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第54話 呪咀は帰りなさい!!

お待たせいたしました!

次回の更新は3月18日です。

印を組んで、呪文を唱え続ける。今は本体が来たばかり。ここからが勝負よ!


『あぁ…………恨め……し…い、あ…の……儀式で…わた…し…も……神を……呼んだ…のに……なぜ…わたし………では…ない……の……?…にくい……にくい…にくいにくいにくいにくい!!!』


黒い靄が少しずつ形になっていく。もう少しで呪咀返しが出来るだけの、条件が整うわね。


『返せ………返…せ……っ…!! 巫女の…座は……わたくしのものよ!! 貴様…が死ね…ば……わたくしが巫女の座につくの!!』


靄は少しづつ形を変えて、それは今や人の姿になりつつあった。

長い髪の……女性?

かなり美しい人だ。それこそ巫女ですと紹介されたら、間違いなく信じてしまうほど。

されど姿が見えれば、条件は揃った事になるのだ。あたしは切りのいいところで、別の呪文に切り替える。


「木を司る樹英(じゅえい)、火を司る緋ノ(ひのと)、土を司る(しろ)、金を司る(はる)、水を司る(たつ)、我が式神がえがきし五星よ、(よろず)のまがを祓い給え! 悪しきまがものを今打ち返す! 元の主に返し賜えっ!」


凄まじい衝撃が、あたしの元へ来る。風がゴウゴウと唸りを上げ、嵐のような突風があたしを襲う。祭壇や、置いてあった物が、風に舞い上がり、かなり危険な状態ですよ!? って危なー!? 凄い勢いで皿が飛んできた…………。スレスレで避けたけど、危険だよ!

けれど、あたしは陰陽師。全てを祓うもの。


「人を呪あば穴二つ………覚悟はしてもらうわよ! 急々如律令!」


そのあたしの言葉と共に、あたしの背後から強い暖かい風が吹き付ける。その風に触れた本体は、黒い霧を撒き散らしながら、藻掻き苦しみ始める。そして風に追い払われるように、カタシロから離れ、元来た道を帰り始める。


これが呪咀返しと呼ばれるもの。


本来ならば、もっと準備を入念に行い、人を揃え、場を作り……と、やることが大量にあるけれど、あたしが今回やったのは、略式の代用物を使ったかなり強引なもの。それでもこの威力っていうんだから、代用物がどれだけ凄かったのかは身に染みて分かった。つーか、冷や汗かいたわ!

さて、呪いは返されるときに、実はオマケが着くのをご存知だろうか?


…………呪いは失敗すると、我が身に何倍にもなって跳ね返る。


だから、人を呪あば穴二つ、なんだ。だって成就しても、失敗しても死んでしまう…………。それが禁術と呼ばれる“呪い”なのだから――――――。


呪いの本体が、術者の元に帰っていく。何倍にも膨れ上がって。


翠嵐(すいらん)! 追って!」


その呪咀の向かう先に、今回の騒動を引き起こした大馬鹿者がいる。何としてでも、居場所を見つけないとね!


凄い早さで戻っていく呪咀を追い掛けていく翠嵐。彼女はこれでいいとして、次は翔太達に折って貰った“折り鶴”の出番!

さあ! 出番だよ〜、皆さん!


「ウンカリアシャランカカカソワカ! 彼の者を追い掛け、まがつ者を祓い避け給え!」


これは、折り鶴を簡易の式に見立てたもの。折り鶴一つ一つに、術をかけて操るので、増えれば増えるだけ力を使うため、マジで疲れる。が、何事にも例外があるんですよ。いい例があたし。あたしは、式を自動で動かす事が出来るんだよね〜。ん? 反則技? 言われても困ります…………。

まあ、そんなわけで、折り鶴を空中に放っていく。それらは翠嵐を追って、追っ掛けて飛んでいく………………んだけど、何羽か飛び方が不安定な鳥が。あれは………、誰の作でしょうね?

これが終われば、今度は現場の後始末なんだけど…………。うん、今更ながらに、凄い状況を作りあげてしまったわ。


辺りには、祭壇に神に捧げる為の果物とかあったんだけど、床に錯乱。他も以下同じく。


「サ、サキ様? もう出ても宜しいので?」


呼ばれたので其方を見れば、真っ青な顔の三人さん。勿論、証人としてこの場にいた、宮廷魔術師長様、魔法騎士長様、神官様の事ですよ〜。


「え? いいですよ? ここでの作業は終わりましたから」


無事に呪咀は返した。後は、翠嵐が時間稼ぎしてくれる手筈になっている。


「一体、今のは?」


一番顔色が悪い神官様が、カタカタ震えながら問うてくる。無理しなくていいよ?


「今のが呪咀、つまり呪いの本体です、もう城には来ませんので、ご安心下さいね」


とはいえ、安心は出来ないでしょうが、ね。


「あの女性に心当たりはありますか?」


ふと気になって聞いてみると、宮廷魔術師長様が微妙に視線を彷徨わせてました。ふふーん? その顔は、検討がついたか、もしくは知っていたかよね? 隣にいる神官様も下を向いてるけど、驚いた顔をしてるし?


「彼女はどなたですか? 間違いなく姫様から巫女の座を取り上げようとしてましたけど?」


あたし、かなり怒ってますよ? その証拠に今現在、彼らはあたしの殺気をもろに浴びてますから。一番鍛えているであろう魔法騎士長様は顔色が悪いくらいで済んでるけど、後の二人は耐性があまりないからか、顔色が青くなってますよ?


「…………サキ様は、我が国の巫女の選び方をご存知でしょうか?」


震えた声の神官様は、どうやら観念したらしく、あたしに聞いてきた。つーか、話が飛んだような?


「知らないわ」


こちとら2ヶ月前に、召喚されたのよ? 知るわけないでしょ!?


「我が国の巫女の選び方は、古くから“一番高位の神を降ろした者”がなるのです、そこに身分や外見は一切考慮されません、次代が必要な巫女は、次代の候補達を集めます、その中で先程の神降ろしを行い選ぶのです」


成る程、それで姫様が選ばれたわけね。って事は、あの人は選ばれなかったうちの一人?


「先程の女性、もしかするとなのですが……………王家の遠縁の姫君かもしれません、私も姿を見たのは、数回のみですのでな、はっきりとは言えないのですが………」


う〜ん。なんか絞れそうだけど、とりあえず。


「片付けはお願いしてもいいですかね? そろそろ行かないと」


「分かりました、我々から陛下には説明しておきましょう」


いくら神とはいえ、呪咀相手。心配にもなるってものよ。さあて、一体どちら様なんですかね? 呪咀をやった大馬鹿者は。


(たつ)、行くわよ!」


龍以外の式神様を札に戻し、翠嵐の風を頼りに、いざご本人の元へ参りますか。

と、外へ出た所で、まさかのメンバーと会いました。


「ちょっと! 優香ちゃんも和磨くんも休まないとダメでしょ!? つーか翔太、何で止めないのよ!!」


そう、勇者メンバーですよ! 皆、寝不足に疲労困憊状態のはずでしょ!?


「ん? 咲希、お前な…………ここについてから、もう半日過ぎたんだぞ?」


「それだけ寝れば、僕だって平気だよ」


「そんな危ない所に、咲希ちゃんだけ行かせるなんて出来ないよ!」


上から順に、翔太、和磨くん、優香ちゃん。アハハ………。そんなに時間が経ってたんだ。呪咀対策に追われてて、時間の事なんて忘れてたわ。


「言っとくけど、相手は呪咀だよ? 皆が相手に出来る存在じゃ…」


ないよと、続けようとしたら、何やら物凄い威圧感が。


「勿論、連れていってくれるよね? 僕達、浄化の力を持ってるし」


あ…………………。


大切な事を忘れてた。そう、何も陰陽術を必ず使う必要は無かった訳で。呪咀そのものは、確かに陰陽道を使う必要があったから、すっかり思い込んでたみたい。


「確かに、あたし一人じゃキツいのも事実なのよね、うん、行こう、皆でさ、でもどうやって行こうか?」


移動手段はどうしよう? だって、龍には二人しか無理だし…………。


「あ、それなら、ファイから絨毯かりたぜ! 運転は俺に任せろ! 帰り道にみっちり仕込まれたからな!」


随分と手際のよい事で。そういえば、翔太が運転してたとき、ファイさん、少しの間、やり方教えてたわね。


「分かった、急ぎたいから、優香ちゃんはあたしと、龍に乗ってね」


「うん!」


優香ちゃんの返事と共に、さて早速と思いきや、何故か殿下のお姿が。あれ? 何故だろう? 凄く嫌な感じがするんだけど?


「サキ様、申し訳ありませんが、僕も同行しますよ」


「私も同行致します、証人は必要ですから」


そういったのは、ブラオさん。あぁ、やっぱり。こればかりは仕方ない。ここはそういう権力がある場所なんだから。


「分かりました、行きましょう」


◇◇◇◇◇



それから、すぐに翠嵐の風を追い、あたし達は、いつの間にか明るくなった空をかけていく。目的地に近くなれば近く成る程、空は曇り、気味の悪い霧が漂い始める。

視界が悪くても、あたしは風を感じて目的地に行けるけれど、翔太達は無理だし。今はあまり、力を使いたくないしなー。


「翔太! 視界が悪くなってきたわ、どうする?」


「咲希、こっちの絨毯に乗ってくれ!」


「分かったわ!」


確かにそれしか方法はないわね。一度下に降りて、あたしと優香ちゃんは絨毯に乗り込む。


「向かうのは、あっちね」


あたしの指示で、より霧の濃い方へ向かっていく。2時間程、空を飛んでいくと、ある場所が見えてきた。もう今は、初夏。緑溢れる季節のはずなのに、まるでそこは真冬のように木々は緑をつけずに、寒々しい場所になっている。そこだけがぽっかりと、季節から忘れられているかのような。そんな場所に、お屋敷が経っている。


「あそこが呪咀の大元ね」


かなり立派な屋敷から見て、間違いなく、神官様達が言っていた王家の遠縁とは、本当かもしれない。


「本当にここなのか?」


翔太の怪訝そうな問いには、勿論、バッチリ証拠付きで答えますよ!


「うん、翠嵐がいるし、翔太達に折ってもらった折り鶴がいるしね」


つまり呪咀の本体の足止めは無事に成功した訳だ。


「すぐに浄化をしないと、悪いけど、優香ちゃんと和磨くんは屋敷の中の浄化をお願い」


「分かった、行こう、優香さん」


「え、でも咲希ちゃんは?」


不安そうな優香ちゃんに、あたしはニッコリと微笑む。安心できるように。


「あたしは呪咀の本体を浄化してくるわ、翔太もいるし大丈夫! あ、殿下は室内の方をお願いしますね、お屋敷に入るには殿下がいたほうがいいですから」


そう促せば、皆は疑う事もなく、お屋敷へと向かっていく。

これでいい。皆には余計な物は見せたくない。特に優香ちゃんと和磨くんには見せたくないんだ。あたしの裏の顔なんて、知らなくていい。翔太には見せるつもりなかったけど、エルナマスで少しだけ見せちゃったし。今更かなってね。こいつなら理解がありそうだし。


「さて、あたし達も行きましょうか、呪咀の本体へ」


このまま行かせたら、彼女は死んでしまう。だからこの場で、呪咀を倒さないといけないのだ。


さぁて、本気で参りますので、呪咀よ。首を洗って待ってなさい!


読了、お疲れさまでした!


本日はようやく呪咀の元凶たる方の元まで参りました!!


まあ、まだ次回は書いてないんですが…………(汗



誠心誠意がんばります。



本日は申し訳ありませんが、ミニ小説はお休みです。面目ありませんm(__)m


感想、ご意見、ご質問、誤字脱字、いつでもお待ちしております。返信は必ずいたしますで、ご安心くださいね! なお、返信はメッセージでさせて頂いております。ご了承下さいませ。



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