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第61話 現場に行きましょう

本日、人が燃える描写が、さらっとではありますが、あります。ですので、苦手に思われる方は、バックをお願いしますm(__)m 次回の冒頭に、今回のあらすじを書きますので、ご安心下さい。

次回は6月3日更新です。


あたしが現場に着いたのは、皆が立ち止まって、険しい顔で、それを見ている所だった。あたしも勿論、その現場が目に入る。


「………ッ、本当に燃えた後しかないのね」


道路のど真ん中、そこに焦げた足跡と煤があるだけ。異様な程に何も無い場所である。

既に、近くの兵士が来ていたらしく、人々を現場に入れない為の措置がとられており、ものものしい雰囲気である。

気分を変える為に目を閉じてみれば、ちらりと蘇る青い炎の記憶。

…………はぁ、瞼の裏に焼き付いて離れない、あの記憶。それが邪魔して上手く思考がまとまらない。


『主、魔の気配を感じます』


カバンを無意識に胸元でギュッとしていたためか、式神さまの声が耳元で聞こる。それが何故か無性に安心出来て。

はあ、何か調子狂う…………。


『恐らく、魔族ではないかと』


この声は、(たつ)。彼はこういった残った気配を掴むのが上手い。


「魔族がやってるの?」


極力、声は抑えて(たつ)に問う。彼らの声は、霊力持ちか、もしくは彼ら自身が許した者にしか聞こえないから。はたから見たら、独り言をぶつぶつと呟く、怪しい奴にしか見えないもんね。


『そこまでは………、ただ残った気配が魔族のものしか感じませんので』


「そう、また何か感じたら教えて」


『御意』


はぁ、何か気分が悪くなってきた。気を付けないと、皆に心配かけちゃう。ダメね、しっかりしないといけないのに……………。


「サキ様、大丈夫ですか?」


声がした方を見れば、そこにはジークさんとローグさんの二人の姿が。この二人、妙に感が鋭いのよね…………。


「うん、大丈夫、ちょっとビックリしただけだから」


ウソは言ってない。人が燃えるなんて、信じられない現象が起きた現場にいるんだから、誰だって驚くだろう。


「すいません、女性方に見せる現場ではありませんでしたね」


「今日はこのまま帰られますか?」


二人に問われて、あたしが頷こうとした矢先、とある気配に気付く。はっとして辺りを見渡すけれど、それらしい姿はない。

あれ? でもこの気配って、どこかで……………。


「サキ様?」


「どうされました?」


二人の心配する視線に申し訳なく思うけれど、今はこの気配を掴まないと……………。


「キャァァァァァァ―――――!!!」


突如、辺りに悲鳴が響き渡る。


「「何事だっ!?」」


双子が辺りを見渡すけど、人が多く場所が断定出来ない。ちっ、人が多すぎるのよ! 早くこの気配の正体を掴みたいのに。考え事が上手くまとまらないじゃない!


「咲希ちゃん、今、悲鳴があがったよね?!」


「今度はなに!?」


優香ちゃんも和磨くんも、多分だけど、この残り香みたいな気配には気付いていないみたい。知っても不安になるだけだし、今は黙っておこうっと。


「分からないけど、何かが近くで起きたみたい」


自然とあたしの声が堅いものになる。

この人混みが、さらに混乱させる原因になってるわけだけど、どう考えてもおかしいんだよね。わざわざ、こんな人混みで行う理由。

それは…………。

もうちょっとで、まとまる。その時に、目の前を誰かが通り過ぎる。まるでいきなり刻がゆっくり動いているかのように感じた。


「え…………?」


ちらりと一瞬だけど、間違いなく見えたもの。あれは、あれは………青い……炎………?

でもそれは一瞬で、その人影も、青い炎も、人混みに紛れてしまい、見失ってしまう。

あたしは茫然とそこにいた。動く事も、考えることすら忘れて。

ちらりちらりと、瞼の裏に蘇る青い炎の幻影―――――。


「そう兄……」


まるで、それに追い立てられるかのように、あたしは無意識に呟いていた。昔から呼び慣れたあだ名を。


――――――ボッ


どこからかあの、火が着くときに立つ独特の音が上がる。と共に、あたしの近くにいたらしい人影の一つが燃える。悲鳴さえ上がらずに、炎は大きくなっていく。


「青い……炎……?」


メラメラと燃える、どこまでも深い色合いの青い火。まがまがしい迄の魔の気配を含ませて、燃えていく。しかし、それはすぐに何も残さず消えてしまう。残ったのは、何かが燃えた時に香る、焦げた臭いだけ―――――。


「咲希ちゃん!」


「咲希さん、無事!?」


振り返ったあたしの前には、顔色の悪い優香ちゃんと、焦ったように険しい顔の和磨くん。二人の目に映るあたしは、きっと変な顔をしてるはずね。だって、自覚あるもの。顔から血の気が引いているわよねぇ。


「また、人が燃えた………?」


「魔法の気配も無かったのに………?」


近くにいたジークさんとローグさんの二人も、今の現象をバッチリ目撃してるんだけど、困苦してるわね。仕方ないけど。目の前でいきなり意味不明な現象を見ちゃったら、普通は驚くわよね?


(たつ)、気配を感じた?」


一応念のため、確認を取れば、了承の言葉が札から返る。


『はい、魔の気配です、しかし今回も魔の気配しかありませんでした』


間違いなく、魔族が今回の件に関わっているのは明白なのに、瞼の裏にチラチラと見える、深い、深い、青、蒼、碧……………。先程からそれが頭の中でくるくると回って、視界まで歪んでくる。


「咲希さん?」


『咲希?』


「大丈夫!? 咲希ちゃん?」


『大丈夫か、咲希?』


重なる、あの日の声。そう兄の、優しくて懐かしい、あの声。


「平気……だよ………」


今、会話をしているのは、優香ちゃんと和磨くん。そう兄じゃない。なのに、何で彼の声が聞こえるんだろう。


「でもっ!!」


「そうだよ、咲希さん! 一回帰ろう、今の咲希さんはおかしいよ? 帰って休もう」


皆の声が、幕をはったかのように、くぐもって聞こえる。あれ?


「「サキ様っ!?」」


おかしいなぁ、皆が歪んで見える。瞬きをしても変わらない。それに、青い炎がチラチラと見えて、何かおかしい。

ぐるぐる回る視界と、はっきりしない皆の声。それに妙にダルくて、重い体。

あれあれ?


「咲希さん………?」


何だか分からないけど、異常に眠い。それに青い炎が視界に揺れて、何だか落ち着かない。


「……そう…兄………」


あたしはそのまま意識を手放した。



◇◇◇◇◇



Side:和磨


咲希さんが倒れた。人が燃えたと言う町中で。周りにも倒れた女性とかがいたらしく、たくさんの人々のざわざわした声がした。けど、僕達にとって優先すべきは咲希さん。

早朝会議では問題なかったけど、間違いなく、悲鳴が上がった辺りから、咲希さんの顔色は悪かった。僕には分からないけど、何か心的なものなのかもしれない。それに関しては、残念ながら、付き合いの浅い僕達には分からない。咲希さんは謎が多すぎるんだ。


「城に帰りましょう!」


「馬車の手配を」


双子のジークさんとローグさんの二人は、準備等をすぐに終わらせてくれて、僕達はあっさりと城に帰ってきた。時刻は既に3時を過ぎていて、それなりの時間を町で過ごしたのが分かった。


「咲希さんの容態は?」


余り休んでいない咲希さんを、無理に町に連れていかなければ良かったのかもしれない。後悔ばかりが僕の胸に吹き荒れている。


「熱があるようで、安静が必要です…………カズマ様、事件に遭遇されたとか」


咲希さんの治療に当たってくれたジュビアン神官様は、沈鬱な表情のまま。


「そうですか………事件に関しては偶然だったんですが、咲希さんのすぐ傍でも起きたので………」


「すぐ傍で…………? 失礼ですが、詳細をお聞きしても?」


僕が知っている部分を話すと、とある部分にピクッと反応して、更に険しい顔になった。なまじ綺麗な顔をしている為か、かなり怖いんだけど。


「青い炎ですか………」


それきり黙り込んでしまったジュビアン神官に、今度は僕が問う。一体、何を知ってるんだろう?


―――――バンッ!


「和磨っ! 咲希が倒れたってマジかっ!?」


……………何でいいタイミングでくるかなぁ、翔太。今、凄い勢いだったけど、大丈夫かな?


「本当だよ、翔太、今ジュビアン神官と情報交換してたとこ」


「そうか、あいつ、前にも倒れてるんだよ………」


「なにそれ!? 僕、聞いてないんだけど!?」


それから、翔太を含めての情報交換を行い、そこで分かったことは。


―――――青い炎。


咲希さんがこれに過剰に反応していること。全てに繋がる手掛かりだけど、残念ながら、僕達には現時点では分からない。これが何を意味するのか、全く理解出来ないのだ。


「目を覚ますのを、待つしかないか」


翔太の言葉に、誰もが頷く。それしか方法が無かったから。



◇◇◇◇◇



Side:???


……………………。


何かに呼ばれた様な気がして、辺りを見渡すが、特に気になる事もない。


「どうしたの?」


声がしたほうを見れば、ここ数年で見慣れた仲間の姿。


「いや、何でもない」


そうはいいつつも、気になるのは確かで、それを彼女も分かっているんだろう。


「またいつもの感てやつ?」


「まあな」


まだ曖昧だが、もうすぐ事態は動くだろう。俺に関係する何かが。


「ソウの感は当たるからね〜」


それには苦笑で返しておいた。


…………なあ、咲希? お前はまだ、あの日の事に捕われているのか?


「また、会えたらいいのにな」


その言葉は、とても小さくて、すぐに風へと溶けてしまう。


「ん? 何か言った?」


「いや、何も」


不思議そうに首をかしげる彼女に、遠い日の記憶を重ねる。あいつは元気だろうか?



◇◇◇◇◇



―――――ねぇ、貴方は今、どこにいるの……………?


読了、お疲れ様でした。


本日は残酷な描写がありましたので、ヒヤヒヤしております。夢に出てはこないはずです。

実は伏線がかなり入った本日のお話なんですが、ちょっとスランプ気味で微妙な出来になりました。

次回は、次回こそはスランプ脱却してやります!


感想、ご意見、誤字脱字、ご質問、いつでもお待ちしております。なお、ポイント入れて下さると更に嬉しいです(*^□^*) 出来ましたら、甘口で感想等下さると嬉しいです。

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