閑話 暗雲立ち込めるお屋敷で( 1)
先週は失礼しましたm(__)m
本日よりまた、水曜日更新に戻ります!
次回は4月8日です。
Side:優香
咲希ちゃん、翔太くんと別れて、私と和磨くん、殿下とブラオさんで屋敷の玄関らしい扉へ向かいました。ブラオさんが、すっと私達の前に立って、扉をノックしました。
「いいですか、殿下、勇者樣方から離れませんように」
その声はとても真剣で、この扉の先を様子を伺っているのは明白です。私はすぐに魔法が発動出来るように、準備をしておきます。和磨くんを見ると、こちらも直ぐに動けるようにしていました。
しばらくして、静かに扉が開きました。覚悟はしていましたが、中から出てきた方には酷く驚きました。
まるで病人の様にやつれた顔の執事の方だったのです。
「何か御用でしょうか」
普通の人なら、間違いなくひっくり返っているでしょう。が、すっと私の視界に動く姿がありました。和磨くんです。
「僕は、この国の勇者で、カズマ・シラトリと申します、突然で申し訳ありませんが、貴方の体調が気懸かりです、治療させて頂きます!」
って、和磨くん!? 何考えてるんですか!? せめて要件を言ったうえでして下さい。じゃないと、話が出来ませんよね?
勿論、和磨くんがそう思うのも分かります。彼は医者の息子らしく、その辺りの正義感がとても強いのです。怪我をした方を絶対に放る事をしない方です。
まさか今回、いきなりこれが発動するとは思いませんでしたが。
「執事さん、かなり無理をされましたね? こんな体で、黒い霧を吸ったら、死にに行くようなものですよ!? お屋敷に勤める以上は、体は基本でしょう、お話は治療が終わったらしますので」
きっちり釘を刺しつつ、手際よく和磨くんは執事さんの手当てをしていきます。余りの迫力に、執事さんは頭が追い付かないようで、されるがままになっています。凄いです、和磨くん!
「殿下、ブラオさん、つったってないで、さっさと周りの浄化をしてください、あ、優香さん、僕のバックからポーション出してくれる? 青いビンのやつ」
「カズマ殿、いくら貴殿でも、殿下にしつ…」
「和磨くん、これ?」
「うん、ありがとう」
ブラオさんが慌ててましたが、私と和磨くんは治療を優先しました。ポーションを飲むと、執事さんの顔色が良くなってきました。良かったです。でも和磨くん、殿下に失礼な気がするんですが、いいのでしょうか?
「ブラオ、よい」
「しかしっ、殿下!」
「さっさと浄化をしてしまおう」
「………はっ」
どうやら殿下は、周りを見ていたようで、浄化が必要と判断したようです。ブラオさんは妙な迫力のある和磨くんに、これ以上は流石に声をかける事も出来ないようで、殿下と共に瘴気を浄化すべく、行動を始めました。
あれ? 私はいいのでしょうか?
「優香さん、これ片付けてくれる?」
こちらに一度も視線を向けず、執事さんの脈を測ったり、体を触り、触診?というのでしょうか。それを行う和磨くんの目は、とても真剣です。私は言われた通り、バックに青いビンを入れました。
最近の和磨くんは、神官様達と行動しており、病気や怪我の治療を勉強していました。だからこそ、執事さんをほって置けなかったのでしょう。
「カズマ、大体の浄化は済んだよ、彼に主の元に案内してもらおう」
気付けば、殿下とブラオさんが戻ってきていました。あ、あれ? そんなに時間は経っていませんよね?
「もう大丈夫でございます、ありがとうございます、お陰様で体が若返ったかのようでございます」
執事さんは立ち上がると、優雅に右手を胸にあて礼をしました。
「改めて、当家の家令を努めております、ジルドと申します、主の元へご案内させて頂きます」
そういって頭を上げた家令、ジルドさんは、最初に見たお化けのような姿はどこにもなく、一流の執事さんの姿でした。元々、仕事に誇りを持つ立派な方なのでしょう。
「他の者達はどうしたんだい?」
殿下に言われ、私はこの時、ようやく気付いたんです。ここまで大きなお屋敷に、彼しか執事がいない訳がありません。
「はい、お恥ずかしい話ですが、この黒い煙を吸わぬように、メイドや執事等の召使いは部屋に結界を張らせてそこにおります、主の元へはお抱えの魔術師を派遣しておりますので、ご無事にございます」
そういいながらも、彼は主の元に案内を始め、廊下を歩いていきます。内装はかなり華美な物が多く、このお屋敷がかなりのお金持ちな方のものだと、嫌でもわかりました。
「カズマ、ユーカ、気を引き締めてね、どうやらあそこが今回の騒動の大元のようだから」
そう言った殿下の顔は強ばっていました。私でも分かります。とある部屋から、黒い霧、瘴気と呼ばれる物が出てくる事に。余りの濃さに、私は息苦しく感じ、呪文を唱えました。
『光の(・)雨!』
優しい光の雨が降り、辺りを浄化していきます。息苦しく感じたのも軽くなりました。
「凄く濃い瘴気です、皆様、気を付けて下さい、殿下は我々から離れぬよう」
ブラオさんの厳しい顔付きに、自然と背筋が伸びました。
「こちらが旦那さまの部屋になります」
「僕が話そう、カズマ、ユーカ、ブラオ、話は合わせてね?」
私達は頷きました。確かにお話が上手く進むには、殿下に任せた方がいいでしょう。あの王宮で生きて来られた殿下です。大丈夫でしょう。
「旦那さま、失礼致します、ジルドでございます」
しばらくして、低い男性の声が聞こえました。どうやら許可の言葉だったようで、ジルドさんが扉を開き、殿下を先頭に私達は室内に入りました。驚いた事に、この部屋には一切の瘴気の気配がないことです。恐らく、この正面にいる険しい顔立ちをした中年の方が、お屋敷の主の方なのでしょう。奥に控えているのが、家族の方でしょう。奥様は疲れ、やつれていますし、隣にいる私と同じ位の少女も顔色が悪いです。主の隣にいる20歳位の男性は、恐らく跡継ぎの方でしょう。こちらは気丈に振る舞っていますが、やはりどことなく疲れを感じさせます。
「ジルド、この方々は?」
訝しげに問うのは、息子さんです。隣にいる当主樣は、何故か顔が引きつっていました。
「はい、我が国の皇太子様と、勇者様のカズマ様、ユーカ様、そして魔術師のブラオ様にございます」
執事さんが我々を紹介して下さったのですが、息子さんの顔色が白くなってます。更に、後ろにいた奥様とお嬢様がバッタンと倒れてしまいました。控えていた召使の方々が介抱してますが、私も行った方がいいのでしょうか? でも、この固まった空気で動くのは、何だか殿下に迷惑をかけそうです。うぅ、どうすればいいのでしょう。
「お久し振りです、アーサー卿、本日は緊急事態の為、お邪魔しました」
「ふむ、お久し振りですな、殿下…………勇者殿方も一緒の緊急の用向きですか」
「はい、アーサー卿も恐らく気付いていらっしゃるでしょうが、お嬢さんに呪いをかけた疑惑があがっております」
「呪いですとっ!?」
「そんな馬鹿な!」
当主様と息子さんが悲鳴のような悲痛な声が上がります。勿論、お嬢さんというのは、この部屋で気を失っている方ではありません。あの、濃い黒い煙が溢れていた部屋の方の事です。
「残念ながら証拠もあります、更に呪いの本体の後を辿ってきましたら、この屋敷についたんです、それに…………奥にある扉、あそこはどなたの部屋でしょうね」
にっこりと微笑んでいる殿下ですが、何故でしょう? とても素敵な笑顔のはずなのに、何故かそれと対面しているはずの主人さんと、その隣にいる息子さんの二人の顔色が、白を通り越して青くなっています。
「気付かれておられましたか…………」
「気付いたのは、勇者殿であり、我々ではありませんがね」
「お願い致します、娘をっ、娘を助けて下さいませ! どんな罰でも受けましょう、どうかっ、どうかあの子を!」
そういって泣き崩れた当主様は、一気にやつれたようでした。
「勿論、我々はそのために来たのですよ、我々がお嬢さんを救いましょう」
「どうか殿下、この事は内密に願います、罰は甘んじて受けますからっ!」
……………何ていさぎよい方でしょう。貴族である以上、一族を危うくさせる存在など切り捨てられるのが、普通なんだそうです。けれども此方の当主様は、娘を救って欲しいと願いました。貴族としてはいけないのでしょうが、私にはとても素敵な方だと思います。決まった以上は、私、全力でさせて頂きます!
「ジルド、案内を頼む」
「畏まりました、皆様、此方にございます」
ジルドさんが案内をしたのは、やはり先程のまがまがしい迄に闇を生み出させる扉でした。うっ、瘴気がとても濃いです! 呼吸もしにくいです。
「ジルドさん、下がって下さい! これ以上は危険です」
「しかしっ!」
「ジルド、下がってよい、主の元へ心配はいらぬと伝えて来てくれ」
「…………畏まりました」
ジルドさんは、かなり渋ったようだが、最後は折れてくれました。確かにこれ以上は危険です。ジルドさんには、身を守るすべがないのですから。
ジルドさんが戻ったのを確認し、私と和磨くんは、扉に手をかけました。
「殿下、ブラオさん、出て来た瘴気の浄化、お願いします!」
和磨くん、殿下を使っていいのでしょうか? ちょっと不安になるのですが……………。
「いち、にの、さんで開けるよ、優香さん」
「うん!」
本当はドキドキしてます。こんな経験、初めてで。和磨くんを見れば、ビックリするぐらい真剣で。うぅ、私もこれくらい真剣にやらないといけないのに。
「いち、に、さん!」
「え〜い!」
開けた扉からは、予想以上の闇があふれ出てきました。私も、和磨くんも結界をはってますが、それでも息苦しい感じがします。後ろにいる殿下とブラオさんが、一気に氷と風で浄化していきます。
一体、この部屋で何が起きているのでしょうか?
読了、お疲れ様でした!
先週は急に休んでしまって、申し訳ないm(__)m
実は、春特有の頭痛、めまい、吐き気に襲われ、あえなく撃沈しました…………。季節の変わり目によく起きるそうです。皆様も気を付けて下さいね?
とりあえず、秋月は万全ではありませんが、なんとか体調が戻って参りましたので、復活です!(笑)
本日より、テンシロは閑話に入ります。本日は優香ちゃん、次回は和磨くんで、お屋敷の中であった出来事をまとめて行きたいと思います。咲希ちゃん視点まで、笑いはありませんが、どうかお付き合い下さいませm(__)m
この後はようやく待ちに待った、青い焔編の山場に向かいます♪
あの蛍火の洞窟で見た青い焔………、その正体が暴かれます!
実は最初、この呪いの話は入れるつもり無かったんですが、とある方に言われました。陰陽師なら呪いは十八番だよね☆と。
マジ? あれ、これ入れないと可笑しいのか!? となりまして、陰陽師たる咲希ちゃんに解決してもらおうと、このエピソードが追加されました(笑
いらない裏話でしたね(;^_^A
さて、本日はミニ小説付きです!
咲希:こんにちは(・∀・)ノ
翔太:よっ! 今日は全く出番の無かった俺達でやるぜ!
咲希:いやー、まさか屋敷内がこうなってたとはねー。
翔太:俺達、凶暴な呪いの本体と戦ってたのに、意外と中は平和だったんだな?
咲希:あら、何いってんの? 呪咀やってる本体を浄化しないと、終わらないんだから、頑張ってもらわないと。
翔太:あのメンバーで大丈夫か?
咲希:あの中じゃ、浄化が心配な人はいないからね。大丈夫だよ。
翔太:殿下が必要なのは分かるんだが、大丈夫だよな?
咲希:あの人、強いわよ?
翔太:お前は何でそういうの分かるんだよ?!
咲希:陰陽師の感?
翔太:微妙にあり得そうだけど、何だよ! 陰陽師の感て!?
咲希ちゃん、人の強さを測れる程に強いです。…………一体、元の世界でどんな暮らしをしてたんでしょ??
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