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閑話 複雑な思いと想い

次回は7月1日お昼更新です。

本日はファイさんとブラオさん、他の視点で参ります。

Side:ファイ



皆様、如何お過ごしでしょうか。

僕はファインリード・アブンセルと申します。子爵家の次男です。元々、青の騎士の第三部隊に所属していましたが、今は勇者様の侍従という、名誉職についております。今更ですね。

さて今回、色々とありましたが、サキ様と呪咀の対策で国に戻ってから、僕は生きた心地がしませんでした。呪咀とは、国で禁じられた魔法の一つ。大陸でも、正しく使える者は既にいないでしょう。そんな物に、サキ様が挑まれるのです。生きた心地がしないのも、無理はありません。

まあ、お恥ずかしい限り、帰ってからの僕は、極度の疲労状態で強制的に休ませられました。本当に侍従失格もいいところです。自分の体調管理も出来ないのですから。

更に極めつけが、僕が実家の用事で休暇を頂いた日に限って、サキ様が出かけられ、何やら事件に巻き込まれて、気絶して帰って来た事です…………。まさかまさか、休暇を貰ったその日に出かけるとか、誰が思いますか!? 普通はゆっくり休むでしょう!!


…………もう、立ち直れません。


必要な時にいなくて、何が侍従ですか。

まだあります。まだあるんですよ!!


「それがしは、伯爵家の使いである、勇者サキ様にお札を書いて頂きたく」


「それがしは………」


「我は………」


来るわ、来るわ。

こういって、さっさと身を守るお札を寄越せとばかりに、ここにいすわろうとする輩が。……………うちが子爵の僕では、太刀打ちが出来ない方もいるため、最終的に陛下の勅命で事無きを得ましたが、本当に情けなくて情けなくて…………。


僕は本当にサキ様の、勇者様の侍従として、役に立っているのでしょうか?


最近、特にここ数日は、不安になる事ばかり。

僕はこのまま侍従をして、大丈夫なのでしょうか?

そんな僕の忙しさに、殿下……フランツ様の事ですが、ありがたい事に理解を頂き、いや、あれは哀れみのような気もしますが、取り敢えず、新しい侍従をサキ様方には決めてもらう事になりました。

本来、侍従というのは、一人に付くものなのですが、サキ様方が慣れていない事や、未成年者である事を踏まえて、勇者様の侍従となっています。まあ、今迄は、僕一人で何とか回していたんですが、いい加減限界でした。特にサキ様は、他の方より面倒…ゴッホン、手のかかる方ですから、僕も他の方より時間を割く事になります。

もっとも、皆様が成人したら、一人一人に侍従がつきますから、今から慣れた方がいいのは言うまでもない事ですが。


「だからって、まさか、双子を付けますか…………?」


あの場では言わなかった本心です。彼らは男爵家を実家に持つ、次男と三男です。本人達曰く、長男がいるから家は関係ない………なんて言ってますが、僕は知ってますよ? ご実家が彼らが騎士に成ると知った時の、あの遠くを見る眼差し。一体全体何をやらかしたんだっ!? と当時は、不思議に思ったものです。

―――――今は、意味が分かりましたが。


とにかくあの二人、武器が大好きで、何の武器でも使いこなすまで使います。故に、あの二人、何の武器でも使えます………。戦乱狂では無かった事が幸いでした。彼らと訓練すると、必ず凹みます。特に中堅の方々が。知らない武器を使われて、自信をこっぱ微塵にまで破壊されます。

それでも仲がいい仲間が多いんですよ、彼ら。不思議ですよね?



………………はあ、本当に侍従仲間として仲良く出来るか、不安にになってきましたよ。



とにかく、今の僕が願う事は、どうか平和……特にサキ様含む勇者様方の、を望みます!!


あなた方、事件に巻き込まれすぎです!!!



◇◇◇◇◇



Side:ブラオ



皆様、当然のご無礼を失礼致します。

本日は、我が内心を聞いて頂きたく。


まずは自己紹介から参りましょうか。私の名はブラオ・アズラク。今現在、宮廷魔術師の上級魔術師をしております。この前、正確にはエルナマスを救う手伝いを行いましたところ、陛下より刺繍入りの統括側を言い渡されました。所謂、出世というものをしたのです。得意な属性は火・風。故に、今現在は優香様の教師役をしておりますが、私は出世して統括側になってしまった為に、私は勇者様の侍従には、成る事が出来ません。勿論、最初は侍従にという考えがあったようですが、私はどうやら教師の方が合っているようです。


「本当に宜しいのですか? 彼を出して…………」


私は今現在、副魔術師長の一人の方のお部屋に呼ばれております。

実は我等、宮廷魔術師から勇者様の侍従がいない事が、問題となったのです。勿論、下らない見栄の張り合いなのですが、何故か、何故か! 高位の家から選ぶ事が決まっておりまして、選ばれたのは、よりにもよって彼でした。


―――――レイヴァン・イグレシアス。


侯爵家の次男で、優秀な魔術師である事に変わりはありません。そう、真面目な性格で、人柄も問題ないのです。

しかし、一つだけ、そう、一つだけ残念な点があり、故に彼は残念人となっていたのです。




――――――極度の虫嫌い。




此れ程、残念な物はないでしょう。

我々、魔術師の仕事は、薬を作る事もあります。その中には、虫を使った物もあるのです。しかし、生きていようが、死んでいようが、虫を見て気絶する為、彼に薬を作る仕事を任せる訳にもいかず、結果、魔物退治等の荒事ばかりを頼んでいます。お陰で、実地に強くなりました。もう恐らく、上級魔術師の私と、戦いに関しては同格と言えるでしょう。

本当に、薬さえ作れたら、上級魔術師に行けるのです。何せ、中級までは自分の実力だけで行ったのですから。


「仕方あるまい…………、彼しか今、手が空いている人物はいなかったのだからな」


はぁぁぁ、と深い溜め池を吐く、副魔術師長には、頭が下がります。確かに条件に合う人物を探すのは、至難の業だったはずです。よく探したと、褒める言葉しか出てこないでしょう。

位が低くても良ければ、もう少しいたのですが、何せ、騎士団から付いた侍従達は子爵と男爵の家系の者。だからこそ、宮廷魔術師からは高位の者をと、なったわけです。


「はぁ、もう一人、候補をあげませんか? 位の低い者でも、次は構わないでしょう」


あの者だけでは、何だか不安です。もっとまともな人物をつけないと、宮廷魔術師の名が誤解を受けます!


「無茶を言うな…………我々の数は少ないのだぞ? 簡単に付けられるわけあるまい…………」


今度こそ、頭を抱えてしまった副魔術師長に、思わず同情致しました。確かに我々は騎士に比べて数はとても少ないのです。そこから一人抜くだけでも、そうとう大変だったはず。もう一人というのは、確かに困難でしょう。


「はぁぁぁ、新人を過ぎた奴をつけるか? 下級魔術師なら、直ぐに出せるんだがなぁ」


「宜しいのではないですか? それでも」


ぶっちゃけますと、私も騎士団がいい顔をするのは嬉しくありません。いくら協力体制にあろうとも、色々と大人の事情があるのです。


「そういえば、下級ではありましたが、一人、変わり種がいましたね………」


「んー? あぁ………確かに一人、いたねぇ」


「あの子ならば、宜しいのでは?」


「いや、でもねぇ…………」


「レイヴァンよりマシでしょう?」


「うっ」


渋る副魔術師長に、そう言えば、彼は反論出来ないためか、顔を引きつらせました。性格も問題なく、家柄も侯爵家なので、問題なし。一つ、残念な部分さえ、気にしなければ正しく、相応しい人物です。


「ブラオ、まさかだが、お前、勇者様にお願いしようとか、思ってないか? あの事を」


渋い顔の副魔術師長に、苦笑を返します。性格が前より悪くなったのは、正しく勇者様方のお陰でしょう。特にサキ様とショータ様には、手を焼かされましたからな。それぞれ、タイプの違う手のかかるお二人ですよ。現在進行形で。


「だかなぁ、あの子以外に、あの勇者様に付いていける輩って、今の魔術師団に居ないでしょ?」


確かに居ませんね………。私も昇進、つまり出世をした事をありがたく思いましたから。隊長格や統括側は勇者様の侍従にはなれません。恐らく、私が侍従になったら、毎日と胃薬を手放せなくなるでしょう。あくまでも、教師役だったからこそ、色々と寛大になれた部分もあるのですから。


「んじゃ、あの子の事は、勇者様に任せようか」


先程とは打って変わって、晴れやかに笑う彼を恨めしく思いつつ、勇者様方に想いを馳せます。


申し訳ありません。勇者様方…………。厄介な存在ではありませんが、癖のある人材がまた、侍従候補としてつくようです。バックアップは致しますので、どうかどうか、ご理解下さいませ。



◇◇◇◇◇



Side:???



「ふぅ………、大体の仕事は終わったかな?」


やれやれ、この私を動かしてまで、やるような仕事かね? 裏切り者等、いくらでもいるだろうに。それほどまでに、アレが怖いかね? 勝手な事をして、叱られてもしらないが。


「閣下、町の者は大体終わりですが、未だに少し、気配があります」


「まだいるのかよ〜……」


「お仕事ですから」


「あー、はいはい、きちんとやりますよ」


椅子からどっかりと立ち上がる。部下達は流石に出来ない仕事だからこそ、自ら動かなければいかないのだから。


「さぁーて、仕事といくか!」



◇◇◇◇◇



Side:???



恐い、恐い、恐い、恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い…………!!!


アレは、アレは駄目だ。相手にしてはいけない。特にあの一番小さな人間の娘。他は特に何も感じなかったが、アレは駄目だ。他は煩わしい程の小さな存在だった。中に一つ、変な気配があったが、それだけだ。


しかし、アレは、アレはおかしい。気配も、何もかも!


人の姿でありながら、うちに宿す、恐ろしい程の力。魔王様とタメをはれる程だった。人間ではあり得ない程の力をもっていた。信じられない程の。


自分達、魔族は何か恐ろしい程の何かを引き当ててしまったのではないか?


ずっとその考えが頭を埋めている。

魔王様の為に始めた、人間達への戦い。魔王様とは、破壊と終末の存在ではあるが、代々の魔王様は、魔族達には憧れの存在なのだ。


……………きっと、今代の魔王様も、その考えのはずだと、誰もが疑わないし、誰もが信じている。あの方が言ったのだから、間違いないはずなのだ。

だからこそ、我もあそこに行ったのだから。


――――――そこにいたアレを見た瞬間、我は、何か途方もない間違いを犯した気がしたのだ。


アレはそういう存在だ。だからこそ、我は恐い。




自分達魔族は、一体どうなるんだろうか……………。


読了、お疲れ様でした。


本日は如何でしたでしょうか?


今回は難産で、ちょっとマジで大変でした。間に合って良かった♪


さて、次回はサキちゃん視点に参ります! ちょっとシリアスばかりでしたから、次回は笑い路線でいきますよ!


感想、ご意見、誤字脱字、ご質問、いつでもお待ちしております! なお、秋月はあまりメンタル強くないため、甘口でお願いします。

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