固めていると私の隣をドワーフの男が飛んでいき、ヒューマンの男にぶつかっていき倒れた
目線を背後にいたヒューマンと、ヒューマンに投げつけられたドワーフに奪われていた瞬間
「大丈夫か?」
背後から勇ましくも優しい声が聞こえ、頭の上に手が置かれる
振り返ると薄暗かった細道だったがフードを外した帝国軍人の顔がよく見えた
「あっ...」
男らしくも柔らかい表情のニカっとした笑顔がそこにはあった
一目惚れ...とはこの事を言うのだろうか、幼い頃より名家の生まれとして鍛治師としての腕を磨き続け
異性との関わりのなかった人生だがたくさんの男性を見ることはあった
しかしこれまで衝撃を受けたのは初めてのことだった
「ん?これは...フィリア家の....」
倒れた二人組のそばに倒れている箱を帝国軍人の彼が持ち上げる
「あ、あの、それをこの付近の場所に届けに来たのです」
「それを狙ってきたわけか、なるほどな」
伸びている二人組に手際よく手錠をかけていく
「よくこの体格の帝国軍人相手に力で勝てると思ったもんだ。そのうえ打ちどころが悪かったのか一撃で伸びてやがる」
「あの...ありがとうございました」
「いいってことよ、これも仕事だ。あーこちら低所得市民街北西地区巡回中のエディル、暴漢二人を現行犯拘束した、このまま付近のテレポーターまで運んでいく。
ってことだ、それじゃぁなお嬢ちゃん、低所得市民街は比較的物騒なことが起きやすいから気を付けるんだぞ。」
お嬢ちゃん...?この方は私を誰だと思って...
「エミ・フィリアです」
そう言うと帝国軍人は足を止める、やっぱり私をフィリア家の者だと知れば...
「俺はエディルだ、エディル・ライア、ただの帝国軍の下っ端さ。それじゃぁなエミちゃん」
「え、エミちゃん!?」
そういうとエディルはもう一度こっちに振り向いて笑って見せ、男性二人を肩に持ち上げ去っていった
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「なんじゃぁエディルの奴そっけないのぅ」
「その時は3度衝撃を受けました...一度目は自分が一目惚れをしたこと。二度目は私をフィリア家のお嬢様と知っても特別扱いしなかったこと。3度目は一目惚れが確信だったこと。」
「エミもエミで少し高飛車じゃんたんじゃなぁ」
ティオがかかっと笑う
「そのことはいいんです、私の家柄を知っても尚変わらない態度とあの笑顔に救われたんです。誰しも私の家柄を知ったら態度の変わる方ばかりでしたので」
「それで軍に志願したのか?」
「そうですね、エディル様の側にいたくてというのもありましたが、家柄に左右されない立場が欲しかったのです。
軍は実力主義ですし鍛冶士としては腕を磨いてきましたので少しばかり特別扱いを受けていますが、前線に出ると私は後方支援役、まだまだ前線兵にはなれていません」
「ランクⅣじゃったか?もうちょっと上でもいいと思うがのぅ」
「ランクが高くなると腕だけじゃなくて人を使うことも重要になってくるから...それに私はまだ正式兵になって半年ですよ」
「そういえばそうじゃったのぅ」
「でもティオちゃんは前線兵としての戦力にもなるからランクⅤなんですね!凄い!」
「ドヤァァ」
腰に手を当ててふんぞり返る
それをエミはテーブルをはさんでニコニコ見ている
「そういえばエミは回復魔法を練習してるんじゃったのう」
「そうなんです、まだ全く早くできないのですけれど」
「ようし、では私がコツを教えよう!」
「本当ですか!」
「まず相手のマナを読み取り、操作して傷口に集中させるのは分かっておるな?」
「はい、その個体差の読み取り速度がなかなか上達しないのです」
「ふむ、次に自分の白魔法、青魔法を組み合わせた魔力を注ぎ込んで傷の修復を活性化させるのも分かっておるな?」
「はい、そのあたりは一通り座学で習いました。ただ私の魔力では...」
「ふむ...両手を出すのじゃ」
「こうですか?」
エミの出した両手をティオが包み込む
「むむむ...」
「これは...体が温かい...」
「そのまま私に回復魔法を向けてくれんかの?」
「はい...」
取り合っている手が淡く白く光る
「ふむ...ここじゃな...」
すると淡く光っていた光が少し強くなった
「!!」
「よし、こんなもんじゃて」
「これは...?」
「回復魔法を使用している時の体内の白魔法と青魔法を活性化させたのじゃ、後は今の感覚を掴むのじゃ」
「そんなことが...ありがとう!」
「よいよい、私らの中ではないか」
「うふふふ、そんなティオちゃんには...じゃん!」
そう言ってテーブルの下から小包を出す
「なんじゃこれは?」
「私からのプレゼントです!」
「おお!開けてもよいかの?」
「ふふふ、どうぞ」
「おお!これはヘアピンか!」
小さな白い結晶が埋め込まれたシルバーのヘアピンが出てきた
「白魔法を活性化させる石を使った一品です。私とお揃いですよ」
そう言ってもう一つ同じものをテーブルの下からエミが取り出す
「おお!嬉しいのぅ!」
「うふふふ、喜んでもらえて良かったです」
「さっそくつけるかのぅ!」
そうしてヘアピンを手に取ると白い結晶が強く光り、次第に光は小さくなり落ち着いた
「な、なんじゃぁ!?」
「これは共鳴ですね。この属性結晶と持ち主が近い属性のマナを扱うほどアイテムの効力が強くなり力を発揮してくれます。
それにしてもこんなに強い共鳴は初めて見ました...」
「そういえばこれを握った時も同じような反応を見せたのぅ」
そう言って布団の横に寝かせてある杖まで歩いていき杖を握って見せる
次の瞬間杖が淡い青白い光に包まれる
「光が・・・消えない?これはもしかして・・・」
「そう!すぺしゃるうぇぽんなのじゃ!」
「座学で習いましたが光を纏ったままのレベルにある実物を見るのは初めてです、
高い適性力の武器や熟練にまで使い込んだ武器しか共鳴しないだとか」
「なんじゃ使い込んで適性になることもあるってことなんじゃな?」
「そうですね、あくまで習った限りの知識の範囲だと、同じ武器を使い込み、
自身と武器の魔力を次第に共鳴させていくことで威力を発揮することもあるそうです。
そもそも武器に込める魔力が少ないほど共鳴させやすく威力が発揮しやすい代わりにその後の魔力は伸びづらく、
武器に込められた魔力が強いほど共鳴させにくく威力が低い代わりに魔力が伸びやすい傾向にあります」
「それじゃと魔力が少ない武器のほうが強いのかぇ?」
「例えば魔力1の段階で共鳴できる武器と8の段階で共鳴できる武器があって本人の魔力が1とするね。
すると魔力10の武器はいきなり約1.3倍の威力を発揮できる代わりに武器の魔力が8に到達するまでがとても手間がかかるの。
でも魔力50の武器を握っていると50に到達するまで威力を発揮してくれない代わりに、持ち主の魔力の伸びを引っ張り上げてくれるの」
「お?とすると既に適正である武器と、引っ張り上げてくれる武器の二つ持ちがいいんじゃな?」
「その通り、例えばティオちゃんみたいな魔術師タイプは杖と魔導書や腕輪を二つ持ちしてる人が多いわ」
「私ももう一個魔力を引き上げてくれるものを持ったほうがよかろうか...」
「でも見た感じそのレベルを超える武具はなかなか無いと思うの、ウチの実家でも取り扱っているかどうか...」
「そんなに凄いのか?コレは」
そう言いながら布団の側に杖を置く
「ティオちゃん魔力レベルはいくつですか?」
「ランクⅦ以上じゃったかのぅ」
「それはねぇ...世界的に見てもなかなかありませんよ...自分で鍛え上げて到達していくレベルの品物です」
「そうなんじゃなぁ」
「世界に名だたる名工であればその武器に満たされたマナに応じて強化できると思います。お父様なら...」
「エミのお父さんはそんなに凄いのか?」
「世界一の名工と呼ばれているくらいです。でもそんな父上でもスペシャルウェポンを生み出すことは意図的にできません」
「この杖もすぺしゃるうぇぽんなそうじゃ」
「ティオちゃんのマナに呼応して覚醒したのでしょう、一度父上の工房までもっていくと強化できると思いますよ。そのアクセサリーも」
「お金がかかるのぅ!!」
「ふふ、そのクラスの武具となると経費で落とすにはちょっと実績が足りないと判断されるかもしれません」
「経費で落ちるのか?」
「実績次第ですけど....ティオちゃん白魔導士なので...でもランクⅦですし...かなり値段はりますねぇ...そのランクは団長クラスですもんねぇ...」
「仕事すればいいんじゃな!」
「まぁつまりそういうことですね!」
「仕事次第なんじゃけども、今の階級で受けられるものでそんなにそんなに実績とれるかのう」
「一応第8騎士団所属なんですよね?いっそ団長と手合わせしてみてはどうでしょう」
「え、そんなことしていいもんなのじゃ?」
「力試しといいますか、飛び級目当て等いろいろでそういうのもあるんですよ」
「お、じゃぁ明日早速行ってくるのじゃ」
「っと今日は結構話し込んでしまいましたね、また明日にしましょう、いつの間にか食べ終わっていますし片付けますねぇ」
「一緒に片付けるのじゃ~」
話こんだとある一夜のことである




