第43話 いざ、決戦です!
次回は12月10日更新です。
罠を仕掛けてから3日後。
とうとう恐れていた、魔物の姿が遠目にも確認された、その日。
あたし、翔太、ファイさん、ジュビアン神官は最初の予定の通り、各々の実力が一番出せる場所に陣取っていたりします。
勿論、翔太は最前線。
二回目勇者は、さすがというべきか。秘策があるようで、なにやらここ3日程、忙しく動いていたもよう。何故かファイさんが巻き込まれていたようだけど、楽しそうだったし、いっか。ほっとこう。
次にファイさん。
彼はセルカさん達と一緒に砦にいます。途中までは翔太と一緒にいたけど、本人はあたしと一緒に行く気だったみたい。だけど今回はあたしも本気でやるので、ファイさんにはご遠慮願いました。それをいったら、説教されたけど。
何故だ、解せぬ!
そしてジュビアン神官は。
ファイさんと同じく、砦になりました。後方支援担当です。まあ、最前線には出せんわな。
さて、解説してるあたしはと言えば。勿論、森の近くに陣取ってますよ♪
先程から、式神様方がマジで本気で頑張っております。今現在、あたしの元にいる式神様は、春と火ノ斗、翠嵐だけ。
樹英様は森の統括。龍は幻影の為に森へ。白は草原へ向かってます。
それぞれに役目があるので、今回は別行動。
「さて、草原に向かってるんだよね? 翠嵐、先頭はどこら辺かな?」
フワリと風を伴って顕現したのは、綺麗な緑色の髪を流した大和撫子の様な雰囲気の女性。髪には透明度の高い緑色の宝石の髪飾りをつけている。身体にそうようなロングワンピースを着ており、胸元に着いた花飾りが清楚さを表している。先日、あたしと式神契約をした新しい式神様。種族は何と神鳥。神様が御使いとして使う神獣でした。まあ、風の属性は欲しかったので、マジで神様に感謝です!
『そうやなぁ………あら、ちょうど先頭がお札のある辺りに来たようどすなぁ』
コロコロ笑う彼女は絵に成る程、とても綺麗なんですが………。何でか分からないんだけど、背中に黒い物が見えるのは気のせいかしら??
『ほぉ………随分、舐めた真似してくれとるようやなぁ』
美人顔、怒りになると、鬼になる
咲希、心の一句。
思わず現実逃避したくなるくらい、マジで怖い。怖すぎる!!
あれ?? 翠嵐て、貴婦人のイメージだったんだけど、こちらが素なのかしらぁぁぁ!!??
内心、半狂乱ですよ!?
「えーっと? どうしたの??」
恐る恐る聞いたあたしは、後悔した。マジで何でこんな事きいたんだろってくらい…………。
『主人はん、遠慮はいらん! 本気で壊滅させたり!! ……………あいつら、たった今、精霊を消し去ったわ!!』
「っ!? それ、どういう事!?」
精霊は万物に宿る物が力をもって顕現した姿だ。聖霊との違いは、武器かいなかのそれだけ。そんな格上の存在を消し去る? 出来る訳がないのに!!??
『どうやら、精霊殺しの呪いの付いた武器があったみたいやなぁ』
流石、異世界。そんな物まであったとは…………。
「もしかして、こっちの情報が漏れた?」
思わず危惧した事を言うけれど、あり得ないとすぐに打ち消した。何せ、情報がばれれば、こちらも気付くはずだ。草原に来た時点でそれはあり得ない。草原にはあたしが張った罠地獄があるんだから。知ってたら迂回するしね?
まあ、バカなら別だけど。流石にそれは無いはずで。
『恐らく、森に警戒したんやろ、あそこは精霊が住む聖域やからな』
確かにそれなら納得かな?
『今、消されたんは、下級の精霊やなぁ、自縛されとる子は逃げれへんからなぁ』
物に宿るタイプはそれが動かないと動けない事がある。どうやら、消された精霊はそのタイプの子だったみたいね。
「なら、そろそろやろうかしら? 準備はいい?」
『大丈夫や、あの辺りの精霊はもうおらんみたいやし』
逃げ遅れた子は、消されてしまった子だけみたい。複雑だわ。
でも今はやらないとね。意識を無理矢理集中させる。
大丈夫、昔も同じ事をやっていたんだから…………。
「カイ……」
印を組んで呪文を唱える。
遠くから、何やら爆音やら、悲鳴?らしき物が聞こえた気がしたけど、まさかね。相手は魔物だし。容赦しなくていいよね??
「白、そっちはどうなってる?」
白は、地を司っている。大地を自在に操り、自分を同化させ密偵のような事も出来るのだ。
が、返事が微妙だ。何やら、呆れてるような??
『主人はん? 言った手前、とっても言いにくいんやけど……………何をしかけたん? もう半分くらい消えとるで?』
…………………はあ!?
理解するのに、ちょっと時間がかかった。
半分消えただって!?
「え!? ちょっと待って!! 罠らしく、上級呪文を仕掛けただけだよ??!」
だって上級個体がいるって報告だったし。あり得ないでしょーが!!
『あのなぁ、主人はん? あんさん勘違いしてはるやろ? 魔物とて下級が多いに決まっとるやろ?』
つまり、だ。
「もしかして、楽勝……か…な??」
『せやな』
………………。
どうやらあたし、無意識と勘違いにより、とんでもない事態を引き起こしちゃったみたいです。
「まあ、結果オーライ?」
冷や汗かきまくりで言ったけど、辺りに虚しく響くばかり。
「えーっと、罠を越えた個体はどれくらいいるの?」
『せやなぁ? 半分くらいやろか?……………そろそろ予定の場所に着くようやなぁ……』
ほう、やっぱり数が多いから、あれくらいの罠では簡単に抜けられてしまうみたい。
「んじゃ、樹英様と龍に連絡お願いね」
『お任せあれ』
そんな会話をした瞬間、ある方向からとんでもない大きさの力を感じ、反射的にそちらを見る。あっちて確か……うん、あの翔太よね。これ。
威力とかシャレにならないんだけど!!?? えっ!? この国を滅ぼす気ですか!?
ホント、つくづく味方で良かったわ。
さあて、魔物の皆様? 第二ラウンドの始まりだよ!
◇◇◇◇◇
Side:翔太
俺は今、敵の進行方向の真正面の位置にいる。敵は後30分くらいで森に到達するだろう。
「来い、フリーレン!」
最近、ようやく手に馴染んだ愛剣を構える。咲希によれば、森から半径1キロ程は罠を何も張らなかったそうで、もし何かするならここに居ろと言われた場所である。
「つーか、やりすぎだろう…………」
思わず半眼になったのは、絶対に仕方ないと思う。もう一度言う。絶対に絶対に仕方ないんだ! ここは大事だから二回いったぞ!!
『………凄いわね』
隣に顕現したフリーレンでさえ、これ以外の言葉が出ないらしい。
「だよなぁ」
咲希が張った罠は、ランダムに広がっており、現代で言う所の地雷である。踏んだら最後。上級呪文が凄い威力で襲ってくる恐怖の代物。さらに質の悪い事に、威力もさる事ながら、範囲が広い。一枚のお札で直径50メートル程が魔法と言う名の餌食に変わる。
……………見慣れた俺でさえ、えぐい。
(おいおい………シャレになってないぞ!?)
一枚一枚が隣の範囲に入るか入らないかの範囲で置かれているためか、無事な集団もいるのだが、誰かが踏んで巻き添えを食らっているパターンが多すぎる。
…………咲希、お前、前の世界で何やってたんだ??
本気で聞き出したい気持ちにかられる。
全力を出していたら…………、これ一国が消えるんじゃないだろうか?
よし、帰ったら、ある程度ちからをセーブさせよう!
「さーて、どうやら先頭は射程距離に入ったみたいだし、やるか!」
頭を切り替える。咲希の説教から、目の前の魔物を消し去る事に。気を静め、迫ってくる魔物に向けて淡々と詠唱していく。
「我は乞う
長い刻の中で忘れさられた神の元に
悠久の刻を越えて
我は新たな契約を乞う
大地に抱かれ眠る刻を
大空に抱かれ飛ぶ刻を
さあ、地と天の力を持って
わが前に現れし敵を倒さん
ゆめゆめ忘れる事なかれ
全ての神を
ゆめゆめ忘れる事なかれ
この契約を」
さあ、俺の取って置き!
『天地の裁き(ジャッチメント)!!!』
俺の前方にとんでもない大きさの光の柱が立ち上る。
これは俺でさえ、前の世界で滅多に使わなかった光属性最強呪文。まあ、威力が馬鹿に出来ない程であり、広範囲にしか使えないため、条件が絞られる事による。町の等の人の多い所では使えないしな、流石に。
「お〜!!」
咲希の攻撃で半分くらいに減っていた魔物達だが、俺の技まで食らって更に数を減らしたようだぜ☆
散り散りになった魔物達は、これ幸いとばかりに森へ入っていく。俺に向かってきた奴は、勿論一刀両断だがな♪♪
それに恐れをなした奴らは、半分パニックになりながら森へ消えていく。
……………今頃、森の中が咲希のイタズラによってホラーゲームさながらに改造されたと認識したんではないだろうか。
「本当に、罠で死んだ方がマシとか、意味わからん」
『そうね、虹の方が選んだ主人は奇想天外ね』
笑いすら含ませた彼女には悪いが、これから俺もこの中に入っていくのだ、一応、咲希から御守りを渡されたので、大丈夫なはずだ。
『それにしても、その御守りは凄いわねぇ〜、幻術無効と攻撃回避、更に精霊の攻撃無効とか………』
後半、自分で言って呆れてしまったようだ。
「行くぞ、フリーレン、最後の奴が森に入ったらしい」
たった今、咲希の式神様から連絡が来た。
魔物プラス魔族さんよ?
勇者を怒らせた事、後悔しやがれっっっ!!!
本日はいかがでしたか?
いつもお読み下さり、誠にありがとうございます!
秋月煉です。
本日は決戦という事で、こんな感じに。最近は中々時間が取れませんで、スランプ気味です。現実世界で忙しくなってまいりました…………。でも更新は予定通り週一を目指しますので、ご安心下さい。
今後の予定としましては、この戦いが終わりしだい、閑話として城にいる和磨君と優香ちゃん視点の参ります。
……………一体、何が起きているのやら。
さて、本日も申し訳ありませんがミニ小説はお休みです。
感想、ご意見、ご質問、誤字脱字、リクエスト、いつでもお待ちしております! なお、小心者ですので、お手柔らかに願います。