第60話 楽しい休暇と不穏なベール?
いつもありがとうございます!
次回は5月27日更新です。
さーて、誰に案内をお願いしようかしら??
せっかく決まりかけたお買い物なのに、案内人がいなければ、あたし達は町に行っても、いいお店が分からない。
「やっぱりファイさんかしら?」
最近、特にあたしに付きっきりになりつつあるファイさん。何故か周りからは、あたしを止めれる一人とみなされているんですよ、彼。まあ、十中八九、あたしの所為であることは間違いないと思う。色々とやらかしてる自覚はあるよ。
「あ、そーいやぁ、ファイは今日、城にいなかったな………」
思い出したのか、手をポンと叩く翔太。はぁ!? 知ってたら先に言いなさいよ!?
「んー………、エリー様かフランツ様に聞いた方がいいかしら?」
気軽に頼める人がいない。それはそれで問題だけど、とにかく誰かに案内役を頼まないと!
「あ、双子は今日が休みじゃないか?」
「イーグさんとローグさんの双子騎士? 大丈夫ならお願いしようかしら?」
あの二人は中々にいい性格をしているから、買い物も楽しいものになるわね。双子って、護衛としても優秀だし? 会うのも久し振りだから楽しみね!
「んじゃ、俺が呼んでくるから、門の所で待っててくれ」
そういって、駆け出した翔太はあっという間に消えてました。ホント、どんな体をしてるのやら…………。
「そんじゃ、行きましょうか」
唖然と事の成り行きを見ていた二人を連れて、あたしはお城の門へ向かうのでした。
◇◇◇◇◇
翔太に言われた通りに、門で待っていれば、今更ながら初めて町に下りるんだなぁーって実感する。それに、好奇心の他に若干の不安もある。これから行くメンバーは、普通に考えても目立つ。こんな時にはお決まりの、顔の偏差値が最上位の皆様と行くんです。あたしは平凡に幼い顔立ちですからねぇ…………。睨まれないかしら? 主に肉食系女子に。
「お待たせ」
「しました!」
「「皆さん!!」」
なんて複雑な乙女心で悩んでいたら、参りました、お二方。
……………うん。久方ぶりにツッコミたい! 変に区切らないでよっ!? 紛らわしいから!
「お久しぶり〜、ジークさん、ローグさん」
内心は綺麗に隠して、一旦お出迎え。今日の二人は、髪型は左右に違うだけで同じなんだけど、服装がいつもと違う。シンプルなグレーのシャツに、茶のズボン。二人で同じ服装だから、気を抜くと間違えそう…………。
「あれ? 皆さん目立ちますよ?」
「着替えなくていいんですか?」
はい、マジで正論でございます。でもね? 今現在、着替えの無いあたしらが着ているのは、あたしは青色の魔術師のローブ一式。優香ちゃんは、鎧はまずいから、制服姿。和磨くんも同じく。
「いやー、その着替えがないから、これから買いに行くのよ」
「「あー、成る程」」
綺麗なハモリをありがとう。
「でも、このままだと目立っちゃうよ?」
優香ちゃんの不安そうなお言葉に、双子は何やら意味深に笑ってます。
「大丈夫ですよ!」
「すぐそこに服屋がありますから!」
………………はい?
「どういうこと?」
うろんげに聞くあたし。近くって、明らかに王宮御用達の可能性が高いのだけれど。
「すぐそこにある服屋は、ややお高めですけど」
「町に下りても目立ちませんから大丈夫ですよ」
ならいいかなぁ。お高めだから、あくまでも今すぐに着る物だけ買うってわけか。
「そんじゃ、レッツゴー♪」
歩いて1分、目的の場所に到着。
……………はあ!? 1分ってどんだけ近いのよ!?
「やっぱり驚きますよね」
「僕らもビックリしたし」
あぁ、二人も経験済みなのね。
そんなこんなで、店に入ると、そこは比較的シンプルなデザインの服が多いようです。内装も女性向けで、明るく品揃えも多く、うん、あたし好みだわ♪
「いらっしゃいませ〜」
奥から感じのいい女性が出てきた。年頃は30台くらいだろうか? 赤い髪をきっちり結い上げており、流行の普段着を着ている。顔立ちは優しい感じで、思わず色々と頼みたくなる感じである。
「町に下りたいから、そこに紛れるような服をお願いします」
手慣れた様子で注目している双子、つまり慣れてる。ここはやっぱり王城の御用達ではないの!?
「分かりましたわ、そうね………これとこれなんていいんじゃないかしら?」
内心盛大にビビっているあたしを余所に、店員さんが選んだのは、シンプルな水色のワンピースと、同じくシンプルながら可愛らしいピンクのワンピース。
お? 中々いいんじゃない?
「そうね、帽子や靴はこれが合うわね」
店員さんが選んだものは、どれも品が良いものの、充分町に溶け込める範囲である。センスのいい方に出会ったようです♪
「あれ? 和磨くんは?」
選び終わって着替えも終わり、気持ちに余裕が出て来た。そして辺りを見てみれば、男性陣がいない。いつの間に!?
「お連れ様でしたら、奥のスペースにおりますよ、奥は男性用の物がありますから」
ニッコリとした店員さんが指差した方には、確かに通路があった。
「何で男性用は後ろなんですか?」
素朴な疑問である。
「あぁ、それは女性用の方がきらびやかですから、ショーケース等も彩りが良くなるんですよ」
ですよねぇ。男性用は地味だし。
「あ、咲希さん、優香さん、買い物は終わった?……………みたいだね」
声がした方を見れば、和磨くんが着替えた姿でいた。顔がかなり驚いているけれど。
「和磨くんも終わったんだね! 似合ってるよ」
優香ちゃんのニッコリ笑顔付き誉め言葉に、和磨くんも顔が赤くなった。分かりやすい事で。
そんな和磨くんが着ているのは、双子と似た服。白のシャツに緑色のズボン。シンプルだけど、中々似合っているわ。
「さーて、準備も出来たし、町に行こうか」
因みに料金は、あたしと優香ちゃんは、共に金貨一枚と丸銅貨一枚。しめて10500円。買ったのは、ワンピースに帽子、靴下と靴。
……………元の世界からしたら、とんでもなく安いわよね? まあ、平民の月収が金貨二枚くらいとしたら、かなり高い買い物だよねぇ…………。
「結構予想外………」
因みに、和磨くんはシャツにズボン、靴下と靴のしめて金貨一枚のみ。つまり10000円。うん、何か突っ込みたい!
「それじゃ、買い物に行きましょうか♪」
そこからは歩いて、珍しい町並みを見ながら、気になったお店を回って、時計を見れば既にお昼を過ぎてました☆
どんだけ夢中だったんだ!?
ビックリしながらも、5人組で入れる食堂に向かう。勿論、荷物は全て城に送って貰った。驚いた事に、そういうサービスがあったんだよね〜! 因みに、あたしが選んだのはシンプルな物。優香ちゃんは、可愛らしい物を。和磨くんは残念ながら分からない。何せ男性用の物は奥にしかないから、あたしは分からないんだよねぇ。まさか女性のあたしが奥には行けないし…………。
「サキ様! あの店に行きましょう!」
ん? そこは所謂カフェと呼ばれる場所。客も女性が多いが、男性もいるみたい。
「わぁー! 素敵なお店ですね♪」
優香ちゃんの笑顔がバッチリ似合うお店な気がするよ………。外見もオシャレだし、店の外にはメニューが出ていて、それを見ても中々に品揃えがあるみたい。
必要最小限の買い物は済んだし、休んでも大丈夫ね。お腹空いたし(笑)
「うん、ここにし…」
「キャァァァァァ―――――――ッッッ!?」
あたしが言い掛けた矢先、甲高い悲鳴が辺りに響き渡る。
「えっ、何事!?」
突然の悲鳴に、辺りはざわざわとどよめきが広がっていく。
「サキ様、様子を見て参ります、ジークを置いて行きますから、ここから動きませんように」
「分かった」
二人は視線を一回合わせると、すぐに向かって行った。
「何事かしら?」
「何か起きたのは間違いないよね………」
「そうだね………怪我人が出ないといいんだけれど」
上から、あたし、優香ちゃん、和磨くんです。
「今、ローグが確認しに行ってますから、もうしばらくお待ちください」
ジークさんは険しい顔で、ローグさんが向かった場所を見ている。
悲鳴は確かにした。その証拠に辺りの人達も唖然としているし。野次馬らしい人々も、悲鳴があった方に向かっているし、今頃現場では混乱してるんじゃないかな?
「あ、ローグさん、帰ってきたよ!」
優香ちゃんの言葉に、そちらを見てみれば、現場に向かったローグさんの姿が。
「ローグ! どうだった?」
ジークさんが聞くけど、ローグさんの顔色がどことなく悪い。表情も強ばっているし。
「ジーク、この先には行かない方がいい…………」
「だから! 何があったんだよ!?」
ゆさぶる勢いでローグさんに詰め寄るジークさん。ローグさんは此方をチラチラと確認しながら、何かを悩んでいるよう。ん?
「気にしなくていいわよ?」
一応、念のためにローグさんに告げれば、彼は仕方ないかのように、ボソボソと告げた。本当にボソボソ話すから、マジで聞き取りにくい。
「はっきり話せ! ローグ!」
忍耐がきれたらしいジークさんに怒鳴られ、今度こそ観念したらしい彼は、ようやく話した。
「人が………人が突然、“燃えた”そうなんです!」
「「「えっ!?」」」
全員、ポカーンとなる。正確にいえば、全員の頭がついていかなかったというべきか。
「人が燃えたって………どういうこと?」
ようやく声が出たのは、しばらくたってからのこと。それだけショックが大きかったっていうのもあるけど。
「僕も聞いただけなので、詳しくは分かりませんが、歩いていた人が、いきなり燃えたらしいんです…………灰すら残らなかったみたいで、道路に燃えた後があっただけでした」
あぁ、確かに言えないわ。いきなり人が燃えたなんて、ファンタジー世界だってビックリの事なんだから。
「とにかく現場に行こう、何か分かるかもしれない」
和磨くんの言葉で、動き出す皆。だから、気付かなかったはずだ。あたしの独り言なんて。
「…………ソウ兄」
火を連想するたびに、瞼の裏に甦るのは、あの日の青い炎―――――。
それはあたしの、“罪”の証なんだから。
あたしは空を見上げる。不穏な未来に、一抹の不安を感じながら。
読了、お疲れ様でした。
本日のお話、いかがでしたでしょうか?
もしかしたら、苦手な方もいたかとヒヤヒヤしながら、書いておりました。基本的にコメディみたいな、楽しい冒険にしたいのですが、たまにシリアスになりますね。このお話…………。
さて、今回ですが、忙しかったのもあり、スランプ気味です。書きたい事があるのに、上手く書けなくて、書き直しを何回かしております。はあ、文才が欲しいと思う今日この頃。
では次回、お会いしましょう。
感想、ご意見、誤字脱字、質問、いつでもお待ちしております。なお、秋月はメンタル弱いので、優しくお願いしますm(__)m