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閑話 お城に漂う闇(2)

次回の更新は2月25日です。

Side:和磨



咲希さん達が見つかった。その情報は瞬く間に城中に広がり、表向き病に倒れた事になっている、ローズマリー様の為にも、一日も早い帰国を皆が待ち望んでいた。


「咲希さんが戻って来るまでに、呪いの原因を突き止めないと………」


禁呪指定されている棚を許可を貰って、先程からずっと調べているんだけど、全く分かっていなかった。


「くそっ!」


苛々が募っていく。こんな時くらい、僕が力にならないといけないのに! 後衛としてのサポートも咲希さんより役に立たないし………。だから、だからこそ、僕が役に立たないといけないのに!! 優香さんは女性だけど、僕は男だ。意地でも何とかしたいじゃないか!

ふと、思い出す。

昔から僕は役立たずだったな………と。

僕は、病院を経営する一族の直系に産まれた。末っ子として。上には超が着く位に出来た兄が一人と姉が二人。歳が離れて産まれた僕は、兄や姉達のように完璧を求められたけど、同時に周囲が甘くもあった。可愛がってもらったし。まぁ、直接、何か言われた訳じゃないけれど、何となく空気でそうしなければいけないのだと、理解はしていたけど。だから、僕は遊ぶ事よりも、勉強を優先してきたし、兄や姉達と比べられてもいいように、自分を律して生きてきた。僕が高校に上がった時には、兄や姉達は既に若手の医者として活躍を初めていたし、僕も医者になるべく、必死に勉強してきた。それが上の兄には、面白く無かったみたいだけど…………。だって、僕は医者になる以外の道を知らなかったから。必死だった。家族に捨てられたくなかったから…………。

役に立たないといけなかったから。あの家では。


「こっちでは何一つ、役に立たないな…………」


役立たずは、嫌だ。なんとしても、皆の役に立ちたい。


「カズマ様、こちらにいらっしゃいましたか」


見ればいつの間にかブラオさんが、此方を見て苦笑していた。あれ? 僕は笑われるような事をしていたかな?


「カズマ殿、少し休まれては如何ですか?」


「いや、いいよ………」


「そのように思い詰めた顔は、初めて見ますな、カズマ殿」


「そうですか? 僕は、役に立てているのでしょうか………」


「貴方は、いえ、貴方勇者様は我々にとって希望なのですよ、カズマ殿が不安に思うのは、自信が無いからでしょうか」


「自信………ないですね、僕より出来る人が三人もいるんですよ? 精々出来る事は補助ぐらい………役立つ事が少なすぎますよ」


「しかし今は、カズマ様が頼りなのですよ、魔術に関しては確かにサキ様でしょうが、彼女は現在、城におりません、となればカズマ様に頑張って貰わないといけないのです、ほら、どこにもカズマ様が必要とされない理由などないのですよ?」


励ましてくれてるんだな、ブラオさん。窓の光を見れば、既に夜の帳が落ちていた。かなり集中してたみたいだ。どうせ今晩から泊まり込みで調べるつもりだったんだ。少しくらい休んでもいいよね?


「カズマ様、良ければ紅茶を入れましょう」


「ありがとうございます、ところで、この書庫………随分とジャンルがバラバラにされているのですが、何か理由でもあるんですか?」


先程からずっと疑問に思っていたんだ。部屋は一見、綺麗に見えるけれど、実際に手にとって見ると、ジャンルはバラバラ。触っただけで危険な本とかは更に奥の部屋に封じられているから、この部屋では大丈夫だった。けど、魔力を込めた声で詠唱できないように、部屋には魔術が厳重にかけられてたけど。まあ、当然だよね。この部屋にある本も禁呪指定された危険な本なんだから。


「ああ、それはですね………」


何やら視線を彷徨わせ、顔が引きつっているブラオさん。あれ? 何か意味があったのかな?


「…………一応、ここにも司書がいるのですが………その、片付けが下手な為か、ジャンルがバラバラになってしまいまして………」


「…………………は?」


つまり、司書さんの……所為? あれ、意味なかったんだ?


「ブラオさん、ややこしい事しないでくださいよ、僕、勘ぐっちゃったじゃないですか!」


「申し訳ありません、これは我々宮廷魔術師の言わば恥なものですから………あ、紅茶をどうぞ」


苦笑しつつ、丁寧な仕草で紅茶を出してくれたブラオさん。まあ、確かに恥だね。ジャンルで分けれないのは、司書として致命的すぎるよ…………。


「あ、美味しい………」


脱力感を漂わせつつ、飲んだ紅茶は程よい甘味があって、さっぱりしていて、今の状態の僕にはぴったりだった。ブラオさん、魔術の他に、こんな特技をもっていたんだ。


「さて、休憩が終わりましたら私も手伝いましょう、人出は多い方が宜しいでしょう」


「ありがとうございます!」


さっき僕は、過去を思い出して不安になったけど、ふと思考の隅で思ってしまったんだ。


咲希さんは、向こうの世界で僕にとっては非日常を生きてた。そんな彼女は、不安に思ったりしないのかな、と。



◇◇◇◇◇



Side:???



薄暗い部屋の中、気味の悪い笑い声が周囲に響く。


「もうすぐよ…………もうすぐ、わたくしこそが」


嬉しくて堪らないというように、うっとりと視線を宙に向けたまま、一人の少女が笑っていた。


「あれは間違い……………、わたくしこそが相応しいの」


うっとりと呟く少女の目には何も映っていない。ただ、同じ言葉を嬉しそうに呟くだけ。

元は美しかったであろう金の髪は、結われる事も無くボサボサのまま。着ている服こそ立派なものだが、寝る時に着るネグリジェ。もっとも顕著な部分は顔であろう。美しかったであろう面影は、もはやない。痩せ細り、骨と皮しかないような、そんなありさま。ただ不気味に宙に向けた目だけがギラギラと光っていた。


「もうすぐよ…………もうすぐ、願いが叶うの」


そう呟く寝たきりの少女は、だからこそ気付かない。彼女のベッド、そのすぐ下、そこに異形の物がいたことにも、気付かない。


『さてさて、時間稼ぎがいつまで出来ますかねぇ?』


そう、ひしゃげたような不気味な声すらも、ベッドの上に横たわる少女には、まったく届いていなかった……………。



◇◇◇◇◇



Side:優香



次の日、私がローズマリー様の部屋に向かうと、嬉しいニュースがありました。

何と、咲希ちゃんの居場所が分かって、今日、帰ってきてくれると!

これは急いでエリー様にも伝えないといけませんよね!? だってエリー様は、咲希ちゃんの事が大好きなのですから。

普段は注意されるので、廊下を走ったりしないのですが、今日は特別です!


「エリー様!」


扉を素早くノックして、入りました。


「まあ、ユーカ! ちょうど良かったですわ! わたくし、夢でサキに会ったのです!」


と、興奮状態で話されたのですが。え? 夢で咲希ちゃんにあったのですか?


「あの、実は先程、咲希ちゃんが見つかりまして、今日向こうを出発したという連絡があったみたいなんです」


「まあ! では、サキが帰ってくるのですね?」


「はい、国境を過ぎたら、通信道具で連絡をくれるそうです」


「国境? 何故、国境が出てくるのです?」


「その、確か、発見されたのが、エルナマス国だったとか」


「え………」


「エリー様?」


「サキが夢の中で言っていたのです、呪いは7日目に成就すると………」


「え…………?」


二人で茫然としていると、急にドアが開きました。ビックリして振り返ると、そこには慌てた様子の騎士様が。


「陛下より至急、エリエンヌ王女殿下と勇者ユーカ様に、会議室に来てほしいと」


私とエリー様は顔を見合せましたが、すぐに頷きました。


読了お疲れ様でした!

本日は和磨君が予想以上に鬱っぽい!

あれ? 別にシリアス回じゃないんですが(;^_^A


次回は、ようやく咲希ちゃんの回に戻ります!! やーっと戻ってきた、主人公の話。が、まだ城には帰れません。トホホ………予想以上に遠かった。


さて、申し訳ないのですが、本日はミニ小説はお休みです。

変わりといってはなんですが、短編を一本書きましたので、そちらをどうぞ。本日は精魂尽き果てました…………。

詳しくは活動報告でどうぞm(__)m


感想、ご意見、誤字脱字、質問、いつでもお待ちしております。

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