第53話 城に到着しました!
次回の更新は3月11日です。
ようやく見えて参りました! きらびやかな王都の立派な王宮!!
忙しかった空の旅よ、さようなら。あたしは地面に帰るよ〜☆
なんて、冗談は置いといて。
「サキ〜………!」
待ちに待ったというように、王宮の庭に直接降り立った、あたし達を待っていたのは、王族の皆様。まだ寝てる時間だろうに申し訳ない。だって今、早朝の4時。うん、あたしを除く皆様が、交替で運転してくれたお陰です。ジョージさんとライラさんは、途中出会ったモンスター達を、あっさり撃破。武器の剣風で倒すとか、何か信じられないようなものも見ましたけれど。本番はこれから。
あたし、今回は本気で頑張りますよ!!
全員で絨毯を降りると、まずは王様の前で膝をつきます。これ、この世界の常識ね?
「只今、帰りました、今は緊急事態ですので、王族の皆様、帰還の報告は後日、改めてさせて頂きます」
「ふむ、構わぬ、緊急事態ゆえな、ふむ、勇者サキよ…………娘を頼む」
王様はそういうと、頭を下げた。そう、王様が頭を下げた。結構ヤバい事です。それだけ事態が緊急を伴っているわけだけど。
「分かりました、申し訳ありませんが会場への道案内をお願いします」
普段とは違う真面目なあたしに、案内をする騎士の人が驚いた顔をするけれど、今はそれにかまってやる時間はない。普段、彼らがあたしをどう見ているかっていうのが、よーく分かるわ!
「絶対に呪いをかけた奴には、後悔させたるわ!」
そう、あたしが呟いた事には、幸い誰も気付かれ無かった。
◇◇◇◇◇
案内されつつ、辺りの気配を探る。
……………随分と、呪いの影響を受けているわね。
さっと気配を探っただけでも、暗く淀む異質な力が漂っているのが、はっきり分かる。いくら優秀な神官様が付きっきりで浄化して回っても、後から後から湧いてくる呪いのオマケに、手を焼いているはずだ。因みに、オマケといったのは本当の事。これは本体ではなく、それに寄せられて来た“モノ”に過ぎないから。
「こちらが姫様の部屋になります、その、サキ様…………」
案内してくれた騎士さんが、何か言い掛ける。
「なに?」
問いかけると、騎士さんがいきなりガバリと頭を下げた。土下座じゃないだけマシだわね。うん、姫様は本当に慕われてるわね。
「何卒、姫様を宜しくお願いします!」
「あたしを誰だと思ってるの? 任せなさい!」
あたしは異界で“奇才の陰陽師”と呼ばれていたんだもの。ここは勿論、笑顔のサービス付きで断言しますよ!
その騎士さんは、嬉しそうに笑ってました。うん、いい事したわ♪
さて、入ったその部屋は。意外や意外。普通に清らかな空気が流れてました。
あれ?
部屋事態は、女性らしい可愛らしい部分もあるけれど、落ち着いた感じの趣味のいい部屋です。まあ、今は非常事態なため、重苦しい空気が流れてますが。
「咲希ちゃん………?」
部屋には予想通り、やっぱり顔色が悪い優香ちゃん。普段ならキラキラする瞳をしているんだけど、その目には今、涙がこぼれんばかりにたまっていて…………。
罪悪感が半端無かった。もっと早く帰ってればって、そう思ってしまうんだ。
「優香ちゃん、ありがとう、姫様を守ってくれて…………今度はあたしの番だから、優香ちゃんはゆっくり休んで…」
ね、といいかける前に、優香ちゃんの涙があふれ出る。
「ごめん…な…さ……い! 私、私っ、咲希ちゃんと約束したのに! 約束、守れなくて………!」
ぼろぼろと涙を流す優香ちゃん。彼女は優しい。だから、勇者として、正しい道にいれる。あたしとは真逆の勇者。眩しいくらいに、光の中を歩んでいる勇者。あたしのように汚れた勇者じゃない。
「ううん、違うよ、優香ちゃんは、ちゃんと守ったでしょう? 姫様は生きてる、それが証」
そういうけれど、優香ちゃんはかなり不安定になってる。涙が止まらず、青ざめた顔で、目も虚ろ。
あー、あたしが帰った事で、今まで耐えていたものが溢れちゃったのと、この漂い始めている“モノ”の影響を受けちゃっのかも。これは弱った心に、付け込むものだから。
たくっ! 忌々しいわね!
「神官! ボサッとしてないで、早く優香ちゃんに浄化!」
「は、はい!」
突然の事に神官様は、目を白黒してたけど、有能なだけあって、すぐに優香ちゃんに浄化を施してくれた。
悪いけど、あたしには時間がない。だから、優香ちゃんは神官様に任せて、すぐに姫様の元へ向かう。
「予想より弱いわね」
優香ちゃんは本当に頑張ってくれてたみたい。だって、姫様は本当に守られていた。優香ちゃんの光の魔力によって。
「これなら最小限の浄化で問題ないわね」
これから行うのは、カタシロに姫様の髪をつけ、呪いの矛先を此方に向ける為の術。なので一応、姫様に声をかける。まあ、一度しか話した事ないけど。
「姫様、勇者咲希です、姫様を救うために髪を数本、あたしに下さいませ」
後ろで、神官様が怪訝そうに此方を見たけれど、説明している暇はないんだ。すまん、後できちんと説明するからさ!
「………かま…い……ま……ん」
守られていたとはいえ、体は随分苦しいはずだ。それでも、健気にうなずく姿にジーンときた。そして改めて思うんだ。この呪いをやった奴に。
絶対に倍返しにしてやるから、首あらって待ってやがれ!
気分は悪党を捕まえる正義のヒーロー! あ、ヒロインかしら?
なんて頭の中で馬鹿な事を考えつつ、姫様から数本の髪を抜く。
「オン!」
よし、これで第一段階は終了。
「神官樣、あたしが部屋を出たら、聖なる結界でこの部屋を隔離してくださいね」
「分かりました」
落ち着いたらしい優香ちゃんに、あたしは笑っていう。
「優香ちゃん、頑張ってくるね!」
「うん、咲希ちゃん、頑張って!」
かわえぇー!! やっぱり優香ちゃんはこうじゃなきゃね!
さて、次はパーティー会場に行きますか!
◇◇◇◇◇
案内されて到着したのは、あの日、あたし達が初めて紹介されたパーティー会場。勿論、今は装飾は全て外され、あたしが頼んだ物や道具が置かれてるから、異様な空気が流れてるけど。
「サキ様、準備は全て整っております」
「ありがとう、確かにこれなら問題ないわね」
きちんと確認して、あたしは全員の退場をお願いするはずだったんだけど…………。
「サキ様、大変恐れ入りますが、証人となる者を数名、置いては頂けませんか」
そういったのは、陛下の側近の方。あー、やっぱりキレ者は違いますな。見抜いてましたか、そのリスクを。
「因みに何方を置かれるつもりですか?」
自分の身を守れない奴など、いられても困るんですけど!?
「宮廷魔術師長と魔法騎士長、神官樣の三名を考えております、この方々でしたら、万が一の時もサキ様の善き味方となられますでしょう」
わお。その一言に尽きる発言きました。予想以上の顔触れですよ!? これはあたし、全力でかからなければいけませんね! 勿論、最初からヤル気は十分あったんだけど、意識が更に冴え渡るような感銘と胸の高鳴りが来ましたよ! 相手が悪かったな、敵よ!! 後さえ残らないくらいに徹底的にやるから、覚悟しときやがれ!!
「分かりました♪ ただし、その結界の外には、何があっても絶対に出ないで下さいね? これから行うのは、命懸けの儀式なんですから」
「分かりました」
さて思わぬ邪魔が入りましたが、早速準備に入りましょうか。
「まずは、」
頼んだ位置に色々と置かれいる。その中から、朝に汲んでもらった清らかな湧水を選び出す。次に、此方の世界で榊と同じ様な役割を持つ木を手に持った。まさか、こっちにもそういう木があるとは思わなかったけどね。あるって聞いた時は、ビックリしたわよ!
さて、用意された木を水に付け、それを頭へとむけて振るう。マジで冷たいけど我慢。口では祝詞を唱えていますよ。
因みに今、あたしが着ているのは巫女服。正式な奴のね? 流石に直衣は作り方が複雑なため、あたしも説明できなかったのよ。ならばと巫女服を説明したら、意外や意外。まさかのすんなりオッケーでました。出来た服は、まさに巫女服。こちらの職人さんには、頭が上がりませんよ…………。
さて、浄化も終わり、次はいよいよ呪いとの戦いです。
今のあたしは、清らかな存在。
「樹英、緋ノ斗、白、春、龍、召喚!」
彼らを星の書かれた魔方陣の、それぞれの頂点に召喚する。星の中央には、姫様の髪の付いたカタシロ。呪咀には見えていないだろう。神である式神様方は。
これで準備はオッケー。後は、呪咀の本体が、此方に来るのを待つだけ。
その間、あたしは呪文が途切れないように、唱え続けなければいけないけれど。
『………見つけ…た……!!』
あらあら、思ったより早く来たわね。呪咀の本体には、カタシロが姫様本人に見えているのだ。先程から、呪咀が段々と強くなっているのが分かる。離れた場所にいる三人の証人達も、目の前の光景に絶句している事だろう。
(思ったより強い………どれだけの憎悪を込めたのやら………)
呪文を唱えつつ、密かに翠嵐を召喚する。チャンスは一度きり。最初を失敗したら、大変な事になる。
『うら…めし…い……、恨めし…い……、本当…は……わたく…しこそ…が……巫女に…なる……はず…だっ…た……のに………!!』
(来た! 呪咀の本体!)
真っ黒い霧の塊が、どこからともなく現れ、カタシロに覆いかぶさっていく。
『死ね! そして………わたくしに…………わたくしに巫女の座を寄越せ!!』
(ヤバい!?)
予想以上に強い力に、思い切り引っ張られる。
(この程度で、嘗めるなぁぁぁぁぁ―――――――!!!)
あたしは絶対に負けないわよ!
読了、お疲れ様でした。
本日はいよいよ呪咀との戦いという所まで来ました。イヤー、青い炎編、中々に疲れますな………。早くあのシーンを入れたい!
次回はいよいよ呪咀との対決!! 請うご期待!!
さて、ミニ小説をば。
優香:こんにちは(・∀・)ノ
和磨:疲れた………。
優香:そうだね、私も疲れたよ。
和磨:僕、初めて3日も徹夜したよ。
優香:ちゃんと休もうよ、和磨くん。
和磨:今更だけど、咲希さん帰ってくるなら、僕は魔法図書館に入って調べる必要なかったよね?
優香:でも和磨くんが頑張ってくれたから、必要なものが分かったんでしょ? 凄いよ!
和磨:………そうだね?(言えない、言えないよ! 偶然見つけたなんてさ…………、それも、まさかアレを見たら見つかったなんて………)
優香:どうしたの?
和磨:な、なんでもないよ………。
なんとも微妙な気持ちになる和磨くんでした。
感想、ご意見、質問、誤字脱字、いつでもお待ちしております。なお、秋月は小心者ですので、優しい言葉で願います。