第48話 暴露しましょ( 笑)
次回は1月21日更新です。
本日は、前半部分が咲希ちゃん視点、後半部分がシャーロット様視点です。
『逃げやがったなぁぁぁ!? あぁぁぁんのぉぉぉ変態魔族ゥゥゥ!!!』
はい、只今の心境でございます。
こんにちは。異世界に召喚され、勇者となりました、天城咲希です。
冒頭から汚い、もとい少々ガラの悪いお言葉で驚かれましたよね? 申し訳ありません。 何やらこちらも立て込んで参りました。
まあ、隣の翔太から、そろそろヤバイ空気が漏れだしてきたので、いい加減に現実逃避は辞め、説明もとい暴露と参りましょう。
「なあ、一体どんなイタズラをしたんだよ!?」
何やら必至なので、説明しますか。
「だからイタズラ! ウフフ、今頃は後悔してるわよ、あの変態魔族!!(笑)」
何やったんだよー! てな感じで、翔太が疑いの視線を向けてくるけど、まあ、教えてもいっか(笑) 楽しい事は皆で楽しまないと♪
「あの術を解けないようにしたのよ、まあ、所謂、呪いをね?」
「はあ!? 呪いって………」
絶句の翔太には悪いが、別に命には何の影響もない。ただたんに恥ずかしい思いをしばらくするだけである。まあ、呪いと聞いたら、誰だって死ぬと思うだろうけど、呪いだって色々と種類があるのだ。つーか今回のは呪いとも呼べないレベル。つまり、イタズラなのだ。
「あの鎖を魔族さんから外れないようにしたのと、オプションで自分の体から生えるようにした」
「はっ…………?」
「だーかーらー、鎖の力が弱まったら困るから、魔族さんから体力を奪って…」
「ちょーっと待てっ!? 何でそんなとんでも発想になるんだよ!?」
唖然とした翔太、最近、妙に突っ込みが鋭いんだが?
「だって変態だもん! 命取れない以上は、呪いでもと」
ばか正直に言ったら、何故か翔太が撃沈した。あれ? 変な事言ったかな?
「あぁ、うん、シャーロットさんとセルカさんとこに戻ろ……」
翔太、何故に君は目が虚ろなんだい? 別にあたしは君には何もしてないぞ??
だから、そんな目で見ながら、腕を引っ張るな!! 怖いから!
◇◇◇◇◇
はい、微妙に怖い翔太に連れられ、戻って参りました! あたし達が連行された国境付近のオシャレな砦に。
「お帰りなさいませ、サキ殿、ショータ殿」
出迎えてくれたのは、意外な事にセルカさん。あれ? 何で副官自らのお出迎え?
「実は少々、問題が発生してまして……………の前に、何故にショータ殿の機嫌がお悪いのでしょうか?」
……………ばか正直には言えんわな。あたしが変態魔族に呪いをかけて恥ずかしい格好にしてたら逃がしましたなんて……………。うん、誤魔化そう!
「魔族と戦闘したんだけど、逃げられちゃって………」
魔族と聞いて、ぎょっとしたセルカさんだけど、理由には納得してくれました。良かったよ、嘘はついてないし(笑)
「魔族とは…………ご無事で何よりでした」
どこかホッとしたようなセルカさん。どうやらかなり心配してくれていたみたい。
…………すまん、心配の欠片もいらなかったかもしれない。かなりはしゃいでいたもの、あたし。何やら心にグサグサとささる。うん、純粋って痛い。
「心配ありがとう、セルカさん、で、問題って何があったの?」
正直に言って、砦は暇なはずなのだ。森の中には、罠をしかけてるし、龍と樹英がそれぞれ幻覚やら罠やらしかけまくっている所為で、砦に出てくるのは、ボロボロな魔物か、幻覚の耐性がある魔物(それでも傷あり)か、かなりの強さを持っている上位種くらい。
全部を相手にするより、ずっと楽。さらにファイさんとジュビアン神官も勿論それぞれの持ち場で参戦。冒険者のジョージさんとライラさんは、自分が倒した奴の素材を報酬として貰うという契約の元、何故か参戦。
いやぁ、一応止めたんだけど、ね? 稼ぐためなんだから、と逆に諫められ、結局許可が下りた。うん、流石冒険者の方、儲け時は逃しません!
今もヤバイテンションで嬉々として魔物を狩ってるとのこと…………。うん、スルーしよう。きっとこんなもんなんだ。
「それが………、戦いに関しては問題は無かったのですが………ちょっと困った方々がいらっしゃいまして」
おや、セルカさん、随分と困ってるわね?
これはもしや厄介な方でも来たかしらね?
「今はシャーロット様が押さえておりますが、それもいつまで保つか…………」
「俺達が出るのは不味いのか?」
言葉を濁すという事は、あたし達に助けてほしいけど、厄介な何かがあるのね? だから、翔太も直球で聞いたんだ。
「実はいらっしゃったのが…………」
その言葉に、思わず翔太共々、フリーズした。
◇◇◇◇◇
Side:シャーロット
わたくし、このエルナマス国の伯爵家、ブランシャール家に三女として産まれました。我がブランシャール家は代々騎士の家系です。ここエルナマスは女性優遇の国。騎士とて勿論、女性がおります。男性は全員、婿入りですので、見事に権力は女性が握っています。まあ、産まれるのが全員、女の子と決まっているとすれば、お分かり頂けますでしょうか。なので生まれた子は、国に残るか、国を出るかを決めなければいけないのです。成人して家を継ぐのは、体の強い長子と決まっているのですから。勿論、頭も出来が良い事が条件ですわ。
ちなみに、手柄を立てれば新たに家を作る事も出来ますので、断然、国に残る方が多いのです。王族の方にも、勿論これは適用されます。
「ですから、私も是非とも参戦をね?」
そして、わたくしの目の前でふざけた事を抜かしているのが、この国の王族、エミーリア・ノア・エルナマス様。ふわふわの銀の髪をポニーテールにし、前髪が綺麗に切り揃えられていて。肌は白く、紫色の瞳は優しげに細められ。その顔立ちはふんわりした優しいもの。着ているものは動きやすいものであるが洗練されたドレス。そして何より、この国の第三王女。
しかし、このエミーリア様。ちょっと問題がある。後ろにいる侍女がうなだれた様子であるからに、既に止めた後なんだろうけれど。
それでも、それでも!! 止めなさいよ!? あなた方は何をしてましたの!? こちらに面倒をかけないで下さいまし!!
「宜しいですか? エミーリア様、普段の様な猟ではありませんのよ? これは戦いなのですっ! 王女であるエミーリア様を戦場に出せる訳がありません!!」
わたくしの精一杯の抗議ですが、何故かエミーリア様は優雅に微笑んだ。あら…………こんな時、姫さまが微笑むのは、わたくしにとってはいい展開には成らない時。後ろの侍女がサッと視線を反らした事も、それをわかっての事でしょう。
「シャーロット? 貴方の言い分は分かっておりますよ、でもね? わたくし、こういう物を持ってまいりましたのよ?」
あぁ、わたくしの嫌な予感がビシバシと感じられますわ! その紙から!
「そ、それはっ………!?」
伝家の宝刀、別名、勅命書と呼ばれるもの。
要約すると。
『エミーリアの今回の戦いの参戦を許可します、シャーロットには一切この責任は行きません、では問題児を宜しくね☆』一部意訳
………………。
なんでしょう。わたくし、女王様の考えが分かりませんわ。何で、よりにもよって問題…ゴッホンゴッホン、姫様に許可をなさるんですの!? 姫様の被害(主に精神的な意味のですが)、をしっていて何故に治そうとなさないのですっ!!
「分かりましたわ………」
口ではこう申すしかありません。しかし、し・か・しです! 姫様の辺りに及ぼす被害を最小限にすべく、わたくしはこの砦を預かる者として、なんとしてでも部下達を守らなければなりません!!
こうはしていられません。すぐにでも準備しなくては!!
姫様の前の椅子から立ち上がり、すぐに紙に必要事項を書き込みます。勿論、わたくしの判子も押して。
「これを至急、兵達に伝えなさい、これは厳命です!」
セルカは今、あちらに事情説明の為に行かせてますので、違う者に命令書を渡します。
慌てたように走っていく部下から視線を戻し、優雅に微笑んだ姫様と視線があいます。
「今、部下に準備をさせておりますので、少々お待ち下さいませ、エミーリア様」
「まあ! その為の命令書でしたのね? 急に動くから心配しましたわ」
多分、姫さまは本当に気付いていないのでしょう…………。ええ、純粋培養のお姫様ですから。深く突っ込んだら終わりですわ。
「ふふふ、姫様、上が動かなければ下は大変なのですわ」
さあ、部活達よ、早く早く準備してくださいませ。本当に被害だけは出したくないのですわ!
いつもお読み頂きまして、ありがとうございますm(__)m
本日は暴露回………になってますかね?
セルカさんは恐らく逃げました。姫様の被害を知っていたからです。
代わりにシャーロット様が、姫様のお相手中。
いやー、何だか次回が大変ですわ。←他人事
さて、本日は申し訳ありませんがミニ小説はお休みです。
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