第40話 魔族はストーカーですか?
ふと思いついた題名です。
皆さんはどう思いますか………?
「おいっ! いつまで頭を抱えてるんだ! 早く準備しねーとヤバいぞ!」
翔太に言われ、何とか現実逃避から帰還したあたし。
えー、只今、魔族からの敵襲により国境の砦はてんてこ舞いです。
「数はどれくらいです?」
駆け込んで来た女性に聞くと、さっと視線をそらされた。あたしからって言うより、現実からって感じのそらし方。
「恐らく、1000を行くかと…………中には上位種族に当たる物達もおりました」
その報告に、シャーロット様とセルカさんの二人も顔が強ばっている。国境の砦には恐らく、そこまでそこまでの戦力が、ない。
「翔太、あたしらも出るよ」
「おう! 暴れてやるぜ!」
「ちょ、ちょっとお待ちなさい!」
我に返ったらしいシャーロット様が、慌てた様子で待ったをかける。
「あなた方は、たまたまいらしたお客人ですわっ! 戦いに参加させるわけには!?」
確かに普通のお客様なら、さっさと逃がすだろうけど、残念ながらあたしらは普段のお客様ではないのよ。
「だって、あたしら勇者だもん」
目の前に困ってる人がいたら、助けるのが当たり前。勇者とは、不可能を可能にする奇跡の者。このくらいで根をあげる程、あたし達は落ちぶれてはいない。
「それに、あたし達は秘策があるしね♪」
楽しそうに笑うあたしに、何かを感じ取ったのか、シャーロット様とセルカさんは顔を盛大に引きつらせていました(笑)
「サキ様、被害が出ない為にも、絶対に何をやらかすつもりなのか、今ここで白状して下さい!!」
うわっ!? ファイさん、ガシッとあたしの肩を掴まないでよ! ヤバイ、逃げられない!?
「サキ様、諦めて白状して下さいませ」
ジュビアン神官っ! しれっと見てないで助けろー!!
「咲希、俺も聞きたい」
うっ、翔太まで…………。
「秘密にしてた方が楽しいと思うんだけど?」
一応、抵抗はしますよ? しかし、既になれている我がメンバーには、どうやら無意味だったようで、結局はかされましたよ。
「「「「「はあ〜〜〜〜〜!!??」」」」」
説明した後の反応は、これ。失礼な! きっちり考えた作戦なのよ!?
「サキ様…………、あのですね、それは本気でおっしゃっていますか??」
「勿論!」
ファイさんの質問に速答で答えたら、何故か沈黙されました。何故っ!?
「なあ、咲希? 確かにその作戦は上手く行くと思うけどな? 何でよりにもよってそんな考えを思いつくんだよ!?」
翔太に説教なんて、何て貴重な経験してるのかしら(笑)
まあ、確かに必要よね。答えの。
「まあ、確かに魔物相手に正面からは無理があるわよ、それは本当だから」
1000を越える魔物に対し、被害をゼロには出来ない。普通なら。
「でもここには非常識を体現した存在がいる、二人もね」
勇者とは奇跡を起こす者達であり、非常識な存在。なら、出来てしまうのだ。これくらいは。
「しかし、魔物同士で戦わせる等、本当に出来るのですか?」
セルカさんの質問も、もっともである。
そう、今回の作戦は魔物同士で戦わせる事。恐らく、下位の種族は魔法抵抗が低い者が多いはず。魔法は何も攻撃だけに使うものではないのだ。
「イリュージョン、つまり幻を見て貰うのよ、お仲間が多種多様なら、種族が違うのも来ているのよね? 幻覚にかかった魔物は、仲間だとは思わずに戦うでしょう、人を殺す為に来てるんだから」
何も全てがかかる必要はない。何故なら数が減ればいいのだから。これは布石にしか過ぎない。
「多分、これでも半数以上は残るでしょうけど」
勿論、作戦はこれだけではない。奴らは森を越えてくる…………ならば。
「樹英様に、スタンバイしてもらって、森を幻覚と霧、更に魔物を食べる食虫植物もどきを配置して………」
「ちょ、ちょいまて!? そんな植物、聞いた事ないぞ!?」
あれ、言ってなかったっけ?
「「「「言ってない(ません)!!!」」」」
あはは、すっかり忘れてた。
「偶然読んだ本に載ってたんだよ、魔物を食べる食虫植物がいるってね」
「あら、それでしたら森の中に沢山はえてますわ」
シャーロット様から有力情報ゲットです♪♪
「んじゃ、準備しましょうか、翔太は森の正面に宜しくね? 裏方は私が喜んでさせていただきましょう!」
時間がないので、ぱっぱとやっていきますよー!
魔物さん達? カクゴは宜しいデスカ??
◇◇◇◇◇
はい、こちら森の中で待機中のサキちゃんです♪
……………うん、可愛く言ってみましたが、自爆感が半端無いです(汗
さて、あたしのやる事は。
「おいでませ、樹英様」
お札から出てきたのは、昔の仙人を思わせるお髭の長いご老人。杖を手に、表情はイキイキしてます。だよね、久しぶりの能力解放だもん。やりすぎないように、気を付けておかないと…………。
ちなみに樹英様、火ノ斗の様な戦乱狂ではない。きちんと自制の出来る方なんですが、ね。たまに、たまーに、やりすぎな様な気もする時があり、中々に心配な御人だったりします。
「聞いてたと思うんだけど、魔物達の足止めお願い出来ますか?」
「ふむ、可能じゃが…………主よ、ここらには精霊や妖精がおるようじゃ、彼らに断りを入れるのが、筋だと思うぞ」
一目見てそこまで分かりますか。流石、木を司る樹英様。
そうか、ならきちんとしないとね。じゃないとお互いにまずい事になるし。
「確か………ここいらを治める精霊は………」
ここが森になってるのは、精霊の力が濃いから。だった気がする。つまり、だ。
「樹英様、力が一番強いのはどこ?」
そこに主となる精霊がいるはず。
「ふむ、こちらじゃのぅ」
樹英様に案内され、森の中をしばらく探索していくと、しばらくして辺りが開けて、そこには何とも言えないほどに美しい湖が。
「うわー!! 凄い綺麗〜! これは主がいるって言われても、納得出来るわ〜」
本当に綺麗なのだ。風景が綺麗なのは勿論だけど、何より空気が違う。清廉でどこまでも澄み渡るような、そんな水面。先程から光る小さな淡い光は多分、この場が光を宿しているから。
「見られてるね」
『当然だわ、人間!』
いきなり近くで怒鳴られて、耳がキーンとなる。何なんだ、いきなり!!
「うー…………耳がキーンとする………」
あたしが唸っていると、流石に不味いとは思ったらしいお相手は。うん、素直過ぎるね。
「で、どちらさまでしょう?」
何とか立ち直った頃には、相手が誰かは何となく分かったけど、何も言わないでおく。何か面白そうだし♪
『さっきは悪かったわね、人間…………で、どうやってここまで来たわけ? ここは精霊の聖域、人間が来ていい場所じゃないわよ!!』
強気で言う辺り、反省はしてても性格的に後半が地だわね。まあ、別にいいけど。
改めて目の前の精霊さんをしげしげと観察してみる。
精霊とはその場によって姿は変わるそうで、目の前の精霊は水なんだろう。青い可愛らしい感じの服や、同じ青い髪に青い瞳。愛らしい姿は強気な為か、やや生意気に見える。でも背中の二枚羽根はとても大きく、透明。身長はあたしぐらいかな?
「あたしは咲希、勇者をしているの、今回ここに来たのは、この森に1000を越える魔物が来るからよ、正確にはこの森の先にあるエルナマスに来るんだけど、恐らく、森は壊滅するわよ? それを教えに来たの」
うろんげに聞いていた精霊だが、魔物と聞いた辺りから、顔を強ばらせ始める。
…………随分、表情が読みやすいじゃない。まるで人間みたい。
『ま、魔物が!?』
急にわたわたしはじめた。
ん?
『どうしよー!? どうしよー!?』
え?
『そうよ、植物に足止めしてもらって……』
あら? 勝手に進んでいく独り言。どうしよう。こっちをがん無視して暴走する精霊さん…………。
『あー! でもでも、皆森の精霊だから、火に弱いし………』
あ、何だか可哀想なくらい落ち込んじゃったんだけど…………。
「えーっと、精霊さーん、おーい」
あらら、自分の世界に入っちゃったよ。
うん、プチッといっていいかな?
「ごらぁ、人の話きかんかいっ!!」
『ひゃっ!』
可愛らしい悲鳴に、プルプル震える姿…………。こ、これは、ある意味ご褒美な気が…………。
「わっ〜!? 危ない、危ない、あたしにそんな趣味はなぁぁぁ――――いっ!!!」
消えろ、あたしの煩悩。マジでダメ、本当にダメ。
『主人よ………、そろそろ現実逃避は終わったかのぅ』
苦笑気味の樹英様に、はっと現実に戻る。何やってんだ、あたし! 時間がないのに、バカだろ!?
「ありがとう、樹英様………………さて、精霊さん、貴方に協力して欲しいのよ、あたしは勇者をしているの、私はこの森を守りたいから」
精霊が宿る程の清らかな森なのだ。こんなストーカー野郎に壊されてなるものか。
『え? 助けてくれるの?』
「勿論! 色々と準備してもらうけど、絶対に勝利をもぎ取ってやるわ!」
『わーい! なら、お願い!』
こうしてあたしは、精霊さんと協力する事になりました♪
ふふふ、ストーカー野郎ども、カクゴはいいか? ないと言われても、あたしは突き進む。
絶対に勝利してやるわ!!
ここまでお読み頂き、ありがとうございますm(__)m
秋月煉です。
今回は後編で煮詰まってしまい、書き直すはめに…………。お陰で時間が取れなくて、新作の方が進まない。
頑張って、来年辺りからスタートさせたいと思ってるんですが、はたして出来るのでしょうか??
さて、本日は時間がないため、ミニ小説はお休みです。最近、ネタギレです。時間のある時に書かせて頂きます。
変わりに、今日中に小話を書きたいと思っているので、宜しければ活動報告をご覧くださいね!!
感想、ご意見、誤字脱字、リクエスト等、いつでもお待ちしております。なお、甘口でお願いしますね!