第49話 ダメージを受けましょうか
次回は1月28日です。
セルカさんに城の中を案内されつつ、先程の爆弾発言について考える。
「そのエミーリア様って、凄い美人な姫様なんでしょ? 普通、そういう姫様って戦いとかには関わらせないでしょ? もし関わらせるなら政治の方よね?」
やや前を歩くセルカさんは、ここからでも分かるくらい微妙な顔をしていました。あら?
「実はですね、エミーリア様には年の近い近衛の幼なじみの者がおりまして…………とても懐いていたのです、懐いていたといっても普段の素行は変わりませんでしたので安心していました………」
「それ、絶対に教育方針間違えたのね」
「はい……」
ガックリとうなだれるセルカさんには悪いけど、あたし達にはかかわり合いの無いこと。今はそちらはシャーロット様に任せ、あたし達は戦場に行く方がいいだろう。
「セルカ様ぁー!」
ん? 後ろから走ってくる人は制服からしてセルカさんの同僚の人っぽい。何故に必死の形相で此方に向かっているのでしょうか?
「シャーロット様からの命令書です! 大至急準備せよ、と」
それを聞いたとたん、セルカさんから更にどんよりした空気が漏れてくる。うわっ、キノコ生えそう………。
「やはり、シャーロット様でも止められませんでしたか…………」
「王宮からの勅命書がありまして…………」
「女王様っ! 命令書なんて、なんて危ない物を持たせるのですかっ!!」
………………。
え………、どう反応すればいいわけ!? なに? 姫様って危険物なわけ!? 扱い酷くない?
「セルカさん? あの、そこまで言わなくても………相手はお姫様なんでしょう?」
あたしだって伊達に勉強してないわよ? あたしが見た本物の姫様はエリエンヌ様とそのご姉妹の方だけ。それでも姫様方は皆様、お転婆な方もいたけど、それでもおしとやかな方ばかり。
「サキ殿、甘いです! わたしとて初めて見た時は気絶しましたのでっ!」
「「はっ?」」
未だ半信半疑のあたしと翔太、未だに想像できません。
「はぁ………、もういいです、あなたはすぐに各所に通達して下さい、サキ殿とショータ殿は戦闘場所へ参りましょう」
右手で頭を押さえながら、セルカさんは部下さんに指示を出し、後半はあたし達へ向けての言葉。
セルカさん? 失礼ですけど、姫様の事をスルーしましたね? 諦めましたか、そうですか。
◇◇◇◇◇
セルカさんの先導で向かった先には、何故か医務室。
「セルカさん? 何故に医務室ですか?」
言っとくけど、あたしは一切怪我はしてません。
「えっ? 怪我人がいるからに決まってますよ?」
逆に何言ってるのこの人? みたいな呆れた視線がこちらに。えっ? 本当に誰?
「ショータ殿、我慢するのは構いませんが、サキ殿は騙せても、私は気付きましたよ、さあ、足を見せて下さいませ」
「!? べ、別にだいじょ」
「つべこべ言わずに座らんかいっ!」
「っ!?」
「へっ? セルカさん?」
一様言っとくけど、この会話の順番は、翔太、セルカさん、翔太、あたしね?
つーか、こわっ!? 怯えた翔太は汗をダラダラ流しながら医務室に消えた………。セルカさんに、首根っこ捕まれて。さすが現役の副官さん。こんな事にはなれてましたか、そうですか。引きずられて行く翔太が、助けを求める視線を寄越したけど、あたしはサッと視線をそらした。翔太と同時に、セルカさんの目が笑ってない笑顔が怖すぎて…………。すまん翔太、骨は拾ってやるから成仏してくれ。
「物騒な事考えてないで助けろ!」
「無理!」
何て不毛な会話が医務室前にて起こるけど、まあ、うん。怪我は気を付けようね☆
しばらくして出て来た翔太は不機嫌丸出しだったけど、怪我は完治したもよう。良かった、良かった。
セルカさんはいい笑顔なんだけど、なんでかしら?
「セルカさん、よく気付きましたね? 翔太の怪我を」
廊下を歩きながら、一応、気になったので聞いときます。
「ん? あぁ、歩いていた時に、僅かに擦っている音がしましたので」
え? それだけですか!?
「マジかよ………ばれてないと思ったのに」
何やらげんなりしている翔太には悪いけど、戦いの最中に何を寝呆けてますかね? このお馬鹿は!
「あんた2回目勇者でしょっ!? 何で隠すのよ!」
小さな怪我ゆえに命を落とす事もあるのだ。バカには出来ない事である。
「すまん、その………タイミング的に言いそびれてだな?」
はあ〜!? 馬鹿か、マジで馬鹿なのか!
しばらくお互いにぎゃあぎゃあ騒ぎ捲っていると。
「そろそろ戦場に着きます、ご準備を」
凄い冷静なセルカさんの声に、どうやら着いた事を確認する。まあ、後は大丈夫だろうから、実はあまり心配してないんだけど。
「白、龍と樹英様につなぎを」
そっと影にいる白に指示を出す。
さーてーと、戦場はどうなってますかな?
お、やってるやってる。小高いとこだから良く見えるわ。あら? 今チビって聞こえた気がしたけど、気のせいよね? ウフフ♪
ここから一番遠くの場所、つまり森の手前にいるのは、兵隊さん達だね。それぞれ森から出て来た魔物達を楽々と狩っている。あ、凄い勢いで戦ってのは、もしかしたらジョージさんとライラさんかしら? 何だかそこだけポッカリと穴が空いてる様に見えるんだけど…………。まあ、いいわ。次いきましょ、次。
メインで戦っている人達の後ろにも人がいるから、多分、交代要員かな? で、更に後ろ、つまりあたしの真ん前にいるのが医療部隊って事か。
「あら、これくらいなら、いい訓練になりますわね?」
……………セルカさん。今、マジの戦闘中です。決して訓練ではありませんよ?
どうやらジトーッとした、あたしの視線に気付いたのか、セルカさんは何故か首をかしげている。
あれ? あたし何か変な事した?
「あの、サキ殿? このゆるゆるの戦いで負けるなんて、屈辱以外のなにものでもありませんが? 訓練とした方が、まだ、精神的にマシです」
キッパリと言い切られた。た、確かにゆるゆるの戦いだけど、そんな〜。
「確かにゆるゆるだな、戦いの最中に笑ってる奴とかいるし………」
翔太は苦笑して前を見てる。でも警戒はしてるから、問題ないか。
「ん?」
影から白の気配がする。翔太達に分からないようにしながら、白の言葉を聴くけれど。
あー、龍は動けないと。樹英様ははしゃぎすぎてヤバイから早く回収しないといけないか…………。
「翔太、樹英様を召喚するから、ちょーっと抜けるね〜」
「どうしたんだ? 急に………確か森で仕事してんだろ?」
勿論、怪訝そうな顔をされましたとも。しかし、しかしだっ!
「ちょーっとテンション上げ過ぎでヤバイみたい、だから今から強制的に召喚して暴走を止めようかと」
「あー………」
何やら翔太には心当たりがあるもよう。どうやら巻き込まれたな、罠に。
「んじゃ、召喚するから邪魔しないでね☆」
若干威圧しながら言うと、何故か汗をダラダラ流しながら、凄い食い付かれた。
「分かった、早くやれっ! 被害を最小限に止めるんだ!」
……………理解してくれたんだよね? 後半が本心に聞こえるんだけど。まあ、いっか(笑)
「んじゃ、我が式神、樹英様、強制召喚!」
あたしの足元に召喚陣が広がり、目の前にも同じ召喚陣が広がっていく。そこからは、髭の長い中国の仙人みたいな好々爺が現れる。ただしかなりテンションの高い状態で。はあ………、やっぱりこうなったか。普段は平気なんだけどねぇ。こうなっちゃうのがたまに傷。
『おや、なんじゃ? 主人殿、これからもう少々趣向を凝らそうと思ったのじゃが』
「お爺ちゃん、やりすぎだよ」
『むっ………終わりという事かのぅ?』
「うん、今日はこれで終わりだね、しばらく休んでて」
『むう………、これからやりたい事もあったのじゃがな、仕方ない』
そういうと自分から御札に入ってくれました。良かった、良かった。これが緋ノ斗だと、駄々を捏ねられて札に戻すのが大変なのよ。
「ふぅ〜…………ん?」
あたしの視線の先から、何やら悲鳴?らしき声が聞こえてくる。
「始まりましたか………」
ため息混じりのセルカさんの声を傍らに、悲鳴らしき声がした方に視線を戻す。ん? 悲鳴じゃなくて歓声みたいね、これ。
「サキ殿、覚悟を持ってからご覧下さい」
「はい?」
疑問を持ちつつも、偶然見えた姿にその疑問が一気に氷解。あー、そういう事ね。
「咲希? 何で半眼になってるんだ?」
どうやら翔太には見えなかったみたいだ。良かったな、翔太。見えなくて。あたしは見たぞ。あれは確かに気絶するわ…………。
「セルカさん…………あれが姫様なんだね」
「はい、姫様です、サキ殿も見ましたか」
「うん、あれはヤバイよ………」
優雅な姿で歩く姫君。儚げな姿でドレスを優雅に着こなす姿は深窓の姫君そのもの……………………なんだけど、右手に持ったいかにも使い込まれた、ドレスに似合わない槍とか。ないわー、絶対にないわー。
「うん、気絶が良く分かるわ………覚悟してたけど、頭が拒絶したもの」
「やはりですか、私もそれで気絶するはめになりました」
「だから命令書が出たのね」
「はい」
シャーロット様、お見事です!
恐らく被害者はか〜な〜り〜減ったはずですよ!!
しかし、このまま何もしないのはヤバイよねぇ。あたしはサポートくらいはしますかねぇ?
間に合いました(;^_^A
ちょっと最近、ゲームにはまってまして………はい、執筆時間が削られております(/_\;)
一様、作ってから遊ぶのですが………ダメですね。集中できませんでした。
本日は、何やら姫様のお陰で波乱が起きそう………。
すいませんが、本日はミニ小説はお休みです。
感想、誤字脱字、ご意見、ご指摘、リクエスト、いつでもお待ちしております。なお、ポイント下さると嬉しいです!