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第62話 色々と気付きましょう

本日は最初に前回のあらすじがあります。なお、その後は、微シリアスとなりますので、苦手な方はご注意ください。

次回は6月10日です。

〜前回のあらすじ〜


町中で買い物をしていた、咲希、優香、和磨、ローグ、ジーク。そんな中、町中で人が燃える事件が発生。咲希の目の前でも人が燃える。それを目撃した咲希は許容範囲を越え、気絶してしまう。城に戻った皆は、ようやく咲希のトラウマの原因が、青い炎であることに気付いたのだった。



◇◇◇◇◇



Side:咲希


目が覚めると、そこには涙でぐちゃぐちゃになった優香ちゃんの顔があった。


え?


思わずフリーズしてしまった、あたしは悪くないはずだ。寝起きだしね!


「咲希ちゃん! 良かったぁ〜、2日も目を覚まさないからぁー!! 心配したよー!」


そのままビービーと泣き出した優香ちゃんの姿に、かなり引きながらも、正確にはどん引きしながらも、何とか現実に戻ったあたし。偉い、偉いよ、あたし!


「えっ、えーっと、おはよう?」


今の時間が分からないから、疑問符がついたけど、あながち間違いではないはずだ。寝起きの頭をフル回転させて、室内の明るさから、大体の時間を絞りだす。勿論、ベットから見える位置にある、置き時計も確認する。朝の9時であった。まあ、平均的な時間かな?

――――――バンッ!


いきなり扉が派手な音をして開かれる。


「優香っ! 咲希が目覚めたって本当か!?」


そこにいたのは、紛れもなく、翔太の姿。それから遅れて、肩で息をした和磨くんと、それを気遣うファイさんが登場。今日も勇者組は平和な様子、な訳ないか?


「咲希さん、良かったよ、目が覚めて…………」


ホッとした顔の和磨くん。うん、何か罪悪感が半端ない。隣のファイさんも、表情がどこかホッとしたものである。


「失礼しますよ」


更に入って来たのはジュビアン神官。その手には、桶。多分だけど、水が入っているみたいね。というか、この世界、桶あるの!? まさに日本で使っていたタイプの木の桶……………。それでいいのか、世界よ!


「ジュビアン神官……」


起き上がろうとしたあたしに、ジュビアン神官は手で制すると、そのままあたしの額に大きな手を合わせる。わお、何か恥ずかしいわ…………。


「ふむ、まだ少し熱がありますね、今日はゆっくりお休み下さいね」


「え? は、はい…………あの、でも、御守り作らないと………」


そう、そろそろ貴族の方々の御守り造りをスタートさせないと、いけないのだけれど。確か明日からだったはずだし。


「サキ様の体調が万全ではない旨を、既に陛下や殿下方に説明を致しましたので、問題は起きないはずです」


あー、何か申し訳ない。あたしが倒れた所為だよねぇ。こうなったのも。勿論、ジュビアン神官の言葉に、不審な点があろうとも、賢いあたしは突っ込みませんよ? 何か面倒くさいし。


「サキ様、恐らくですが、しばらく忙しかった為に、疲れがたまったのでしょう、ゆっくり休めば、すぐに良くなりますよ」


鉄仮面のジュビアン神官の予想外の言葉に、何故か部屋の中が一瞬だけ固まった気がしたけれど、気のせいかしら?


「休むって言ってもねー………、全然眠くないのよ、あたし」


確かに起きるのはキツいのは本当なんだけど、ずーっと寝ていた為に、見事に眠くない。眼が冴えております。


「だったらさ、いい加減に話してくれよ」


固い翔太の声。見ればとっても真剣な表情で。これは真面目に答えないといけないなぁ、って感じたり。上手く言えるか分からないけれど、皆に迷惑をかけたのも本当だし、出来るだけ答えようと思う。


「昔、何があったのか、そして、何でお前が倒れたのか、俺達にも分かるように説明してくれ」


はぁ、聞いたって面白い事なんか、何一つないのになぁ。


「…………みんなは? ただの興味本位なら辞めた方がいいよ?」


一応、皆に確認するけれど、動く感じも無くて、皆が聞く気満々………。


「分かったわ、説明する」


一度、目を閉じる。まだ瞼に焼き付く、あの日の記憶。あれを、あの日の出来事を、思い出していく。


「あの日、あたしが中学に上がる前だから、11歳の時かな…………、当主様のご命令で、数人の大人と、あたし、あたしの婚約者、分家のお兄さん、それから分家の子供達を連れて、吹き溜まりって呼ばれる場所に向かったの………………あ、あたしが陰陽師って事は伝えたよね? 陰陽師っていうのは、陰陽道っていう学問、こっちだと魔法の事ね? それを学んだ人の事を言うの、仕事は占いや祈祷が殆どなんだけど、まれに討伐依頼が来るの、この世界で言う魔物やアンデット…………みたいなものかな? あたし達は、怨霊や悪霊、妖怪とか呼んでいたけどね」


まさに、あの日は最悪な日だったとしか言い様がなかった。


「最初は、普通の仕事だったんだ………、吹き溜まりに溜まった者を浄化したり、退治したりするだけだから…………子供でも出来る安全なお仕事だったの………………でも……………あの日は違った」


今でもきちんと覚えてる。細部にいたるまで、全部を。


「最後の最後で、とんでもない大物が出てきちゃったんだ…………」


流石に大人達は慌てていた。それだけの大物だったんだ。


「僕達の知らない場所で、そんなことが起きてたんだ………」


絶句してるのは和磨くん。いや、ね? 大物は珍しいけど、小物なら結構毎日、退治してたんだけど? それらを細かく説明したら、和磨くんが燃え尽きたような、力ない顔になり、ちょっと笑えた。あ、優香ちゃんは、キラキラした目をしてますよ? もしや、それ系が好き、とか?


「話は戻るけど、その大物は、現場にいる誰も倒せないレベルのだったんだよ、だから当主様方が来るまでの足止めを言い渡されたの、実際、足止めはきちんと出来てたし、問題なかったんだ」


そう、問題無かった。そこまでは本当に、足止めの意味は成功してたんだ。


「……………足止めをしてたのは、あたしと、大人達………それから、あたしの親戚筋にあたるお兄さん………あたしは“そう兄”って呼んでたんだけど、そのメンバーで確かに足止めは成功してた」


例え分家が作った全力の結界が破られようと、攻撃が効かなかろうと、問題はなかったんだ。


「当主様が到着した時に、その時に……………問題は起きたの」


あたしは油断したんだ。あの時、辺りに視線を、注意を払えば、もしかしたら違う結果になったかもしれないのに――――――。


「あたしが視線や注意を辺りに向けずに、退治に来た当主様しか、見ていなかった為に、反応が遅れたの」


「遅れた? 戦いの最中だったんだろ? そんなヘマするか?」


「翔太くん!? そんな言い方っ!」


一言多い翔太に、本来ならハリセンでも見舞ってやるけど、今回は認めるしかない。本当にその通りだから…………。


「いいの、優香ちゃん」


「でもっ!」


「本当の事だから………」


瞼を閉じれば、今でも鮮明に思い出せる、あの日の出来事。もう一種のトラウマと呼べるもの。


「咲希ちゃん………」


それきり口を閉ざした優香ちゃん。納得はしてないみたい。だって顔に全部出てるもの。


「ありがとう、優香ちゃん」


こう言ったあたしは、きっとずるい。こういえば、優香ちゃんが反論をやめるのを知っていて、それで言ったんだから。


「遅れてしまった所為で、あたしを庇う為に、そう兄は力を使った……………一族でも彼しか使わない、青い炎を」


辺りを焼き付くすと言わんばかりの業火。それは勿論、あたしを守る物で、あたしに対して向かって来た悪霊からの攻撃は、全て炎の前に消えた。あの時、召喚していた紕ノ斗も、余りの威力に驚いていたほどの。


「当主様の元、悪霊は退治されて、後は後始末だけとなった時に、事態は動いたの」


青い炎の中、向かおうとしたあたしを、炎が阻んだ。まるで来るなと言わんばかりに。業火となって牙を向く、青い炎。訳が分からなかった。何故、急にそうするのか。


「そのまま、そう兄は炎の中に消えてしまって………、炎もいつの間にか消えてた、そう兄はいなくなってて……………それで、」


記憶が蘇ってくる。あの日の悲しみ、あの日の辛さ、怒り、嘆き、絶望……………。


「もういいよ、咲希さん、もういい」


和磨くんに言われて、あたしはようやくノロノロと其方に視線を向ける。あたしの前には、戸惑う皆の姿。あの日の、家族の顔じゃない。あたしの頬から、涙が伝う。

人によっては、その程度と思うかもしれない。でも、あたしにとっては大問題だった。彼は、あたしの婚約者の姉と婚約してたから。義理のお兄ちゃんだったけど、大好きだった。だって、憧れだったから。お兄ちゃんという存在が。そして、彼、大神 蒼一という、存在が。家族として大好きだった。

そうしたぐちゃぐちゃな思いが、一気に溢れだす。


「だって、だって! あたしの所為なのっ!! そう兄が、居なくなったのは、あたしの所為!! あたしが、あたしがっ……! もっとちゃんとしてたら、そう兄は、消えなくて済んだから…………!!」


涙が溢れだす。決壊したかのようにあふれ出て、止まらない。でも、言った言葉は、ずっと思ってた、あたしの本当の気持ち。ずっとずっと、自分を責めた。責めて責めて、脱け殻になるほどに…………。




「咲希さん、そう兄という人は、消えたんですよね?」


しばらくして、和磨くんに急に質問されて、止まっていたあたしの思考が動き出す。


「うん、そう見えたよ、当主様は別の見たことない術式の気配がするって言ってた…………」


あの後の検分で、当主様自らが語ったのだ。


「それって、まるで僕達がここに来た時と似てませんか?」




えっ?




涙が引っ込んだ。あの日から、あたしは青い炎が駄目になった。そう兄が、大切な人がまた消えるんじゃないか、そう思えて怖くなってしまったのだ。因みに、ガスコンロの火は、何故か平気だった。多分、理由が分かるからだと思う。これはガスの為に青い火になっているんだって。


でも、その恐怖が、全く意味の無いものだったら?


和磨くんの指摘は、あたしにとっては新しい扉を開くぐらいの衝撃だった。


「勿論、確証があるわけではありませんが、咲希さんの先程の説明の中に、違和感を感じました」


何故か凛々しい感じがする和磨くんの姿に、他のメンバーも自然と視線が向かっていく。


「第一に、咲希さんに対して、邪魔をするかのように青い炎が襲った点、それって来たら巻き込まれる事が分かっていたって事ですよね?」


確かに、あの時の炎は変だった。誰も近寄らせないように、自らの周りを燃やしていたんだから。


「第二に、先程指摘したように、知らない術式があったという事は、そういう事ですよね?」




つまり…………。




「そう兄も、どこかに召喚された可能性があるってこと?」




あれ? 何で今まであたし、こんな重大な点を気付かなかったんだぁぁぁ〜〜〜〜〜!!??



「まあ、あくまで推論ですけど」



ボソリと呟く和磨くん。何気にすごいと思うのは、あたしだけかな??


読了、お疲れさまでした。


シリアス気味でしたが、大丈夫でしたでしょうか?


次回はきちんと笑いありになりますので、ご安心下さい☆


さて、ようやく明かされた咲希ちゃんのトラウマ。まあ、大好きなお兄ちゃんが自分を拒んで目の前で消えたら、かなりショックですよねー? さらに咲希ちゃんは、当時まだ小学生。いくらしっかりしてても、ショックは大きかったのです。あれ以来、咲希ちゃんは青い炎がダメになりました。蛍火の洞窟しかり、人体発火事件しかり…………。

どうか今回、克服してくれたら………と思います。


さて、次回は6月10日更新です☆ 


なお、本日は活動報告にも書きましたが、短編を一本、同時公開しております。よろしければ、そちらもどうぞ♪ 甘酸っぱい(多分?)恋の物語に、なったはずです(;^_^A


感想、ご意見、ご質問、誤字脱字、いつでもお待ちしております。なお、作者はメンタル弱いので、甘口でお願いしますね?

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