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旧:Wish of Hearts -Another-  作者: Riio
チュートリアル
2/30

帝都

『願いの丘』で倒れていた記憶喪失の少女、名をティオとした。行き場のないティオを帝国で保護することとなり帝国へ向かう

「さて、んでもって、行き場がないのであれば帝国での保護が妥当かな」


「帝国...?」


「この惑星ホドで一番大きな国だよ、俺はそこの第八騎士団の下っ端なわけ」


「なるほど、だからここに願いにきたわけじゃな」


どことなくドヤ顔で返される、そして言い返せない上にそうだと言ってしまった。さっきまでの表情の無さが嘘のようだ。気丈にふるまっている部分もあるだろう。

帝国で保護する場合はどうなるんだろう?帝国寮かな?もしかして俺の部屋とか...

可愛いとはいえ年端も行かぬ?いや口調のせいで余計年齢が分からんな、そういうお年頃か?...


「何を突っ立っとるんじゃ、帝国に行くんじゃなかったのかえ」


ツンっと腰をつつかれる


「あ、うんそうだね、とりあえず行ってから考えようか」


歩き出すとダボダボの服が目立ちギリギリスカートが地面につかない程度になっている。

が、しかし主に胸部にかなり余裕がありすぎて上からのぞき込むのは拒まれる。


「道すがら暇じゃの、知ってることについて教えてくれんかの」


「よしそれじゃぁまず帝国から説明していこうかな。帝国領は大きく、この『惑星ホド』において2番目の大きさを誇るよ。

軍事力においてはこの惑星最大だけど、領土の大きさについては【ツァバオト共和国】に分があって、

今抜けた願いの丘は帝国に2か所あり、共和国領内には2か所、【王国ホド】に2か所、【王国シン】、【ノーシュ王国】、にそれぞれ1か所の合計8か所あるんだよ。

戦力図としては帝国がトップで次点で王国ホド、次に共和国、シン、ノーシュと続いていく感じ。

国家が分かれているとはいえ表立だっての戦争は特になくて、主に対魔物への戦力を整えてる状態かな。

願いの丘については不思議なことに、どこの願いの丘も魔力を帯びた木々で囲まれた少し高い丘になっていて、どこもまったく同じ景色の満天の星空が見えると言われてるよ。俺は他の場所にいったことがないけど。」


願いの丘を抜けた俺たちの前には朝日が昇り始めているのが見える。少しばかりひんやりとしているが寒くない程度の気候だ。

途中で2~3の人とすれ違いにもなった。


「木々や低木の並ぶ綺麗な道じゃのぅ、よく整備されておる」


「願いの丘は皆の聖地だからね、帝都の外だけどこうやって祀られてるのさ」


目の前には大型馬車が1台通れるほどの道が伸びているが、ここは馬車は立ち入り禁止になっている。


「ふむ、帝国軍人というだけはあってこの星の基礎っぽいところはきちんと頭に入っているようじゃな、それにしても星の名を冠する王国ホドが何故第3戦力なのじゃ?」


「昔は国家が8つに分かれていて、王国ホドが第一戦力だったし領土も一番多かったそうだけど、そのうちいくつかが共和国に一つになって、帝国は名を変えてメキメキ力量を整えていった感じかな、昔の帝国の名前...名前...忘れちったなぁ」


「なんとも中途半端な...まぁよい、他には何かないのかえ?」


重要な部分だったはずだが今はちょっとド忘れしてしまっているようだ。

ここまで説明ばかりだったこともあって抜け穴があるたびにティオは呆れ顔になったりドヤ顔になったりと忙しい。


「そうだなぁ、今喋ってもいい範囲とすれば第八騎士団の外面についてかな、俺の所属してるこの団の団長は通称『ママ』って呼ばれていて、家事を一通りこなし、料理は旨く、おせっかい、そして豊満な胸と端整なルックス...ってところからウチの団長は裏で『ママ』って呼ばれてるよ。本人の前では言っちゃダメだからね。」


「聞きたかったこととは違うが面白かったから良しとしよう、さて大きな壁が見えてきたな」


「あれが帝都内への入り口だよ、あそこに立ってるのが第四騎士団の門番の人達、主に人を通す時の管理がお仕事だよ、で壁の上にいるのも同じく第四騎士団の人達であっちは魔物の接近を通達するのが主なお仕事だね」


「おや、ここは広くなっておるんじゃのう」


馬が一頭と魔動車が一台見える、整地され広く場所とられた部分に差し掛かるとそう話しかけてきた


「ここは願いの丘に行く人向けに馬や馬車、魔動車を停めておく場所だよ」


「魔動車とはなんなのじゃ?」


何かを聞く度に少しキョトンとした表情をしながら小首をかしげる、クセなのだろうか


「貯めておいた魔法の水で動く車体のことをそう呼ぶよ。

具体的には水と電気の魔法で出来た水を車内に貯めて、そこから魔力を供給し動く馬車の代わりになる物のこと。

馬は分かるけど魔動車については分からない辺り、生物についての知識は残っているのかな?」


「うむ、馬は分かるぞ、犬も猫もじゃ」


「どうやら覚えているもの、見たり聞いたら思い出すもの、見ても聞いても思い出せないものの3種類あるようだなぁ」


「魔動車について、この世界について説明されながらそんなものがあったのぅと思っておったわ。」


「なんだか虫食いのような記憶喪失だなぁ、そんなものなのかな?」


少し足を止めて前を歩いていたティオがくるんとこちらを向く


「そんなものなんじゃろう」


ティオはふふんっとしてまた前を向き歩き出す。

..............


大きな関門の前まで道の端を歩いて通る

ここまで来ると道は広く大型の馬車や魔動車が8台横並びになれる幅と、両端に歩行専用の幅がある。

車道の真ん中には低木が並べられており4台ずつ左右に分かれて往来を分けている


「遠目にも見えたが大きな門じゃのー」


「お前はあの使えない下っ端の...ん?その女の子は?お前にどことなく似てるが兄妹なんていなかったろう」


「願いの丘で倒れているのを見つけたんです。どうも記憶喪失らしく保護してあげられないかなと思って連れてきました。」


「なるほど、特に怪しいものも身に着けていな...なんだなんだこの魔力値は...」


「え?」


どうやら魔力計測石が強い反応をしているようだ


「この計測色は回復魔法と各属性魔法がほとんど使えるのか?...と記憶がないんだったな」


魔力計測石、略して魔計石、色によって得意な属性、発光力によってその強さが分かる特殊な石だ

見た限り白が主に薄い虹色と強い光を見たことがないくらい放っている。


「すまぬ...」


しゅんとしてしまった


「まぁいい、騒動は起こさんようにな、お前責任もって保護者になるんだぞ、とりあえず第八騎士団には顔だしておけよ、もう朝礼集合時間は過ぎてるぞ」


「あ、やっぱりそうなりますよね、了解致しました。じゃねぇ!やべぇ!ママに怒られるぞ!!」


ティオの手を取り走り出す。

ティオをチラッと見る、あからさまにジト目でこっちを見ている

これは言い訳に使われるのをバレている目だなんとかごまかさなくては...


「さっきの魔計石によると魔法が使えるみたいだね!自分の脚に軽くなるよう意識を集中してみて!」


「おお、なんだか脚が軽くなったわ」


「それが魔法、一般的に発現しやすい物、イメージしやすいものには名称があったりするけどイメージすれば基本的になんでもできるから名称の無いものもも存在する」


後ろを確認しないまま走り続ける、手は繋いであるから大丈夫だ

自分の両足にも緑魔法を意識し少しでも加速する

関門を抜けた先は帝都内、約500万人規模を収容している世界最大級の街

大きな道がいくつも分かれている道が目の前に広がるが、関門を抜けすぐ右側にあるテレポートセンターの南門支部へ進む。

大きく開いている綺麗な大理石の入り口を通り、そこにはテレポート専用の魔動機がいくつも並んでいる


「なんじゃこれは?」


「テレポーターだよ、緑魔法を蓄えた石と白魔法を蓄えた石を利用した魔動機で、特定の場所に一瞬で移動することができる」


「こんなものがあったら直ぐに攻め込まれてはしまわんか?」


「これは戦後に作られたものだよ。さっき話したように戦争はもう300年も前から起こっていない、ほら時間がないからいくよ」


城内向けのテレポーターに触れて念じる

次の瞬間景色は城内へと移り変わる


「おお、私は何もしとらんぞ!」


「手をつないでいたから一緒に来られたんだよ、行こう」


城内のテレポートセンターを出てすぐ左へ走り、赤を主にに黄色で装飾された広間を駆けていく。

広間を斜めに抜け、少し細い道へ入りところどころに明かりのある白い壁を次々に通り過ぎていく。

4個目の大きな扉を前に一度深呼吸をし扉を開ける。

.......................


カチャ...

ゆっくりと既に閉まっている大きな扉を開く。


「すいませーん...遅くなりまし...ウプッ」


顔に柔らかいものが当たる、これは間違いなく胸だ、今日もまた他の団員につつかれる日だ...


「遅い!休暇とはいえ安全確認のために朝礼はいつも出るように言ってるでしょ!」


「あ、あのまずは離し...」


「心配したのよ!あなたいつも週末外に出てるからいつ魔物に襲われてないか...」


1大隊、約1000人が入れる規模の大きな部屋の入り口で待機していたようだ、視線が凄く刺さる刺さる


(ママだ...)


(ママだ...)


(ママだ...)


(おっぱいだ...)


(ママだ...)


「あら、その子は?」


手を繋いでいたはずがまったく重さを感じなくなっていたからすっかり忘れかけていた。

というかおっぱいに飲み込まれかけていた。待てよ、重さを感じない?


なんとか第八団団長から抜け出し後ろを振り向くとティオは少し浮いていた。


「あらあら!その年で飛べるのね!それに可愛い!なんてお名前なの?」


「私はティオじゃ!お主は名は何と言う?リクシオからは聞いておらぬでな」


(わたくし)はエリーゼ・エルノアって言うのよ!気軽にエリエルって呼んでね!」


(ママ...)


雑念を感じる


「よろしく頼むぞエリエル」


さらっと飛んでいるが補助魔法の中でも高等な部類に入る、背中に魔法で出来た小さな羽が見えるので「ウィング」の分類だろう

飛行魔法と呼ばれる分類には主に自由に飛び回る「ウィング」、空中を蹴る、空中に立つ「スカイ」の二種類があり

スカイの場合は主に足に羽のような光が出る

おおかた手を引かれているから浮いていただけだろう...

おや?ティオがビーストマンのように耳と尻尾が生えている・・・


「ティオちゃん、その魔法私にも使えるかしら?」


「やってみるのじゃ」


途端団長の背中に羽が出現し空中に浮いた。


「凄いわ!これならすぐ十人長になれるわ!」


飛行魔法は術者の意図に合わせて飛び回せることができる。

つまり本人が集中すれば好きなだけ好きな場所へ飛ばすことができ、飛行してる本人は戦闘に集中することができる。

その分術者は状況を観察し飛行移動に専念することになるが司令塔としては十分な働きに値する

団長が満面の笑顔で宙を飛び回らされている


「お前凄い子連れてきたな...何者だあの子...」


小突いてきたのは同僚のエディル、一等兵で同じ小隊に所属している、確かに第一コンタクトで十人長は凄いとしか言いようがない。

あの魔力であれば指揮力があれば実際に可能だろう。


「願いの丘で倒れてたんだよ、記憶喪失らしく俺が保護することになった」


「保護する側が部下になるかもしれないってどういうことだよ...」


「俺が聞きたいんですけど...」


一通り飛び回った団長が話しかけてくる


「でもこの年で討伐に連れて行くのも心配ね、いくつかしら?」


「あ、団長すいません、この子記憶喪失なんですよ」


「あら...じゃぁ他に魔法は...」


「だからすいません、この子記憶喪失で...」


「ガーン」


口に出したのとまったく同じ表情をしている、出鼻をくじかれたようだ


「私なら戦闘に駆り出されるのも構わぬぞ」


低空飛行しながらドヤ顔でふんぞり返っている...高く飛んだらパンツ見えそうだな...


「頼もしいわね!それじゃぁまずはクエストで肩慣らししてもらってから本戦へ行けるか試してみましょうか!」


「遅れておいてなんですけれども会話もそこそこに朝礼してしまいましょう、団長」


「そうね!」


列の右一番後ろに並ぶ、もちろんティオも一緒だ。団長は前へ


「明日からは討伐クエストが多くきています。本日は7割の人が休日ですが緊急時の収集には即対応できるよう休日を過ごしてください。よく食べよく寝てよく遊び休暇を過ごしましょう。」


いい歳した軍人がよく遊びって何だろう...


その後第8騎士団の休日は中庭での珍しいウィングの順番待ちで潰れることとなった

尚この時に分かったことなのだがティオは現在10人まで同時に飛ばすことができ、8人まで集中できるようだ

鬼才中の鬼才である。

あっというまに第八騎士団内では使える記憶喪失の少女と使えない下っ端のコンビの話で広がっていった。

が魔法を使っている間だけ耳と尻尾が生えてきていたのは恐らく無自覚であろうことから

俺の中で後々聞くようにとりあえず黙っていることにした。

記憶喪失な為聞いても分からないだろう...


一通り飛ばして遊んだ後に彼女は隣に座りにきた。ここも願いの丘のように心地よい手入れされた草が生えそろっている。


「ふぅ、ところで帝都の街並みはどうなっておるんじゃ?朝は急いでいて聞けなかったでの」


「街並みかぁ、帝都は城を中心に円になるように形成されていて、大通りに主に商業区、少し道を入ったところに高所得者向けの街があり、更に進むことに中所得者向け、低所得者向けとなっていくよ。」


「いわゆるスラム街とやらは無いのかえ?」


「低所得者向けの街までいくと事実上スラム街に近いような場所もあるけど、帝都からの仕事で街の警備もあるし、一般人向けの仕事として街並みの手入れ、掃除があったりするよ。主に低所得者、スキルや才の無い人はそういう街のお世話をすること自体が仕事になってるのさ」


「ほー良く考えられておるのぅ」


「各地にテレポーターの支部があるし通報があった際には直ぐに駆けつけることができるからね。特にクエスト管理課、つまり城内中央付近には城内に来た時のようなテレポーターがあったろう?あれで各地に向かうんだよ」


「ぱっと飛んでしまったから分からんがそんなに広いのかえ?」


またキョトンとした表情で小首をかしげている。


「ほら、あそこに高い展望台があるだろう、今度の休日にあそこから帝都を見回してみよう今日はそろそろ帰る時間だ」


「はーいなのじゃ」


右手を挙げて笑顔のよい返事が返ってきた。

2人して立ち上がっておしりを軽くはたく。

城内に入り中央へ向かい、東側にあるテレポーターに触れ、城内から東側に出てすぐにある帝国兵寮へ向かう

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